かなーり長いのでお暇な時にどうぞ。
尤も、このサイト自体が暇潰し用なんですが。
さらに雑多な事柄も追加。当然ですが、全てフィクションです。
他の資料と違い、殆どは人間視点でない本質の解説に当たりますので、他の資料とは一部食い違います。














フォルサーム

彼は執行者の側近級の配下となるべく創られた生粋の天使です。
かなりの間仕えた上官が追放された後、その地位を次いだのも立場からです。
しかし、その性格は随分異なり、上官は少々破壊好きの気が有ったのに対し、彼は至って温厚です。
一方、上官は厳格で生真面目でしたが、彼はやや奔放で気紛れなところがあります。
とはいえ、根は極めて真面目なのは上官の影響といったところでしょうか。

彼に託した意味は絶対的秩序。
確かにどことなく適当ですが、その判断の根底は厳格なものです。
温和な語り口でありながら、行動は冷酷なほどに(世界の維持という面からの)損得勘定に基づきます。
人間とは認識が剥離した面も少なくなく、人間から採りたてた側近ともその面での衝突が絶えません。
最も彼を敬愛するエルティアでさえ、心底ではかなりの恐れを抱いています。
されども、その厳格な管理があってこそ統括者交代後の揺れからも天界は素早く立ち直ることができました。
また、徹底した管理があってこそ長年手遅れになることもなく管理が行われていているとも言えます。

人間をはじめとする信仰習慣のある種族からは、厳格さから敬愛されるよりは恐れられており、信者も秩序的な考えに基づいて行動しようとします。
実際、彼の判断により粛清された部族は少なくなく、大規模な時には一地方が消し去られたことすらあります。
甘く考えるのならば、問題だけを取り除けば良いとも言える状況でも、彼はその原因の周囲すら巻き込んで消し去ります。
敵を残すな、復讐される。そう言った人間が昔居たと言いますが、これもまた同じような考えからの行動です。

そういった職務における冷酷さとは違い、私事での判断はさり気ない優しさを感じさせるものです。
内に秘める価値観は、非情なやり方は好みはしません。同時に持つ職務への責任感が、彼を駆り立てるのみです。
側近たちもそれを理解しているからこそ傍に居続けているとも言えます。

側近の一人であるエルティアとは良い仲ですが、上記の通りエルティアは恐れも抱いています。
普段の優しさをよく知っているだけに、職務中の冷酷さが彼女にはより強烈な印象を残すのです。
当人が優し過ぎることもあり、本当に僅かではありますが、憎悪にも似た感情も育っています。
フォルサームも勘付いては居ますが、何もしてあげられないことを嘆くのみです。

戦闘能力は元執行者であるだけに高く、一対多数の戦いでも一歩も引かずに戦えるだけの実力を持ちます。
集団戦では足りない部分を補うか、さもなくば自分を中心として周囲には支援を頼む戦法を多用します。

フォルサームの側近は全員が元人間です。
追放事件後、再発を防ぐために創造主は策を練りましたが、原因が明確でなかったため的確な案は出せませんでした。
そのため、思いつきとも言えるようなことですが、数点を変更することにしたのです。
そのうちの一つが、側近の増員。ただし、人員を用意しているような暇はありませんでした。
代わりに適当な年齢(人間社会に依存しきっておらず、かつ分別は備わった程度)の人間を引き上げることになったのです。
これは人間に対する行き過ぎた行為に歯止めをかける狙いもありましたが、こちらは思うほどの成果は上げていません。


















レティーナ

裕福でもなければ貧困に喘いでもいない、ごく普通の家庭に生まれた少女です。
この世界において冒険者は珍しくなく、彼女の父も母も冒険者でした。
父の剣の才と母の魔術の才をほどよく受け継いだ彼女は、それと共に両親が共通して持っていた火の力に強い適正を示しました。
フォルサームの目に留まったのは17歳の時。このころには彼女自身も魔法戦士として修練していた時期です。
そしてフォルサームから天使となる事を持ち掛けられ、迷いながらも最終的には決断します。
両親もそれを許し、比較的すんなりと天使の命を得た、幸運なのかどうかは不明ながらも恵まれた人です。

故郷は灼熱地帯として知られる火山帯で、川に流れるのは溶岩という凄まじい地域。火の聖域でもあります。
それだけに住民の生活能力は強く、逞しい姿を見る事が出来ます。
噴火の影響を凌げるのは聳え立つ巨大城、現在の彼女の居城である火の恩寵を受けた城の城下のみ。
この地域にはその城下町以外大きい町はありません。下手に拡張しても、火山弾で破壊しつくされるだけです。
点在する小さな城の領地は地下の町を影響下に置いており、それによって辛うじて収入を得ている状態です。
収入源は鉱石。頻繁な噴火で再生される鉱産資源を、危険を冒して採掘するのです。
金属類の加工技術が優れているこの地は、鍛冶の町でもあるのが救いでしょうか。

性格的には穏やかな印象を与える一方、戦いにおいてのみ非常に勇猛です。
ギャップの激しさから実は危ない輩と見られることもありますが、少なくとも普段そのような面を見せることはありません。
普段はあくまでも温もりを周囲に提供する穏やかな炎、戦いのときにのみその破壊的な一面を見せるのです。
当然部下からの信頼は厚く、統括地域の住民からの信望も厚い、理想的な上官です。

片手剣や細身剣を得意とし、場合によっては両手剣も扱いこなします。
とにかく剣の扱いだけとはいえ、魔法も自在に操るために戦闘能力のバランスはかなりのもの。
複合系の技術にも優れ、斬り捨てつつも焼殺するその一撃は恐るべき破壊力を持ちます。

基本的な戦闘スタイルは突撃ですが、魔法の援護も含めて言えば万能型です。
攻撃範囲と威力が共に高い火属性魔法を扱う関係と、我流技術が範囲を重視している点から、対多数に強くも有ります。
さらに火炎の力を使うことから拠点襲撃での破壊の速度は随一を誇り、町を焼き払う程度なら数分も要しません。
指揮能力も高く、軍団戦においても常に高い戦果を上げます。信頼の厚さから兵の士気も高く、簡単に敗走することはありません。

熾天使となるに相応しい人材と見られるには、無論能力もですがその気性も重視されています。
尤も、フォルサームが気性に求めたのは種類の多様さ。一様であるよりも、適した場面で適した者を送れる柔軟性を重視しています。
団体行動においては一様さが有るほうが指揮を執りやすいとはいえ、その問題は交友を持たせることで緩和するという選択をしています。





























エルティア

彼女が幼かった頃、その故郷では激しい戦争が起こっていました。
それは現在彼女が統治している城、水の恩寵を最大に受けた巨大城。
その城下である水の聖域は豊かで、城に設置された装置による上水道・下水道が完備されています。
田園の作成にも適したこの地は、さらに多く存在する湖や川の漁獲も凄まじい量を誇ります。
それだけにこの地は何度となく戦乱に巻き込まれ、時には圧制を受ける形となっていたのです。

エルティアはこの地の神官の家に生まれており、父は輪具の職人、母は神官であり、儀式の担当者です。
が、戦乱の際に母を庇って父は殺され、五歳という若さで父を失っています。
輪具はこの地域の祭具であったため、母はエルティアにその技術を伝えつつ、父の事も語っていました。
幸いかは分かりませんが、母以上の輪具の技術と魔法制御力、そして優れた歌の才能をエルティアは保有しています。
さらに、この地では神聖とまで言われる水のマナの扱いに恐ろしいほどの適正を見せてもいました。
このため、僅か12歳という若さから儀式などの歌い手を務め、14歳からは巫女として完全に中心に立つ事になります。
この地方は祭りや儀式が盛んな一種の宗教地区であるため、月に一度の間隔であるそれらに全て参加した形になりました。
そんな日々を過ごす中、15歳の誕生日を迎えたその日にフォルサームからの誘いがあります。
母を心配した彼女は難色を示したものの、儀式で崇めている天界の使い、それも高位の天使からの勧誘である点。
そして他ならぬ母の勧めで、最終的には彼女は天使として生きることを決めます。

父を早くに亡くしながらも、母の愛情に加え後年には儀式における重要な立場から周囲の庇護も厚く、常に周囲に護られて育っています。
苦労知らずにも見えますが、自己犠牲の精神が強く、他者の不幸をも嘆く優しさから気苦労は絶えませんでした。
それも厚い庇護の中に居たからこそ耐えられたもの。当人は精神的には脆く、多くを抱え込むには弱すぎます。
にもかかわらず、些細な不和(例え自分が関係無くとも)にすら心を痛め、また不満を口にすることはありません。
溜めてはならないと分かっていながら自ら溜め込み続ける彼女。常に壊れる危険を持ち続けています。

