とある宙空・・・ここで起こった現象を鎮めるべく動く者達がいた。
「こ、これは・・・次元の歪みが許容外の勢いで広がってきています。」
「まずいな、この艦と機体3機に載せておいた修正装置で止めにかかるぞ!」

4基の修正装置を使い、歪みを止めにかかっているのは
創設されて間もない特殊部隊である。
もっとも、今回のような任務をまかされるからには、
それなりの実力を持っているが故なのだが・・・

「ちっ、4基とも出力過剰か。 これで止められるのか?」
装置と歪みとに閃光と雷撃がはしりながらも、歪みは徐々に縮小してゆく。
「やったのか? げっ、やば・・・)
縮小していたはずの歪みが突如爆発、そして消滅。
その爆発が収まったとき、母艦と3機の機体はこの次元から姿を消していた・・・



ディテリアルズ戦記〜 FO−version
   第1話:転移・・・そして出会い・・・


「・・・」
壊れかけた艦の内部、その操作中枢で目を覚ますものがいた。
彼女の名はメル・ファロート。 この艦の対外機能を担当する乗組員だ。
意識を取り戻しつつある彼女が近くを見渡すと、
艦内及び操縦を担当する乗組員にして、メルの親友たる少女、
クリス・リトネシアが気を失ったまま倒れている。
一瞬不安になったが、外傷も見られないし息も整っている。
おそらくはあの爆発のせいだろう・・・あれが夢で無ければ・・・

次元の歪みが爆発したあのとき・・・
・・・クリスの身体を中心に現れた青い輝きが、
あたしを守ってくれてたみたいだった・・・
クリスの身には何か秘密があって、どこかの機関から
監視されていたというのは聞いた事があるけど、
もしかしたら、この不思議な能力が関係していたのかもしれない・・・

「・・・う・・・うん・・・」
どうやら、クリスも目を覚ましたようだ。
「クリス! 大丈夫か?」
メルの呼びかけにクリスも意識の鮮明さを取り戻し、周囲を見やる。
・・・そこに映っていたのは、壊れかけた艦と、
その周囲の大地に散らばる残骸だった。

「これは一体・・・それにみんなは?」
クリスの投げかけた疑問に、メルははっとなった。
目の前にいたクリスにだけ気を取られていて、他の仲間の確認を怠っていたのだ。
同行していた他の3人、リード・アームス隊長と、
メルの姉エルザ・ファロート、そしてクリスの弟ジェター・リトネシアのことである。
3人ともそれぞれの人型機体に搭乗していたため
爆発で吹き飛んでしまった可能性が低いことが、艦の被害の状況から推測される。
メルとクリスは、艦の探知・通信機能を用い、
現在の位置と仲間の安否を確かめる・・・

「何? 座標基準オールロスト!? じゃあここはどこだってんだ!」
「多分・・・さっきの爆発で次元の歪みからどこかへと転移してしまったのね・・・」
メルの疑問に今度はクリスが答え、そしてこう付け加えた。
「ジェターは機体ごと反応あり。
 エルザさんとリードさんは、パイロットスーツの信号のみです・・・
 機体が壊れてるってことは、2人ともかなりの傷を負っているはず、
 早く見つけださないと!」

しかし、見つけだすにしても瓦礫の下。 掘り起こすのは容易ではない。
艦の機能はほとんど停止しているため、これを使って掘り起こすわけにもいかない。
可能性があるとしたら、機体反応はあるものの応答のないジェターを起こし、
彼の人型機体に期待するしかない・・・
(ジェター・・・)
クリスが意志を伝える。 この姉弟には不思議なちからがあり、
お互いの存在を確かめることができるのだ・・・


・・・姉さん?
機械と呼ぶには神秘的すぎる物体に囲まれた場所で、1人の少年が目を覚ます。
彼の名はジェター・リトネシア。 艦にいるクリスの弟である。
「ぼくは、いったい・・・」
徐々に意識が鮮明となってゆく。 と同時に、
自分が気を失っていたこと、そして姉が自分を起こしてくれたことにも気付く。
そして、残骸の散らばっているこの状況にも・・・
「姉さん、これは一体?」
ことの成り行きを姉から聞く弟、そして彼は行動に出た。

「姉さん、距離はどのあたりなの?」
「えっと・・・」
姉が艦載の探知機で埋もれている仲間の位置を察知、
それを通信と意志との双方で受けたジェターが、
まさに心がつながっているかのように正確に機体を動かす。
程なくして救出されるリードとエルザ。
ふたりとも体中に傷を負ってはいるが、後遺症の残るほどでもないようだ。
メルとクリス、それに機体を降りたジェターの3人が応急処置をほどこす。
もっとも、クリスが不思議な能力を使っている時点で、
応急どころでない治療になっているのだが・・・


