異空の地で、自分達に関心を持つ研究機関“T・F”で出逢った
遊撃小隊ディテリアルズ・・・
その一行は、安心できる休息の地を求め
“T・F”の拠点へと向かうのだった・・・



ディテリアルズ戦記〜 FO−version
   第2話:恒紅の目覚め


(「(これで、人と、重要な物資は全部ですか?)」)
研究者のなかで、言語に詳しいと思われる人物が語りかけてくる。
ここは、ディテリアルズ隊の面々にとっては別世界、
幸いにも意志の疎通はできるものの、双方たどたどしい状態であった。
(「(ああ、これで全部だ。)」)
メルの方も、それを肯定し礼を付け加える。
敵を迎え討った後、研究機関側から招待を受け、隊のほうもこれに応じたのだ。

実際のところ、ディテリアルズ隊の機体や艦は活動不能なほど損傷がひどく、
さらに重傷者も抱えている状態であったため
一刻も早く治療・補給が欲しかったのいうのが招待を後押ししたのだが・・・



「へぇ〜 随分と辺鄙なところにあるんだね。」
研究機関の車両や機体と同行するリーツ・クォーツァル、
その操縦席でジェターがそんな声をもらす。

研究機関“T・F”〜本拠地・・・
そこは、人里離れた未開の地域に存在していた。
一見したところ工場兼宿舎のように見せてあるのは
ここに施設があることを隠すかのようだった。




それからしばしの間を輸送に費やし、
一行は研究機関の一角を借りて休息を取るのであった・・・

「なあクリス・・・あたしたちこれからどうなるんかな?」
深夜・・・やや大きめの部屋でなかなか寝つけずにいたメルは、
隣で眠っていたクリスにそう話しかけた。
「そうね・・・とりあえずふたりの怪我が治ったら、
 みんなで話し合ってみましょ。
 とりあえずはここにしばらく留まれそうだし・・・」
「のんきだな、心配じゃないんか? こんな状況になっちゃって・・・」
「大丈夫よ。 あの人たち、研究者だけどちゃんと思いもあるから・・・」
その言葉ではっとなるメル。
そう、クリスが今まで体験してきたのは、
この比ではなかったのだということを思い出したからだ。
「あ、ごめん・・・」
「いいのよ、メル・・・だって・・・」


翌朝・・・
まだ本調子ではないものの
意識を回復したリードたちを合わせた5人のもとに、
この研究機関の長である人物が訪れてきた。
昨晩、この場所のことなどについて語ってくれた人物である。

(「ふむ・・・どうやら意識は戻ったようじゃな。」)
機関長は、多少変な発音ながらも、隊のいた世界の言葉で話しかけてきた。
「ええ、随分と世話になってしまいました。
 何のあてもないところを助けていただいて、なんとお礼を・・・」
ディテリアルズの隊長であるリードが、驚きとともにそこまで言いかけたとき、
“T・F”の機関長はこう口を挟んできた。
(「助かったのはお互い様じゃ。 わしらも主力が留守の時だったので
   困っていたのでの・・・そこでじゃ。」)
ここで一旦言葉を区切る機関長。 そのあと興味深い提案を持ちかけてくる。
(「もしよかったら、しばらくこの研究機関で暮らしてみてはどうじゃ?
  不案内な者を放り出すのはわしも嫌だし、
  おぬしらは仮の宿を、わしらは臨時の護衛と試験操縦員を得られる。
  悪い話ではなかろう?  」)
その話を聞いて、どうするべきかと後を振り返るリード。
ジェターは興味を示し、クリスは受け入れる様子。
メルとエルザも、とりあえずはそれで構わないとの返事だ・・・
それを見て、リードも一度うなずいてから、返答を決めた。
「ええ、ではこれからもよろしくおねがいします・・・」



それから数日がたち、隊の面々もこの世界の風習や言語に馴染みだしていた。
隊によってこの世界に出現した残骸や機材の研究も進められ、
同時に、それを参考に作られた機械の実験もおこなわれていた。
だが、元の世界に戻る術についてはいまだ謎であり、
向こうでも謎であった人型機体“リーツ・クォーツァル”についても
ほとんど解明が進んではいなかった。
もっとも、この機体が進化・自己修復される点に目をつけ、
進化の代替品としての臨時移動推力装置(ブースター)の設置はできたのだが・・・

