イルルヤンカシュ

illuyankas

ヒッタイトの強大な龍神。
強龍神ではない。ましてや幻竜神では・・・

姿に関しての記述はないが、だいたい同じ時代の壁画などから海蛇のような感じではと推測されている。

海を住処としていたといい、嵐の神プルリヤシュと仲が悪く争っていた。

一度は勝利するが、プルリヤシュは復讐のため大気を司る女神イナラシュに助力を乞い罠を仕掛けた。

イナラシュは様々な飲み物を器に満たし、イルルヤンカシュとその眷属に飲ませた。
酩酊した彼らを、隠れていた人間のフパシャシュが強力な縄で縛り上げプルリヤシュが止めを刺した。

ちなみにフパシャシュは協力する条件として女神との一晩を要求している好色野郎・・・何故人間に協力を頼んだかは語られていないが、その後も女神により軟禁状態にされ、妻子を恋しがって帰りたいと言った彼は、キレタ女神に殺されることになる・・・好色は身を滅ぼすね。

この伝承が記された粘土板によってはもう一つの結末の違うイルルヤンカシュの物語も書かれていた。

その話で嵐の神はやはり一度敗れるのだが、ここではイルルヤンカシュに心臓と眼を奪われている。

嵐の神は策略を巡らし、人間の娘との間に男子をもうけ、後にイルルヤンカシュの娘と結婚させた。
嵐の神は息子に奪われた体の一部のことを聞き出させ、それらを取り戻し再戦してイルルヤンカシュを倒す。

そして息子と結婚したイルルヤンカシュの娘も殺そうとするが、いくら計略とはいえ自分の妻・・・嵐神の息子は妻を庇った。
むう、それならと助け・・・るかと思いきや、息子ごと殺しましたとさ・・・

イルルヤンカシュが邪悪な存在なのかは、よくわかっていないがこの話を聞く限りは・・・ねえ?

イルルヤンカシュは多くの話でそうであるように、荒れた海の脅威、川の氾濫を例えたものだと言われる。

またイルルヤンカシュの戦いの物語は、新年もしくは春の到来を祝う祭りで朗読されたといい、災害という出来事が新しい時代の始まりを象徴するものだったという。

ギリシア神話のテュポーンの原型だともいわれ、それだけでなく鉄器とともに、インド・中国を経て日本に入り、ヤマタノオロチの神話を生んだともいわれる。