クー・フーリン

cu chulainn

ク・ハラン、ク・ホリンとも呼ばれる。

ケルト神話のマイリージャ族時代の英雄で5世紀に実在した人物だともいう。
だが物語り自体は前1世紀頃だといわれる。
ケルトの英雄ではNo.1の知名度を誇るだろう。

出生

ある冬のこと、コンホヴォル王と妹デヒテラを始め、戦士が集まっているところで作物を荒らす鳥の大群を追い払おうとしました。王がデヒテラの操る馬車に乗り、城を出て掃討作戦の陣頭に立ち指揮をしているうちに日が暮れ、王達は一軒の家に泊まることにしました。その日の深夜、家の主人の妻が男の赤ん坊を生み戦士の馬も2頭の子馬を生みました。ところが朝になると赤ん坊と子馬以外、なにもが消えてしまいます。

王はその赤ん坊と子馬を連れて城に帰り、妹のデヒテラは我が子のように可愛がりますが、赤ん坊は間もなく死んでしまいます。その死を嘆いたデヒテラはコップの水を飲んだときに小さな虫をいっしょに飲んでしまいます。

その夜、デヒテラの夢の中で太陽神ルーフが現れこういいます、あなたはまもなく私の子を産むでしょう、デヒテラよ。あなたがかわいがっていて死んだ子供は私の子供。再び生まれてくる子にはセタンタと名を付けて、その子を乗せる戦車を引くために子馬も共に育てなさいと命じました。

つまり最初からルーフによって仕組まれたことだったのです。

セタンタからクー・フーリン

無事に生まれたセタンタが7歳(6歳とも)になった時、王が鍛冶屋クランの宴会に出かけるとき、球技(ハーリングというホッケーに似たもの)をしている子供の中にセタンタを見つけ、そのずば抜けた妙技に感心し褒美として一緒に来るように言った。
セタンタはゲームがいいところだったので、終わってから行くと約束した。

宴が始まり来客も集まったので、館の主人クランは番犬を放していいか王に訪ねた。セタンタが来る事を忘れていた王は、いいと返事をしてしまった。(おーい王様)

この番犬は戦士が10人がかりでも梃子摺る自慢の番犬だった。
遅れてやってきた(忘れられてた)セタンタは番犬に襲われ格闘になった。

騒ぎに駆けつけた王たちが見たのは、大人でも叶わない猛犬を素手で仕留めたセタンタでした。
王はこの勇気と力を称えましたが、愛犬の死に嘆くクランに(さすがに気の毒に思ったのか)次の番犬が見つかるまで、自分が貴方の番犬となりましょうと申し出た。
王は記念に、名前をクー・フーリンにするように言った。

クランの猛犬という意味である。
クーとはゲール語で猛犬のこと。
日本ではいまいちいいイメージが無いようですが、猛犬は古代アイルランドでは勇気や美の象徴だった。
また、クー・フーリンとはアルスターの声の意でもあるといわれる。

成長

それから時は流れ、ドルイド僧に「今日元服(武具を身につけること)する若者は、かつて無いほど偉大な戦士になるが命は 儚い。ただし、彼の行為は後世に語り継がれていくであろう」と予言されます。

この言葉を聞いて、迷わず元服を決め武器を与えられ身につけますが、怪力のクー・フーリンはことごとく壊してしまいます。仕方ないので最後には王が自分の愛用の武器を与え「これは良いものだ!!」と厳かに受け取ったといいます。

立派な若者となったクー・フーリンは領主フォーガルの娘エマーを見初め、妻に迎えようと会いにいった。
エマーもクー・フーリンを気に入ったが、彼の成長を願い、立派な戦士になってからもう一度くるように告げた。

エマーの父フォーガルはこの求婚を快く思わず、クー・フーリンが影の国の女魔法戦士スカサハのもとへいくようにしむけ、その危険な道中で生きて帰らないことを願った。

魔槍ゲイボルグの入手

太陽神で、父でもあるルーフの援助もあり、スカサハのもとへたどり着き、数々の苦難の末、スカサハの弟子になります。親友のフェルディアとはここで出会ったといわれます。(昔からの幼馴染だとも)

スカアハから武術と魔術を学び、魔槍ゲイボルグを授かり跳躍術鮭飛びの術を会得します。

あるときスカサハと同じく魔術に長けたオイフェという女戦士とスカサハの間に争いが起きた。
スカサハは、クー・フーリンを戦いに参加させまいと眠り薬を飲ませるが、丸一日寝てしまう睡眠薬もクー・フーリンには1時間しか効かず、目覚めたクー・フーリンはオイフェの6人の勇士を一打ちで倒してしまいます。
オイフェの大事なものを聞いていたクー・フーリンは戦いの中、オイフェの馬と戦車と御者が谷間に落ちた!と言ってスキを作り、胸元に刃を突きつけ降参させた、彼女をものにし子供まで産ませます。