治療もひととおり済み、これからどうしようかと思案しているところ、
行動すべき事態は、向こうのほうから自らやってきた。
レーダーが示しているのは、一塊になって向かってくる何者かの反応。
その反応から推測できることは、
相手は2つの勢力からなり、おそらく交戦中であること。
近づく者から見て、突如現れた謎の残骸である自分達を狙ってのことだろう。
・・・敵となるか味方となるか、いずれにせよ接触までの時間は迫ってきている。

「とりあえず、確かめてみるか?」
「えっ?」
メルがそう提案する。 そして、かつてリトネシア姉弟の生まれ故郷の
手がかりにならないかと幾つかの異言語について調べていたことも付け加える。
「そうだったんだ・・・それじゃあやってみよう。」
ジェターは艦載の通信機で傍受を試みる・・・

「・・・どう? 分かりそう?」
「う〜ん・・・片言だけならね」
幸いにも調べたことのある言語だったらしい。
仲間達が起きていたなら他に何か分かったかもしれないが、
リードとエルザ、そして治療に消耗したクリスの3人は今は眠っている・・
そして、メルが一応訳してみたところ、次のような意味の会話だった。

「(開いた・なにか)・(二人称・=・危害加えるもの)・「渡す」を否定」
「その状況・(二人称)を(危害加える)」
・・・メルが半端な訳をしてゆく。
のんびり意訳できるほど話せるわけではないからだ・・・
それを記録しながらジェターは意味をつかむ。
(つまり・・・ぼくたちを狙っていて、その片方はがらが悪いのか・・・)
そして、続けて伝えられる言葉も意味をつかんでゆく。
(ん? もう片方は、「調べる者」? 研究者か何かかな?)

さらに訳を続けて行くとかなり状況が分かってきた。
残酷な存在と対立する研究者 VS 悪名高い賞金稼ぎ らしい。
そして、双方ともにそれを肯定している。
この両者が組んでいてこれが芝居でなければ、善悪は明らかだ。
「うん・・・それにその人たちが嘘を言っているようには聞こえないわ」
いつのまにか目を覚ましていたクリスがそう付け加える。
「助けに行こう! 研究者のほうが押されているよ!」
「助けるって、こっちに戦力なんてろくに残っちゃいないんだよ!」
ジェターとメルが口論になる。 が、ジェターの次の言葉で一気に集束する。
「大丈夫、リーツはほとんど無傷だ、悪党が勢いづかないうちに・・・」

メルもクリスも確かめるが、確かにジェターの乗機:リーツ・クォーツァルは
ほとんど・・・いや損傷が確認できないほど無傷だった。
その機能がほとんど正体不明、リトネシア姉弟の特殊な能力によって起動する
この謎の人型機体は、リーツ・クォーツァル:リトの水晶と名付けられ
この部隊に渡されたものだった。
それを駆って、ジェターは救援に飛び出した・・・
自らの味方となるであろう者達を助けるために・・・


交戦場所が見えてくる。
すでに戦力差は大きく開いており悪党らしき者たちが優勢である。
研究者側の残存戦力は、人型機体2機に戦車1台、防御車両2台。
悪党側は、人型機体6機だ。
ジェターは、戦闘の流れを止めるため、急旋回をかけながら戦場の中心に降り立った。
研究者、悪党、その双方が一瞬動きを止める。 そして彼らが見たのは
槍を悪党の側に向け、戦線布告をかける輝く機体の姿だった。

悪党側は、突如出現した残骸の側の機体を、元から狩るつもりだったのか
下劣な声を送りながら襲いかかってくる・・・が、
「遅いね!」
リーツ・クォーツァル、そしてパイロットのジェター・リトネシアの
超高速反応コンビから見れば、敵の動きなどこちらが遊べそうなほどだ。
一瞬にして向かってきた最初の1機体を落とす!
残った5機の敵は、親玉と思われる者のかけ声の元、一斉に襲いかかる。
それらをさらに、2機目、3機目と隙を見せた敵を落とす。
この突然の援軍に勇気を出した研究者側も、
ジェターに気を取られていた敵に砲撃を次々と当ててゆく。
・・・戦闘は、今までの状況がなんだったのかという気分に包まれながら、
研究者側・・・そして、ジェターの勝利に終わった。


そして、勝利した2つの集団は、たどたどしいながらも
お互いに名乗り合う。

漂着してきた、遊撃小隊・ディテリアルズ  と
特殊武装を扱う、研究機関“T・F”    との
 お互いの運命を切り開く出逢いは、この時におとずれたのだった・・・