有期労働契約の規制

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有期労働契約

有期労働契約とは、6ヵ月契約や1年契約など期間の定めがある労働契約です。

労働基準法による規制
有期労働契約の期間は原則として、3年が上限

労働契約法による規制
使用者は、有期労働契約について、その有期労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。


期間上限の例外
@ 高度の専門的知識等を有する労働者との間に締結される労働契約

高度の専門的知識等を有する労働者
@ 博士の学位を有する者
A 公認会計士、医師、歯科医師、獣医師、弁護士、一級建築士、税理士、薬剤師、社会保険労務士、不動産鑑定士、技術士又は弁理士
B システムアナリスト、アクチュアリーの資格試験に合格している者
C 特許発明の発明者、登録意匠の創作者、登録品種の育成者
D 大学卒で5 年、短大・高専卒で6 年、高卒で7 年以上の実務経験を有する農林水産業・鉱工業・機械・電気・建築・土木の技術者、システムエンジニア又はデザイナーで、年収が1,075 万円以上の者
E システムエンジニアとしての実務経験5年以上を有するシステムコンサルタントで、年収が1,075 万円以上の者
F 国等によって知識等が優れたものであると認定され、上記@からEまでに掲げる者に準ずるものとして厚生労働省労働基準局長が認める者
上限5年
A 満60 歳以上の労働者との間に締結される労働契約 上限5年
B 一定の事業の完了に必要な期間を定める労働契約(有期の建設工事等) その期間


雇止と雇用期間の満了退職
雇止とは 有期労働契約を数回更新した場合において、使用者が一方的に次の更新をしない旨の意思表示し、期間満了により労働契約を終了させること
期間の満了退職 一定の雇用期間を定め、その期間が満了することにより労働契約が終了すること

契約期間中の退職
有期労働契約の場合、やむを得ない事由がなければ、その期間中に退職することはできません。
ただし、1年を超える労働契約の場合、その期間の初日から1 年を経過した日以後においては、労働者は使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができます。なお、一定の事業の完了に必要な期間を定める労働契約(有期の建設工事等)の場合や1年以下の労働契約が更新により結果として1年を超えた状態の場合には該当しません。

根拠条文 労働基準法第137条
期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が一年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第十四条第一項各号に規定する労働者を除く。)は、労働基準法の一部を改正する法律(平成十五年法律第百四号)附則第三条に規定する措置が講じられるまでの間、民法第六百二十八条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から一年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。

民法第628条
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。


契約期間中の解雇
使用者は、有期労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができません。

また、有期労働契約であっても期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態に至っている場合や、反復更新の実態や契約締結時の経緯等から雇用継続への合理的期待が認められる場合においては、解雇法理が適用されることがあります。

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効となります。


労働契約法
第17条(契約期間中の解雇)
使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。
使用者は、有期労働契約について、その有期労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。


民法第628条のとおり、有期期間中の退職および解雇については、相手方に損害賠償の責任を負う場合がありますので注意が必要です。


有期労働契約のに関する労働条件の明示

有期労働契約に関して明示しなければならない事項
@ 契約期間
(期間の定めがない労働契約は、その旨を明示する義務あり)
A 契約の締結時にその契約の更新の有無
一例 厚生労働省 「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」より
・自動的に更新する
・更新する場合があり得る
・契約の更新はしない
B 更新が有りのときは、契約を更新する場合又はしない場合の判断の基準
一例 厚生労働省 「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」より
・契約期間満了時の業務量により判断する
・労働者の勤務成績、態度により判断する
・労働者の能力により判断する
・会社の経営状況により判断する
・従事している業務の進捗状況により判断する
C 有期労働契約の締結後に@又はAについて変更する場合には、速やかにその内容を明示

★上記の労働条件の明示は、労働契約の締結にに際し、労働者に対して、賃金、労働時間その他の労働条件とともに文書で行うことが必要です。(労働基準法第15条)



