千枚岳(2,880m)・悪沢岳(3,141m)・赤石岳(3,120m)登山日記

    4泊5日 静岡県・長野県 2002 .8.8〜8.12

8/8  (木)水戸−上野−新静岡−畑薙第一ダム−椹島(ロッジ泊)

8/9 (金)椹島〜千枚小屋(テント泊)

8/10 (土)千枚小屋〜荒川岳〜荒川小屋(テント泊)

8/11 (日)荒川小屋〜赤石岳〜赤石小屋〜椹島(ロッジ泊)

8/12 (月)椹島−畑薙第一ダム−新静岡−上野−水戸

 

 8月8日(木)

 新静岡のバスターミナルから畑薙第一ダムへ行くバスの最終に間に合うためには,水戸駅始発の電車に乗らなければならない。それだけならいいが新幹線に乗り換える時間がほとんどない。新幹線を一本でも乗り遅れるとバスに間に合わないのだ。今回の登山は自分に対する挑戦でもある。テント泊を目指していたので,リックの重さはたぶん25〜30k位,日程は椹島(1泊)+3泊(テント)の3泊4日計画だ。  

 上野駅では重い荷物を背負い走り無事新幹線に乗ることができた。駅に着くとバスを待つ登山客がたくさんいた。バスは新静岡駅を出発し大井川鉄道沿いを走った。ここがSLで有名な大井川鉄道かと思った。東海フォレスト経営のマイクロバスが迎えに来ていた。全員が腰掛けた膝の上に重いザックを載せ発車した。マイクロバスは林道を渓谷沿いに走った。予想以上の広い敷地に事務所をはじめ大きな宿舎が何棟もあった。宿舎はさほど混雑はしてなかった。私の部屋は四畳半で3人だった。

 荒沢岳・赤石岳   

8月9日(金)

朝食を食べ,重いリックを背負っていざ出発。登山口の滝見橋で写真を撮った。周りを見ると誰もいない。登山客のほとんどがすでに出発していた。今日は7時間の登りだ。暗くならないうちに着ければと思った。登りだして3時間位たった頃,もうスピードで下山してくる人がいた。「上の天気はどうでしたか?」と聞いたら,「昨夜はひどい嵐で天気がどうなるか分からないので下山してきた。」とのこと。もう1日くらい待てばいいのにと思った。

やっと,人に会えた嬉しさもあったがちょっと心配になった。そうこうしているうちに4人のおじさんグループに追いついた。「重そうだね何kあるの?」と声をかけてきた。千葉から来ているおじさん5人グループだ。「どこから来たの?」「水戸です。」と答えた。するとおじさんの1人が「水戸の○○病院は機械の納入で何回か行ってるよ。」と話しかけてきた。その病院は,身内が入院したことのある知っているところだった。お友達になれそうだと勝手に思った。このグループについて行こうと思ったが,徐々に離されひとりぼっちになってしまった。とにかく千枚小屋までひたすら歩いた。そして,時より小雨がぱらついた。 とぼとぼと歩いていると駒鳥ノ池が見えた。それからしばらくして千枚小屋についた。

         

千枚小屋に着いてすぐ小屋でテントの受付をし,テント場に急いだ。小屋から5分くらい奥に入ったところにテント場があった。雨が降ってきたので急いでテントを設営し,体を休めた。すでに1人の客がテントの中で休んでいた。夕方になり日が差してテントの中が暑くなってきたので外へ出た。早く夕飯の準備をし明日に備えようと思った。小屋の周りには高山植物がたくさん咲いていた。

8月10日(土)

朝,4時頃起きたが,少し横になって日が明るくなるのを待った。水を汲みに小屋のところへ行くと朝日の写真を撮ろうと何人もの登山者が外に出ていた。私もカメラを取りに戻った。日の出を見た後,テントをたたみ,千枚岳を目指して出発した。お花畑を登っていくと稜線に出た。頂上は結構近かった。そして頂上で写真を撮った。昨日小屋に泊まっていた人がたくさんいた。ここからの荒沢岳・赤石岳の山並みは素晴らしい景色だった。そして,山をバックに記念写真を撮った。しばらく稜線を歩いて行くと,荒川三山の主峰である東岳に着いた。

         

中岳の登りにさしかかったときに,若い夫婦がいた。ザックの底が濡れていたのでどうかしたのかなと思っていると,ワインのビンが割れてしまったとのこと。ワイン専門のボトルに入れてあったようだが,そのボトルが割れたようだった。旦那がもったいないと割れた方のワインを飲み始めた。それを見ていた嫁さんが飲み過ぎると歩けなくなるからと心配していた。歳は30代前半か20代後半くらいに見えた。その夫婦を追い越し前岳に向かった。

         

ガスがかかりはじめ視界がなくなってきた。前岳の頂上で,後から来た夫婦に写真を撮ってもらった。「撮しましょうか?」と言うと「私達は写真を撮らない主義なので」と返事が返ってきた。理由を聞くと,以前山に登って写真を撮ったが,フィルムが駄目になったことがありそれから写真を撮ることをやめたそうだ。何とも答えようがなかった。登った証拠もなくなるし,記念写真が残らないのは何とも残念なことだと思った。この二人にとって写真フィルムが駄目になったのがよっぽどこたえたのだろう。私だったらもう一度登り直して写真を撮る方を選んだろうと思った。

