夏空の下に、八戒が立っていた。



十年待ち続けたその光景を、悟浄は信じられないような気持ちで眺めた。
普段見慣れた光景が、何か見たこともない別のものに変わる。
ぐい、と心を何処かに持っていかれそうになるこんな気持ちを前にも味わったことがあったな、と悟浄は胸の内でひそやかに思う。
あの日、八戒に出逢ったときのことだ。あの時もこんなふうにすべてが色を変えたことを思い出して、悟浄はその時の心を締め付けられるような気持ちまで甦らせた。

あのとき八戒と出逢ったことが、それからの自分を全部変えたのだ。
悟浄はあれから今までの月日が一瞬で押し寄せてくるような感覚に捕らわれて息を止めた。

八戒は悟浄の様子をじっと見つめていた。十四の時より更に綺麗になった彼は黙り込んでしまった悟浄に向けて、ふ、と微笑う。
彼の姿の上に二重写しのように見えていた少年の頃の八戒のまぼろしが消えて、彼の今の姿がリアルになった。
「どうしたんですか?黙り込んでしまって。」
八戒の涼やかな声が耳を打つ。悟浄はふらふらと過去に彷徨ってしまいそうな自分を「今」に引き戻した。
「―――夢みたいだと思ったんだよ。」
「夢じゃ、ないですよ。」
心の高ぶりが滲み出る悟浄の声色を耳にして、八戒は嬉しそうに口許に薄く笑みを浮かべると小さく俯いた。
シャープな顎のラインとそこから伸びる首筋から目を離せなくなりそうで、悟浄は慌てて言い募った。
「それ、おまえの荷物?でかいな。俺が持ってやるよ。」
「いいですよ、自分で持てますから。」
「ここ来るまでに疲れたろ?―――ほら、かせって。」
八戒はくすりと笑って悟浄に大きな鞄を手渡した。昔からこのひとは過保護なところがあったっけ、と八戒は胸の内で思った。
変わらない悟浄に安心して、八戒は一歩悟浄に近づいた。
「おまえ、そういえばどこいくんだ?」
悟浄はよいせ、と鞄を抱え上げ足を踏み出した。振り返る悟浄に追いついて八戒は肩を並べて答えた。
「鳴沢の家ですよ。」
さも当然のように答えた八戒と歩き出しながら悟浄は首を傾げた。
「あそこってもう何年も誰も住んでないだろ?じいさんたち、どっかの街に引き取られたって聞いたぜ?」
「ええ。もう高齢でしたからね。一昨年二人連れ立つように亡くなりましたよ。」
「そうなんだ。死んじまってるのか。―――じゃあさ、なんでまたあの家に?」
「あの家、僕が貰うことにしたんですよ。」
「マジで?」
にこりと頷いた八戒に、悟浄は不審げに問い質した。
「どういうこと?」
「ええっと、色々あるんですよ。時間は一杯あるって言ったでしょう?ゆっくり話しますから。」
色々なものを含んだ瞳を向ける八戒を、悟浄もまた凝視した。その横顔は記憶にあるよりずっと綺麗だった。
捕らわれてしまったように目を離せなくなった悟浄に八戒は静かに微笑う。
どきどきと音を立てる鼓動は、子供の時とまったく同じで、自分の気持ちがあの頃と何も変わっていないことを知らしめる。
悟浄の心に気づいているのかいないのか、八戒は嬉しそうな顔で辺りを見回した。
「ここは、変わりませんね。」
二人で辿る田圃沿いの道は緑色にさざめいている。傾きかけた陽は柔らかく空を染める。人通りのない静けさも、ここは何ひとつ変わらない。
「まあな。田舎は時間が過ぎるのが遅いからな。十年経っても大して変わらないよ。」
「そうですね。―――でも、あなたは変わりましたけど。」
「そーか?」
ちらりと盗み見るように一瞬八戒が悟浄を振り返る。楽しげな笑みを口許に浮かべて八戒は言葉を継いだ。
「ええ。ずいぶん男っぽくなりましたよ。」
「そりゃまーね。もう子供じゃないし。いい大人のつもりだしな。」
つもり、と付け加えたところに変わらない悟浄らしさを垣間見た気がして、八戒は少し声の調子を変えて訊ねた。
声が硬くなるのを悟られないように気を遣って、八戒は問う。
「今、―――何してるんですか?」
「あ、仕事?―――俺さー、学校のセンセーしてるんだぜ。中学校の先生。」
得意そうに胸を張った悟浄に八戒は目を丸くした。
「先生?ほんとですか?」
「ほんと。似合わない?」
悟浄は苦笑しながら八戒に聞いた。
「え、ええ。―――いえ、すごく似合ってますよ。似合いすぎです。」
「これでも人気者なのよー、一応。」
「分かりますよ、うん、想像つきます。―――何の先生なんですか?」
「数学。」
びっくりして目を見開く八戒に、悟浄は今度こそ声を立てて笑った。似合わないのは自分で一番理解してるのだ。
その自分が教師になったのは、あの頃のこととずっと関わっていたかったというのもひとつの理由ではあるのでが、それは黙っておいて悟浄は話を核心に進めた。
「で、おまえは?―――お前は何やってんの?」
悟浄は八戒の様子を伺うように聞いた。さらりと聞こえるように努めた質問に、八戒はそれとなくと答えた。
「僕ですか?僕は色々あって、今は無職ですよ。」
「そーなの?」
悟浄は驚きの声を上げながらも、かわされたかな、と心の中でちらりと考えた。
八戒から目を離さない自分と、見つめ返そうとしない八戒の間にちりちりとした気配が散る。
こちらを見ようとしない八戒も悟浄を意識しているのは手に取るように分かった。懐かしそうにあちらこちらを眺める八戒の躰にも、隠しきれない緊張が見える。
互いの心を探るように、二人の間になんともいえない微妙な沈黙が落ちた。

