遥かなる大陸アストローナ・・・
この大陸に伝説を残すフェラードの湖を主とする小村・・・
都の争いの一滴さえも伝わってこないこの小村から物語の一端は始まる・・・


   第1話:剣が呼んだ旅路


この日、ひとりの者が病床の父より呼び出しをうけた。
かつては剣士として名を馳せ、旅に終わりを告げてからは
この村を守り続けてきたその男が、自らの子であるリューンを呼んだのだ。

凛々しくも優しげな顔立ちに、細身ながらも非力とならぬよう
鍛えられたしなやかな身体を持つ若き剣士・・・それがリューンであった。

・・・毎日顔を合わせ、看病もしているはずの父の呼びだし・・・
リューンは、そこから何かを感じとったのか、覚悟を決めて父の部屋へと向かった。
「来たか、リューン・・・」
病床にある男は、立派に育ったわが子の姿を目に焼き付け、軽く微笑んだ。
「父さん・・・」
若き剣士たる子も、病に蝕まれながらも満足した表情を浮かべる父を見、
生を受けてからの日々を思い返す・・・
そして再び父のほうへと目を落としたとき、彼はゆっくりと語りだした・・・

「リューンよ、お前に渡したいものがある・・・」
父がそう言って示したほうを振り返ると、
いつの間に来ていたのだろう、母が一振りの剣を両手で抱え立っていた。
それを見て父たるかつての剣士は、再び語り出す。
「リューン・・・これは、私が若かったときに託された剣だ・・・
 若いころは修行と剣に秘められた謎を求めて旅に出ていたが
 私はもう、これを持って出ることもないだろう・・・    」
「父さん、そんな弱気なことを・・・」
リューンが言いかけると、それを止めてさらに続ける。
「いいや、今の私はもうあのころのような気力もない。
 たとえ病が癒えたとしても、もはや昔のようにはできん。
 リューン・・・おまえにこの剣を託す。
 私の影を追うのではなく、自分自身の道を開いてゆけ・・・」


この言葉を残してから曜の巡り1つもたたぬうちに
         父は目覚めぬ眠りへとついた・・・

あれは父の遺言だったのだろうか・・・
 弔いを終えてからリューンは剣を見つめて思う・・・
    「私の影を追うのではなく、自分自身の道を開いてゆけ・・・」
  父さん・・・父さんはわたしに旅立てと言うのですか?
   いまだ未熟なる私に、かつての父さんのように旅に出ろと・・・

そして再び剣をみつめる・・・
 父さんの残した・・・そして、父の言葉と母の抱腕を介して託された剣・・・
  父も母も、私に旅立てと・・・そう、道を開き羽ばたけと言ってくれた。
   今は、その言葉に甘えさせてもらおう・・・まだ自分で決断できない今は・・・



それから数日後、村から旅立つひとつの影があった・・・
馴染みの装備に旅支度・・・そして、母から渡された守りと
 父の片身となった封剣をもったリューンの姿が・・・

「母さんはもう大丈夫だから、行っておいで・・・
 昔、父さんが出ていった時みたいに見守ってるから・・・」
母の祈りを受け、リューンは旅立つ・・・
     予想もしなかった運命の渦中へと・・・