ベルゼブブ

Beelzebub/Beelzebul/Beelzeboul/Baal-zebub/Belzébuth(フランス)/Βεελζεβούλ(ギリシャ)/בַעַל זְבוּב(ヘブライ)

ベルゼビュート(フランス語形)、ベルゼブル、ベルゼバブ、ベルゼベルとも。

カナンの神であるバールより派生した悪魔であり、名の意味はヘブライ語で糞王・・・いえ、マジです。
まあ、語呂が悪いので糞山の王と訳されます。
転じて糞にたかる蝿、その王様・・・蝿の王とされます。

日本の厠(トイレね)の神様はとても偉いとされますが、排泄物関係は西洋も結構地位が高いみたいですねえ。
ベルゼブブはルシファーに次ぐ地位を持つといわれます。あるいは悪魔の最高位に位置するともされる凄いやつです。

悪魔の貴公子、悪魔の天使長、地獄の王子、地獄の大幹部、蝿王国の皇帝、地獄王国の最高君主の異名がある。

起源

もともとはカナン人やフェニキア人の神で善神であった。
本来の名はバアル・ゼブルBaal-zebul、ヘブライ語בַעַל זְבוּל、高き館の王、神が住まう所の王、天国の王の意で、カナンの主神バールだったともいわれるが、これがソロモン王を連想させるとして、 気高いといった意味のゼブルを語感の似た糞、蝿を意味するゼベルに置き換え、キリスト教圏に入るとそのまま悪魔化されたものとされる。

そもそも蝿というのは多くの古代宗教において、魂を運ぶと信じられ、霊魂のシンボルであった。
蝿の王というのはすなわち霊魂を司る王であり、魂の導き手とされ、また蝿のもたらす穢れ・・・疫病などを退ける存在で、ひいては作物を蝿から守る豊穣神だったとされる。

ちなみにギリシャ神話のゼウスも蝿を忌避する者の呼び名があったりする。

悪魔化

これがユダヤ・キリスト教圏に入ると悪魔にされ、ペリシテの予言神とされた。
あるときイスラエルの王アハジャは、使者を遣わして自分の病気が治るかどうか訪ねさせたという。
ペリシテのエクロンにあるベルゼブブ神殿では獣を生け贄にして放置し、それにたかる蠅の様子を観察して未来を占っていたという。

これに激怒した唯一神は「このガキャ、イスラエルには唯一神たる俺がいるだろうが!!それをベル公なんぞにたよるなんてふざけんじゃねえぞ!!手前は死ぬ、絶対死ぬ!!俺が決めた!!」という感じで相変わらず呪い好きの神様に呪われてしまいます。

その後もベルゼブブはよっぽど気に入らなかったのか、あちこちでキリスト教徒に扱き下ろされ、その分登場頻度も高くなります。
12使徒の中の3人によって「悪の化身」「混沌の王」「デーモンの首領」であると主張されたりもしている。

マタイ福音書やルカ福音書ではイエス・キリストが奇跡を起こし人々を治療したとき、一人の男が「悪霊を払えるのは、悪霊の頭であるベルゼブブの力を借りているからだ」と非難したと記されている。
ここでは悪魔が悪魔と争うわけがないと反論していますが、悪魔は完全に一枚岩なんですねえ。人間より高尚な気がしてきます。

またニコデモ福音書(一個でも三個でもニコデモ福音書に違いない)ではキリストの処刑はベルゼブブがユダヤ人を唆したからだとしている。
そしてベルゼブブはキリストを冥府に閉じ込めようとするが、そこにキリストが冥府の入り口をぶち破り乱入・・・キリストは相当の武闘派のようだ。
これにより冥府に囚われていた人間は解放され、悪魔たちは全面降伏。
ベルゼブブもキリストにとっつかまり、審判の日まで逆に冥府に閉じ込められることになる。

ところがその縛から解放されたようで、以後もたびたび登場している。

悪魔との契約の際に、召喚の対象になる主要な悪魔の一人であり、魔女を支配する悪魔の一人でもある。
サバトにおいて魔女はベルゼブブの名においてキリスト教を否定するという。

