メリジューヌ

melusine

メリュジーヌとも。

フランスの民間伝承で語られる、上半身は美しい女性、下半身は蛇の姿をした妖精の類だという。
背中には竜の翼があるとされることもある。

12〜3世紀には既に伝承があったようだ。
ルーツをケルトの古い女神にあるとする説もある。

1397年にフランスのジャン・ダラスが書いたメリジューヌ物語にて広く知られるようになった。
またパルトゥネの領主ギョーム・ラルシュベックの命令で、クードレットがメリジューヌ物語、あるいはリュジニャン一族の物語を執筆している。
これの詳しい年代ははっきりしないが、ギョーム・ラルシュベックの死後に完成したとされており、没年の1401年以降とされている。

典型的な異類婚姻譚であり、彼女の名を取って、類話をメルシナ型メリュジーヌ・モチーフという。

メリジューヌは泉の妖精を母に、人間であるアールバニーの領主を父にもつ。

父がお産の様子を見てはいけないという約束を破ってしまい、母とメリジューヌ達三姉妹は妖精の世界に押し込められることになる。

成長した子供達は、母との約束を破った父を幽閉してしまう。
とはいえ喧嘩別れしたわけでもなく、母はまだ夫を愛していたようで、怒った母は彼女達に呪いをかけて追放してしまう。

メリジューヌにかけられた呪いは週に一度下半身が蛇になるというものだった。
呪いを解くためには永遠の愛を得なければならなかった。

やがて彼女はブルターニュ伯(ポワトゥー伯ともされる)と恋に落ち、結ばれる。

彼女は優しく温厚で、敬虔なクリスチャンであり良き妻であった。
ただ週に一度、呪いによって日曜日には異形の姿に変じてしまうので、沐浴をするので決して覗かないでくれと誤魔化していた。

だがある日、とうとう夫は誓いを破って彼女の異形の姿を見てしまう。

それでも彼は妻を愛していたようで、そのまま結婚生活を続けたが、二人の間に産まれた子供は奇形児だったり、性格に難があったり。
とうとう息子が殺人を犯したと聞いた彼は、彼女が人間ではないからまともな子供が産まれないんだと罵ってしまう。

メリジューヌは誓約を破られ、呪いによって永遠に異形の姿で生きることになってしまった。
彼女は異形となって教会の塔を打ち壊し、姿を眩ませてしまった。

だがまあ夫婦喧嘩はどこにでもあるもので、こんなことになったが、自分の夫や子供達は気になったのだろう。
彼女は城主の亡くなる前や、凶兆の前に姿を現し、家人に警告するようになったという。

なおこの一族がリュジニャン家であり、これ自体は実在した存在である。
メリジューヌとはリュジニャンの母という意味なのだ。

また人魚の伝説とも結びつき、フランスやイギリスの紋章では二尾のマーメイドの姿で描かれたりしている。

また今は廃れてしまったが、彼女が去ったという日にブルターニュ地域圏では祭りを行い、屋台で人魚のような姿をした女性を木型で浮き彫りにした、メリジューヌという焼き菓子が売られていたという。
現在ではこの木型が僅かに残っているだけである。