陰摩羅鬼おんもらき

蔵経や清尊録に記された物の怪。

死んだばかりの死体の氣が変じてなったモノで、鶴に似て、色黒、眼は灯火のように輝き、羽を震わせ高い声で鳴くとある。

清尊録では寺の法堂で寝ていた者を叱りつける逸話がある。
一種の教訓を表す話なのだろうが、太平百物語では近所の家の者が寺で昼寝をしているときに現れたという。

山城の国(今の京都南部)に、宅兵衛という者がいた。
夏の暑い日、宅兵衛は近くの寺に行って方丈の縁側に出てしばらく涼んでいると、とても心地が良くて眠たくなった。
その時、何者かが宅兵衛を呼ぶ、驚いて辺りを見回すと鷺に似た奇妙な鳥がいた。

その色は黒、爛々と光る眼に羽を振るって鳴くその声はまるで人間のよう。
宅兵衛は怖がり、法縁を退いてその様子を窺っていると、翼を広げて羽ばたいたと思った瞬間、頭から徐々に消え、いなくなってしまった。

奇怪に思いすぐさまこの寺の長老にその怪鳥の正体を問いただしたところ、この寺にそんな化け物が出たことはなかったが・・・ そういえば最近、死人が出て死体を仮に納めておいたが、おそらくそれの気が変じてそのような化物になったのだろう。蔵経の中にもそんなことが書いてあると語った。

宅兵衛はそんなこともあるのかと奇妙に思った。

仏教系の怪異・・・なら原点はインド辺りだろうか?
陰摩羅鬼はどう考えても当て字だし、さて本来はどういう意味だったのか・・・