使用者の雇止予告と雇止理由の明示義務

有期労働契約が3回以上更新している、または、1年を超えて継続雇用している場合は、少なくとも契約期間満了する日の30日前までに、雇止の予告が必要です。
ただし、あらかじめ契約を更新しないことを明示している場合には必要ありません。

雇止の予告が必要な場合とは
@有期労働契約が3回以上更新している場合
A1 年以下の契約期間の労働契約が更新または反復更新され、最初に労働契約を締結してから継続して通算 1 年を超える場合
B1 年を超える契約期間の労働契約を締結している場合


雇止の理由の明示義務
使用者は、雇止の予告後、または、雇止の後に、労働者からその雇止の理由について証明書を請求された場合には、雇止理由証明書を交付する義務があります。
注意→雇止の理由については、契約期間満了とは別の理由となることが必要
一例 厚生労働省 「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」より
・前回の契約更新時に、本契約を更新しないことが合意されていたため
・契約締結当初から、更新回数の上限を設けており、本契約は当該上限に係るものであるため
・担当していた業務が終了・中止したため
・事業縮小のため
・業務を遂行する能力が十分ではないと認められるため
・職務命令に対する違反行為を行ったこと、無断欠勤をしたこと等勤務不良のため


雇止め法理の適用に関する通達

最高裁判所判決で確立している雇止めに関する判例法理(いわゆる雇止め法理)を規定し、一定の場合に雇止めを認めず、有期労働契約が締結又は更新されたものとみなすこととしたものであること。
ア 法第19条は、有期労働契約が反復して更新されたことにより、雇止めをすることが解雇と社会通念上同視できると認められる場合、又は労働者が有期労働契約の契約期間の満了時にその有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由が認められる場合に、使用者が雇止めをすることが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、雇止めは認められず、したがって、使用者は、従前の有期労働契約と同一の労働条件で労働者による有期労働契約の更新又は締結の申込みを承諾したものとみなされ、有期労働契約が同一の労働条件(契約期間を含む。)で成立することとしたものであること。

イ 次に掲げる最高裁判所判決で確立している雇止めに関する判例法理(いわゆる雇止め法理)の内容や適用範囲を変更することなく規定したものであること。
法第19条第1号は、有期労働契約が期間の満了毎に当然更新を重ねてあたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在していた場合には、解雇に関する法理を類推すべきであると判示した東芝柳町工場事件最高裁判決(最高裁昭和49年7月22日第一小法廷判決)の要件を規定したものであること。
また、法第19条第2号は、有期労働契約の期間満了後も雇用関係が継続されるものと期待することに合理性が認められる場合には,解雇に関する法理が類推されるものと解せられると判示した日立メディコ事件最高裁判決(最高裁昭和61年12月4日第一小法廷判決)の要件を規定したものであること。

ウ 法第19条第1号又は第2号の要件に該当するか否かは、これまでの裁判例と同様、当該雇用の臨時性・常用性、更新の回数、雇用の通算期間、契約期間管理の状況、雇用継続の期待をもたせる使用者の言動の有無などを総合考慮して、個々の事案ごとに判断されるものであること。
なお、法第19条第2号の「満了時に」は、雇止めに関する裁判例における判断と同様、「満了時」における合理的期待の有無は、最初の有期労働契約の締結時から雇止めされた有期労働契約の満了時までの間におけるあらゆる事情が総合的に勘案されることを明らかにするために規定したものであること。したがって、いったん、労働者が雇用継続への合理的な期待を抱いていたにもかかわらず、当該有期労働契約の契約期間の満了前に使用者が更新年数や更新回数の上限などを一方的に宣言したとしても、そのことのみをもって直ちに同号の該当性が否定されることにはならないと解されるものであること。
エ 法第19条の「更新の申込み」及び「締結の申込み」は、要式行為ではなく、使用者による雇止めの意思表示に対して、労働者による何らかの反対の意思表示が使用者に伝わるものでもよいこと。
また、雇止めの効力について紛争となった場合における法第19条の「更新の申込み」又は「締結の申込み」をしたことの主張・立証については、労働者が雇止めに異議があることが、例えば、訴訟の提起、紛争調整機関への申立て、団体交渉等によって使用者に直接又は間接に伝えられたことを概括的に主張立証すればよいと解されるものであること。

