「速い!?」

ゲイルストームは驚愕の声を上げる。

フレスベルクの加速が異常に速い。
機体形状による空気抵抗、質量、スラスターの噴射炎から計算される加速速度とまるで計算が合わない。

誤差・・・などという生易しいものではない。
計算に重要なファクターがごっそりと抜け落ちた・・・
まるで計算が合わない、異常な加速性。

白き大鷲がその爪を突き立てんと、重力を味方に天より飛来するかのように
揺らめく陽炎を伴い迫り来るのだ。

「陽炎?いや、こいつは!」

重力場

重力場が大気を歪めている。

この加速性は重力場による大幅な空気抵抗の遮断。

「なるほど、そいつが現行最速の秘密ってわけか・・・小僧!!」

だがまだ足りない。
爪を突き立てるにはまだ遠い。

予想外ではあったが300m手前で迎撃できる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マスター、白兵戦は構いませんがあの機体を破壊した際に蓄積された陽電子が対消滅を起こす際の

「心配ない、きっちり安全装置は組み込んである。
ほぼ機構と一体化させてたし、外す理由もないから仕様変更はしてないだろ」

陽電子砲は元々宇宙要塞用の主砲として研究開発していたものだ。
破壊された際に、いちいち陽電子が対消滅を起こしていたら要塞ごと消し飛びかねない。
陽電子砲そのものというよりは、如何にして兵器としての実用性と安全性を高めるかという研究だった。

「マスター・・・その口ぶりは」

「あれ、設計したの俺」

「何やってるんですかあんたは」

「盗まれたっていうか強奪されたんだよ、目の前のやつによぉ!!
職場と一緒に命までなくなるところだったぞ」

フレスベルクのシールドの裏に収納されたビームソードの発振機を取り出す。

「では意趣返しといきましょう」

「存分にな・・・エネルギーパック排出!右腕部コネクタ開放!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「発射マデ3秒」

「よし、間に合った・・・クク」

 

「腕部コネクタ接続」

 

「2秒」

 

「接続完了」

「メガビームソード使用可能」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一筋の閃光が走った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大鷲の爪、右腕部より伸びた一筋の閃光が嵐を両断した。

通常20〜30mのビームの刃を形成する発振機は独立した外部エネルギーパックによる電力供給で刃を形成する。

だがこれは違う。

腕部に設けられたコネクタに接続された発振機はFG本体ジュネレーターより供給される莫大なエネルギーそのものをビームの刃へと形成する。
出力にして通常の数百倍、単純な射程、いや刃渡りにして十倍の300m以上を誇るメガビームソード。

されどその輝きは一瞬

「ビームソード発振機強制排出」

半ば溶解した発振機が、落下途中に小爆発を起こし砕け散る。

極々当たり前の話。

これは電池仕掛けのおもちゃに発電機を繋ぐような愚行。

電球に許容量を超える電力を注げばどうなるか?

簡単だ、一瞬の輝きを放ちその機能を停止する。

一瞬の閃光、だからこその奥の手

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「取り敢えず、生き残れたな・・・フレス、お姫様の具合はどうだ」

「それですが、マスター・・・すでにお目覚めです」

戦闘を終えて気を抜いた故に分からなかったが、なるほど確かに人の気配を感じる。

「ああ、目が覚めたか、具合はど――」

振り向いて少女の姿を目にした瞬間凍り付いた。

「ま、待て・・・ちょっと乱暴に操縦したことは謝る、謝るから」

焦り、焦燥。

「だから、だからな・・・銃口をこっちに向けるな」

恐怖、これから起こることを想像し恐れが走る。

「・・・・・・」

少女は無言

歴戦と呼べる男を恐怖させる少女の瞳は疲労を湛えている。

「落ち着け、いまハッチを開けるから落ち着いて」

「マスター、まだ機体冷却が済んでませんので開けると焼け死にますよ」

「とっとと済ませろ!!」

叫んでから、しまったと思った。
それが少女を刺激してしまった。

「・・・き゛も゛ち゛わ゛る゛い゛」

「だからちょっと・・・銃口(くち)をこっちに向けるな〜〜〜〜!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頭から盛大にぶちまけられた・・・

次回に続く

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