弱さを尊ぶ面も、幾らか持っています。
弱くとも生きていけること、それ自体が平穏の中に居ることを象徴するものだと考えているためです。
強さを嫌うわけではありませんが、あまり過酷な状況に慣れることは自分の事、他人事を問わず好ましく思いません。

戦闘技術は天使になってから学び始めており、他の熾天使には全く及びません。
得物の輪具は刃のあるものが元ですが、彼女が扱うのは刃の無い儀礼用のものです。
ただし刃がないもののほうが魔法補助具としては性能が高く、誤って自分を切り裂く心配もないため、純粋な魔術師が少数ながら愛用します。
実は潜在的な魔法制御能力はアーシャを凌ぎ、1年足らずで輪具による魔法補助技術の大半を習得しているほどです。
それでもまだ経験が浅く、また躊躇いを捨てきれない甘さが常に枷となり続け、単独行動は誰もさせません。

はっきり言えば、これほどの責を負う立場にある者としては不適格な点が多く、向いているとは言えません。
評価されたのは潜在的な能力の高さと、その優しさ。あとはせいぜい、内務能力の高さ。ただそれだけです。
しかしその存在はただそれだけでも人々を纏め上げるものとなるのです。
天使の本来の役目、それは人間に対しての好意的な干渉。それを思うなら、彼女は十分に素質があると言えるでしょう。












マリーシア

彼女の故郷も、他の天使らと同じく現在の統治区域である風の聖域です。
そよ風のふく長閑な高原で、坂の多さを除けば居住に適した地です。
温暖な気候を利用した農業・畜産業を主体とした生活が営まれ、とにかく穏やかな様子を見る事が出来ます。
そんな地に生まれ育った彼女は、その奔放な雰囲気を受け継ぎ、風のように気紛れな性格です。
文字通りのおてんば娘でしたが、問題までは起こさず、実に平和に生きていました。
異彩を放っていたとすれば、唯一異常なまでの風のマナとの融和性でしょう。
同時期、他に年齢・能力が適合する者が居なかったため、なし崩し的に彼女が誘いを受ける形となります。
他の者とは違い、難色の一つも示さずにあっさり合意、親は親ですぐに認めたという、ある意味凄まじいあっさり具合。
それでも、風の性格に見合った奔放さは彼女を風の天使として認める主要因でもあります。

口調の丁寧な年少組のなかでも異彩を放っている気楽な話し方をします。
エルティアより年上なのですが、家庭は普通だったため特には何もしていなかったのも有るでしょうか。
幼いと言うよりは若いと言えるタイプで、悪戯が趣味という傍迷惑な人物ながらも憎めない部分もあります。

大戦以後、いつの間にか放浪癖まで付いており、城に居る事は稀です。
一方で天界や人間界を彷徨っている事は多く、時には魔界にも出かけています。
エルティアが水中散歩を好むように、彼女は空中散歩が好きなわけですが、空なら場所に困ることはそうそうありません。

武芸の腕前は独特のセンスを生かした乱戦術。戦術が有るようで無いという。
基本は格闘ですが、殆ど全ての武器を自在に扱います。当然、どれも専門には及びません。
魔法の腕前も高いレベル。烈風に乗って高速で敵を翻弄するのもお手の物です。
飛行が得意なため空中戦の鬼でもあります。敵を空中に叩き上げて弄ぶのもやはりお手の物。

地上での戦いの場合重量級の敵にはその攻撃力の低さが祟って大苦戦しますが、軽装相手であれば圧倒的な敏捷性で逆に翻弄します。
真空波を操る魔法でもない限り、防御の厚い相手にはあまり戦果を上げられないのが最大の弱点です。
魔法もあくまでも速度を重視しており、破壊力に特化した魔法は少ないのが事実。
そもそも偵察向けの能力を持っていますので、基本的には後方を急襲する事による陣形破壊が仕事に。
いくら力が弱めとは言え、追撃には非常に高い戦果を上げます。弱いほう、とはいえやはり魔法戦士系です。

結論としては野戦が得意な分、攻城戦や防衛戦に向いておらず、狭い屋内戦も苦手とします。
攻撃魔法の影響範囲の広さと、その空中制御力の高さが活かせる場所でこそ力を発揮できるためです。










メルリア

温厚な人々の暮らす、遊牧と採集、そして狩猟という古い技術を未だ主要産業に置いている大草原。地のマナの恩寵を受けし聖域。
そんな穏やかな地に生まれ育った彼女は、やはり温和に育ちました。
他の地域の人々と根本的に違うといえば、この地方の住民特有の自然や動物との強い絆。
これは”必要なものは必要なだけ”という原始的ともいえる生活において必ず必要となる心構えからです。
下手に取り過ぎたならば、それは自らの生活の破滅を意味するからです。不安定であるが故に、見限られていた営みとも言えます。
しかし、この地は広大な草原に無数の森が点在し、いくつかはかなりの規模を誇ります。
その一つである大森林に囲まれた、開けた土地にこの地最大の城は聳えています。つまり、自然とは切っても切れない関係にあるのです。

そんな城下に住んでいた彼女は、頻繁に外に出かけては自然と戯れる事を楽しむ穏やかな生活を送っていました。
しかし、ある時期を境とした城の争奪戦の頻発に伴う城下への影響により、町は徐々に荒廃を始めます。
治安は悪化し、密猟者は増え、野党は現れ、穏やかだったこの地は一時無法地帯と化しました。
その頃、地のマナの護りを受けていると以前から言われていたメルリアは、連日延々と祈りを捧げていました。
天界に対する、加護を渇望する祈り。自らの身を捧げる事を対価とした無法者への制裁・・・。
当初は不干渉を決め込んでいたフォルサームでしたが、その粘り強い祈りを最終的には受け入れます。

その時下された裁きは、この地方の伝説ともなっています。
木々は動き出して愚者を叩き潰し、大地は激しく鳴動して怒りを示し、野獣は町に現れて無法者を虐殺しました。
凄惨なる裁きの中で、メルリアは自らの祈りが届いた事を悟り、喜びます。
しかし、同時に微かな悲しみも彼女を襲いました。自らが、制裁の対価として提示したものを、忘れてはいなかったのです。
その大虐殺の夜、部屋に現れた天使長を見ても、彼女は驚きはしませんでした。
むしろ、驚いたのはその提示した対価。それは、地の天使としての永遠なる天界への奉仕。
死を覚悟していた彼女にとっては、いささか軽くすら思えたその対価でしたが、その返事の期限は5日後でした。
フォルサームがこの期限を設けたのは、下手な事をして恨みを買うのは得策では無いとしたためです。
彼女の両親は戸惑いましたが、娘の意思を最終的には尊重し、彼女もその決意を変える事無く、天使としての命を得る事となりました。

戦いとは無縁な生活を営んでいたものの、その生まれ持った弓術と槍の才覚、そして地の力への適正は彼女を優秀な戦士としています。
野生の生物との強い絆に救われる事も多く、さらにその落ち着いた態度は周囲の信頼を受けています。
盾を使わないにも関わらず、非常に高い防衛能力を持つため前線での防衛線の主力となります。
しかし、弓の腕前も優れているため、前衛と後衛の両者から足りない側を補う中衛と言えるでしょう。
大地の力を借りる関係から、攻城戦においては非常に高い建造物の破壊能力を持ってもいます。
また、自然の力、特に大地そのものと動植物が味方とも言える為、最終手段も多数持ち合わせており、粘り強さでも高位に。

最大の弱点は星の力で、堅牢なる大地すらも容易く抉り取る痛烈な一撃を受ければ、一発持つか持たないかという脆さを見せます。
他では灼熱の炎にも脆い半面、非常に多彩な抵抗力を持つため致命的弱点を十分に補っています。

地の力は各種の鉱石とも深く関わり、他のマナとの兼ね合いがある宝石以外の鉱物は大方が地のマナの影響下にあります。
このため、魔法の中にも鋼鉄などの強靭な鉱物を利用する魔法が混じっています。
一方で、宝石は様々なマナを司るものがあるため、地の力の影響からは外れています。
最強の高度を誇ると言われるダイヤモンドなどが影響下にあったとすれば、ある意味で恐ろしい力を発揮した可能性もありますが。






