銭塘君せんとうくん

銭塘竜王とも。

中国では川に龍が住まい、支配しているという思想があった。
河川の氾濫は龍が怒っているからで、頻繁に氾濫する川は気性の荒い龍神が支配していると考えられたわけだ。

この銭塘君はその名の通り、中国浙江省北部を流れる銭塘江を支配する龍神である。
この川は河口地形や潮流の関係で時折、川が逆流する大海嘯だいかいしょうという現象が起こる。

そんなもんだから銭塘君は非常に気性の荒い龍神と考えられた。

銭塘君は洞庭湖の洞庭竜王の弟で、尭の時代に腹立ちまぎれに中国全土を大洪水にして、また後に天界の将軍と争って再び天下を水没させた為に、神位を剥奪されて謹慎処分を受けたという。

中国時代の小説「柳穀伝」では数百mもある眼、舌、鱗、髭まで赤い巨大な赤龍で火を吐き、身体の周りでは雷が鳴り雨や霰が吹き荒れると 描写された。

とはいえ情には厚いようで姪(洞庭竜王の娘)が嫁ぎ先でいびられているのを知るとすっ飛んで行き姪の婿を食い殺している。
もっともそのとき起こった風雨は800里に亘る被害をもたらし、60万の死者を出した・・・とばっちりを喰らった方は堪ったものではあるまい。

人としての姿は紫の袍を来て青玉を持ったいかつい顔の貴人として出ている。
姪のことを知らせてくれた柳穀に対し音楽を演奏してもてなしている。
その後、姪を貰ってくれと言う・・・が、柳穀はそんな強引な婚姻は嫌だと突っぱねると非に気付き謝罪をしている。
礼儀も学もあるようだ・・・が気が短すぎるのが難点な龍である。

ちなみに柳穀はその後、なんだかんだで姪と一緒になっている。

コミック「ドラゴンロアーズ」にも登場しており、爬虫類が嫌いな竜使いのヒロイン使役されることになる。
この作品では剛直で助平・・・
ペルシャに行ってアジ・ダハーカと大立ち回りを繰り広げた。
このとき畏れられてこそ神・怖れられてこそ魔という名台詞を残している。