フランス国王の最初の顧問官ロアイエによれば、悪魔憑きにかかった婦人の悪魔祓いをした所、口から蠅が飛び出しベルゼブブに相違ないと噂されたという。
その後も思い込みの激しい連中によって現在もベルゼブブに憑かれたという報告がある。

魔法の著者カート・セグリマンによるとベルゼブブは地獄界で大いにに幅をきかせている蠅魔のボスで、他の蠅魔どもを産んだという。

他に忠実な部下には、メフィストフェレスがいるとされ、アスタロトが側近とされる。
アスタロトはソロモンの魔王の一体で同じ魔王のバエルの妻ともいわれる。
バエルはベルゼブブと同じくカナンのバールがルーツとされるので、その繋がりかもしれない。

また蝿騎士団という軍団を作っているという設定も作られた。

ミルトンの失楽園では

「この有り様を見たベルゼブブが、荘厳な面持ちで立ち上がった。
その様子は、いかにもひとつの国を背負って立つ柱石のようだった。
その額には、思慮深さと憂国の至情が 深々と刻み込まれていた。
例えその身が破滅という悲境に陥ったとは云え、その威厳に満ちた顔には、まさしく王者に相応しい、英知の輝きが未だ鮮やかに残っていた。
彼は賢者然として幾多の強大な王国の重責を担うに相応しい、 あたかもアトラスのような肩をそびえさせて立っていた」

とされ威厳のある姿とされる。

またヴァイヤーの地獄の宮廷においては、サタンを退け魔界の最高権力の座に着いているとされる。

姿・能力

七つの大罪の暴食、または羨望を司るとされる。
暴食は死骸にも集る蝿からの連想であろう。
羨望のほうだが、ベルゼブブは向上心を司るとされ、それは羨望だとキリスト教は執拗に非難している。

そのためか人間の自尊心に訴えかけて、罪を起こさせるという。

対応する惑星は水星。

また前述の通り元は神であるが、ミルトンの失楽園では天使だったとされる。
そのため以前はセラフもしくはケルプだったとされる。

姿はやはり蝿として描かれることが多い。
だが普通の蝿ではない。
コラン・ド・プランシーの地獄辞典に描かれた姿が一般的で、羽は四枚、毒針を持ち、牙が生え、羽には海賊旗のような髑髏のマークがあり巨大である。

他にも巨大な子牛(子供の牛ね、小さい牛じゃないよ)、牡山羊の姿で現れることもあるという。
あのジル・ド・レエもこの姿のベルゼブブに遭遇したという話もあるようだが・・・

パランジェーヌの「ゾディアコ・ヴィテ」によると、「途方もなく巨大で、その腰掛ける玉座も巨大、額には火の帯を巻き、胸は厚く膨れ、顔はむくみ、目はぎらつき、眉は吊りあがり、威圧感にあふれる風采、鼻孔は極度に広く、頭には二本の大きな角がある。肌はマウル人のように真っ黒で、両肩には蝙蝠に似た大きな翼が生えている。大きな両足はアヒル、尾は獅子、全身を長い毛が覆う」とした。

またエクソシストのミカエリスが発表した悪魔の階級では聖フランチェスコが対抗する存在だとしている。

創作

やはり創作作品でも登場頻度は高い。
名前だけならあちことに出てるし、モンコレ、メガテンなどにも出演している。
メガテンでは青い肌の虎皮を纏った男の姿で登場。
最高位の悪魔として登場したりする。
とくにソウルハッカーズでは隠しボスとして登場し、巨大な蝿の姿に変身して襲ってくる。
二回行動、一撃死、全体攻撃を操る強敵であった・・・正攻法で倒すのに苦労させられた。
後にジャッジメントを使えば簡単に倒せると知り涙。

コミック「バスタード」では無痛症とされるが・・・

自分のシナリオでは悪魔の中で最大のキーパーソンである。