賃金の支払い方の基礎知識

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賃金の支払い方
賃金の支払(労働基準法第24条)
賃金は、「通貨」で、「全額」を、「労働者に直接」「毎月1回以上」「一定期日を定めて」支払わなければなりません。賃金から税金、社会保険料等法令で定められているもの以外を控除する場合には、労働者の過半数で組織する労働組合か労働者の過半数を代表する者との労使協定が必要です。


通貨払いの原則

賃金は、現金で支払うのが原則です。

なお、退職手当については、労働者の同意を得た場合、@銀行振出小切手、A銀行支払保証小切手、B郵便為替による支払いも可能です。

例外
通貨以外の支給が認められる場合〜労働協約に小切手や現物支給の定めがある場合(通勤手当を定期券で支払うのも現物支給とされます。)
賃金から控除が認められる場合〜法令・労使協定による場合
毎月1回以上、1定期日払いでなくてもよい場合〜臨時に支払われる賃金、賞与、査定期間が1ヶ月を超える場合の精勤手当など

預金又は貯金への振込みによる支払い

賃金の口座振込を開始するには、以下の措置をとることが必要とされています。
(平10.9.10 基発第530号、平13.2.2 基発第54号)

1 口座振込み等は、書面による個々の労働者の申し出又は同意により開始し、その書面には以下の事項を記載すること。
@ 口座振込み等を希望する賃金の範囲及びその金額
A 労働者の指定する金融機関等の店舗名ならびに預貯金等の種類及び口座番号
B 口座振込み等の開始希望時期
2 口座振込み等を行う事業場の労働者の過半数で組織する労働組合(労働組合がない場合は労働者の過半数の代表者)と、以下の事項を記載した書面による協定を締結すること。
@ 口座振込み等の対象となる労働者の範囲
A 口座振込等の対象となる賃金の範囲及びその金額
B 取り扱い金融機関及び取扱い証券会社の範囲
C 口座振込等の実施開始時期
3 使用者は、口座振込み等の対象となっている個々の労働者に対し、所定の賃金支払日に、次に掲げる金額等を記載した賃金の支払いに関する計算書(明細書等)を交付すること。
@ 基本給、手当その他賃金の種類ごとにその金額
A 源泉徴収税、労働者が負担すべき社会保険料額等賃金から控除した金額がある場合には、その事項ごとにその金額
B 口座振込み等を行った金額
4 口座振込み等がなされた賃金は、所定の賃金支払日の午前10時ごろまでに払い出し又は払い戻しが可能となっていること。
5 取扱い金融機関及び取扱い証券会社は、金融機関又は証券会社の所在状況等からして1行・1社に限定せず複数とする等労働者の便宜に十分配慮して定めること。
6 使用者は、証券総合口座への賃金払込みを行おうとする場合には、当該証券総合口座への賃金払込みを求める労働者又は証券総合口座を取扱う証券会社から投資信託約款及び投資約款の写しを得て、当該証券会社の口座が「MRF」(マネー・リザーブ・ファンド)により運用される証券総合口座であることを確認のうえ払込み等を行うものであること。また、使用者が労働者等から得た当該投資信託約款及び投資約款の写しについては、当該払込みを継続する期間中保管すること。


参考
上記@の「同意」については、労働者の意思に基づくものである限り、その形式は問わないものであり、Aの「指定」とは、労働者の賃金の振込み対象として銀行その他の金融機関に対する当該労働者本人名義の預貯金口座を指定するとの意味であって、この指定が行われれば@の「同意」が特段の事情のない限り得られているものであること。
また、「振込み」とは、振込まれた賃金の全額が所定の賃金支払日に払い出し得るように行われることを要する。

注意
・振込み手数料について
原則として、振込み手数料を賃金から控除することは、賃金全額払いの原則および民法の諸経費債務者負担に反し違法となりますので注意が必要です。
ただし、現金支給制度を実施している企業等において、労働者本人からの依頼により口座振り込みにする場合、その振込手数料の負担について本人の同意がある場合には、賃金から控除しても違法とはならないという見解もあるようですが、根拠は未確認です。

・賃金支払日当日の振込、別人や架空の名義への振り込みは違法となります。


全額払いの原則

賃金は、全額を控除しないで支払うことが原則です。使用者が他の債権と総裁することも禁じられていますが、最高裁の判例では、労働者の同意があった場合の合意相殺や債権を放棄した場合、賃金に過払いが生じた場合接着した支払い分から控除することは、全額払いの原則に反しないと考えられています。
また、源泉徴収、社会保険料、雇用保険料のように法令に根拠がある場合、その他労使協定(食事費等の控除)がある場合にも原則に反しないとされています。

