(みずち)

蛟龍(こうりゅう)ともいう。
中国の伝承にある龍の一種で日本でも有名。
龍の中では一番身近な存在とされる。
みずちは日本の呼び名で、中国ではコウと読むそうだ。

蛟の住み処は、湖・淵などの水場、また人家に近い池や川に棲むことも多かったのでよく目撃されたという。
また池や川に隠れ棲む蛟に潜むという字をあてて潜竜、潜蛟と親しみを込めて呼ぶこともあった。

中国では蛇が進化し龍になるという伝説があり、蛟はこの段階の一つ。
この段階についても諸説あり、大蛇がいきなり龍になるという話しもあります。
まず蛇が()、もしくは(きゅう)と呼ばれるものに進化します。
螭は手足が生えたもの、虬は角が生えたものです。
そして角と手足が生えたものが蛟であり、ここから一部の蛟が龍になるといいます。
別の説では蛟と虬が逆の場合もあります。

また龍の子供という説もあり、蛇と雉が交わると卵を産みそれが地下十数メートルのところに潜って蛇となり、齢数百を経て天に昇り蛟となるという説もあります。

明代の博物事典『本草網目』によると、蛟の姿はほとんど『龍』に近いもので、蛟の顔は龍によく似ているが、眉または目の上の肉の盛り上がりが目と目の間で交差しており、それが蛟という字が当てられた由来でもあるとされます。

別の説では水の神の古語を語源とする、中国で類似の存在コウを当て字したなど諸説あります。
雄と雌が眉で交じわって子が生まれるためという説もあります。

同書では体長3mのほっそりした蛇形で四本足、掌は楯のようで、首には白いこぶがあり背は青いマダラ模様、腋は錦のようで、尾の先に何重もの環が付いているとされます。
また龍に似ているが、角と赤い髭を持ち、四肢があり、背中には青い斑点があり、尾の先にはこぶ、あるいは肉の環がある。体の脇は錦のように輝き、腰から下の鱗はみな逆鱗となっていて、杜若を食べると口から気を吐いて蜃気楼を作り、楼閣が現れるとも。
蜃気楼というのはここから来ているようです。

蛟は湖や池、川などに住まう淡水の泳ぐ生き物すべての王といわれ魚を常食とします。
しかしなぜかスッポンが苦手なようで、養殖場などでは蛟が棲みついて荒らさないよう魚の群れにスッポンをまぜておいたとか。
また山海経によれば池の魚が二千六百匹を越えると、蛟がどこからかやって来てその池の主になるという。

蛟は姿はほとんど龍と変わりませんが、能力は及ばず雨雲を呼ぶことはできても雨を降らせることはできず、水を支配するほどでもないそうです。
それでも農家にとってはめったに拝めない龍よりも、多少劣っても身近な蛟の方がありがたがられたといいます。

ちなみに龍になれなかった蛟は海へと流れて竜王の配下となり、宮仕えに成り下がってしまうこともあるとか。

蛟に関する話はいくつかありますが、本草綱目に食べられてしまった蛟の話があります。
漢の招帝が湖で釣りをしていると、1mくらいの白龍で、額に小さな柔らかい角と唇から突き出した牙を持っていた。
帝の臣下はその龍を棒で叩き殺したが、帝は祟りを恐れて怯えたので臣下が、これは蛟なのでたたりなどありませんと言い、その蛟は酢漬けにされて調理されてしまった。
その肉は魚と鶏の中間のような味で、大変な珍味だったと言う。
しまりのある肉は淡い紫色で、歯ごたえのある骨は白みがかった青だった。
・・・毒々しい色ですな、さすがは中国・・・よく食った。
しかし棒で叩き殺されるなよ・・・弱すぎ。

また薬などにもなり、その脂から作った燭は五百歩の間香り、その煙の中には楼閣が現れるという。
他にもお産の苦痛を和らげる薬も出来るとか。

日本ではみずち(みづち)と読み、みずが水、ちが精霊・蛇を意味する。
もしくはみが水、ずが助動詞、ちが霊という説も。ようは水霊、水神の意。龍の一種である蜃と同一視されることも。
初期の頃は、濁らずみつちと呼んだそうで。浜崎さんと一緒ですな。

日本書紀にも虬の記載がある。

最初は神聖なものとされましたが、時代が下ると山や川に住む邪悪な怪物と考えられるようになり、そのうち河童と混同されるようにまでなってしまった。

ミスター味っ子などで有名な作者が、「ワラシ」という座敷童が主人公の妖怪バトルものを描いていたが、記念すべき第一話の敵が蛟だった。
3千年の時を生き、龍と同等の力を持つ(自称)千年蛟だったが、最初の敵だけありあっさりやられてしまった。やはり自称に過ぎなかったようだ。

自分のシナリオでは単純に、ドラゴンの幼体の呼び名の一つとしてます。