アルテナ

雷鳴が年中降り注ぎ、世界中を見ても珍しい初歩的な機械文明を持つ城下町が彼女の故郷です。
止む事のない雷鳴を避雷針で受け止め、そのエネルギーを機械の動力とする技術を使い、豊かな暮らしを送っています。
しかし一方でその絶え間ない雷による死者は後を絶たず、この地を去っていく住人も少なく有りません。
逆に機械文明に興味を示す学者はこの地を目指すのですが、彼らは大方が排斥されています。
この地の住人はマナの力の影響を色濃く受けている関係から、他のマナの聖域と同じく天界や魔界の動向にも敏感です。
そのため、下手な技術進歩による制裁を恐れ、研究者を寄せ付けずに現状を維持する道を古くから選び続けているのです。

この地に生まれ育ち、稲妻を自在に操る凄まじいマナとの融和性を持っていたアルテナは、早くから戦士の道を志しました。
故郷では雷鳴の直撃を恐れて使われにくい槍を使い、あろうことかその状態で様々な飛行獣に乗って上空を駆け回るという暴挙もしばしば。
しかし、何度稲妻を浴びても傷付くどころか気力を蓄えるほどの適正を既に示していたため、事なきを得ています。
これはフォルサームが早期から目をつけていたために早々と加護を行っていたためですが、後年になっても彼女はそれを知りません。

恵まれた幼年期を過ごし、魔法戦士として早くも脂が乗ってきはじめた頃に天界からの要請を受けます。
普段の大雑把さからは想像も付かない事になんと約3ヶ月も悩み続け、しかし最後には天使としての生を受け入れました。
長期の熟考の裏には、家族や友人との関係の変化を恐れていた事が大きく、また天界への不安も若干ながら有ります。
この地方の住民の殆どが抱いている天界・魔界への潜在的な恐怖感が、彼女の悩みを募らせていたのでした。
幸い、意味不明なまでに適当かつ温和なフォルサームの態度に徐々にその恐怖心は融解していきます。

人間の頃からの訓練の賜物とその生まれ持った適性は彼女を非常に優れた戦士としています。
極めて強大な力を秘めるが故の暴走の危険は、その非常に強い精神力により押さえ込んでいます。
一方で、その破壊力と速度を最優先した戦法と魔法の特性は、安定とは程遠い大博打ものです。
それだけに仲間との同時行動はほぼ必須となっており、単独で動く場合は危険に晒され続けます。

魔法は攻撃性能に優れる雷系列を得意としますが、攻撃範囲の広い魔法も多いため多くの戦いにおいて活躍できます。
その半面、補助的な魔法で少々力不足を感じさせるため、基本的にはアタッカーを務めています。
気性が少々荒いものの、前線での戦闘におけるその肝の据わり具合は最適ともいえるでしょう。
別に魔法が苦手なわけではないため、前線からの後衛に迫る敵に対する支援砲撃も容易い事です。
また、その頼れる印象から来る非常に強いリーダーシップは軍団戦において非常に威力を発揮します。

自身の飛行能力は高速かつ制御の難しいもので、雷の特徴をそのまま持っているといえます。
しかし、彼女は各種の騎乗獣に関する知識や経験が豊富であり、特に飛行する騎乗獣は容易く乗りこなします。
このため、飛行の凡庸さはかなりのものであると言えるでしょう。

始めはエルティアを気に入れず、かなりの期間嫌っていましたが、とある事件以後は親友として付き合っています。
当初嫌ったのは彼女の目から見れば、他に流されやすいエルティアの性格が気に入れなかったためです。
しかし、ある時の戦闘中に彼女が窮地に陥った際、自分よりも体力的に難があるエルティアが庇い、重症を負います。
そこに強い意思をはっきりと悟り、自身の偏見を恥じ、以後接し方を変えるようになりました。






セイラ

永久凍土に覆われた極寒の大地にして氷の聖域である大雪原に生まれた少女です。
決して溶けぬ氷に覆われた湖や川での細々とした釣りと、雪原に生きる貴重な野生動物の狩り。
そして氷のマナの力を封じ、常温に耐えうる程度に強化した氷を利用する細工物の輸出がこの地の命の糧となります。
他の地方が夏の時期だとしても、この地方だけはただ冷気が覆い尽くすのみです。
この徹底的な寒冷気候を呼ぶのはこの地に満ちる氷のマナですが、住人にとっては有り難くも迷惑な存在です。
とはいえ、今更この地方が温かくなりなどすれば、今の生活が一挙に瓦解する事になるのですが。

この凍土に住む者の中でも類稀な氷のマナへの適正を秘めていた彼女ですが、元々は投げ斧を主に使う戦士です。
とはいえ、まだ歳若く、それもさほど経験も無い時期から実戦に移っていたため、その不利を補うべく魔法的な力による投擲を編み出しています。
そんな暴挙に彼女を導いたのは、単にこの地の厳しい生活のためでもあります。
一方で、器用な手先を活かした氷細工も学び、家族からはその働きぶりに有難味と微かな心配を抱かせていました。

僅か数年の後にその心配は現実のものとなり、ある日彼女は酷い病に倒れ、地元の医者には助からないとまで言われます。
医者の言葉通り、家族の看病や医者の努力は実る事無く、彼女は数日のうちに衰弱していきました。
しかし、以前から目をつけていたフォルサームの密やかな加護によって持ち直し、衰弱したその期間よりも速く回復を遂げました。
が、フォルサームが目をつけていた以上それで済む筈も無く、まだ病み上がりのうちに天界からの要請が行われます。
なかなか彼女は承知しませんでしたが、家族との繋がりを維持させる事を条件に、最終的には天界に昇ることとなります。

こんな家族思いの彼女には弟と妹が居ましたが、この二人は冒険者として生き、そして旅の中でその命を散らしています。
彼女自身は何時までも家に留まるつもりだった事を考えると、ある意味対照的ではあります。

その戦いのスタイルは、数年に渡る狩りの経験を活かした投げ斧によるもので、それに魔法を加えています。
力そのものはさほど強くないのですが、念力にも近い操り方による的確な一打は時に凄まじい威力を叩き出す事も有るのです。
氷の魔法によって動きを制限しつつ繰り出す一撃は、なお精度を増しています。
魔法の性質上、やや防戦的では有りますが、回復能力での不安を考えない限りは単独戦闘もこなせるだけの力を秘めています。

性格は穏やかで、影は薄いですが、その冷静な判断力は素晴らしく、軍師としての才能は高いものです。
冷静すぎる判断は時に冷酷ですが、実際は慈悲深い人物であるため、それほど恨みは買っていません。
エルティアに次ぐ仲間思いとも言えるほどですが、その護り方は無茶が目立つエルティアとは対照的に自己の力を見極めた行動をとります。
それもまた、時には仲間を見殺しにしたようにすら見えますが、その時の彼女を本当によく見ていた者ならばそうは思わないでしょう。

寒冷な地に生まれ育っている関係と、象徴するマナの影響から暑さには過度に弱く、火山地帯などに踏み入ろうものならば長持ちはしません。
逆に氷水の中だろうとも平気なほどに寒さには強く、雪原などでは最高の力を発揮します。
ただ、傍目から見て雪原でのスカート姿は寒さを増幅してくれるのですが・・・。
































サフィア

安定した気候を持ち、夜となっても蛍のような光が舞い踊って辺りを照らし続ける・・・。
非常に幻想的な、そして現実的に見ても暮らしやすい土地。それが光の聖域であり、サフィアの故郷です。
光のマナの扱いを学ぶ事が容易く、多くの光系術士はこの地を学びの地とします。
また、安定的な気候のお陰で様々な産業を営む事ができ、比較的豊かな地です。
外部からの学徒の受け入れによって町の規模も大きく、内情としても外部からの印象としても大都市としての様相を見せます。

サフィア自身はこの地に生まれましたが、その両親は共にこの地に光の知識を求めた術士です。
若いうちから高い魔法制御力を秘め、細身剣や片手剣などの刀剣の扱いにも長けていました。
それ故、まだ12歳という年齢で既に冒険者として成り立つほどの実力を身に付けています。

しかし、その生真面目な性格から周囲からはやや煙たがられていました。
下手な警備兵よりも細かく目を光らせていただけに、無理の無い事ではありましたが。
そしてある時、外部からやって来ていた盗賊の一味を殺してしまい、それはこの町を盗賊の標的としてしまいます。
責任を重く受け、彼女は単身盗賊の本拠に侵入、並み居る盗賊を片っ端から切り伏せてその頭とまで対峙しました。
しかし、戦いの疲労は重く、不運にもそれなりの実力を持っていた頭には返り討ちに遭い、牢に放りこまれる事となります。

