労働時間とは
川村法務事務所(社労士・行政書士事務所)

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労働基準法上の労働時間とは

労働時間に関する定義については、法律に定めはありませんが、つぎの通達があり、判例(平11.3.9最高裁第一小判決 三菱重工業長崎造船所事件)においても、同じ解釈がされているところです。
昭33.10.11 基収6286号
「労働とは、一般的に、使用者の指揮監督のもとにあることをいい、必ずしも現実に精神又は肉体を活動させていることを要件とはせず、したがって、例えば、貨物取扱いの事業場において、貨物の積込係が、貨物自動車の到着を待機して身体を休めている場合とか、運転手が二名乗り込んで交替で運転に当たる場合において運転しない者が助手席で休息し、又は仮眠しているときであってもそれは「労働」であり、その状態にある時間(これを一般に「手待時間」という。)は、労働時間である。」とされています。

上記の通達から「労働基準法上の労働時間」とは
就業規則や労働契約等に定められた時間で決まるものではなく、使用者の指揮命令の下で、実際に業務を行っている時間(実労働時間)はもちろん、業務を行うために待機している時間(手待時間)も含めた時間が、「労働時間」と解されています。

労働基準法の労働時間は、遅刻、早退、職場を離脱、私用外出、組合活動の時間等の使用者の指揮命令下を離れて、就労しなかった時間は労働時間としてはカウントされず、それらの時間を差し引いた時間が、法定労働時間(1日8時間かつ1週40時間(特例事業は44時間))を超えなければ違法とはなりません。
ただし、実労働時間が法定労働時間(1日8時間かつ1週40時間(特例事業は44時間))を超える場合には、36協定を締結すること等の法律上の事由があれば適法であり就労が可能となります。


「使用者の指揮命令の下」の労働とは

使用者の指揮命令の下の労働とは、業務から完全に解放されず、使用者から拘束を受けて精神又は肉体的な活動を行っている状態をいいます。
拘束されている時間とは、使用者の管理の下にある時間をいいますが、拘束されていても直接に指導命令下になく労働から解放されている休憩時間等は労働時間とはいえません。


労働時間にあたらない時間

労働時間に該当しない時間帯の例
休憩時間
始業前、終業後の自由時間
任意で行う更衣時間
(業務に必要不可欠なもので義務拘束的なものは労働時間となる)
制裁等の不利益な取り扱いがなく、自由参加の教育・研修時間
(安全衛生教育については、事業者の責任において実施するものであり労働時間と解される)
一般健康診断
 (特殊健康診断は労働時間となる)
目的地到着まで船内で自由に行動ができる場合のフェリー乗船時間
出張の際の往復時間
福利厚生活動の一環としての趣味の会の活動
宿・日直時間(許可必要)
(許可がない場合には、労働時間となる)
監視・断続労働(許可必要)
私用・組合活動
仮眠時間
仮眠時間については、不活動仮眠時間であっても労働からの解放が保障されていない場合には、労働時間と解される


労働基準法上の労働時間と各企業で定めてる所定労働時間

労働基準法上の労働時間
日本は、実労働時間制を採用していおり、労働基準法上の労働時間とは、実際に労働した時間(実労働時間)をいいます。
よって、企業で定められた所定労働時間内であっても、実際に業務についていなく、使用者からの指揮命令から離れている時間は、法律上の労働時間とはなりません。
ゆえに、遅刻や早退した時間は、当然に労基法上の労働時間とはなりません。

接待等の時間、遅刻時間、早退時間等は、法律上の労働時間とはなりませんが、企業の取り扱いとして労働時間と取扱うことは自由です。
また、その日の労働時間が、遅刻や早退時間をは含めなければ法定労働時間を超えていない場合でも、遅刻・早退時間を含めた場合、法定労働時間を超えているようなときにその超えた時間を残業時間としてカウントすることもできます。ただし、実労働時間が法定労働時間を超えたものでなければ労働基準法上の時間外労働とはなりません。


企業において定める所定労働時間
所定労働時間とは、
就業規則等で定める始業時間から終業時間(休憩時間を除く)までの労働契約上の労働時間となりますが、この時間は労働基準法に反しない限り自由に定めることできます。

所定労働時間は、原則として賃金算定の対象時間となります。
(例外 労使の合意があれば対象時間を別に定めることもできます。)


労働時間のカウント開始時期と終了時期

労働基準法上の開始時期
実際に使用者の指揮命令下において就労を開始した時点から起算
タイムカードの打刻時間は労働時間とはならず、原則として実際に業務を開始した時間が起算点と解されています。
なお、労使の合意のもとでタイムカードの打刻時刻を起算点とすることも可能です。

