__第一章一幕 死の嵐と大鷲_/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「こんなことならニズを持ってくるんだったな」
呟いた瞬間、視界に赤い色が飛び込んでくる。
人間の本能に訴えかける警戒色。
「八時方向、高熱源体接近!!」
AIの音声が響き終わる瞬間、既にフレスベルクは弧を描く様な機動を取っていた。
高熱源体・・・飛来するミサイルから逃れるのではなく、向き合う軌道を。
「数5、全てGH弾頭と判明!距離22000 速度マッハ5で接近中」
ビーム砲では間に合わない。
即座に判断し、行動に移す。
「胸部ガトリング ショットシェルファイア!!」
「ラジャ!!」
胸部に装備された二門の火砲が火を吐き出す。
高速で射出された弾丸は中途で弾け、無数の散弾と変貌した。
それはさながら空中にばら撒かれた機雷だ。
蜘蛛の巣にかかる羽虫の様に機雷群に呑まれたミサイルが次々に誘爆を起こす。
瞬間 ミサイルは焔の柱へと豹変した。
それは竜の炎の如く地を舐め尽くし、熱量はゲヘナを極寒と思わせる領域。
砂を気体に、液体に、そしてそれを逃れた物も硝子へと変質させるに足るものだ。
Giga Heat
基本理論自体は1000年以上前からあるモンロー効果というものを利用したものだ。
だがその威力は旧時代の比ではない。
瞬間・局所的にとはいえ億に達し得る熱量を発生させうるのだ。
「機体温度上昇1400℃ 許容範囲内」
「次弾は?」
「感無し」
ミサイルは無論高額だ・・・出し惜しみしているのならありがたいが・・・
それとも今ので全部か・・・
楽観的な希望ではあるが期待せずにはいられない。
行くか退くか・・・即座に算段する。
いや、するまでもない・・・
退くことは出来ない。ミサイルを振り切ってこのエリアを離脱出来るか?
この機体なら可能だ。だがそれだけの速度を出せば、パイロットスーツを着ている自分はともかく眠り姫はただではすまない。
なら戦うか・・・それも難しい。
少女のことを考えれば戦闘機動を行うのは無理だ。
この機体の最大の武器である機動力を生かすことが出来ない。
だが・・・それでもやるしかない。
わざわざ助けた者を簡単に見捨てるなど出来ないのだから。
少なくとも・・・限界までその努力をやめはしない。
「敵機の位置は?」
「ECMのため不明。ECCM作動中 割り出しにおよそ4分を予定」
「そんなに待てんな・・・音感を最優先で処理しろ。索敵はソナーでやる」
「パッシブで」
「アクティブでいい。どうせ見つかっているんだ、気にすることはない」
この機体、FGCA15-Cフレスベルクの電子装備は最新鋭のものを搭載している。
高機動・高火力による短期決戦が前提の機体にとっては、周囲の情報を正確に把握できる能力は必須だ。
そのフレスベルクと同等の電子戦装備を持つもの。
そしてミサイル攻撃。
ECMの影響を考えれば、こちらを視認して攻撃している可能性が高い。
そもそもレーダーの反応からして長距離からのミサイルではない。
確実に周辺に潜んでいるはずだ。
まずは敵の位置を掴まなければ。
この戦闘スタイルにふと悪い予感がよぎる。
「まさか・・・あの殺戮狂か?」
「か、はははははははははははは!!あれを凌いだか。やるねえ・・・」
「ますたー、優先スルハ対象ノ確保デス」
「止むを得ない場合は殺っていいんだろ?殺していいんなら」
砂漠に生える濃緑の大樹。
いや、大樹というより
そんな形容が相応しい重装甲の機体。
全身の各所から覗くミサイルの弾頭はさながら棘の様だ。
「殺っちまえばいいんだよ!!」
大鷲に襲い掛かる。
「次弾感知、総数20・・・熱源は散開中」
「全部で20発か、いかれてやがる!!」
これはミサイルの包囲網だ。ECMによりロックオンは難しい。
故に現行のミサイル運用とは威力に任せた逃げ場のない広範囲攻撃という力任せのものが主流だ。
余りあり過ぎる爆発の効果範囲は生半可な回避運動では避け切れない。
一箇所だけ包囲に穴があるのは完全に誘いだろう。
そこに逃げ込んだところで本命がくる。
「ビームバズーカセット!!」
「セット完了。マスター、迎撃できるのは一箇所だけです」
「構わん!!」
意図的に開けられた包囲の穴を抜けるのではない・・・自らの手で穴を開ける。
一撃でミサイルを蒸発させられる武装はこいつだけだ。
瞬間、背部の大筒から閃光が迸る。
Giga Heatが地獄の轟炎ならば、この光は文字通り神鳴る雷の威力。
地獄を内包した大槍を消滅させる光の槍だ。
その槍の軌跡をなぞるように大鷲が飛び立った。
「熱による誤差修正、音源特定完了・・・位置算出・・・完了」
獲物を視界に捉えた死の鷲が
死の嵐を吹き散らすために!!