オ 法第19条の「遅滞なく」は、有期労働契約の契約期間の満了後であ
っても、正当な又は合理的な理由による申込みの遅滞は許容される意味
であること。



有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換

労働契約法第18条(有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換)
同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約(契約期間の始期の到来前のものを除く。以下この条において同じ。)の契約期間を通算した期間(次項において「通算契約期間」という。)が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。この場合において、当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く。)と同一の労働条件(当該労働条件(契約期間を除く。)について別段の定めがある部分を除く。)とする。
当該使用者との間で締結された一の有期労働契約の契約期間が満了した日と当該使用者との間で締結されたその次の有期労働契約の契約期間の初日との間にこれらの契約期間のいずれにも含まれない期間(これらの契約期間が連続すると認められるものとして厚生労働省令で定める基準に該当する場合の当該いずれにも含まれない期間を除く。以下この項において「空白期間」という。)があり、当該空白期間が六月(当該空白期間の直前に満了した一の有期労働契約の契約期間(当該一の有期労働契約を含む二以上の有期労働契約の契約期間の間に空白期間がないときは、当該二以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間。以下この項において同じ。)が一年に満たない場合にあっては、当該一の有期労働契約の契約期間に二分の一を乗じて得た期間を基礎として厚生労働省令で定める期間)以上であるときは、当該空白期間前に満了した有期労働契約の契約期間は、通算契約期間に算入しない。



同一の使用者との間で、有期労働契約が通算して5年を超えて繰り返し更新された場合は、労働者の申し込みで無期労働契約に転換します。
(
無期労働転契約への転換を申し込むかどうかは、労働者の意思に任されている(自由))

平成25年3月31日以前に開始した有期労働契約は、対象にはならず、平成25年4月1日以後に契約または更新した有期労働契約から対象となります。

ただし、労働基準法第14条第1項の規定により一定の事業の完了に必要な期間を定めるものとして締結が認められている契約期間が5年を超える有期労働契約が締結されている場合、一度も更新がないときは、法第18条第1項の要件を満たすことにはなりません。


申し込みは、平成25年4月1日以後に開始した有期労働契約の通算期間が5年を超える場合、その期間の初日から末日までの間にすることができます。

無期労働契約転換へ申込をする権利は、更新により二以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間が5年を超えて、6年目以降の契約期間中であれば、いつでも行使することができます。その期間中に申し込みをしなかった場合には権利を失いますが、引続いて再度更新した場合には、新規の申込をする権利が発生することになります。

申し込みは、口頭でも有効ですが、後々のトラブルを回避するためには書面の方が良いと思われます。


労働者が申し込みをした場合には、使用者は拒否できませんので無期労働契約がその時点で成立することになり、使用者が無期労働契約を解約する場合には解雇の扱いとなります。

また、労働者の健康状態が無期転換後の労働に堪えられない状態など、「客観的に合理的理由があり社会通常上相当と認められる」ような解雇事由に該当する場合には、期間満了による雇止の主張も可能との見解があります。

(労働者が申し込みをする前(有期労働契約中)に契約を解除する場合には、有期労働契約期間中の解雇となり、やむを得ない理由がないかぎり解雇することはできないので注意が必要です。)

無期労働契約後の解雇については、職務が限定されているなど労働条件や雇用管理が正社員とかけ離れている労働者は、限定等がない正社員と同列に扱われることにはならないと解されています。


無期労働契約となった場合の労働条件(賃金、時間など)については、事前の有期労働契約と同一となりますが、使用者と労働者の合意により
別段の定めをすることにより変更することができます。


★無期労働契約への転換にあたって、「別段の定め」をしなければ労働契約期間だけがなくなり、労働条件は元のままということになります。

「別段の定め」についての通達では、「法第18条第1項の規定による無期労働契約への転換は期間のみを変更するものであるが、同項の「別段の定め」をすることにより、期間の定め以外の労働条件を変更することは可能であること」、「別段の定めは、労働協約や就業規則および個々の労働契約(無期労働契約の転換に当たり従前の有期労働契約から労働条件を変更することについての個別の合意)をいうものであること」としています。