そこまでを傍観していたフォルサームでしたが、その実力に目をつけて本拠地を破壊し尽くし、彼女を救出します。
そして、天使として世界を見守る事を提案したのです。
既に現状に嫌気が差し始めていた彼女は二つ返事に近いほどあっさりと受け入れ、光の天使となりました。

そうして天使となったものの、実質的な上官であるフォルサームの性格には散々呆れていました。
とはいえ、時が経つにつれてその裏にある感情を悟り、現在では態度も随分軟化しています。
多少影響されたのか、生真面目さもやや緩んできているのも一つの要因ではありますが。

光の魔法で味方を支援し、剣を用いて自身も戦線に加わる、支援型魔法剣士です。
スタイルとしてはレティーナに似ていますが、魔法の性質が異なるために若干役割にも差が出ています。
威力や範囲ではレティーナに劣りますが、速度と正確さではサフィアが勝る、という違いもあります。
なお、支援型といっても傷の回復魔法は持たないため、あくまでも補助的な魔法で支援を勤めます。

光の魔法を得意とするため、自然的でないものには凄まじい力を発揮します。
主に魔法によって無理矢理動かされている造られた死霊や魔法生物が該当しますが、それらの相手であれば殲滅速度は凄まじいものです。
しかし、自意識によって現世へ返り咲いた死霊などは対象外であるため、なかなかその判断は付きにくいのも現実です。
また、強力なものも含めて肉体、精神の異常を治癒する力に優れるため、そういった小細工を多用する敵にも相性は良いと言えます。

軽い武器の中でも剣を得意としていますが、あまり頑丈ではありません。
体力的不利を少しでも補おうと盾を持つ事も有りますが、高い機動力を若干とは言え殺ぐという欠点もあります。
また、光の根源でもある火には特に逆らえず、爆炎などをまともに浴びれば多大な被害を被ります。

彼女が統率する光の天使らは、天使族でも最も秩序的な派閥と言えます。
特に天界に対して不利益な行為を裁く任務は、殆ど彼女らが担当しています。
無慈悲なる執行者、法の番人、秩序の化身。光の代行者の行動は、時に冷たく、そして残酷ですらあるもの。
彼女らも、決して皆の信奉を受け得る存在ではありません。疎まれることとて、有り得ることです。
貴方はどうでしょうか?光と闇と、どちらを進んで受け入れますか?






フィオナ

光を遮るように暗雲が常に上空を覆う、昼ですら暗いというさも地下のような地、それが闇の聖域です。
天界に加え、魔界との繋がりも強固なこの地は、魔物たちが人間界で唯一安らげる地域でも有ります。
これは魔界の統制下にある魔物との間でお互い争わない、という提携が魔界と交わされているためです。
この提携のために一時期は”闇=悪”の図式を立てられ、魔物ではなく同じ人間によって激しい攻撃を受けました。
騒ぎは最終的に天界の大制裁で潰され、以後は比較的安定した状態にありますが、決して他の地域との交流は深くありません。
とはいえ、その様相からか魔物の力を借りるような者もしばしばこの地に拠点を置きます。
そして見方によっては、天界と魔界の関係を最も知る地であると言えます。

かつてこの地に住んでいた闇系魔法の最高の使い手であった男を父に持つフィオナは、その素質を強く受け継いでいます。
母はこの地の出身でしたが、やはり強い闇への適正を秘めていたため、二人の間の娘が強い闇の適正を持つのはさほど不思議ではありません。
非常に大人しく、多少影のある性格ではありましたが、決して周囲との関係は悪く有りませんでした。
その穏和さは父の名声と共に付随するように知られていましたが、一方で彼女自身の秘めた強大な力も徐々に知られ始めます。
そしてその噂は、彼女を狙う者をも作り出してしまい、そして事は起こりました。
確かに強大な魔法力を持っていた彼女でしたが、如何せん若く、実戦経験も薄い彼女は襲撃に耐えうるほどの力はまだ備えていませんでした。
彼女を襲った、若き日から闇の力を欲した魔術師は、当初は彼女の父を狙っていました。
しかし、明らかにまだ才能の開花していないその娘も高い能力を持つ事を知ったため、矛先を変えたのです。

突然の誘拐に対し、その父は当然ながら激怒します。
彼は即座に自ら探索に乗り出しますが、何の収穫も無いままに一月を過ごす事になります。
その姿を哀れんだ魔界の主の一人であるヴェルゼブブが協力した事で、彼はやっと平原にて魔術師を見つけ出します。
が、それは既に遅過ぎ、魔術師はフィオナから知識を奪い取って、既に何処かに捨てていました。
フィオナの父は怒りを露に戦い、どうにか魔術師を瀕死に追い込みましたが、そこで迷います。
このままこの魔術師を始末してしまえば、肝心のフィオナの居所が分からない可能性が有った為です。
その迷いを嘲る様に、魔術師は最後の力で近くにあった大岩を除けて絶命します。
大岩の下には、既に事切れた少女の亡骸が打ち捨てられていたのでした。

この悲劇を天界が見逃すはずも無く、創造主が魔界に密かに命じ、彼女の精神体を冥界から救い出しました。
そしてそのまま天界に運ばれた精神体は天使としての肉体を得、彼女は闇の天使となります。
なお、この事件の終結から数日後、彼女の父はショックから病を患い、また僅か数日のうちに冥界へと消えて行きました。
母親もまた酷くショックを受けてか、夫の死後数日のうちに急死しています。

この通り非常に暗い過去を背負う彼女ですが、幸いと言うべきか、死のショックがその記憶を不明瞭にしています。
精神的に決して弱くは無い事もあり、この事件を特に引き摺ってはいません。
奇妙なほどの落ち着きは生まれつきであり、決して過去が影を落としているわけでは無いのです。

戦闘のスタイルは純粋な魔術師型。杖による護身術は心得ていますが、メインにするには至りません。
闇の魔法は見た目から既に恐ろしいものが多く、非常に威力も優れています。
残念ながら防衛的な意味では微妙ですが、破壊力の凄まじさから正に主砲にもなり得ます。

熾天使では珍しくローブを身に付けているために機動力に欠けますが、術士としては高い防御力を持っています。
その漆黒のローブを纏い、漆黒の翼で空を翔る姿は、一時期堕天使とまで人間には呼ばれていました。
現在はその偏見がほぼ拭われた為、随分と人間の信仰者も多くなっていると言えます。

考え深く、そして温厚な性格は特に部下に人気で、闇の天使らの結束はかなり固いものです。
同格に当たる他の13大熾天使との関係も悪くなく、信頼もかなり厚いです。
魔界を訪れる事も多く、悪魔族の主要な将との親交はフォルサームに次いで深いと言えます。
事実を知らない人間は悪魔族と闇の天使は仲が悪い、などと言っているのですが。
一方で、人間などとの関係は未だにやや薄く、自らの領地の民を除けば殆ど関わりが有りません。

闇の天使は慈悲深き庇護者です。光に追われるものを包み隠す、優しき力。
弱者を守る力ではありますが、逆を言えば強者には疎ましいもの。法の番人のような大勢力に追われる罪人を守る、とも言えるわけですから。
光と相対せしもの、されども、多くの面で逆の立場に立つことで、共存するものでもある闇。
貴方は闇にどのような眼を向けますか?
































