姑獲鳥

こかくちょう、うぶめと読む。

こかくちょうと読んだ場合は中国の妖怪、うぶめと読んだ場合は日本の幽霊である。

こかくちょう

夜行遊女、天帝少女、乳母鳥、言意、言喜、 無辜鳥、陰飛、鬼鳥、鈎星など異名がある。

本草綱目では鬼神の類と紹介され、人間の魂魄を食べるとされる。
雌だけしか存在せず、荊州に多く、毛を衣て飛鳥となり、毛を脱ぐと人となるという。

人のときに天帝少女、夜行遊女と呼ぶようだ。

産婦が死んで成るもので、胸の前に両乳があり、好んで人の子をさらって自分の子として育て、その子は姑獲鳥となる。

姑獲鳥は夜に飛んできて、血を滴らせ子供の服に付ける。
するとその子供は驚癇や疳疾を病む。これを無辜疳という。
それゆえに子供のいる家では、夜に子供の衣物を外に出しておいてはいけないとされる。

何故だか7、8月に活発に活動するという・・・

捜神記では豫章郡新喩県(いまの江西省)に住む男が、田の中で6、7人の娘を見かけた。
みな毛の衣を着ていて、鳥か人間か分からなかったが、忍び寄り一人の娘の脱いであった毛の衣を隠してから捕まえようとした。

他の鳥たちは飛び去って逃げたが、一羽だけ毛がないので(ギャグで言ってるわけではない)逃げることができない。
男はそれを家に連れ帰って女房に、3人の娘を生ませた。 (誘拐拉致監禁婦女暴行あと窃盗か・・・)
その後、女房は娘たちに父親から、毛の衣が稲束を積んだ下に隠してあることを聞き出させ、飛び去ってしまった。
それからまた時がたって、母親は3人の娘を迎えに帰って来た。すると娘たちも飛べるようになり、皆飛び去ってしまったという。

天女の伝説と酷似している・・・どっかで混じったのだろう。

うぶめ

姑獲鳥もしくは憂婦女鳥、産婦鳥と書いてうぶめどりと読ませることもある。
また産女とも書き、乳母女(うばめ)ともいう。

子供を孕んだまま死んだ女性の亡霊。
産女になるのを防ぐには、腹を裂いて胎児を取り出し母親に抱かせたり負わせたりして葬るべきと伝えられている。
また地方によっては人形を抱かせるところもあるようだ。

江戸時代の怪談集「宿直草」ではわああひ、「百物語評判」は、腰より下は血塗れでをばれう、をばれうと鳴くとしている。
どちらももの哀しげで不気味な響きだ。

宿直草では寛永四年春、与七という男の寝室に産女となった女が夜な夜な出没し、眠ることが出来なかった。
怒った与七は柱に産女を縛りつけたが、翌日には血の継ぎ切れを残して居なくなっていて、効果はない。
お経をあげても駄目、とうとう精根尽き果ててしまった。
そんな折、ある人があなたの褌を産女の来る場所に置いておけばその後は来なくなると云う、と聞いて早速試して見たところ、翌日褌はなくなっており、産女はもう2度とこなかったという。

雨の日に赤ん坊を抱いて現れ、道行く人にしばしの間赤子を抱いていてくれと頼む。
ちなみに子を抱くのを断ると呪われて、寒気と高熱に襲われ死に至るという。

そこで産女の頼みを聞き入れ、赤子を抱くとその赤ん坊が重くなるというものである。
これに堪えきると怪力や金品が授けられるという伝承もある。
また重くならずに、人家に近づくと消えてしまうというのもある。

諸国百物語では寛永元年、京の東にある林にうぐめという化け物がいたという。
赤子の泣き声で鳴き、日が暮れれば誰も近づかない有様だったが、豪胆な人間がこの化け物を退治しようとした。
この化け物を切り捨てたところ、その正体はサギであった。
人々はこんなものを恐れていたのかと大笑いして帰っていった・・・いや、鳥には迷惑極まりない話なんですが。

常陸のあたりの民間伝承ではウブメドリ、子をさらう目印に自分の乳を服につけるという中国妖怪に近い性質だ。

あの有名な飴を買いにくる幽霊も産女の一種である。

正体は狐狸の類ともいう。

詰まるに産女とは女性、特に子に未練を残した母の亡霊の総称といったところだろう。
総称ゆえにその逸話や種類も多いので、また各個に別項を設けるとして、今回はここで締めとしよう。

いつからか中国の姑獲鳥と混じったようだ・・・時期としては文献から判断するに江戸時代辺りのようだが・・・