ということは、別段の定めをすれば使用者側で新たな労働条件を設定することも可能という解釈が成り立ち、別段の定めの設定を認めている以上、労働者としては設定された労働条件を検討したうえで、無期転換のの申し込みをすることになると考えます。

また、通達では、「無期労働契約への転換に当たり、職務の内容などが変更されないにもかかわらず、無期転換後における労働条件を従前よりも低下させることは、無期転換を円滑に進める観点から望ましいものではないこと。」とされていることについては、
「新規労働条件として合理的なものであれば差支えない(就業規則の不利益変更論は、新規の労働契約であるから適用されない)」(安西愈『トップミドルのための 採用から退職までの法律知識14訂(1041頁)』とされています。



無期労働契約に転換後の労働条件については、トラブルを避けるためあらかじめお互いに確認することが重要であり、新たな労働条件を定める場合には、就業規則や個別の労働契約で明確に定めることが必要です。

労働条件を有期労働契約の更新毎に所定労働日や労働時間などの労働条件を変更していた場合は、無期労働契約への転換後もそれまでと同様、定期的に変更を行う旨の定めをすることは可能です。


★無期転換を申し込まないことを条件とする労働契約はでません。
★有期労働契約の締結に際し、更新期間に制限を設けることは禁止されていませんので、「5年を超えて更新しない」、「最長更新でも5年の契約期間満了をもって雇用契約は終了する」、「4回以上の更新は行わない」などの契約も合意があれば有効と考えます。
なお、最長更新5年とする契約については、労働者にとっては、少なくても5年まで更新するという期待を持つことが予想されますので注意が必要です。


更新を数回してきた後に、更新年数等に新たな条件を明示した場合、労働者の同意があればその更新の限度を付した契約は有効と考えますが、もし、同意がなければその労働者適用される就業規則にその旨を定めることも有効と思います。
(就業規則の内容を周知した場合は、その内容が労働契約の内容となる。労働契約法第7条)

就業規則の変更が労働条件の不利益変更となる問題については、
(平成25年3月18日 労働新聞 第2913号 「攻略 労契法 弁護士 安西 愈」より
「個別的な労働契約の期間の定めや個別の更新限度は、具体的契約締結の問題であり、就業規則の直律効果の適用場面ではない(契約の成否といった個別事項で規範拘束はない)」との考えがあります。


なお、就業規則に定めがあるからとって個々労働者への明示義務が免除されるわけではないので、更新時または新契約の時には必ず書面で明示する必要があります。


★有期労働契約であっても期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態に至っている場合には、更新年数限度について労働者の同意のない状態での導入は困難と思われます。



有期労働契約と次の有期労働契約の間に、6か月以上の空白期間(契約がない期間)がある場合には、その空白期間の前の有期労働契約期間は5年(通算契約期間)に含みません。よって、空白期間が6カ月未満の場合には、前後の有期労働契約期間を通算して計算します。

通算期間の計算対象となる契約期間が1年未満の場合のクーリング期間について
通算期間の計算対象となる有期労働契約期間に応じて、つぎの表に掲げる期間に該当するときは、通算がリセットされることになっています。

該当する場合には、その次の契約期間から通算契約期間が再度始まります。

通算の対象となる有期労働契約期間 空白期間(契約がない期間)
2カ月以下 1か月以上
2カ月を超え4カ月以下 2カ月以上
4か月を超え6月以下 3か月以上
6か月を超え8カ月以下 4か月以上
8か月を超え10か月以下 5か月以上
10か月を超え〜 6か月以上



通算契約期間の計算方法
@通算契約期間は、同一の使用者ごとに計算
  有期労働契約期間中に勤務場所が変わったとしても同一の事業主であれば通算されます。
A通算契約期間は、労働契約が存続していいる期間で計算
  育児休業などの期間があっても、労働契約が存続していれば通算されます。
B通算契約期間は、暦で、年、月、日で計算
  契約期間の初日から起算し、翌月の応答日の前日をもって1か月とされます。複数の契約期間に1カ月未満の日がある   場合は、その端数どうしを合算した後に、30日をもって1か月とします。