アーシャ

凡庸、という言葉が最大の特徴。そう語られるマナである魔の力を強く集わせている地方。
これといった良さも無く、しかし一方では悪い点もこれといって存在しない、というように言われることもしばしば。
安定的さこそこの地の唯一の自慢であり、そして泣き所と言えるでしょう。

どんな産業も無難に行えるこの土地では、当然のように多彩な産業が集まっています。
しかし、あらゆる点において半端な感も拭えず、高級品となると交易頼みとなっています。
とはいえ、魔の力を利用した品々は当然最高級品が生産されており、その種類も豊富です。

この地には、安定した環境を求める研究者も多く、滅多な事では崩されない平穏は確かにその欲求に適うものです。
巨大かつ堅牢な城を保有しつつも、あまりにもウリの乏しいこの地方では、戦火もそう過熱しません。

研究家を父に持つアーシャは、正しく好奇心の塊です。
その好奇心は主に魔法に向けられ、自己の得意とする魔の力に関しては凄まじい知識を幼くして蓄えました。
このため、10歳という若さで既に多くの魔術の師が舌を巻くほどの存在となっています。

この優れた才覚を、当時側近探しに奔走していたフォルサームが見逃す筈も無く、14歳の時に要請を受けます。
一度は拒否しましたが、1年後に承諾し、魔の天使となります。
拒否の理由は、人として最後に済ませておきたかった探求の完了のためで、見事にそれを完成させています。
それは魔法知識の伝達に利用するための原則で、長きに渡って魔法書などの基本形となりました。
また、魔法を封じておき、任意の時に発動させる魔法球の作者も彼女です。

この通りの研究好きですが、魔法そのものの腕前も素晴らしく、後方からの援護に長けています。
多彩な用途を持つ魔の魔法の使い手であるため、非常に多芸な支援を行えます。
その多様さの代償としては、多少の力不足があります。熾烈を極めるような戦闘では、個々の威力の低さが仇となる場合がしばしばあるのです。
しかし、万能さは確かな力であり、弱点の少なさこそが長所とも言えます。

一方、杖はあくまでも魔法の媒体にしか使っておらず、彼女に肉弾戦を強いるのは酷過ぎます。
腕力自体は確かに並みの人間よりは強いとはいえ、そういった白兵戦における戦い方を殆ど知らないためです。
このために単独での戦闘は苦手としており、強固な前衛が在ってこそ力を発揮する性質と言えます。
魔法での対決であれば単独でも引けは取りませんが、ここでも威力不足が足を引っ張ります。

天使となってもその好奇心は尽きず、未だに多くの研究を行っています。
喪失魔法の再興に貢献したのも彼女であり、究極魔法や喪失魔法の小規模版を作り上げたのもまた彼女です。
とにかく魔法に関する品々の多くは彼女の作が大多数を占め、その貢献は計り知れません。
純粋な魔法に関わるものだけでなく、攻城兵器に利用する魔力球なども作っています。

そもそも魔の力そのものがある意味では分離して尚形を留める源の力の核とも言えます。
格段に威力は落ちていても、他の魔法との親和性では引けを取りません。






































エリシア

幻想。それは理想の体現者であり、時には恐怖の具現ともなります。
無体な言い方をすれば想像力を持つ全てが生み出しうるものが現実に姿を得た存在でしかないそれは、決まった形など持ちません。
そんなものを司る聖地もまた途轍もなく流動的な土地であり、町の姿も幾度変化を遂げています。
時には田舎の小村にすら劣る棄てられた地に、時には全ての集落の頂点に立つほどの隆盛を誇る大都市に。
当然住む人々も訪れる人々も固定され難く、それでも根強く住み続ける人々はその変容を愛する人々が殆どです。

彼女の一族も長年に渡ってこの地に住む幻術士の家系であり、彼女も元々は術士を志していました。
それなりには名の知れた術士だった両親の教えもあり、幼いうちから能力の一端を見せています。
しかし何時からか踊りに興味を持ち、魔法を学びつつも練習を重ね、やがてその才覚を開花させます。
また友人の剣士から細身剣の扱いも学び、ただ興味だけを追い求めているうちに彼女は優れた戦士となっていました。
ついには我流の戦闘技術を確立させ、最終的には細身剣の二刀流に加え魔法をも扱うという極めて攻撃的な戦法を身につけました。

その一方、踊り子としても若くして名が知れた存在となり、変化を止めることのないこの町ですら安定して人気を誇るほどとなります。
そこまでの高名な存在を天界が見落とす筈も無く、天使化の勧誘を受け、承諾します。
高名過ぎるが故に幼き日の友とも余所余所しくなり、居場所を失くしかけていた折での勧誘であり、自分の居場所を求めてという面もありました。
元の生まれは違えど同じ天使として接し合える友人たちを得られたことで、その願いは叶えられることになります。

上記のとおり、極めて攻撃的な戦法を基本とする彼女にとっては防御という概念は極めて薄いものです。
機敏な動きを要する以上重圧な装備は枷となり、盾を用いない、それも細身剣の二刀流は能動的な防御すら許しません。
また幻の魔法による精神的攻撃と合わせ、自身の魅力をも利用するために露骨に挑発的な衣装を着ているため、尚更防御面に不安があります。
当然ながら回避偏重の戦いになるわけですが、言うまでも無く避けられない攻撃に弱いため、幻術による撹乱は必須です。
尤も、敵の撹乱を容易くする幻の魔法を専門的に扱うこその合理的な考えとも言えます。
どうしても前線に出られなければ魔術師としての後方支援に徹することも可能で、それだけでも大きな戦力になります。
時には自らの痛覚を欺き、怪我を負いながらも力を振り絞らせるというような暴挙にも出ますが、周囲が止めるため殆ど行いません。
それであってすら致命傷を負った回数は非常に多く、完全に肉体が崩壊するほどの状態も数度経験しています。

やや陰湿とも言えるほどの戦法を作り上げたものの、本人は快活な性格であり、生来の魅力も助けて対人関係も円滑です。
マリーシアと並ぶ遊撃要因として彼女とは特に仲が良く、レティーナやエルティアともよく遊んでいます。
お世辞にも真面目ではなく、どこか適当さを漂わせてはいますが、基本的には人当たりの良い少女と言えるでしょう。

司る属性は幻ながら、あまり理想や幻想に固執しない性格です。むしろそれを他者に抱かせることに長けます。
友人との関係という居場所を早くに失いかけた彼女が選んだのは、幾らかの現実主義の受容だったためです。
いつかは救いがあるというような夢を見ず、自ら替わるものを見出そうという考えの。
























レルファ

命のマナは文字通り生命を育む力、そして世界に生きる者たちの力強さそのものを象徴するものです。
その力が集中する聖地は、言うまでも無く住み易い、穏やかな土地です。
特産品がそれほどあるわけでもありませんが、農耕、狩猟、採集、漁業など、何を行うにしても安定して成果を上げられます。
気候も比較的安定的で、世界的なマナの均衡の崩壊などが無ければ殆ど天災にも見舞われません。
引越しが出来るだけの財力がある者の中には、老後を穏やかに過ごそうとこの地を目指す者も少なくありません。
一方で、この地に秘められた力を戦争に活かそうとする者も決して少なくはありません。生命の聖地に災厄を齎すのは、他ならぬ生命なのです。

魔術による医療を行う治療師や、薬草を用いる薬草師など、様々な形態はあれども、癒し手たちにとってここは優れた修養の地です。
レルファの父の家系はこの地に住む治療師であり、穏やかな気性と確かな腕で高名な一族でした。
彼女も例に漏れぬ才能がありましたが、母が薬草師の家系であったことから、術と薬草、両者に関する知識を学ぶ機会に恵まれます。
特に新たなものを生むことは無かったものの、献身的な気質からそれ以外にもあらゆる治療術を学び続けました。

命の魔法を扱う術者のうち、特に冒険や戦争を生業とした者は、実のところ最も短命な傾向にあります。
戦では狙われる立場であり、またその仕事は戦いが有る限り無くなることはまずありません。
多忙から病を患う者、戦の中で刃に切り裂かれる者、様々な要因はありますが、若いままにその生に終止符を打つ場合が多かったのです。
それだけにその技術を受け継ぐ子孫も乏しく、術者の輩出の殆どは命の聖地の大都市に住む癒し手たちの家系から、という状況が続いています。
そうなれば天使化の適任者を探すにおいても当然対象は絞られ、そして選ばれたのはレルファでした。
将来を期待されていたものの、家族にとっても本人にとってもその栄誉は受け入れるに値するものであり、彼女は熾天使としての生を受け入れました。

元々は戦いには無縁の筈ながら、上記の通りたびたび戦にに巻き込まれる土地に生まれ育った関係上、幾らかの護身術は心得ています。
術媒体に用いる杖の他、細身剣も扱います。筋力こそ乏しくとも、打撃や刺突であれば十分な殺傷力を持つことが出来るためです。
エルティアと同じく温和かつ献身的な性格ですが、死に関しては土地柄、そして家の職業柄から目にする機会も多く、あまり殺生への抵抗感を持ちません。
自身の身の危険を感じれば容赦無く。生まれ付いた地で自然と学んだそれは、天使として戦いの場に身を起き始めてからも役立っています。
治療や補給を担当する者が先に無力化される事態こそ、戦いにおいて最も避けるべき事項の一つなのです。