その時,ふと,この二人どこかの山で会ったことがあるなと思った。でも,なかなか思い出せなかった。後から分かったことだが,4,5年前の秋に友達と仙丈ヶ岳に登ったときに見かけたカップルだった。羨ましいカップルだったので,二人の後ろ姿だけでもと,勝手に写真を撮ったのを思い出した。

そうこうしているうちに荒川小屋に着いた。ガスがなくなり暑いくらいの日差しに変わった。テント場は小屋のすぐ下にあった。テントを設営し昼寝をしようと思ったが,某大学のワンゲルがすぐそばにテントを二張り設営し始めた。その脇には私よりも歳の行った中年のおじさんが相当バテた様子で1人たたずんでいた。人ごとではないがこの人は救助隊に収容されるのではないかと心配になるくらいへたばっていた。ここの水場は流れっぱなしで使い放題だったので,タオルで体を拭いた。震えるほど冷たい水だった。夕食を食べて早めに寝ようかと思ったが,学生が夜の8:00までトランプやなんかでガヤガヤやっていたので,私はうるさくて眠る時期を逸してしまった。それからは,物ひとつ音もしなかったが,私の方は寝られなくなってしまった。大学生から離れたところにテントを張り直せば良かったと後悔した。しかし昼間かわいい女子大生に写真まで撮ってもらった恩もあるし文句は言えなかった。明日の予定は赤石小屋までだ何とかなると眠りについた。

 

        

8月11日(日)

大学生のワンゲルが朝4時頃からガサガサ動き出したのに目が覚めた。こちらも寝てられないので,起きてテントを片づけ始めた。簡単な食事をして赤石岳に向かった。ゴツゴツした小さなピークを何度となく越えて小赤石岳への稜線を登っていった。

右からは強い風が吹き左から太陽の光が差し込んでいた。ふと右側の霧の中を見ると「なんと虹が輪になって映ってるではないか!!」ついにブロッケン現象に出会えたという感動とともに体が震えた。急いでカメラをポケットから出そうとするが,手が震えてなかなか出せなかった。取り出してからシャッターを何回も切った。「やった!」という安堵感で,なぜか先を急いでしまった。今考えると,その場所にずっといればもっといい写真が撮れたのではないかと後になって後悔した。 

 ついに赤石岳の頂上へ立った。頂上はどちらかというと平坦で目の前に避難小屋まであった。頂上で休んでいると千葉のおじさんグループが登ってきた。お互いに写真を撮りあって登頂を喜んだ。

 

        

赤石小屋までの下りはおじさんグループの後を追いかけていったが,先に行かれた。赤石小屋に着くとおじさん達は,ラーメンなどを注文し食べていた。私は冷や麦を注文した。食べ終わるとおじさん達は,椹島まで下ると出発していった。私は少し迷ったがまだ正午になったばかりだし,夕方までにはなんとか椹島に着けるだろうと下山を始めた。

時間が経つにつれて,周りには誰もいなくなりここで歩けなくなったらどうしようと不安になった。25k以上のザックを背負い,とうとう足に限界がきたようだった。アキレス腱に熱湯をかけたような鈍い痛みが走った。これはやばいと腰を下ろし休んだ。このままずっと休んでいても椹島には着かないしどうしようかと悩んだ。そう言えば千葉のおじさん達が「テントがあるんだからどこでも寝られるじゃないか?」と言っていたのを思い出した。しかし,こんな山奥で1人で寝られるわけがないし,熊のことを考えると怖ろしくてテントどころではなかった。

前に歩けないんだったら後ろ向きに歩こうと,後ろ向きにゆっくり歩いた。足の痛みはなかった。危険なところは前向きで安全なところは後ろ向きで少しずつ下山した。 下山中に3人の登山客とすれ違った。そのうちの1人は35歳くらいのお姉さん?で1人で登ってきていた。顔立ちの整った綺麗なお姉さんだった。その姿を見て勇気づけられた。ここからは一気に下ったが,とてもきつい下りだった。林道へ出たがここからがまた長かった。 やっとの思いで椹島ロッジに着いた。

        

 

受付で本日はプラス2千円で1人で泊まれると聞いたので2千円多く払って部屋を取った。ゆっくり風呂に入り喫煙所でタバコを吸って休んだ。夕飯の時に,今回の山の行程で一緒だった千葉から来たおじさんに夕食を一緒に食べようと誘われていたので楽しみにしていた。

夕食を食べに食堂に行くと,カップルの二人も食堂にいた。てっきり赤石小屋に宿泊したのかと思っていたら,私より後から下山していたことが分かった。カップル二人から「以前どこかで会いましたよね。」と声をかけられ一緒に食事をすることになってしまった。約束していたおじさん達には申し訳なかった。

このカップルは神奈川のZ市から来ていた。以前仙丈ヶ岳の小屋で宿泊が一緒だったことがわかり「こんな偶然てあるんですね。」といろいろな山の話をした。

8月12日(月)

昨夜,神奈川のカップルに、「畑薙第一ダムに車を置いてきてるので静岡駅まで送ってあげる。」と言われ静岡駅まで送っていただきました。その節は大変ありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。

 

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