無期転換制度と定年との関係

60歳以上の高年齢者への無期転換制度の適用について
有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換制度は、高年齢者継続雇用措置で60歳以降の雇用はすべて高年齢者雇用安定法の雇用措置が適用されるため、労働契約法の無期転換制度は適用されないと解されています。そのため、有期労働契約者の無期転換制度は定年までの適用と考えます。


有期労働契約の更新等

労働契約法第19条(有期労働契約の更新等)
有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。
当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。
当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。


有期労働契約は、使用者に更新の意思がない場合には期間の満了により契約が終了します。これを「雇止め」といいますが、この雇止については、最高裁の判例により一定のルールが確立しています。
該当する有期労働契約は、
@過去の反復更新された有期労働契約で、その雇止が無期労働契約の解雇と社会通念上同視できるもの
A労働者において、有期労働契約の満了時にその有期労働契約が更新されるものと期待すること合理的な理由があると認められるもの
(合理的理由は、いろいろな事情が勘案されて判断されることになりますが、一度労働者が雇用継続に合理的な期待を持ったにもかかわらず、使用者が一方的に契約期間の満了前に更新年数や更新回数の上限などを決めたとしてもそれのみで合理的な理由を否定されることにはならないと解されています。)


@およびAに該当する場合には、雇止が認められず、従前と同じ条件で有期労働契約が更新されることになります。

第19条が適用されるためには、労働者からの更新申し込みが必要となります。(契約期間満了後でも遅滞なく申し込みをすれば対象となるとされています。)
この申し込みは、使用者側からの雇止の意思表示対して、「断る」などの言動で使用者に反対の意思表示が伝わることでも良いと解されています。
申し込みをしたか否かについての立証は、労働者がその雇止にに異議があることが概括的に主張・立証することで足りると解されています。


雇止め法理の適用に関する通達
最高裁判所判決で確立している雇止めに関する判例法理(いわゆる雇止め法理)を規定し、一定の場合に雇止めを認めず、有期労働契約が締結又は更新されたものとみなすこととしたものであること。
ア 法第19条は、有期労働契約が反復して更新されたことにより、雇止めをすることが解雇と社会通念上同視できると認められる場合、又は労働者が有期労働契約の契約期間の満了時にその有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由が認められる場合に、使用者が雇止めをすることが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、雇止めは認められず、したがって、使用者は、従前の有期労働契約と同一の労働条件で労働者による有期労働契約の更新又は締結の申込みを承諾したものとみなされ、有期労働契約が同一の労働条件(契約期間を含む。)で成立することとしたものであること。

イ 次に掲げる最高裁判所判決で確立している雇止めに関する判例法理(いわゆる雇止め法理)の内容や適用範囲を変更することなく規定したものであること。
法第19条第1号は、有期労働契約が期間の満了毎に当然更新を重ねてあたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在していた場合には、解雇に関する法理を類推すべきであると判示した東芝柳町工場事件最高裁判決(最高裁昭和49年7月22日第一小法廷判決)の要件を規定したものであること。

また、法第19条第2号は、有期労働契約の期間満了後も雇用関係が継続されるものと期待することに合理性が認められる場合には,解雇に関する法理が類推されるものと解せられると判示した日立メディコ事件最高裁判決(最高裁昭和61年12月4日第一小法廷判決)の要件を規定したものであること。

ウ 法第19条第1号又は第2号の要件に該当するか否かは、これまでの裁判例と同様、当該雇用の臨時性・常用性、更新の回数、雇用の通算期間、契約期間管理の状況、雇用継続の期待をもたせる使用者の言動の有無などを総合考慮して、個々の事案ごとに判断されるものであること。

なお、法第19条第2号の「満了時に」は、雇止めに関する裁判例における判断と同様、「満了時」における合理的期待の有無は、最初の有期労働契約の締結時から雇止めされた有期労働契約の満了時までの間におけるあらゆる事情が総合的に勘案されることを明らかにするために規定したものであること。

