「ふぅ・・・まさかこんなに凶暴な獣が現れるなんて・・・」
「やっぱり、あの噂は本当なのだろうか?」
戦いを終えた2人の者が話をしている。
1人は、黒髪に、幼さの残る容姿ををした少年。
細身なだけに、かなりの敏捷性を有しているようだ。
もう1人は華奢なようだが意外と均整の取れた体格のエルフの青年。
この森の種族が使うにしては少々強健な弓が印象的である。
2人は名を、黒髪の方はソディアス・ミグライド、
エルフの方をハイルティ・ウィルカリオンといった。
この2人が旅に出た経緯を語るには、ソディアスの生い立ちに触れねばならない・・・

・・・理由あって知り合いのエルフの元で育てられたソディアスであったが、
ちょうど、彼が冒険者として旅に出ようかと思っていたそのときに
不穏な噂を聞き、その地へと向かっているのであった。
その噂とは、リオスファー最大の都市”リエッドウェイ”が邪神の勢力に蹂躙されたというものだ。
しかも、リエッドウェイはソディアスの生まれ故郷。 家名とそれに連なるものを捨てたとはいえ、そこにはもう1つの家族がいるのだ。
かくして、ソディアスは友人のハイルティとともに、育ちの故郷を飛び出したのであった・・・

「やっぱり、ラフドーさんのところに寄ったほうがいいんじゃないのか?」
ハイルティがそう問いかける。
「・・・うん、そうだね。 小父さんだったらなにか考えているかもしれないしね。」
ソディアスのその返事に少し納得のいかないものを感じたハイルティであったが、
そのことを言うのはやめることにした。
(ソディアス・・・肝心なことは見失うなよ)

ラフドーの居る村にたどりついたときには、もう日が暮れかかっていた。
「やっぱり来たな・・・ソディアス・・・」
ラフトーの家の前には、人の良い感じの壮年のドワーフ〜ラフドー自身が待っていた。
「お・・・小父さん?」 「ラフドーさん・・・もしかして分かってたのですか?」
「お前の考えることぐらい分からんとでも思っとったのか?
 おおかた、ハイルティにでも言いくるめられたんじゃろう?」
その言葉に動揺しながらも、ソディアスは間髪入れずに言い返す
「だけど・・・このままじゃ」と・・・
「まぁ、落ち着くんじゃソディアス。 焦りに己を見失った今のお前が行ったところで、身を滅ぼすだけじゃ・・・
 今日はここで自分に出来ることを考えることじゃな。」
ラフドーの声は穏やかであったが、反抗を許さぬ響きがあった。

その夜、ラフドーの目を盗んで飛び出したソディアスは文句を言いつつ村の外へと駆け出そうとしていた。
「くっ・・・ここでじっとしている間にも・・・どうして、どうしてあんなに落ち着いてられるんだ、小父さんもハイルティも・・・」
そう言いかけたソディアスの脳裏に、いつしか2人が言っていた言葉が思い出された・・・
(まったく無茶しおって、先を急ぎすぎて未来を失ってはどうしようもないじゃろうが!)
(前のときは実力がなくて助けてもらうだけだった。 もうそんなことにはなりたくないし、
 出来ることならあの人達に追いつきたい。 もう守られる必要はないけど、
 守ることはできないから・・・  え? そのときは手伝うって? ・・・〜)
・・・想いにふけっていたソディアスの視界に一つの人影が映る。
「実力がないなら、それを絞れるだけの準備をしなくちゃならない。 待つのは辛いけどね」
「ハイルティ・・・」
「1人で先走って倒れたら、手伝いにはならないよ。」
ハイルティのその言葉は、不思議といつもより温かみがあった・・・


翌朝・・・手早く食事を終えたソディアスにの前に、2つの荷物の塊を持ったラフドーが現れた。
「ソディアス・・・これを持って行け。 お前が一人前になったら渡そうとしていた剣もある。」
渡された荷物には、冒険者の装備一式と、機動性を上げた硬革の鎧、それに
「これは・・・まさか、フィーシルソード?」
現在使いこなせる最高の材質で造られた一振りの長剣があった。
「さっさと準備せい。 先に行こうとして出遅れる気か?」
見ると、ラフドーももう一つの荷物塊を身につけているところだった。
「小父さんも行ってくれるの?」
「当たり前じゃ、お前達だけじゃ不安だからの」
この日・・・僅かにかげった陽光を浴びながら、3人のものが歩きだして行った・・・