象徴通り、熾天使では最高の治療師です。ただし専門は傷の回復であり、その他の異常を癒す手段は限られます。
その分、専門分野に関しては圧倒的であり、単独でも短時間であれば10〜20人程度の治療を一手に引き受けることも可能です。
魔法は攻撃性に乏しいため、護身用に細身剣をよく用いますが、普段は杖を手にしています。
普段は杖での威嚇や防御でも十分であるべき(それでは辛い状況にならないようにすべき立場)ですので、あまり剣は使いません。
使うとすればよほどの手隙の際か、治療の暇すらない状況に追い込まれた時程度です。
そもそも杖が両手用のものである以上、他の武器との併用が困難なのは致し方ないことであり、補助的なものに甘んじるのも当然のことです。

柔和な物腰ながら芯は強く、母性の強い性格です。
苦境においてすら絶望に沈むことの無い精神力は、癒しを生業とする者にとって大切なものであり、彼女はそれを保持しています。
上記の通り殺生への抵抗感は薄いものですが、これは治療師には珍しいことでもあり、それでありながら適性を高める要素ともなります。
そしてまだ若くはあれども、終焉を幾度も目にしたことから、現実主義とも言えるような視点を持っています。
全てを救えはしないなら、その優しさは友たる者たちへと向けようと。牙を剥く者への制裁を躊躇いはすまいという、暖かく冷たい視点を。




















エリス

死は命の対なるもの、終焉を齎すもの。その存在そのものが命の価値を高める役割を担い、また世界に絶え間無き変革を促すものです。
生者にとって有難いものではありませんが、その存在もまた、他の全ての物と同じく価値あるものと言えます。
その聖地はネクロードの領地に程近い荒野と沼地に存在します。
到底住み良い土地とは言えず、実際のところ、死の魔法を極めんとする術士が住人の殆どです。
それでも戦に巻き込まれ難い静かな土地柄を好んで住む者も居り、ただの辺境とは言い切れません。

そのような少数派の一家庭に生まれたエリスは、家族と親交のあった術士から様々な知識を与えられ、若いうちからその才覚を示します。
また時折訪れる死霊たちにも恐れなく接し、概ね穏やかに成長します。
死霊の長の一人であるネクロードとはこの頃から数度会っており、その側近の一人であるデスの持つ大鎌に興味を示してもいました。

旨みのない土地柄、厄介ごとも無いままに育ち、格別に際立った存在では無かった彼女は、ネクロードの薦めにより天界の要請を受けることとなります。
人口の少ない地であるため本来の基準では適格者が見当たらず、僅かながら適正年齢を越していつつも才覚に恵まれた彼女が選ばれた、という理由もあります。
国家元首にも匹敵する身分を持ちながらも平民に過ぎない自分に優しく接してくれたネクロードへの尊敬の念から、その要請はすんなりと許諾されることになりました。

そうして可も無く不可も無く、といった人間の生は終えたものの、人間としては最年長の13大熾天使であり、得物も珍しい大鎌というやけに目立つ存在です。
また気性自体は穏やかながら、その立場上人間からは恐れられてもいます。
故郷である聖地を除けば人間との接触は少なく、名前や特徴だけが伝聞で知られる存在ともなってしまっています。
尤も、彼女自身は気にも留めていないため、今後も変化は無いだろうと本人を含め皆が思っているのみです。

良いお姉さんとして他の熾天使に慕われており、他の天使にも彼女を慕う者は少なくありません。
地元では数少ない交易品であった細工物のうちの一つである置物作りも好み、そういった贈り物もたまにしています。
その一方、戦闘においては極めて攻撃的な存在として敵を震え上がらせます。
鎌による一撃も強力な魔法も、まともに受ければ立っていることは困難とまで言われており、事実もそれに劣ることはありません。
防御面では不安が多く、味方の支援なしでは継戦能力に不安があるため、短期決戦を信条とせざるを得ない面もあります。

天使となってからもネクロードとの関係は深く、通商も行われています。
彼の部下たちからの人気(意味は様々)も高く、陣営自体として防衛協定にも近いほどの強固な繋がりを持ち続けています。
良い人として以上の感情は無いものの、穏やかながらも確かな親交は綻びを見せません。












リイル

星々の煌きは人間の営みが生んだ輝きの中ですら夜空を飾り、今も我々に感銘を与える風景を生むことすらあります。
そして太陽は決して欠かせぬ存在であり、そして月もまた美麗な姿を以って夜闇を照らしてくれています。
科学と機械の道を歩んだこの世の人間ですらも未だそれに干渉するには至らぬ数少ないものとも言えるでしょう。
その星が司るのは友愛。星座という概念が存在し得ることこそがその証とも言えます。

しかしその聖地の歴史はむしろ戦争が大半を占めています。
偉大なるその力を求める者たちが、常にその聖地を求め続けたが故に。

リイルは戦災孤児であり、親の顔を覚えてすらいません。
母だけでも生きていたエルティアと違い、両親を共に失い、村の人々に助けられながら生きていました。
しかし貧しくも穏やかだった暮らしは、侵略者の軍が村を略奪に訪れたことで破られます。
躊躇いもなく人々を斬る侵略者に向けて怒りに任せて放たれた魔法は、侵略者に凄惨なまでの結果を齎したのです。
住む場所こそ護れはしたもののその噂は瞬く間に広まってしまい、彼女は狙われる身になってしまいました。

才能が有ったとはいえまだ幼かった彼女の身には魔法の反動は重く、ろくに動けない状態が暫く続きます。
その間彼女を護ろうと村の人々は努力しましたが、その過程で多くの犠牲を出すことともなります。
親しい人々を、自らを狙う者によって奪われていく。それは始めは怒りを、やがて悲しみを彼女に抱かせました。
やがて別れの痛みに耐えかねた彼女は心を閉ざします。それでも彼女を取り巻く環境は変わりはせず、その絶望は深まっていきます。

事が起きた時期には既にフォルサームは彼女の存在を知っていました。
しかし彼は、彼女の「もうこれ以上力など欲しくない」という感情を優先し、敢えて静観を決め込みます。
結果的にそれは失策で、その間に彼女の人間への絶望は覚醒への拒否感すら凌ぐほどに膨れ上がりました。
最終的に、これ以上の放置は出来ぬと見なしたフォルサームにより彼女は天界へと導かれ、天使となります。

一度芽生えた不信は、未だ拭い去れぬほどのものになって彼女に根付いたままです。天使となって数百年の時を重ねてすら。
その彼女がすぐに他の熾天使と打ち解けることなど出来る筈もありませんでした。
しかし、招致に同行しており、また似た境遇を持つエルティアとの関わりを中心として、彼女も少しずつ心を開くようになっていきます。
元は明るかっただけに、一度打ち解け始めた後こそそれほどの障害はありませんでしたが、それでも拭い切れない不信は枷になり続けています。

昼の象徴たる太陽、夜の象徴たる月。その二つを含む力たる星の力は、このこと自体も調和を司ることの象徴です。
噛み砕いて言えば、秩序の象徴たる光と混沌の象徴たる闇の両者を間接的に内包していることになります。
その影響の強い彼女の気質も、法に関しては中立的です。虐殺に怒ったのも対象が自らの知己だった故のことです。
経験故に殺戮に良い感情は抱きませんが、そこにある意味合いには理解を示してもいます。

襲われ続けた時期に短剣などで自衛するようになっていたため、天使化後も護身には短剣を扱います。
魔法の媒体には短杖を扱い、エルティアの影響から輪具もたまに扱いますが、一般的な長い杖は嫌います。
支援を主体としますが、扱う魔法が攻撃的にも防御的にも絶大な威力を発揮するため、事実上万能です。
ただし、戦いに対し未だに恐怖と嫌悪が拭いきれておらず、実力を発揮することは稀となります。








ロスサート

彼は他の熾天使と比べれば、その生年は数百年後。本来ならば熾天使となることも無かったでしょう。
確かに優秀な才能を持ち、それを活かして傭兵として生計を立てていましたが、肝心の機会は無い筈でした。
しかし丁度その年代、フォルサームが元は自分が兼任していた源の熾天使の座を与える人材を探していました。
それだけならば彼が選ばれる理由にはなりませんが、彼は禁忌と知らぬまま天使の一人と愛し合い、それが天界にも感知されたのです。

その天使と共に天界に呼び出され、本来ならば処刑される状況に追い込まれた彼は、しかしその身に持つ才覚から命拾いをします。
彼の実力に目をつけ、フォルサームは彼を後継者としようと考えたのです。