民事上の開始時期
就業規則等に開始時間の定めによります。


始業時間および終業時間を繰上げる場合と繰下げる場合

始業時間および終業時間を繰上げたり、下げたりすることは会社の決定によることになりますが、それを受け入れる義務が労働者にあるか否かは、就業規則等の定めによることになります。
その旨の定めがある場合には、労働契約の一部として労働者はその定めに拘束されることになります。


労働基準法で定める労働時間制度の種類

労働時間の原則は、1日8時間、1週40(特例事業44)時間ですが、その他に、一定の要件のもとにつぎの労働時間制度を設けています。

@一カ月単位の変形労働時間制
A1年単位の変形労働時間制
B一週間単位の非定型的変形労働時間制
Cフレックスタイム制
D事業場外労働に係るみなし労働時間制
E専門業務型裁量労働制
F企画業務型裁量労働制


労働基準法の妊産婦および満18歳未満の年少者、15歳未満の児童の制限

妊産婦の制限
妊産婦とは、妊娠中の者および出産後1年未満の女性を言います。

変形労働時間制(1か月単位、1年単位、1週間単位非定型的の変形労働時間制)について
妊産婦が請求した場合には、1日8時間、1週40時間を超える労働はさせてはなりません。

時間外労働(法定労働時間を超えるもの)、休日労働(法定休日)および深夜業(午後10時から翌日の午前5時)について
妊産婦が請求した場合には、時間外、休日労働、深夜業をさせてはなりません。

満18歳未満の年少者の制限(ただし、満15歳に達した日以後の最初の3月31日までの間を除く)
変形労働時間制(1か月単位、1年単位、1週間単位非定型的の変形労働時間制)およびフレックスタイム制については適用は除外されています。
ただし、つぎの例外があります。
@1週間の労働時間が法定労働時間の枠内で1週間のうち1日の労働時間を4時間以内にすることを要件に、他の日について10時間までの労働が認められます。
A1週48時間、1日8時間の範囲内における1か月単位又は1年単位の変形労働時間制が認められます。

時間外および休日労働、深夜業、坑内労働は禁止されています。
ただし、深夜業については、つぎの場合には認められます。
@交替制による16歳以上の男子
交替制とは、就労時間帯が一定期間ごとに交替するものをいいます。
A交替制の事業で労働基準監督署の許可を受けた場合には午後10時30分まで労働させることが出来ます。この場合の事業とは、事業全体が交替制で運営されていることが必要です。
B農林水産業、保健衛生業および電話交換業務に従事する者
C非常災害時に、法定労働時間を超えての時間外労働、あるいは法定休日の休日労働に労働させた場合

危険有害業務の就業制限
労働基準法第62条
使用者は、満18才に満たない者に、運転中の機械若しくは動力伝導装置の危険な部分の掃除、注油、検査若しくは修繕をさせ、運転中の機械若しくは動力伝導装置にベルト若しくはロープの取付け若しくは取りはずしをさせ、動力によるクレーンの運転をさせ、その他厚生労働省令で定める危険な業務に就かせ、又は厚生労働省令で定める重量物を取り扱う業務に就かせてはならない。

2使用者は、満18才に満たない者を、毒劇薬、毒劇物その他有害な原料若しくは材料又は爆発性、発火性若しくは引火性の原料若しくは材料を取り扱う業務、著しくじんあい若しくは粉末を飛散し、若しくは有害ガス若しくは有害放射線を発散する場所又は高温若しくは高圧の場所における業務その他安全、衛生又は福祉に有害な場所における業務に就かせてはならない。

3前項に規定する業務の範囲は、厚生労働省令で定める。
年少者労働基準規則
(重量物を取り扱う業務)
第7条
法第62条第1項の厚生労働省令で定める重量物を取り扱う業務は、次の表の上欄に掲げる年齢及び性の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる重量以上の重量物を取り扱う業務とする。
年齢及び性 重量(単位キログラム)
断続作業の場合 継続作業の場合
満16歳未満 12
15 10
満16歳以上満18歳未満 25 15
30 20

(年少者の就業制限の業務の範囲)
第八条
法第六十二条第一項の厚生労働省令で定める危険な業務及び同条第二項の規定により満十八歳に満たない者を就かせてはならない業務は、次の各号に掲げるものとする。ただし、第四十一号に掲げる業務は、保健師助産師看護師法 (昭和二十三年法律第二百三号)により免許を受けた者及び同法 による保健師、助産師、看護師又は准看護師の養成中の者については、この限りでない。


ボイラー(労働安全衛生法施行令(昭和四十七年政令第三百十八号)第1条第三号に規定するボイラー(同条第四号に規定する小型ボイラーを除く。)をいう。次号において同じ。)の取扱いの業務

