賃金Q&A



Q1 従業員が業務中に会社の車で自損事故を起こし、車を大破させてしまった。事故は、従業員の不注意から起きたものであるため、修理代を給与から差引ひくことにした。なにか、問題はないか?


労働基準法で認められているもので賃金から控除できるものは、所得税や社会保険料などの法律で認められているもののほか、親睦会費、組合費など賃金控除に関する労使協定で定めたものです。
それ以外は、賃金から控除することは認められません。
よって、会社が労働者に対する債権があるからといって、一方的に賃金の一部又は全部を相殺して支払わないということは認められません。
参考判例(日本勧業経済会事件 最高裁 昭36年)
「労働者の賃金債権に対しては、使用者は、使用者の労働者に対して有する債権をもって相殺することは許されない。このことは、その債権が不法行為を原因としてものであっても変わりはない」としています。
ただし、現実に生じた損害について賠償、すなわち修理代を請求することは可能です。
この場合でも、損害額については、従業員の過失の度合い、使用者の管理責任など諸般の事業を考慮して決定すべきと考えられます。


Q2 公共の交通機関を利用している従業員に対し、通勤手当として定期券を支給したいと考えている。この場合、労使協定の締結は必要か?
なお、就業規則には、公共交通機関の定期券相当額を支給する旨規定されている。


通勤手当を定期券で支給するためには、現在の法律上労働協約が必要であり、労使協定ではできません。
労働基準法では、賃金は通貨で全額支払うことを使用者に義務付けています。この目的は、現物給与の禁止を意味しています。
ただし、例外として、法令や労働協約に別の定めがあり、確実な支払い方法である場合には現物給与も認められています。
したがって、実費相当額の通勤手当を支給する旨、雇用契約や就業規則等で定められているような場合には、一般に労働基準法でいう賃金と考えられるため、通貨払い等の適用を受けることになり、金銭の代わりに定期券を支給することは、現物給与ということになるため、労働協約で別段の定めをしなければなりません。
なお、労働協約は、労働組合法にいう労働協約であり、労使協定とは別のものです。


Q3 現在、給与を現金で支給しているが、今後、銀行口座への振込にしたいと考えている。
この場合、口座振込みにかかる手数料を従業員に負担させ、給与から控除することは可能か?


振込み手数料の負担については、労働関係法令等には特に定められていませんので、民法の規定により判断することになります。
民法第485条では「弁済の費用について、別段の意思表示がないときは、その費用は債務者の負担とする。」とされていますので、一般原則としては、給与の支払い義務がある会社が手数料を負担することになります。
ただ、民法は任意規定ですから、「別段の意思表示」があれば手数料を債権者の負担とすることも考えられるため、個々の従業員の同意を得て手数料を従業員に負担させることも可能といえます。
ただし、手数料を給与から控除して支払うためには、書面による労使協定が必要となります。


Q4 給与支払日が休日に当たる場合には、その日を繰り下げることも可能と聞いたが、支払日を毎月月末とし、その日が休日の場合は翌日に支払うというのは問題ないか?


支払日が休日の場合に繰り下げること、及び支払日を月末とすること自体は可能ですが、月末の支払日を繰り下げた場合には、翌月の支払となり、労働基準法第24条第2項に定める「毎月払いの原則」に反することになります。
「毎月払いの原則」の毎月とは、暦に従うものとされていますので、毎月1日から月の末日までの間に少なくとも1回は賃金を支払わなければなりません。


Q5 最低賃金に含まれない賃金にはどういうものがあるか?
また、労働者の同意を取って、最低賃金を下回る賃金を定めた場合には有効か?、


最低賃金に含まれない賃金は、精・皆勤手当、通勤手当、家族手当、1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金(ボーナスなど)、臨時に支払われる賃金(結婚祝金など)、時間外・深夜労働および休日労働に対する賃金があります。
最低賃金を下回る賃金を定めた場合は、たとえ労働者の同意があったとしても、それは法律により無効とされます。その場合には、最低賃金と同額を定めたものとみなされます。


Q6 年俸制の場合も、毎月一定期日に支払わなければならないか?


年俸制についても、労働基準法上に規定されている賃金支払の原則が適用になります。
年俸制は、労働者の1年間の業績の評価などで決定し、1年分をまとめて提示する賃金制度ですが、支給形態としては、年俸の総額を12分して毎月支払う場合や総額から賞与部分を引いた額を12分して毎月支払い、賞与部分は別に支払うような形態があります。また、年俸制の労働者であっても、通常の労働者である場合には割増賃金の支払なとの対応が必要になりますので注意が必要です。