妖蛆の秘密

(英)Mysteries of the Worm/(羅)De Vermis Mysteriis

ようそのひみつ、ようしゅのひみつと読む。よううじのひみつではない・・・最初に見たときそう読んだよ、悪いか!!

ロバート・ブロックの同名小説「妖蛆の秘密」(原題The Shambler from the Stars)にて登場したクトゥルフ神話群に列なる魔術書。
無論、小説のために設定された架空の書物である。

ラブクラフトとの文通でラテン名や著者の略歴が設定されたので、2人の合同創作品ともいえる。

何気に他のクトゥルフ作品にも頻繁に登場するので有名だったりする。

なお和名には当初は虫の神秘といった訳語が当てられていた。

著者は第九次十字軍唯一の生き残りを自称するルートウィヒ・プリンLudwig Prinn。

プリンはフランダース出身の錬金術、降霊術に長けた魔術師で、十字軍参加時に捕虜として拘留されていたシリアで魔術を学び、異端審問によりブリュッセルで焚刑に処せられる直前に獄中で本書を執筆し、看守の眼を盗み持ち出され 一年後の1542年にドイツのケルン(コローニュとの説あり)でラテン語版デ・ウェルミス・ミステリウスが出版された。
表紙は鉄製で黒く分厚く大きかった、それはまさに鉄塊であった。

1484年という説もあるが信憑性は薄い。

出版直後(あるいは1569年とも)に教会から発禁処分を受けている。
その後に検閲済みの削除版が出版されるが、資料価値は低い。

いくつかの言語にて翻訳されており、ドイツ語装飾文字版などが存在している。
1821年にチャールズ・レゲット訳の古ドイツ語版を訳した英語版ミステリーズ・オブ・ザ・ワームが発行されている。

初版は現在15部が現存していると見られ、カリフォルニア州ハンティトン図書館、ミスカトニック大学付属図書館、大英博物館 、ニューイングランドプロヴィデンス市西郊のフェデラル・ヒル地区にあった星の知恵派の教会などに所蔵されている他、個人では ミスカトニック大学文学部教授A・ゼロックスが所持している。

またマサチューセッツの宗教団体ジェルサレムズ・ロットが所持していたが、不用意に魔術を実践し彼らは消えてしまったため、行方は知れなくなった。

なお大英博物館所蔵のものは保存状態が悪く、半分しか残っていないため閲覧は禁止されている。
また同所には完全なドイツ語装飾文字版も保管されている。

英訳に関してはジュリアン=カーステアズが所持し、後にタイタス・クロウの手に渡ったと見られる。

また異説の一つではドイツ人により日本に持ち込まれ、織田信長の手に入ったという説がある。

本の内容は16章からなり、プリンがシリア・エジプト・アレクサンドリアなどの中東・アフリカで知った禁断の知識や魔術の数々、伝説・伝承にも及ぶ。
そこにはセトやオシリスなどのよく知られるエジプトの神々はもとより、這い寄る混沌を信仰し狂気の行いに走ったため存在を抹消された古代エジプト王ネフレン=カ、父なるイグ、暗きハン、蛇の髪持つバイアティスなどについても記されている。

主だったものは占術についての大幅な知識、使い魔について、多次元世界の存在と、そこに繋がる門について、サラセン人の宗教儀式、イグについて、ハンとバイアティスが予言の神であるということとその接触のための呪文、バイアクヘーや黒い仔山羊、目に見えぬ伴侶、星より来た従者と呼ばれる不可視の吸血生物星の精の召喚方法と従属方法ついて、ラオの薬・水晶占いの窓・ゾンビの製造方法、(ワマス)妖虫(ウォルミウス)(ヴェルミ)妖蛆(ワーム)! の呪文を繰り返し自分の肉体を蛆に分解し他人の体を乗っ取る不死呪法儀式 などの多くの呪文や魔術に関しても書かれている。

また数秘術についてもこの手の文献にしてはかなり分かりやすく書かれている。

年表

年代 言語 出版地 コメント
1542年 ラテン語版 ケルン 初版
1542年〜1600年代? ドイツ語ゴシック体版 デュッセルドルフ 削除版、有用性低し
1573年 英語版 ロンドン 魔術師兼詐欺師エドワード・ケリーによる英訳。詳細は不明。
1809年 言語不明(おそらくラテン語版) プラハ 詳細不明
1821年 古ドイツ語版からの英訳版 チャールズ・レゲット訳。初版からの木版画収録、完全訳とも言われるが削除項目があるともいわれオリジナルより価値は劣るといわれる。極小部数のみ印刷された。英訳版といえば基本的にはこれを指すことが多い。
1895年 英訳 星の智恵派による印刷。発見されていない。
19世紀 英訳 謎の人物僧Xによる、ネフレン=カ、アイラムの蟲魔術師、イフリート、ジン等に関して記された、最も有名なサラセン人の儀式の章の英訳小冊子。信仰上の恐れからか、この先は不用意に記 すべきではないと書かれた削除項目が多数あるので価値は低い。大英博物館所蔵。