ケルベロス

cerberos(羅)/Κέρβερος(kerberos)(ギリシャ)

暗号による認証方式の一つ・・・のことじゃないですよ。

ギリシャ神話に登場する冥府タルタロス*ハデス*のうち、ハデスの門を守護する番犬。
ちなみに死者の世界を守護するのは犬というのはあちこちで見られたりする。

その名は底無し沼の亡霊を意味するとされる。

エキドナとテュポーンの子。兄弟にレルネのヒュドラ、キマイラ、スフィンクス、ネメアのライオン、多頭竜ラドン、双頭の番犬オルトロスがいる。
創作作品では長男とされることも多いが、そこら辺ははっきりしておらず、文献での登場順から考えて次男と思われる。

その姿は諸説あり、黒い牙を持ち、頭は複数(一般的には三頭だが五十や百とも)、尾は蛇(龍とも)で頭の周りにはあらゆる種類の蛇がたてがみのように生え、白い毒を吐くという。青銅の器具を擦り合わせたような音で吠え、その咆哮を聞いたものは身を震わせ、竦み上がって何も出来なくなってしまうという。またその口からは炎を吐くという。

詩人ヘシオドスは神統記の中で、ケルベロスの首の数は五十だとしている。
理由はアルテミスの飼っている猟犬の数と同じだからだそうである。
しかしヘラクレスの十二の難行のエピソードを伝えた壺に残された絵で三つ首として描かれていたため、三つ首のイメージが広まったようだ。
ダンテの神曲でもケルベロスは三つ首として描かれるている。
まあ絵を描くのに五十も百も描くのは大変だしね。

番犬として非常に優秀で、死者は尻尾を振って歓迎するが生者や冥界を出ようとする者には容赦なく襲いかかる。

少しミーハーなところがあるようで、オルフェウスの奏でる竪琴に聞き惚れ、プシュケとトロイア王子アイネイアスには蜂蜜入りのケーキ(睡眠薬入り)で眠らされ通してしまったりしている。
また泥が嫌いで騙されて口に泥を詰められると黙り込んでしまうという。拗ねてるのか?

このケーキをギリシャ語でソップという。
この逸話よりケルベロスに与えるソップという言葉が生まれたという。
コレは面倒な者を買収するつまりは「賄賂」の意味で使われる言葉だそうだ。

このケルベロスだが実は地上に出たことがある。そのエピソードを簡単に説明しよう。

ギリシャ神話で最も有名といえる英雄ヘラクレスはヘラの魔法に操られ自分の子供を殺してしまう。
この罪を償うために、ヘラクレスは十二の難行を行うことになったのである。
ちなみにこの冒険でケルベロスの兄弟が何人か殺されている。

この難行の最後がケルベロスを王の下に連れて行くことだった。
さしものケルベロスもヘラクレスに恐れをなし、主であるハデスの玉座の下に逃げてしまった。
ハデスは素手で捕らえる事が出来たらと、地上に連れ出すのを許可する。

ヘラクレスはネメアのライオンの革を身に纏い、ケルベロスを締め上げた。
その革の前にケルベロスも文字通り歯が立たず、遂にギブアップ。
こうしてケルベロスは地上に連れ出されることになったのである。

このときケルベロスの目はバチバチと火花を散らし、それを見たものは石になってしまったという。
また初めて見る太陽の光にケルベロスは吠え、その時に滴り落ちた唾液が猛毒を持つトリカブトになったという。
別の説では首の周りの蛇の唾液(白い泡)だとも言われる。

この後ケルベロスにびびった王様が帰してきなさいと言ったため、ちゃんとお家に帰してもらえた。

ザガリー・グレイ著書ユーディブラスでこのように述べている。
この三頭の犬は過去、現在、そして来るべき時を示す。時はあらゆるものを受け入れ、そしていわば貪り食うのである。ヘラクレスはこの犬を打ち負かすが、これは英雄的行為が時に対して勝利を収めることを示している。なぜなら英雄的行為は子孫の記憶のうちに現存するからだ。

ケルベロスの首はそれぞれ過去・現在・未来を司っていると解釈しているわけである(と思うんですが)。北欧神話のノルンを連想させますね。

つまり、歴史に名を残すということは時間を超越するといことになるのだろうか?

さてケルベロスは中世悪魔学において、ソロモン王が封印した七十二の魔神の一柱ナベリウスと同一視される。
別名がケルベロスなのである。三つの頭を持った地獄の侯爵である。

創作物に登場するケルベロスはその設定も多様で、頭が一つとして描かれることもあれば戦闘形態に移行すると頭が増える・・・つまり出し入れ自在という設定も見かける。

自分の設定では頭一つです・・・一体だけじゃなくてたくさん群生してます。
また悪魔の城の門番もケルベロスですがこっちは三つ首って設定。
ルシファーに可愛がられているって設定が・・・
実は主人公と・・・いえいえ、なんでもないですよ。