輪入道

諸国百物語の京東洞院、かたわ車の事に登場する。
その名の通り片輪車の名で登場しており、本来は輪入道の名前ではない。

京の東洞院通りに昔、片輪車という化物が夜な夜な南から北へと駆け去って行ったという。
そのため人々は恐れ、日が暮れると往来する者はいなかった。

ところがある女房がこれを見たいと思い、ある夜格子の内側から通りを見ていると、噂通りに南の方から片輪車の軋む音が聞こえてきた。
牛も人もいないのに、一つの車輪が回りながらやってきたのでそれを見ると、何と引き裂かれた人の股をぶら下げていた。

女房が恐れ驚いていると、車輪が人のように声を上げ、そこにいる女房よ、俺を見る暇があったら、自分の子でも見るんだな、と言った。

慌てて我が子のところにいくと、三歳になる自分の子が肩から股のところまで引き裂かれて死んでいた。
片方の股は何処にもなかった。

女は嘆き悲しんだが、我が子の命も、股も返ってはこなかった。
あの車にかかっていた股は、女房の子供の股であったのだ。
女といえど、好奇心のあまりに妖怪を見ようとした所為である。
と締めくくられる。

片輪車は諸国里人談にも記載があるが、こちらは車輪が片方無い車に乗った女の姿で現れている。
それに比べ、こちらは車輪単体・・・ひょっとすると片方無い車輪はこいつのことでは・・・

後世になって鳥山石燕は、諸国里人談に記載のあるものを片輪車、この車輪型のモノを輪入道の名で絵に描いている。
ちなみに石燕は輪入道を見ると魂を抜かれるとしている。
・・・あれ?女房さんは?女房さんの魂って子供?

また石燕は此所勝母の里と紙に書いて家の戸に貼っておけば、あえて近づいてくることはないとしている。

その姿は炎を纏った牛車の車輪の中央に、入道の顔がある姿で描かれる。
ちなみに入道とは仏道に入った人、頭をそって坊主頭にした人を指し、転じて坊主頭の大男のことである。
動くときに顔がぐるぐる回らないのだろうか。

ゲゲゲの鬼太郎にも同様のデザインで登場しており、炭素光線を吐いて相手をダイヤモンドに変え食べてしまっていた。