子育てをオイフェに押し付けたクー・フーリンは帰国しエマーと結婚した。
おーい・・・まあその後、他の女から求婚されてもなびかなかったし、せざるを得ない理由があったと思われる。

これが後の悲劇に繋がるわけだが・・・

英雄クー・フーリン

前述したとおり、もてもてのクー・フーリンは戦の女神モリガンにも求婚されます。
が、クー・フーリンはけんもほろろにモリガンをふります。
頭にきたモリガンはクー・フーリンの命を付け狙い、動物に変身して戦いの邪魔をしたりしますが尽く返り討ちにあいます。
ところがクー・フーリンは自分の命を付け狙うモリガンの命を助けたりします。
以後、モリガンはクー・フーリンを助けるようになったといいます。

男ですね・・・ここは漢の称号を贈り・・・いや、前述のオイフェのことがあるしな・・・差し引き0ってことで。

あるとき隣国コナハトの女王メイヴが攻め入ってきます。

理由はアルスターにいる素晴らしい牛を貸してくれと頼んで断られたため、力尽くでもらってくってくだらない理由です。
クーリーの牛争いと呼ばれ、7年間に渡る戦いが起きます。

アルスターの戦士たちは魔女の呪いにより満足に戦えない状態であった・・・神の血を引くクー・フーリンだけが呪いを受けず、たった一人で敵国と戦うことになったという。

クー・フーリンの力は凄まじく連戦連勝、業を煮やした女王はクー・フーリンの親友フェルディアを差し向けます。
戦わざるを得なかった親友同士の戦いは四日の間続いたといわれ、最後はクー・フーリンのゲイボルクによってフェルディアは死に、クー・フーリンは友の遺体を手厚く葬ったという。

一般に知られるところでは、クー・フーリンはこの戦いの最後にメイヴ率いる弾唱詩人の魔力に負け命を落としますが、別の話では、クー・フーリンとメイヴは和平を結び、アルスター軍が勝利したとされます。

クー・フーリンの死

親友の死からクー・フーリンに不幸が続きます。
オイフェの間に生まれた子コンラを、それと知らずに殺してしまう。

そしてメイブ(魔女とも)はクー・フーリンを抹殺するために罠を仕掛けます。

目下の者に食事を誘われたら断れないというゲッシュを利用し、自分の名前についている「クー(犬)」を食べないというゲッシュを破らせ、呪いにより半身が痺れてしまったといいます。

その後、軍を率いた弾唱詩人が現れゲイボルクを渡すようにいいます。
掟で弾唱詩人の申し出は断れないためクー・フーリンはゲイボルクを渡します。
さすがにクー・フーリンもただでは渡さず、ゲイボルクを投げ敵を倒します。(9人といわれます)

ゲイボルクを手にした弾唱詩人は「王者の槍は王に当たる」と言霊を乗せて投げ返します。(別に用意した三本の槍ともいわれます)

槍は御者の王レーグに当たり命を奪います。
その後も同じやり取りが続き、ゲイボルクの投槍でその都度9人、または9人の3倍の敵を打ち倒したものの、愛馬である馬の王マッハを貫き、最後に戦いの王クー・フーリンを貫きます。

クー・フーリンは内臓が飛び出したもののそれでも戦い続け、いよいよ最期を悟ったクー・フーリンは立ったまま死のうと巨石に体を縛りつけ息絶えたと伝えられます。

その直後、一羽の鳥がクー・フーリンの肩に止まります。
女神モリガンが最後の別れを告げにきたのでした。

クー・フーリンの姿

遅くなりましたがクー・フーリンの姿はいつもは若松のようにしなやかな体躯、白い肌に、輝く青い目と大変に美しい姿だったそうですが、ひとたび戦闘の狂気にとり付かれると、骨は皮膚の中で回り、天を衝く髪からは血がしたたり、片目は針の目ように小さく、もう片方は化け物じみた大きさに。 口は耳まで裂け、体は膨れ上がり、衣服ははじけ、踵とふくらはぎは裏返り、「戦士の光」は額から天を貫くと記述がある・・・・・・クー・フーリンは化け物だったようです。

クー・フーリンのゲッシュ

ここではクー・フーリンのゲッシュを紹介しよう。

犬を食べない。

目下の物の食事の誘いを断らない。

フェルグスとの戦いで、一度は負ける。

この他にあったら順次追加します。