ウンディーネ

Undine

語源はラテン語で波を意味するウンダundaと女性形の形容詞語尾ineからきている。
つまり波の女、波の乙女の意味である。

その名の通り、美しい人間の女に似た姿をしているという。

ウンディーネはドイツ語系の読みであり、他の読みはオンディーヌOndine(仏)、アンダイン・アンディーンUndine(英)、オンディーナOndina( 伊)。

パラケルススは著作の妖精の書において、アリストテレスの四元素説を下敷きに四大精霊を提唱しているが、そのうちの水の精霊としてあてられたのがウンディーネである。
パラケルススはウンディーネをギリシャ神話などに登場する精霊や下級女神のニンフの一種としている。

また悪魔の辞典等の著書で知られる、フレッド・ゲティングスは、パラケルススに倣い別名をニンフとして、精神世界に住まう虹色に輝くアストラル体で透視能力者にしか見えないとしている。

妖精の書においてパラケルススは人間に似てはいるが魂がなく、人間の愛を得て人間と同じく不滅の魂を得るとされる。
だが水の近くで夫に罵倒されれば魂を失い水中に帰らねばならず、また別れた後であろうとも夫が再婚をしたら必ず殺さねばならないなど、その恋には制約が多い。
妖精の書にはシュタウフェンベルクの町に現れたウンディーネの逸話が紹介されており、この水精は男を誘惑し結婚したが、男はやがて水精を悪魔だと冷たく扱い、別の女と結婚してしまう。
だが婚礼の宴の席に水精が現れ、眠ると死に至る呪いをかけ、それから3日後に男は死んだという。

1811年に現在のドイツの小説家フリードリヒ・ド・ラ・モット・フーケが、この伝承を元にウンディーネという小説を発表している。

人間の漁師に娘として育てられたウンディーネは、騎士フルトブラントと恋に落ちる。
ウンディーネの正体を知ってもフルトブラントは変わらぬ愛を誓い結婚する。
だが旅行中にウンディーネの存在から水精の悪戯を受け、水辺でウンディーネを叱ってしまう。

精霊の掟の為に、ウンディーネは水の中へ帰ってしまう。
悲しみ嘆いたフルトブラントはやがて、憎からずに思っていたベルタルダと再婚することにした。
夢を通じて結婚をやめるように懇願するウンディーネの想いも虚しく、結婚式を挙げてしまう。

掟によりフルトブラントを殺さねばならなくなったウンディーネは、花嫁の閨に向かおうとするフルトブラントの前に現れる。
フルトブラントは彼女と口付けを交わしながらその腕の中で息絶える。

この小説はゲーテもドイツの真珠と絶賛し数ヶ国語に翻訳され広く読まれ、後のウンディーネを題材とした作品に多大な影響をあたえることになった。
日本でも水妖記やウンディーネのタイトルで邦訳されており、日本でウンディーネというドイツ語風の読みが主流なのはこの作品によるものが大きいと思うのだが、どうだろうか?

1939年に フランスの戯曲家ジャン・ジロドゥはこのウンディーネを原作とし、戯曲オンディーヌを書いおり、ブロードウェイで上演された。
日本でも劇団四季による公演が行われている。

また眠ると死に至る呪いの伝承から、睡眠時に呼吸不全に陥る先天性中枢性肺胞低換気症候群や後天性脳機能障害などをウンディーネの呪いと呼ぶこともある。