ムシュフシュ

Mushus/Mushussu/Mušhuššu

怪物の呼吸音みたいな名前ですがちゃんとシュメール語で「怒りの毒蛇」という意味があります。
炎の龍頭蠍尾獣という俗称もある。

アッカド、シュメールなど古代オリエント文明に伝わる怪物で、かなり古い歴史がある。
・・・ようなのだが、あまり詳しいことがわかっていない。
というのもシュメールやアッガド神話はほとんど失われてしまっているからだ。

現在判明している最初期のムシュフシュは前2500年以前まで遡り、ここでは龍ではなく獅子に似た怪物として描かれている。
もっともこれが本当にムシュフシュなのかは謎のままである。

古くは古代の都市エシュヌンナの守護神に仕えていた聖獣として崇められており、その後も守護神が変わることがあってもムシュフシュはそのまま新しい神の随獣として存在した。
ニュアンス的には三国志の呂布が愛馬、赤兎馬のようにすごく優秀な騎獣のようなものだろうか?
だから新しい神もそのままムシュフシュに乗ったということか。
つまり最古のドラゴンライダーのドラゴンか・・・ムシュフシュ種のドラゴンに騎乗した騎士たちが云々とか使えそうなシチュエーション・・・か?

バビロニア神話では、ティアマトが神々に抵抗する為に産んだ11の怪物の一体。
この怪物達は英雄神マルドゥークによって退治されムシュフシュ以外は全部殺されてしまった。
なぜムシュフシュだけ殺されなかったかというと、マルドゥークがムシュフシュを気に入り乗り物としたからだという。実際、ムシュフシュが神を乗せているレリーフなどが多く出土している。

初期のムシュフシュは角がない姿もあるようで、後の時代には翼を兼ね備えているものも描かれたようだ。
他にも尾が魚や蠍のものもあるようだ。蛇のように裂けた舌を持ち、後頭部には丸まった形の耳があるともいう。
大きさは馬程度など時代によって微妙に姿を変えている。

一番有名なものはバビロンのイシュタル門に彫られたものだろう。
頭と体は鱗に覆われた馬のような胴体、尾は毒蛇、前足は獅子、後ろ足は鷲、一対の湾曲した角を持っている。
体色は金色、薄い茶褐色で描かれている。

体のほとんどが爬虫類のせいか、卵生で卵から生まれると考えられたようだ。

この時代では災厄避けや、人々の平和の守護者として崇められ、呪文には災い除けにこの怪物の像を埋める事が指示されていたり、王の碑文に彫られていたりする。
また治療の神に奉納されたと見られる浮彫には医療の象徴であるカドゥケウス(絡まった二匹の蛇)を有角の蛇頭、鱗に覆われた体、ライオンの前足、鷲の足をもつ翼のある姿の2体のムシュフシュが剣を持って守護している姿が描かれている。

ということは複数いるのかな? それともムシュフシュの子供?
それならだんだん微妙に姿が変わっているのも納得か?

創作作品ではせいぜい雑魚敵として登場するぐらいの扱いである。

モデルになったものは、アラビア半島の砂漠に棲息する角蝮だという。