隕鉄

meteoric iron

星というのは神話を語る上で外せない要素である。
星について様々な神話が存在するが、今回は隕石、その中でも隕鉄を取り上げます。
天より降ってくる星、隕石は神からの贈り物として世界中で特別視された存在である。

まず隕石の分類ですが、石質隕石、隕鉄(鉄隕石)、その中間の石鉄隕鉄に大きく分類されます。

簡単に表にするとこんな感じです。

石質隕石

主に岩石の成分でできた隕石

 コンドライト

コンドリュールと呼ばれる球状の結晶を多く含む。

エコンドライト

コンドリュールが少ない。

石鉄隕石

石質隕石と隕鉄の中間の組成をもつ隕石

隕鉄(鉄隕石)

主に鉄,ニッケル,コバルトなどの合金でできた隕石

アタキサイト

結晶組織を示さない隕鉄。

オクタヘドライト

結晶組織を示す隕鉄で、ニッケル含有量が6%〜14%までのもの。隕鉄の大部分はこれである。ウィドマンステッテン組織という独特の組織が出来る。

ヘキサヘドライト

結晶組織を示す隕鉄で、ニッケル含有量が6%以下のもの。

人類が最初に出会った鉄

人類が最初に発見した鉄は宇宙から飛来した隕鉄であったという説があります。
古代エジプト人などは、鉄は天から来るものだと考えていたようです。

まあ、最初は石器と一緒くたに使ってたようですが。

古代エジプトや中国の遺跡からは、隕鉄を鍛造した鉄片がいくつも出土しています。隕鉄であることがわかるのは、ウィドマンステッテン組織と呼ばれる特有の金属組織がみられるからです。
隕鉄は鉄・ニッケル合金で、ウィドマンステッテン組織が出来るには、最低700℃以上からゆっくり冷やす必要がある。
真空上で温度が約1℃下がるには約100万年を要するため、計算すると最低でも7億年という冷却過程を必要とするので、人工的にはつくれない。

もし人工的に作れたとしたら古代人は想像を絶する技術を有していたことになる。

隕鉄の武具

隕鉄は霊的な力を秘めていると信じられ、様々なものに用いられました。

隕石を御神体にしているところは少なくありませんし、ツタンカーメンの王墓からも隕鉄剣が出土しているし、マレーシア辺りにはクリスという儀礼用の隕鉄剣が存在している。

日本では、隕鉄を星鉄、隕星、天降鉄などと呼び、やはり霊的な力が備わった鉄と信じた。
鉄が魔除けの力を秘めるという伝承はここから来ているという説もある。

かの天叢雲も隕鉄で鍛えられたという説もある(まあ、異説ですが)し、富山県に落下した隕鉄から農商務大臣の榎本武揚が刀工の岡吉国宗に依頼し、出雲の玉鋼:隕鉄=3:7で長刀2振、短刀3振、合計5振の刀を製作し、長刀1振を時の皇太子(後の大正天皇)に献上した話は有名である。現在長刀1振、短刀2振のみ現存している。これらは流星刀と名づけられている。

日本刀

ここでは隕鉄と日本刀について解説してみる。

隕鉄は、自然鉄や還元法によって作られた人工鉄とは、まったく違った性質を持っている。

自然鉄は粘り強いがかなり柔らかい。
隕鉄は多量に含まれるニッケルが組織を硬くしている。
人工鉄は、数%以下の炭素を含み、熱処理によって硬さや粘さを調整できるが、典型的な隕鉄は、炭素分が10ppm以下と少ないため熱間加工後も、生のままの性質が保たれる・・・つまり日本刀のように刃に焼きが入らないのである。

1836年にナミビアで発見されたギボン隕石で1994年に日本刀を作った刀匠法華三郎は表面は柔らかくて簡単に砥石(切断ディスク)が入ったが、途中から硬くなって砥石の方が変形した。銑鉄でもないのに銑鉄のような火花が飛ぶし、どう考えても不思議な鉄だと言及している。

だが別の方はまったく火花が飛ばなかったといっている。まあ、部位によって組成が違うからだろう。

鍛接についていえば、隕鉄は一種のステンレス鋼だから鍛造できないという意見がある。
だが実際に鍛造できているので、この説を唱えた人はいい笑い者だろう。

隕鉄で日本刀を作成する場合、通常のやり方ではボロボロになりまったく使い物にならなかったという。

前述の刀匠の体験談によれば、鍛錬の温度は、思い切って融解直前まで上げる必要があったという。さらに最適温度と不適温度の間には、わずか30〜50℃程度の差しかなく、その違いで、鍛着したり、しなかったり、溶け落ちそうになったりしたとある。氏は、炎の色を見て適温を感じ取り、成功させたという。まさに熟練の技である。

日本刀は肌目に美しい模様が現れるが、これは折り返し鍛錬で生じた層の反映である。
隕鉄を鍛えた刀は、ニッケルと鉄が層を作り屋久杉の年輪のような、派手な模様を形成した。上述の隕鉄刀には、日本刀にない独特の板目肌と杢目肌が浮いて、刃縁は柾目肌に出たという。

切れ味など実用度に関しては焼きが入らない点から低いと思われます。
しかし、玉鋼などを用いた場合は充分実用的なものになると見ます。

もしかすると考えられない方法で凄い刀を作った人が過去にいるかもしれません。
ありえないと否定するのは簡単ですが、もしかするとというのはシナリオを書く際には重要です。

創作作品における扱い

創作作品においては隕鉄の武器はやはり特別な力を秘めたものとして登場する。

コミック天空の覇者Zにおいては主人公が隕鉄(ちなみにT鉱という高エネルギーを秘めた鉱物)を鍛えた陸奥守流星之剣を使っていた。刀身は半透明であり、真の力を発揮したときは星の光を放ちあらゆるものを切り裂く。

ヤングジャンプで掲載された鬼王丸(残念ながら打ち切りになった・・・好きだったのが)では鍛治屋である主人公が七つの隕鉄を求めて旅をするという話。
勝手に他の隕鉄と融合するわ、自己修復能力を有するわと凄まじいものだった。

ルパン三世の斬鉄剣もコミックでは隕鉄製で流星という銘があった。(うろ覚え)
まあ、シリーズによってヒヒイロカネ製とか正宗・村正・村雨を混ぜたとかいう設定も出てくるので・・・
コンニャクは切れないとか、弾丸を腹で弾いても刃毀れ一つしない常軌を逸した刀である。

創作作品ではもはや超金属の一つとして扱われてますな。