採用の自由と規制

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採用の自由

企業がどのような人を従業員として採用するかについては、企業が自由に判断することでできます。

どのような人を採用するかについて法律で強制されるものではありません。
(思想や信条で採用を拒んでも違法とはなりません。)
最高裁大法廷判決(昭48、12、12)
「企業者が特定の思想・信条を有する労働者をその故をもって雇入れることを拒んでも、それを当然に違法とすることはできない。」
この判例は、「労働者の採用に際し、企業者が労働者の思想、信条を調査し、これに関連する事項について労働者から申告を求めることは違法とはいえない。」としています。

※ただし、性別等、不当な採用差別は禁止


採用の機会における規制

従業員を募集については性別にかかわりなく均等な機会を与えければなりません。
根拠はつぎのとおり
男女雇用機会均等法第5条
「事業主は、労働者の募集および採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。」

均等法第5条は、労働者個々の意欲、能力、適性を公平、公正に判断した結果として、男性、女性どちらか一方のみを採用することになったしても違反となるものではありません。


雇用対策法第10条では、
「事業主は、労働者がその有する能力を有効に発揮するために必要であると認められるときとして厚生労働省令で定めるときは、労働者の募集及び採用について、厚生労働省令で定めるところにより、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。」

雇用対策法第10条は、定年との関係、法令上の制限、特定の業務その他合理的な理由のある場合を除き、年齢にかかわりない均等な機会の付与を義務付けています。



一定の障害者の雇用義務
障害者雇用促進法により、一定の障害者の雇用が義務づけられています。

障害者の方を雇用する義務

すべての事業主は、障害者雇用促進法により、法定雇用率以上の割合で障害者を雇用することが義務づけられています。

法定雇用率(平成25年4月1日現在)
事業主区分 法定雇用率
一般の民間企業 2.0%
国、地方公共団体、特殊法人等 2.3%
都道府県等の教育委員会 2.2%

法定雇用率により障害者を雇用しなければならない事業主の範囲は、従業員50人以上となり、つぎの義務が生じます。
・毎年6月1日時点の障害者雇用状況の報告義務(ハローワークに対して)
・障害者雇用推進者を選任する努力義務

※障害者雇用推進者の業務はつぎのとおり
. 障害者の雇用の促進と継続を図るために必要な施設・設備の設置や整備
. 障害者雇用状況の報告
. 障害者を解雇した場合のハローワークへの届け出など



一般民間企業における雇用率設定基準(算定式)
障害者雇用率=
(身体障害者及び知的障害者である常用労働者の数+失業している身体障害者及び知的障害者の数)÷(常用労働者数+ 失業者数)

※ 短時間労働者は、1人を0.5人としてカウント
※ 重度身体障害者、重度知的障害者は1人を2人としてカウント。ただし、短時間の重度身体障害者、重度知的障害者は1人としてカウント
※ 精神障害者については、平成25年4月現在雇用義務の対象ではありませんが、各企業の実雇用率の算定時には障害者数に算入することができます。



障害者雇用納付金制度

障害者雇用納付金制度とは
法定雇用率を下回っている事業主から、法定雇用障害者数に不足する人数に応じて納付金を徴収し、それを財源に法定雇用率を上回っている事業主に対して障害者雇用調整金、報奨金、各種の助成金を支給する制度です。

徴収される納付金の額は、不足1人あたり月額 5万円
ただし、常用労働者200人超の企業から徴収し、200人以下の中小企業からは徴収されません。

※常用労働者200人超(平成27年4月より常用労働者100人超となる。常用労働者200人超300人以下の事業主は平成27年6月まで、常用労働者100人超200人以下の事業主は平成27年4月から平成32年3月まで納付金が4万円に減額される。

障害者雇用率を達成している場合や障害者多数雇用中小事業主に対しては、超過1人あたりに対して一定額の調整金が支給されます。
また、障害者を雇い入れるために、作業施設の設置・整備を行ったり、重度障害者の雇用管理のために職場介助者を配置したりする事業主等に対しては助成金の制度があります。
その他、障害者雇用納付金制度においては、在宅就業障害者又は在宅就業支援団体に仕事を発注した事業主に対して、特例調整金又は特例報奨金を支給制度もあります。