元々、熾天使に引き上げる人間の年齢基準は14から18程度、未成熟ながら分別は備わってきている時期を目安としています。
当然ながら彼は基準から大きく外れていましたが、長年の傭兵生活からそこまで人間社会に浸かっていなかったことも幸運でした。
加えて戦慣れもしており、人格も悪くなく、と恵まれていた彼は、開放されその本来の生涯を終えた後、恋人と同じ種族へと昇華します。
が、流石にそのような老体の姿のままともいかず、他の熾天使より少し上程度の姿までは若返ったような姿を持ちます。
事件当時はまだ20代後半、本来ならば即時に天使化させるべき状況でしたが、フォルサームの温情によりこのような処置が取られた経緯があります。

幼き日から孤児であり、頼る当ても乏しかった彼は自身の力でやっていくより仕方ありませんでした。
幸い戦闘技術に長けていた彼は傭兵として生きていくことに成功します。
若りし時から戦場に身を置き続けたことからその戦闘経験は人間としては圧倒的に豊富です。
また、相手の種族など気に留めず、対価さえ払われればそれで構わぬという態度から異種族からの感情も悪くありません。
特に同じく傭兵として肩を並べる事も少なくないオークやオーガには彼を尊敬する者も少なくなく、天使となった後も信奉者が見られます。

天使の長が見込むだけあり、実力は高く、特に刀剣類の扱いでは右に出るものは居ません。
槍、弓、棍棒、斧辺りにも熟練しており、多様さそのものを売りに出来るほどです。
魔法の実力も元から高く、天使化によってそれが更に高まり、加えて専門の魔法の凶悪さが重なり、並みの魔術師では敵いません。
単身でも敵の一群を瞬殺出来るほどの実力。本来ならば危険視され得るほどのものです。
フォルサームにとって、これは1つの賭けです。裏切られなければ、これほど自らの後任に適する者は居なかったのですから。

戦場に派遣され、その流れに干渉する役割を担うヴァーチャーたちも、彼にとっては見慣れたものでした。
親近感とは言えずとも、「かけ離れた存在」ではなかったことは確かです。
フィリアが彼に惹かれ、私的な関係を持つ事を望んで近付いた時も拒否反応はなく、同族であるかのように接しています。

多少言動は荒いものの、本質的には紳士的で、人間の頃からもてないこともありませんでした。
尤も、彼のほうが関心を持てるような相手は現れなかったため、フィリアとの交友以外はろくに発展していません。
他の天使からも慕われていますが、人間時代の生業故に染み付いている雰囲気は、エルティアやリイルにとって若干の嫌悪感を抱かせるものではあります。
とはいえ、彼自身は任務に忠実ながら個人的な信念として無駄な殺戮は行いません。
別に殺しが嫌いなわけではなく、ただでさえ敵を作りやすい稼業なのだからせめて無駄な恨みは買うまいという観念からの思考です。









フィリア

風の天使は統括者の気風からか、やはり気侭な者が大半です。
フィリアも例に漏れず穏やかながら気侭な性格です。
しかし、生粋の天使族ながらも手違いから他よりも長く人間社会に混じっており、結果的に人間への理解も深いものを持ちます。
彼女が人間であるロスサートに惹かれてしまったのも、それが原因に入らないとは言えないでしょう。

流石に堂々と法を犯す気にはなれず、密かに交友を重ねたものの、それに天界が気付かぬ筈もありません。
統括者であるマリーシアに捕まり、天界に召還された彼女の命運は本来ならば絶望的なものだったでしょう。
しかしロスサートがたまたま幸運に恵まれていたことから、彼女もまた助命されることになります。

現在ロスサートは熾天使となり、事実上上官になったものの、彼自身の希望から昔と変わらぬ付き合いを続けています。
人と天使ではなく、天使同士となった今、子を生すことも禁じられてはいないものの、ひとまずどちらもその気はありません。
お互い多忙なため、そんなことよりもどうにか二人の時間を確保することのほうに腐心しているためです。
この辺り、忙しいなら忙しいで仕方ないと割り切っている感もあるフォルサームらとは対照的でもあります。

彼女自身はそこまで強大ではないものの、ヴァーチャーらしく支援には長けます。
ヴァーチャーは回復や支援を行えないことには仕事にならないため、多くは水や命、光などの天使が選ばれ、風や地などからも少数選出されています。
しかしその選定基準に自身の戦闘能力はそこまで重視されておらず、彼女らの戦闘能力は概ね低度に留まっています。
実際のところ、相手が力有る存在であれば負けるのも困難ではなく、現実に数度そういった事件は起きています。
それでありながら、彼女らの支援を受けた戦士を打ち倒すのは困難、或いは不可能とまで言われる優秀な存在となっているのです。

高位の天使と関係の深い者として、発言力は下位の天使としては明らかに高いと言えるものを保持します。
自身の位も高いためにそこまで決定的な差異はないエルティアとの最大の違いはここにあるとも言えます。
幸いか、彼女はそういったことに興味は無く、今まで口出しをしたこともありません。






ネクロード

彼は生前、多くの戦場を渡り歩いた偉大なる魔法戦士でした。
名こそ知られてはいたものの、歴史には全く関わらなかった彼は、そのままであれば何時か忘れられるであろう筈でした。
しかし、彼はやがて死霊への転生を望み、そしてそれを成し遂げ、今も生き続けています。
偉大なる死霊の王、ノーライフキングとして。
勿論、転生してすぐに今の立場に付いたわけではありません。
暫くは放浪し、そのうちに力を見込んだアンデッドたちが集い始め、やがて打ち捨てられていた今の居城を彼らと共に獲得します。
そして、彼は他のアンデッドに王の立場を任され、そしてそれは今も続いています。
何時しか彼の城の周辺地域には、意思有るアンデッドたちが村落を作り、発展していきました。
それが発展していくにつれ、周囲の城主たちにも一大勢力と見なされ始め、彼は周囲の領主からも同等の者と認められる立場となりました。

最強レベルの武芸と魔術を操る、正に「死神」です。
アンデッド全体での最強の存在であり、他種族を含めても相当な高位に位置します。
鎌、斧、槍を1つにした特製の武器を愛用し、また格闘にも熟練しています。
また、他の武器系統にも概ね心得があります。数少ない不得手は飛び道具全般のみです。
ただし、魔法も源を含め全ての属性に熟練しており、隙は殆どありません。

戦いを愛しますが、無闇な殺戮は行いません。しかし敵対者や障害を斬り捨てることに躊躇いは持ちません。
創造主の乱心前頃には、既に自身でも満足出来るだけの高みに至り、強さへの追求も行わなくなっています。
感情的にはあまりならず、しかし茶目っ気もある。冷静ながら陽気さを併せ持ちます。
計略にも長けますが、その知恵は主に敵の計略の看破に用いられます。

アンデッドは基本的に日々の糧を必要としません。
そのため、この地の産業は一部の者が趣味でやっている製造業など程度です。
ただし、広大な毒沼に点在する安定した地面に集落が点在しているという地理の関係上、素材の自家調達はほぼ不可能です。
それでもいくら趣味程度とはいえ疲れもせずに作業できる関係上、生産量の限度は資源さえ許せば最多とも言えます。
リッチのような高位の存在も幾らかは住んでいるため、彼らの気紛れで高価な品が作られることもあります。
それを知る、またアンデッドを嫌わない商人は彼らと交易をしています。素材を提供する代わり、出来上がった品を他の地方で売り捌くわけです。
ネクロード自身はさほど政治に興味もなく、また問題が起きない限り領民に干渉もしないため、彼自身が関わることは殆どありませんが。

一方で、軍事面では圧倒的な規模を誇っています。
村落一つを見ても、軍がある程度は滞在しているほどです。例え人間なら護りを切り捨てそうな村でも。
地形上、騎乗生物がほぼ使えないため、移動は殆ど魔法で行われています。
さもなくば、彼らアンデッドでも殆ど通らない毒の沼地を通らざるを得ません。
これだけでも敵を防ぐ非常に強力な堀となっていますし、またいざとなれば沼地で戦うだけでも有利になり得ます。
総じて機動力に欠けるのが欠点ですが、耐久力重視や攻撃力重視などの役割は人間の軍隊並みに分担されています。

言うまでも無くネクロードというのは偽名で、ネクロマンサーのネクロとロードを掛けたものです。
本名は既に本人すら忘れており、偽名が定着していることから誰も気にしない状態です。












