天羽々斬(あめのはばきり)

スサノオがオロチを斬った剣。

非常にややこしい剣である。

というのも、この剣は様々な剣と同一視されているからである。

まず名の意味は天は尊称で羽々は古語で蛇。
蛇斬り、つまり大蛇斬りということだ。

天蝿斫斬(あめのはえきり)と呼ばれるという話もある。
これは刃先に止まった蝿が斬れて落ちる切れ味だともいうが、日本書紀の誤記だというのが通説のようだ。

蝿斬りねえ・・・ベルゼブブでも斬ったんでしょうかね(違

いつ誕生したかは定かではないが、その所持者は日本神話の創生神であるイザナギである。
妻の(妹でもある)イザナミがポコポコと子供を産みまくる中、火の神であるカグツチを産み大火傷を負って死んでしまう。
怒ったイザナギは息子であるカグツチの首をこの剣で刎ねてしまう。

初仕事は子殺しに使われた・・・呪われてそうだ。

この際にもカグツチの血や死体からも神々が生まれたが、偶然か必然かそれらの神は火や水、岩など鍛治に関連する属性を持っていた。
ある意味で刀剣の始祖と呼べる存在である。

ちなみにこの時の名は天尾羽張(あめのおはばり)、または伊都之尾羽張(いつのおはばり)である。

その後、イザナミを死者の国から連れ出そうとしたさいに妻の変わり果てた姿を見てしまい、醜いからもう別れると最低な行動をして死の国から逃げ出すさいにも振るわれた・・・ちなみにイザナミは「てめえ、許さん!お前の国の人間一日1000人殺す」と喚き、イザナギは「じゃあ一日1500人産むからいいもん」と無関係の連中がとばっちりをくらうことになる。

また剣自体が神でもあるようで、人格を持って度々登場もしており子供もいる。
武神であるタケミカヅチがそうである。また日本書紀では四代目の孫とされる。

その後、息子のスサノオに譲られます。
海を治めるように言われたスサノオですが母を恋しがって泣き暮らすばかりで働かないので国外追放になります。

それで姉神のアマテラスに暇乞いをしに高天原に行きますが、アマテラスはスサノオが高天原を奪おうとしているのではと疑い天の安川をはさんで宇気比(ようは占いみたいなもの)を行います。
アマテラスはスサノオの剣を借り、3つにへし折り破片を噛み砕くと3女神が誕生します。
一方スサノオはアマテラスの八尺瓊勾玉を借り、噛み砕くと5男神が誕生します。
この時は女神を産んだ方が潔白とされていたのでスサノオの潔白が証明されました。

・・・そう、このとき噛み砕かれてるんですよね・・・アマテラスに・・・凄い歯と顎ですねアマテラス。
神だけに神剣を神砕きましたか?
ところが、噛み砕かれたこの神剣・・・何故か以後も登場します。
その理由は一切明らかにされていません。
再生能力でもあったんですかね・・・へし折って噛み砕いたというのは文字通りの意味ではなく何らかの比喩だったのでしょうか?

もしくは別物でしょうか?これだから、あの剣と同じだとか諸説が増えるんですよ。

そして調子に乗ったスサノオが高天原も追い出され、ヤマタノオロチと戦うのですが・・・オロチの尾にあった叢雲で刃が欠けるんですね。
叢雲の方が凄いってことですかね・・・始祖の神剣なのに。

で、いつの間にかスサノオの手を離れたのか、もしくは別物か・・・味鋤高日子根神 が葬儀に出た際に仏さんに似ていて間違えられ、怒って喪屋を切り倒したさいに使われたりした。(文献によっては八握剣ともあるので別物だろう)

また日本の三大霊剣として天十握剣の名でも呼ばれ・・・あとの二振りは布都御魂と叢雲であるのだが、布都御魂と同一のものであるという説もある。

その後も行方は転々として、最後は吉備の神主の元に在ったが現在は失われたという。

しかし石上神社に安置されていると神剣と同じものだという説もある。

さて一般的には十握剣の方が通りがいいが、これは固有名ではなく握り拳十個分の大きさという意味である。
全体の大きさが十個分なのか、刀身なのか柄なのかだが、一般には柄のことのようだ。
十柄剣ともいうしね。

それだけ長大な剣だったのだろう。長巻みたいな感じだったのかもしれない・・・ただ文献ではたびたび佩くという表現が使われることからこの考えは少々疑問も残る。

大きさ以外に形状や材質に関しては記述が見受けられず、推測するに両刃の剣で時代的に反りはなかったのではないかという程度である。

 

 

話はまったく変わりますが、スーパーロボット大戦というゲームをご存知でしょうか?
様々な巨大ロボットが一同に会するゲームですが、オリジナルキャラにゼンガーという人がおります。
この人の乗るロボットは日本刀に似た武器を使いますが、柄が伸びます、さらに刀身も液体金属だかでできており用途に応じて形が変わります。
長大な形に変わり、ロボットの身の丈をも越えるその名は斬艦刀。

天羽々斬もひょっとするとそういう能力があったのかも・・・おお、それならヤマタノオロチを斬れたのも納得だ。