エイボンの書
Book of Eibon(英)/Liber Ivonis(羅)/Livre d’Ivon(仏)
クラーク・アシュトン・スミス創作のクトゥルフ神話作品に登場する架空の魔術書。
中新世に栄えた古代ハイパーボリアの大魔導士エイボンの著作。別名は象牙の書。
ハイパーボリア語で書かれた古代ハイパーボリア時代とそれ以前の暗黒の知識の集大成。
エイボンの若き日の魔術実験、シャッガイとナスの谷での旅に多くの項目が割かれ、白蛆の邪神のハイパーボリア襲来や自身が崇拝していたツァトゥグァを始め、ヨグ=ソトース、ウボ=サスラに関する秘密や儀式、呪文、伝承など
も記されており、ネクロノミコンにも欠落している禁断の知識が数多く含まれるという。
ハイパーボリアの彼の塔の廃墟から発見された。
一説では彼の弟子であるヴァラードのサイロンが、エイボンが残した原稿をつなげ直したものだ後書きに記されていたとされる。
その後、師から弟子へと受け継がれその時々の者により注釈などが追加されていく。
しかし後年、氷河期の到来によるハイパーボリアの滅亡とともに、多くの版がゾブナとロマールへ、さらにアトランティスとハイボリアへ流れていった。
現存する写本のルーツは二つの説がある。
一つはエジプト経由でアトランティスの商人がもたらしたとされる。
これは象形文字に訳され、その後地中海に入り、前1600年頃にシリア=フェニキア人学者イミルカール・ナルバがカルタゴ語に翻訳。
他に
バクトリア語(ビザンチン=ギリシャ語の説もあり)に訳され、960年ごろにテオドラス・フィレタスが残っていた一部テキストを中世ギリシャ語に翻訳した。
9世紀にカイアス・フィリパス・フェイパーの訳した綴じられたラテン語版の写本が現代にて確認できた最古の写本であり、これが最低でも6冊発見されている。
これを元に1662年ローマで印刷され、この内のいくつかがミスカトニックとハーバード大学に所蔵されている。
もう一つはアヴェロン族という謎の集団が銘板に刻まれた書を携え、滅びゆくアトランティスの東に逃れた後、アヴェロワーニュという地に住み着き、エイボンの書は長きに渡り彼らの儀式の中核を担っていたと見られる。
このハイパーボリア語の銘板は14世紀までは保管されていたようで、最終的にアイルランドに持ち込まれ、アイルランド語もしくはラテン語に翻訳された可能性があると見られる。
1240年ごろに魔術師ガスパール・ド・ノールの訳した中世フランス語版が
ヴァン・デル・ハイル邸、星の知恵派教会などから部分的なものと完全なもの合わせて13冊発見されている。
ギリシャ語版からの翻訳と見られているが、上記の版からの可能性も示唆されている。
またこの版はかなり信頼性が高いといわれている。
他に15世紀の訳者不明の英語版(誤訳が多い)が18冊あることが知られている。