天使族と悪魔族、天界と魔界

天使も悪魔も、ほぼ同じ時にほぼ同じ役目を与えられた存在です。
創造された時期にはズレがありますが、その主は共に創造主であるため、実質的に両者は完全な協力関係にあります。
人間の目から見た場合、両者は相反して見えるが故にこのニ種族を善と悪の象徴とすることもあります。
しかし、両者は別々の手段を以って世界を維持し続けるために存在しており、決して人間の想像通りの存在では有りません。
あくまでも、天使族が生物に協力的に影響し、悪魔族が生物に好戦的に影響する違いだけなのです。
これは、両者が別々のイメージを抱かれる事による手段の多様化が狙いとしてあります。

天使族の発祥は、実は元々人間の立場にあたる存在として作られたことが始まりです。
しかし、あまりにも強いその力を野放しにするのは危険過ぎたため、天使族は創造主の手元に置かれました。
身体的な構造が似ている天使族と人間ですが、これは天使の各種能力を引き下げた存在が人間であるためです。
一方の悪魔族は、別の視点から世界を操る役目を持って生み出されたため、人間とはあまり関連は有りません。

天界は輝きに満ちる極光の力に満ち溢れ、魔界は逆に輝きの無い深淵の力を秘めます。
イメージは共に灰色、しかし輝きの有無により銀色と灰色に分離しています。
灰色、つまり何にも属し切らぬという意味を持ち、秩序にも混沌にも身を委ねつつも中立にも値します。
徹底的なほどのその信念から、彼らの性向はごく一部の知識人からは「無心」と呼ばれます。
心を持たないから、何度も裏切りを重ねても平気なのだ、と。
事実を知らぬ多くの生物にとっては、その程度の見解しか出せないともいえます。

現在、創造主が消滅して以来の彼らはほぼ完全に独自行動をしていますが、要所要所では未だに連携を取っています。
その上辺のため、人間などからのイメージは、なおも事実から歪みつつあるといえます。





魔法

この世界における魔法というのは、意志力によってマナを操ることによる擬似現象の発現です。
ただし、創造主が理として規定したものしか決して発動はしません。
規定自体はやや甘く、抽象的なため、規模に関しては術者の裁量と実力に依存し易い傾向にあります。
行程を簡潔に纏めれば、マナの集積、現象の想起(マナへの指令)、マナの開放、という手順を踏みます。
マナ集積と現象想起は平行して行われ、現象想起のための補助として詠唱が使われます。
当然、詠唱は必須ではありません。暗唱でも構いませんし、何も無くとも強く想起出来るならそれでも可能です。

魔法媒体はマナの集積と開放を主に補助します。窓口としてだけでなく、その媒体自体に蓄積出来るようになったものもあります。
肉体に蓄積する場合、蓄積したマナを逃がさないための労力が大きいため、媒体に蓄積可能な場合は言うなれば蓋付きの容器のように扱えるようになっています。
上記の通り詠唱は補助でしかありませんので、巻物や書物は補助的な役割しか果たせません。本当に必要なのは当人の意志力です。
儀式や瞑想も同じく補助的な存在です。魔法そのものは身一つと知識さえあれば使えるわけです。

儀式を用いれば、理論上は町一つを飲み込むほどの規模の魔法を発動することも可能です。
しかし、100人規模で丸一日の儀式をしても、発動と同時に(反動だけで!)昏倒したり、最悪の場合中途で限界を迎える者が出ます。
万一そうなれば、いざ発動という時に噛み合わずに暴発が起きることになります。
そんな気の利いた自爆など好き好んでやりたがる者が居るわけがありません。まず使われないものとなっています。


武芸に散見される「気」による技も、魔法の類型です。こちらはマナが絡まず、意志力そのものの具現です。
マナと違い集積の必要性がありませんので発動は早いほうですが、起こせる現象は知れています。
理論上は魔法と同じ規模まで可能ですが、これも創造主が理として制限していますし、一個人の意志力だけでは限度が見えています。
発動が早い点も仇となり、十分な想起の時間が取れず、複雑な現象の発現も不得手とします。
侮れはしないでしょうが、大体の戦士はこれらに重きを置くことは避けます。
魔法専門である魔術師と違い、武具も扱わねばならず手慣れでなくては精神的に余裕が無いのですから、無用な負荷は避けるべきなのです。

魔法戦士も居ますが、両方の才能に恵まれ、両方を学ぶ機会に恵まれる者は稀です。
また術士の護身用に作られた実戦的武器となる魔法媒体もあるとは言え、少数派のため武装も費用が嵩みがちです(特注になる…)。
極まれば万能な戦士となれるでしょうが、大体は貧困で餓死するか危険視されて戦死するため、大成した者は尚更英雄扱いされます。
武器と魔法の両立でなく、補助的に魔法を扱う者ならば珍しくも無いのですが。
暗殺者にどうして撹乱用の魔法を愛さない理由があることでしょう?





信仰対象としての天使や悪魔の立場

手の届かぬ存在である彼らは、種族として信仰されるだけでなく、特にセラフィムやデーモンロードが個別に信仰されています。
秩序を愛する者には天使が、混沌を愛する者には悪魔が主に信仰されています。
意志力が魔法の力の源泉となり、また闘志そのものすらも力と成す術のあるこの世界において、信仰心もまた信仰対象の糧と成り得ます。
とはいえ、そのような微力なものへの酬いを確実に行うほど彼らは暇ではありません。
寵愛を賜るほどの信者にとって以外は、心の拠り所以上の意味合いは殆どありません。

高位の存在の気を引くほどの存在は、神器とも呼ばれるアーティファクト類なども必要に応じて下賜されます。
そのような事態は殆ど起きませんが、天界や魔界が直接介入を避けたい状況では多用される手段です。
他にも、危機に際して何らかの形で支援することがあります。
死に至らしめるはずだった一撃を逸らしたり、直接障害を破壊するなどの形が大半です。


信仰の形式は各地で差異がありますが、像を用いる信仰は好まれない傾向にあり、抽象的な祭壇や礼拝堂などが好まれます。
熱心な地域でもなければ大規模な施設は無く、信者も少なくは無くとも権力を持ちえるほどではありません。
また、悪魔崇拝者は多くの地域で排斥されるため、迷宮や遺跡に潜むか、自らを受容してくれる地域へと逃れます。




アンデッド

この人から見て異端的な存在は、そのイメージ故に常に危機に晒されています。
彼らはマナの力を駆使して「作り出され」た「不自然」な存在か、自身の意思で「転生」して生まれた「自然的」存在かに大きく分かれます。
当初の数は圧倒的に前者が多いものでした。というのも、死霊術師の下僕として生まれたのがアンデッドの起源であるためです。
それらのイメージが人々に浸透するにつれ、転生に際してこれらのアンデッドとなる事を望むものも現れ始めます。
人々が考える通りのアンデッドであるために、この転生はあたかも死体が復活したかのように「誕生」します。
それ故に多くの人々からは区別を得られず、一様に忌み嫌われる事になってしまっています。
人々にとっては外見的にもそのイメージ上も、生理的に気味の良い存在では無い為です。

亜人種の多くを含め、殆どの種族はアンデッドにも友好的なのですが。

なお、アンデッドと言うものはほぼ全てが人間のものです。そしてアンデッドは、その当人らや支配者の欲が生んだとも言えるものです。
人の欲より生まれ出でたとも言えるものを、他ならぬ人が最も忌み嫌うというのも、実に情けない話です。






アーティファクト

天界や魔界、または地上界で作られた様々な道具の中でも、飛び抜けて強力かつ限られた数しか存在していないものの総称です。
これらは極めて貴重かつ恐ろしく強力なものが多く、その多くは天界と魔界で分担して保管されています。
そのため、天界や魔界に深く貢献した者が時折褒章として受け取っていますが、その者の死後は多くが回収されます。

アーティファクトは武具に留まらず、宝飾品なども有ります。また、中には砲撃兵器まで存在しています。
元々の用途は様々ですが、やはり戦闘に関連した目的が多く、結果として多彩な戦闘用の品が生み出されています。
とはいえ、戦闘も非常に多彩ですので、ただ戦闘関連の品、と一括りにし切れるほどこれらは単調では有りません。
普通の武具の延長線上にあるものも有れば、中には自らや友の能力を高めようと作られた品々も有ります。
つまり、これらの品の中には製作者たちそれぞれの夢と現実が入り混じっているとも言えるでしょう。

なお、大多数はただ一つしか存在しておらず、ごく一部のみが幾つか存在しています。
これもやはり製作された事情に大きく依存しますので、ここでは多くは語りません。