したがって、いったん、労働者が雇用継続への合理的な期待を抱いていたにもかかわらず、当該有期労働契約の契約期間の満了前に使用者が更新年数や更新回数の上限などを一方的に宣言したとしても、そのことのみをもって直ちに同号の該当性が否定されることにはならないと解されるものであること。

エ 法第19条の「更新の申込み」及び「締結の申込み」は、要式行為ではなく、使用者による雇止めの意思表示に対して、労働者による何らかの反対の意思表示が使用者に伝わるものでもよいこと。
また、雇止めの効力について紛争となった場合における法第19条の「更新の申込み」又は「締結の申込み」をしたことの主張・立証については、労働者が雇止めに異議があることが、例えば、訴訟の提起、紛争調整機関への申立て、団体交渉等によって使用者に直接又は間接に伝えられたことを概括的に主張立証すればよいと解されるものであること。

オ 法第19条の「遅滞なく」は、有期労働契約の契約期間の満了後であっても、正当な又は合理的な理由による申込みの遅滞は許容される意味であること。



期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止

労働契約法第20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)
有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。



期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止規定は、有期労働契約者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない無期労働契約者の労働契約の内容である労働条件と相違が不合理であることを禁止しているものです。

この規定は、労働基準法で規定している差別的取り扱いや均等の取り扱いのを禁止を求めているのではなく、
その労働条件上の取り扱いにおいて、有期労働契約者と無期労働契約者との間に差異があっても構わないが、それが「有期労働契約者」であることを理由として「不合理と認められるものであってはならない」というものです。

通達
「不合理性の判断は、有期契約労働者と無期契約労働者との間の労働条件の相違について、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、個々の労働条件ごとに判断されるものであること。とりわけ、通勤手当、食堂の利用、安全管理などについて労働条件を相違させることは、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して特段の理由がない限り合理的とは認められないと解されるものであること」
とされていますが、合理的か否かの判断は、行政が行うのではなく「裁判所」が行うことなります。



対象となる労働条件
賃金や労働時間はもちろん、災害補償、福利厚生、教育訓練など労働者についての一切の待遇が対象になるとされていますが、「同一労働・同一賃金の原則」を前提としているわけではありません。

判例でも、「無期雇用者と有期雇用者との間に単純に同一労働同一賃金の原則が適用されるとすることが公の秩序となっているとはいえない。賃金はその従事した労働の質と量のみで決定されるわけではなく、年齢、学歴、貢献度、勤労意欲の喚起等が考慮され、将来の期待を含めて決定されている以上、かかる観点から嘱託職員の賃金との間に一定の差異生じることはやむを得ない」とあります。(立教女学院事件 平20.12.25 東京地裁判決)


労働条件が不合理
通達
「有期契約労働者と無期契約労働者との間で労働条件の相違があれば直ちに不合理とされるものではなく、労働契約法第20条に列挙されている要素を考慮して「期間の定めがあること」を理由とした不合理な労働条件の相違と認められる場合を禁止すものである」とあります。

通達
不合理性の判断は、有期契約労働者と無期


通達のとおり、労働条件の相違が直ちに不合理とされるものではありまんが、不合理か否か判断は次のとおりです。
職務内容や責任度その他の事情を考慮して労働者ごとに判断されます。通勤手当や安全管理などの相違は、特別の理由がない限り不合理と判断されることになると思われます。

@職務の内容
 業務の内容とその業務に伴う責任度
A職務の内容および配置の変更の範囲
  将来的なものも含め、転勤、昇進なと゛の人事異動や本人の役割の変化などの有無や範囲
Bその他の事情
  労使の慣行などの諸事情

使用者が法人であれば、法人単位で判断されます。



不合理と判断された定めは無効となり、故意・過失により権利侵害による不法行為として損害賠償の対象となりえると解されています。
無効とされた場合には、無期労働契約者と同様に労働条件となる可能性があります。


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