法令に根拠のない食事費等を控除することは、賃金に関する労使協定がなければ労働基準法の違反とになりますが、民事上の弁済としては有効であり、二重に支払うことを要しません。ただし、労働基準法の違反として処分の対象にはなります。

また、何らかの弁済を目的として賃金から控除することに本人の自由な意思に基づく同意がある場合は、労使協定がなくと全額払いの原則に違反するものとはいえないと解されていますが、その同意が本人の自由な意思なのかどうかの認定判断は、厳格かつ慎重に行われることが求められます。


翌月の賃金の一部を前払いし、翌月の支払いから控除する場合で、前借金を翌月の賃金から控除するのではなく、翌月分の賃金を前倒しで支払ったと考えられる場合には、全額払いの原則に反しないと考えます。


直接払いの原則

労働基準法第24条第1項は、労働者本人以外の者に賃金を支払うことを禁止しています。
よって、労働者の親権者その他の法定代理人に支払うこと、労働者の委任を受けた任意代理人に支払うことは、いずれも労働基準法第24条違反となり、労働者が第三者に賃金受領権限を与えようとする委任、代理等の法律行為は無効となります。

ただし、使者(配偶者や子)が本人の印鑑を持参して本人の名前で受領する場合は、違法とはなりません。
使者以外の者への賃金を支払いは無効であるため、再度請求されたときに二重に支払うことになる可能性がありますので注意が必要です。

使者と代理人の違い
使者 命令や依頼を受け、本人の支配下で使いをする人
代理人 本人の利益のために本人に代わって行為をする人

注意
他人の口座への振込
従業員が指定した場合でも他人の口座への賃金の支払いは直接払いに反します。


毎月払い・一定期日払いの原則

賃金は、毎月1日から月の末日までの間に少なくとも1回以上、一定の期日を決めて支払わなければなりません。
賃金の締切日は必ずしも月末にする必要はなく、また支払期限は必ずしもその月の労働に対する賃金をその月中に支払うことを法律には定めはありません。

毎月1回の一定期日払いということは、必ず全額を一度に支払わなければならないということではないので、基本となる賃金を月の決まった日に支払い、時間外手当は翌月の賃金支払日に支払うことを就業規則等で定めても労働基準法上問題は生じません。

賃金が年俸制のときは、毎月、分割払いをする必要があります。ただし、先払いで支払う場合はこの限りではありません。

毎月の払いの原則は、賞与や臨時的な賃金には適用されません。


賃金の非常時払い

労働者本人やその家族などの疾病、出産、災害等の非常時の費用を、労働者が請求した場合には、その既往の労働に対する賃金を支払わなければなりません。また、賞与もその額等が確定しているのであれば同じ扱いになります。


出来高払い制

出来高払い制等で労働者を使用することも可能ですが、その場合、労働時間に応じ一定額の保障をしなければなりません。

一定額の保障については、つぎの通達があります。
昭23.11.11 基発第1639号
労働者が就業しなかった場合、それが労働者の責によるものであるときは、使用者は賃金の支払の義務はないから、保障給も当然に支払うことを要しない。

なお、使用者の責により休業した場合には、休業手当が支給が求められることになります。
よって、一定額の保障義務は、労働者が就業したにもかかわらず、何らかの事由で出来高が少なくなり、それに応じて実収入賃金が減少したような場合と考えられます。


保障給の額
保障の額については、法律上の規定はありません。
行政解釈では、「常に、通常の実収賃金と余りへだたらない程度の収入が保障されるような保障給の額を定めるように指導すること。」(昭22.9.13 基発第17号)とされています。

保障給の額の目安については、休業手当が平均賃金の60%以上とされていることから、すくなくとも休業手当と同等程度の保障が妥当と考えられています。


賞与

賞与の定義についての行政解釈は
昭22.9.13 基発第17号
「定期又は臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額が予め確定されていないものをいうこと。定期的に支給されかつその支給額が確定しているものは、名称の如何にかかわらず、これを賞与とみなさないこと。」とされており、

賞与の支給については、労使間の合意や使用者の決定により自由に定めることができると解されています。

一般的には、賞与支給の有無、支給基準等についても、就業規則等の定めによることになりますが、
賞与の支給要件として、支給日に在籍していることを条件としても違法ではありません。(昭60.11.28最高裁一小判決 京都新聞社事件)

また、経営状態にかかわらず支給するような確定的なものでないかぎり、賞与請求権は発生しないとの判例もあります。




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