採用内定の問題(採用予定と採用内定)

採用内定者とは、正式に入社する前の者をつぎの二種類をいいます。

採用内定者 採用予定者
採用決定者


採用予定→単に「採用を予定している」や「採用の内定」のみを本人に知らせている場合
採用予定は、採用を予定していることのみを本人に何らかの方法で通知している状態のものであり、正式に入社が決定されておらず、労働契約は成立していない段階のものと言えます。

この段階では、入社する義務はなく、後日に入社に際しての必要書類の通知や入社日等の通知などがあった場合に、労働契約が成立し、採用が決定された状態となります。

採用予定の取り消し
採用予定の段階で採用を取り消したとしても、労働契約自体が成立していませんので、労働契約の解除とはなりませんので解雇の問題は発生しないことになると思われます。
しかし、その取り消し理由が不当なものであった場合は、民法上の損害賠償の対象となる可能性もありえるので注意が必要です。

参考判例
広島地裁呉支部判決 五洋建設事件(昭49、11、11)
この事案では、新卒予定者の内定を5月に行い、同年10月にうち内定を取り消したもので、取消事由の人員過剰となる見通しが明確になったという証明が乏しいとされ、内定取消しは認めらず、30万円の慰謝料が認められています。

東京地裁判決 宣伝会議事件(平7.1.28)
この事案では、採用内定中の大学院生が、被告会社の内定者懇談会や入社前研修会に参加していたが、その懇談会や研修ではレポートや課題が多数課せられ、学業の研究に支障をきたすようになった。
そのため、入社前の研修等を拒否したため、内定を取り消されたが、裁判所は、「入社前の研修等について同意しなかった内定者に対して、内定取消しはもちろん、不利益な取扱いをすることは許されず、また、一旦参加に同意した内定者が、学業への支障などといった合理的な理由に基づき、入社前の研修等への参加を取りやめる旨申し出たときは、これを免除すべき信義則上の義務を負っていると解するのが相当である」などとし、賃金1ヶ月分と慰謝料50万円、弁護士費用10万円の支払いを被告に命じています。


採用が決定された後の取消し
採用が決定された者とは、労働契約が成立している状態の者で、入社誓約書の受領や入社日等の通知により正式採用の意思表示をした場合です。

労働契約の成立後の採用の取消しは、通常「解雇」として扱われ、取消し事由に正当な理由がなければ無効となります。


採用内定者と労働基準法の関係

労働基準法第9条
「この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」と規定されています。

採用内定者は、採用が決定されていたとしても、事業等に使用されておらず、また、賃金も支払われていません。
よって、民事上の労働契約が成立しているとしても、労基法は適用されないことになります。


雇入れ時の健康診断

安全衛生規則第43条
事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、その労働者に対して、安全衛生法に基づき、医師による健康診断を行わなければなりません。

ただし、医師による健康診断を受けた後、3か月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、その健康診断の項目に相当する項目については、省略することができます。

雇入れ時の健康診断の目的は、採用を決定した者に対しての適性配置、入社後の健康管理に基礎資料とするたために実施するものです。

採用選考時の実施を義務づけるものではないので、採用選考において行う健診については、応募者の適正および能力を判断するうえで本当に必要か否か慎重に検討する必要があります。
健康診断で疾病が発見されても、採用内定の取り消しや解雇は認められません。
ただし、その疾病が労務の提供に著しい支障を生じさせると認められる場合には取消しまたは解雇が認められる場合もあります。

検診項目については、法令で定められている項目を省略することはできませんが、業務に欠かせない能力を見極めるため必要があると認められる場合には、項目を追加することも可能です。
ただし、事前にその必要性について説明し、本人の同意を得ることが必要です。
(必要のない検査で疾病等の個人情報をもとに解雇などをすることは許されません。)

健診結果の通知義務
健診の結果は、本人に通知することが義務付けられています。
もし、通知をしないで本人に損害が生じた場合には、賠償責任を負うこともありますので注意が必要です。


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