クトゥルフ神話

Cthulhu Mythos

この神話は他の神話とはその趣を異にしている。
というのもこの神話は宗教によって生まれたものではないしいつ作られたのか、はっきりしているのだ。
何故ならこの神話は小説家が自分の作品に登場させた架空神話なのだ。

その名もハワード・フィリップ・ラブクラフト。

ラブクラフトはオリジナルの魔術書や怪物を登場させ、さらに謎に包まれた実在の存在のように情報を小出しにして上手く扱った。
とはいえ、ラブクラフト自身は別に深く考えずに、前に使った小説の舞台や小道具類をシャレで使いまわしていたそうだ。

やがて作家仲間達も混ぜて混ぜてと、同じ世界観で小説を書き始めた。
そしてそれら設定の数々を友人の作家に貸したり、借りてきたりしてラヴクラフトは小説を書き続けた。
いわゆるシェアワールドの先駆けである。

人知や時空を超越した宇宙的恐怖を描き、主に主人公の残した手記という形で綴られた臨場感溢れる作風は残念ながら一般受けはせず、一部熱狂的ファンを獲得したに終わっている。

その後、ラブクラフトは若くして急死。

死を嘆いた作家仲間のオーガスト・ダーレスは、彼の作品を後世に残そうと活動し、私財を投じて出版社アーカムハウスを設立。

後進の育成にも力を注ぎ、神話を体系化してクトゥルフ神話の名をつけた。

由来元は基本的な枠組を明らかにしたラヴクラフトの『クトゥルフの呼び声』からとったとのこと。

また未知の恐怖を描いたこの神話は人間には計り知れない存在が登場することから、ピンとこない分けの分からない存在が多い。
その中でクトゥルフが邪神として一番分かりやすい存在だったというのも大きいと思われる。

現在もクトゥルフ神話は多くの創作作品で使われる。
怪物やアイテムに関連のものが出てくる程度のものや、ストーリーに絡むものなど様々な扱われ方をする。
クトゥルフ神話はもはや、一つのジャンルといえる。
人によってもラブクラフトの使ったものだけを扱ったり、オリジナル設定を加えたりとその幅は広い。

近年ではウルトラマンにまで登場している。

神話概要

時空を超越した宇宙の中心部に白痴にして盲目の絶対神アザトースが存在する。

アザトースは、従者たちのフルートの音にあわせ、その不定形のおぞましき巨体を動かし、その周りで異形の神々がよたよたと踊りつづけている。

アザトースから、闇、無名の霧、千の異なる姿を持つ無貌の神「這いよる混沌」ニャルラトホテプを生み出した。
這いよる混沌は知性を持たないアザトースに代わり、その意向を代行する使者である。
闇からは黒い豊穣の女神シュブ=ニグラス、無名の霧からは時空の支配者であるヨグ=ソトースが生まれ、この両者から、数多くの不気味な生き物たちがこの宇宙に生み落とされた。

そうした生き物たちの中に、大いなるクトゥルフとその眷属たちがいる。
彼らは太古の地球に飛来し長く地球を支配していたが、旧神と呼ばれる存在との戦いに敗れ、ある者は封印され、ある者は追放された。

クトゥルフはムー大陸とともに海に沈み、現在は南太平洋、ルルイエの海底遺跡で眠りながら復活のときを待っており、この世界を奪還すべく復活を目論んでいる。

またクトゥルフ以外にも、かつての地球を支配していた種族たちがおり、古きものどもや偉大なる種族と呼ばれる存在がいる。
そういった、数多くの生き物たちが地球に飛来し、現在も地球各地にひっそりと隠れ住んでいる。

神の名前などは人間では正確な発音ができず、便宜的にク・リトル・リトル、クトゥルー、クトゥルフなど近い発音で呼ばれるとされる。
ラブクラフト自身はKoot-u-lewと呼んでいたようだ。

ちなみに、この旧神VS旧支配者(外なる神なども)という考え方は、ダーレスの作品に登場するもので、ラヴクラフトの原神話には登場しない。

一部ではこの設定を非難する声もあるが、ラブクラフト自体はガンガンいこうぜといった感じで、推奨する内容の手紙が見つかっている。
もっとも何事につけてもそういう感じの人だったようで、作家仲間との間で自分や相手をモデルにしたキャラを登場させ、それが作中で惨たらしく死ぬということをやったりやられてりしていたり、遊び心が旺盛だったようだ。
設定に関しても特に厳密に定めていなかったようで、同氏の作品内にも矛盾が目立つ。

もっとも本来の神話というのも矛盾だらけ(このサイトではそこに突っ込みを入れる)、ダーレスが行なったのは、ギリシャ神話の神統記、日本神話の古事記、日本書紀のようなガイドラインの作成のようなものともいえる。