ボイラーの溶接の業務

クレーン、デリック又は揚貨装置の運転の業務

緩燃性でないフィルムの上映操作の業務

最大積載荷重が2トン以上の人荷共用若しくは荷物用のエレベーター又は高さが15メートル以上のコンクリート用エレベーターの運転の業務

動力により駆動される軌条運輸機関、乗合自動車又は最大積載量が2トン以上の貨物自動車の運転の業務

動力により駆動される巻上げ機(電気ホイスト及びエアホイストを除く。)、運搬機又は索道の運転の業務

直流にあつては750ボルトを、交流にあつては300ボルトを超える電圧の充電電路又はその支持物の点検、修理又は操作の業務

運転中の原動機又は原動機から中間軸までの動力伝導装置の掃除、給油、検査、修理又はベルトの掛換えの業務

クレーン、デリック又は揚貨装置の玉掛けの業務(2人以上の者によつて行う玉掛けの業務における補助作業の業務を除く。)
十一
最大消費量が毎時400リットル以上の液体燃焼器の点火の業務
十二
動力により駆動される土木建築用機械又は船舶荷扱用機械の運転の業務
十三
ゴム、ゴム化合物又は合成樹脂のロール練りの業務
十四
直径が25センチメートル以上の丸のこ盤(横切用丸のこ盤及び自動送り装置を有する丸のこ盤その他反ぱつにより労働者が危害を受けるおそれのないものを除く。)又はのこ車の直径が75センチメートル以上の帯のこ盤に木材を送給する業務
十五
動力により駆動されるプレス機械の金型又はシヤーの刃部の調整又は掃除の業務
十六
操車場の構内における軌道車両の入換え、連結又は解放の業務
十七
軌道内であつて、ずい道内の場所、見通し距離が400メートル以内の場所又は車両の通行が頻繁な場所において単独で行う業務
十八
蒸気又は圧縮空気により駆動されるプレス機械又は鍛造機械を用いて行う金属加工の業務
十九
動力により駆動されるプレス機械、シヤー等を用いて行う厚さが8ミリメートル以上の鋼板加工の業務
二十
削除
二十一
手押しかんな盤又は単軸面取り盤の取扱いの業務
二十二
岩石又は鉱物の破砕機又は粉砕機に材料を送給する業務
二十三
土砂が崩壊するおそれのある場所又は深さが5メートル以上の地穴における業務
二十四
高さが5メートル以上の場所で、墜落により労働者が危害を受けるおそれのあるとこ
ろにおける業務
二十五
足場の組立、解体又は変更の業務(地上又は床上における補助作業の業務を除く。)
二十六
胸高直径が35センチメートル以上の立木の伐採の業務
二十七
機械集材装置、運材索道等を用いて行う木材の搬出の業務
二十八
火薬、爆薬又は火工品を製造し、又は取り扱う業務で、爆発のおそれのあるもの
二十九
危険物(労働安全衛生法施行令別表第1に掲げる爆発性の物、発火性の物、酸化性の物、引火性の物又は可燃性のガスをいう。)を製造し、又は取り扱う業務で、爆発、発火又は引火のおそれのあるもの
三十
削除
三十一
圧縮ガス又は液化ガスを製造し、又は用いる業務
三十二
水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、シアン化水素、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
三十三
鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗素、塩素、シアン化水素、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
三十四
土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
三十五
ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務
三十六
多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
三十七
多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
三十八
異常気圧下における業務
三十九
さく岩機、鋲打機等身体に著しい振動を与える機械器具を用いて行う業務
四十
強烈な騒音を発する場所における業務
四十一
病原体によつて著しく汚染のおそれのある業務
四十二
焼却、清掃又はと殺の業務
四十三
刑事施設(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(平成十七年法律第五十号)第15条第1項の規定により留置施設に留置する場合における当該留置施設を含む。)又は精神科病院における業務
四十四
酒席に侍する業務
四十五
特殊の遊興的接客業における業務
四十六
前各号に掲げるもののほか、厚生労働大臣が別に定める業務



児童の制限
労働基準法では、「15歳に達した以後最初の3月31日が終了するまでの者」を児童とよんでいます。
児童については、労働自体が原則として禁止されています。
例外として認められる場合
満13歳以上の児童
非工業的業種に限り、@健康及び福祉に有害でないこと、A労働が軽易であること、B修学時間外に使用すること、C所轄労働基準監督署長の許可を得ること等により使用することができます。
満13歳未満の児童
映画の製作又は演劇の事業に限り、上記の@〜Cの条件を満たした上で使用することができます。

上記の例外が適用される場合の労働時間については、「修学時間を通算して1週間について40時間」と、「修学時間を通算して1日について7時間」と規定されています。


年少者の証明書
満18才に満たない者を使用する場合には、その年齢を証明する戸籍証明書を事業場に備え付けなければなりません。
児童を使用する場合には、修学に差し支えないことを証明する学校長の証明書及び親権者又は後見人の同意書を事業場に備え付けなければなりません。




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