そして居候中のもうひとつの仕事である護衛のほうも、
この日、その役割を果たすべき事態が襲ってきたのだった・・・

研究員からの情報によると、賊が近くの資源採掘工場を襲撃しており
救援要請が届いているとのことだった。
「話は聞いたな?  これがこの世界での初陣じゃ。
 機体の調整は万全じゃが、油断するでないぞ」
機関長からの伝令が届く。  敵の戦力についての情報を得ると同時に、
ディテリアルズ隊の機体操縦員3名は出撃準備を済ます。
「不慣れな地上戦だが、大丈夫か?  エルザ、ジェター」
「そっちこそ大丈夫なの?  あなただって慣れてないんでしょ?」
「ぼくは平気だよ。 どこだろうと関係ないさ」
互いに声を掛け合い、3機の機体は飛び立っていった。


「見えてきたな、敵は13機か。 よくもまあこんなに揃えたもんだ
 歓迎のところ悪いが、早速帰ってもらうとしよう。」
“T・F”製の射撃機支援用量産SS「ライフルガード」に搭乗した
リードがその声とともに急行用移動具から飛び降り、降下を始める。
無論、対射撃用防御装備「ハイパーフィールド」を展開させてだ。
敵方のCKがそれに気付き、リード機へと射撃を開始する。
しかし、そのほとんどは避けられ、命中したものも大して効いてはいない。
と、そのとき突如として敵CKが2機爆発を起こす。
見れば、いつのまにか降下してきたエルザ機とリード機が攻撃を開始していた
「馬鹿な、いつの間にCKの懐に!? おのれ“T・F”の奴らめ、
 目にものみせてくれるわ!」
敵のリーダーと思えし者がその言葉で合図をかけ、
それにあわせて敵方の機体が狙いを定めてくる。

「くっ、やつらやるじゃない。」
「うまくよけてよね。 エルザさん」 ジェターがエルザに励ましの言葉を送る。
エルザの乗る遠近両用PT「ニアアンドファー」は、PTの例に漏れず装甲が薄い。
直撃を受けたら危険なのを考慮してだ。
ブースターを使って一気に後退し、敵を撃ちにゆく。
そして敵陣のまっただ中でジェター機が槍を振るい、敵を撃破してゆく。
また、リード機も工場の皆を守りながら、
脚部攻撃用格闘衝撃兵器「アースグラインダー」で
残った敵射撃機を文字どおり足止めしていた。
敵が戦力の大半を失い、戦いの趨勢が決まりだしたとき、
今まで離れで様子を見ていた敵リーダーが、業を煮やして参加してきた。
「不安定なんで使いたくなかったが、こうなっちゃしょうがねぇ。
 俺たちの恐ろしさを思い知らせてやるぜ!」

敵将機は、連続でビームを打ち込んでくる。
「馬鹿な!? なんで賊がサイコミュタイプ3を・・・」
その言葉を残し、工場の守備機は炎上を始めた。
「あんなものを使われたら、とてもじゃないが守りきれない! くっ・・・」
リードがアースを放ち止めようとするが、すでにその兵器は尽きている」
「あたしが撃ってもそう簡単に落とせそうにない。
 なんてやっかいな奴だよ、こんなときに・・・」
エルザが愚痴を漏らす、彼女が攻撃をしかけても、
敵の装備に遮られ、とても被害を抑えられそうにない。
そのとき、敵の第2射が吹き荒れる、さらに施設に火の手が上がる。

「あいつめー!」
ジェターが近くの敵を蹴ちらし、敵将機に向かって槍を構える。
「行くぞ、リーツ・クォーツァル!」  そして、最大出力で突撃をかける
「馬鹿め、槍で突っ込んでくるとは。
 狙い撃って落とし・・・なんだとぉ!?」
遠距離兵器からも射程外にいたはずのジェター機は、
猛烈な勢いで敵に向かって行く・・・途中であまりの加速にブースターが
限界を越えて吹っ飛んだにもかかわらず、さらに勢いを増して・・・
そして、機体の全身から
恒星のごとき紅の光を発しながら駆けたリーツ・クォーツァルは、
その槍を敵に突き立てた。
次の瞬間・・・一瞬遅れて爆破消滅する敵機。
不完全なまま使用していたサイコミュ3も槍の一撃で暴走したため、
敵将の機体は跡形もなく消え去っていた。
戦いは、終わったのだ・・・



その後、敵の残党を治安組織に引き渡し、工場員の救出も終え、
ディテリアルズ隊の面々は帰還を果たした。
後日、あの恒紅の輝きについて調べたが、
どうやら、あの機体の秘められた能力が
超加速をきっかけに発動したものらしいことが分かった。
進化した機体に新しく現れた推力装置とともに・・・