マンドラゴラ

mandragora

学名はMandragora Officinarum。英名マンドレイク、ドイツ語名アルラウネ(特に根っこを指す場合に用いられることもある)。
日本では、曼陀羅華(マンダラゲという。
朝鮮朝顔も同じ名で呼ばれるのでしばしば混同されるが、両者は別物である。
またマンドレイクもアメリカではメイアップルという別の植物の呼び名になる。
ウーマンドレイクという秋咲きの種類もある。

ナス科の多年草で、二股にわかれた根の形が人間の下半身に似ていることから様々な伝説が生まれた有毒植物。
地中海からヒマラヤ辺りが原産といわれ、根にはベラドンナと同様な薬効があり、スコポラミン、ヒヨスチアミン、アトロピンなどの有毒アルカロイドを含む。

根は太く、朝鮮人参に似ている。
葉は根生し、倒卵形。高さ30cmほどの花茎をのばし、白または淡青色の花を咲かせる。

旧約聖書の創世記には恋茄子という名で記載があり、人の形をした部分には媚薬としての効果があると言われ、媚薬として使用する場合、男のマンドラゴラが女性に対して、女のマンドラゴラは男性に対して効果があるといわれて古くから媚薬として用いられた。
外科手術の麻酔薬としても用いられ麻薬、麻酔、睡眠薬、媚薬など、その効果も幅広い。

不妊の女に飲ませると子供が授かるという説も古くからあり、『創世記』にはラケルが、その姉レアの子沢山を羨み、夫を貸す代償としてレアの息子が採ってきたマンドラゴラを借りてヨセフを産む話が見える。

絞首台の下に滴り落ちた死刑囚の特に無実の罪で死んだ者の精液(もしくは尿)から生えるという。
子宝祈願、無病息災、あるいは財宝を発見するためのお守り、黒魔術の材料、魔除けの護符と幅広く使われた。

寓意画では人間の手足の先が植物の根となり、髪が数枚の葉という姿で描かれることが多い。
ユダヤ教の伝承では、神が人間を作る前に雛形として作ったものだという。
薔薇十字団の指導者が「人間は奇怪なマンドラゴラの形で地上に生まれ、根源的なものにより生命を受けた」つまり人間はマンドラゴラであったという説も有る。
また別の魔術師が同様の発言をしている。ただ、彼によれはマンドラゴラに生命を与えたのは太陽だそうだ。

ドイツで初の女性神秘家ヒルデガルトは「人の形をしたマンドラゴラは、最初の人間が造られた土から造られた」としている。 

カバラでは、エデンの園を追われたアダムは、イブと会うことの出来ない寂しさから夢で彼女を抱き、そのとき漏れた精液が地に落ち、マンドラゴラが生えたという。

またキリストが息を引き取る瞬間に精液(もしくは尿)を漏らした際、これが土中にしみ込んでマンドラゴラが生まれたという話が、ヤコブ・グリムの『ドイツの伝説』(1865)にある。

マンドラゴラの表面には猛毒があり、触れればたちどころに死んでしまうといわれ、さらに引き抜くときに、恐ろしい悲鳴を上げる。
これを聞いた者は死に至るか、発狂してしまうという。
採取するときは、耳栓をつけ、犬にこの植物を抜かせるという方法が取られたという。
または、引きぬく者がマンドラゴラの回りに三重の輪を剣で書き、西の方を眺めるだけで良いとされることもある。

引きぬいたばかりの新鮮なマンドラゴラである事を示す為、犠牲になった犬をマンドラゴラと共に紐がついた状態で売られるという話もある。

ちなみにマンドラゴラに近づくと逃げてしまうという話もあり、雄には女の経血、雌には男の尿をかけると動きが止まるという。また黒い色を好むともいわれ、黒い犬を用いることが多かったそうだ。