二人で話しているとあれから十年たったとは思えないほどこうして肩を並べているのが自然に思える。
しかし互いが一人で歩んできた月日に自分がいないのは事実で、その間の時間をどうしていたかとか、端的にいえば、今、誰か特別なひとがいるんじゃないかとか、二人はひそかに探りあうように互いの気配を読もうとした。

十年前の続きを始めていいのか、それともあれは過去の思い出なのか。今でも自分の事を好きでいてくれるのか、終わった恋を共に懐かしむ相手なのか。
聞きたい事は山のようにあるのに、口に出せないまま彼らは夏の夕暮れの空の下を歩いた。


ここに来るのも久しぶりだな、と悟浄は鳴沢の家を眺めた。昔はこっそり遠くからここを覗きに来たりもしたが、さすがに大人になった今はそんな真似はしない。
ここに来ても八戒はいないという事実を毎回突きつけられて、来るたびに余計に淋しさが増したことを思い出す。その所為で足が遠のいたという方が正しいかもしれない。
感慨深い気持ちを抱いて悟浄は深い吐息をついた。鞄から鍵を取り出す八戒の横で、悟浄は荷物を持ったまま荒れた庭を見回した。
田舎町の光景は何も変わらないように思うけれど、こうしてひとの手の入っていない家はひどく寂れて見えて、月日の経ったことを実感させた。
八戒の表情からは何もその心の奥は窺えなかった。二人の間に流れた歳月を感じて、悟浄は小さく息をつく。
もしかするとそれは取り返せない月日なのかもしれない。けれどそれでも構わなかった。
もう一度友達から始めるくらい、自分は全然構わない。自分がこの十年抱えてきた気持ちはそんなことで消えるほど弱いものではないのだから。
そう考えて悟浄は玄関を開ける八戒の背中をじっと見つめた。がらがらと重たげな音を立てて扉が開く。
するりと家の中に入る八戒について悟浄は玄関の土間に立ち止まった。
「なあ、飯とか酒とか買ってこようか?こんなんじゃ今日食べるもんも用意してないだろ?あ、それともどっか食べに行く?」
悟浄は普通に声をかけ、八戒に彼の荷物を手渡した。上がり口に上った八戒はそれを無言で受け取って、脇に置いた。

夕暮れ時の屋内は薄暗がりがあちこちに満ちて、八戒の顔に影を作る。誰もいない広い家はしんと静まり返っていた。
八戒が悟浄の顔をじっと見つめた。あふれ出そうとする気持ちをこらえて、八戒は悟浄を凝視する。
笑みを消した八戒を、悟浄もまたまっすぐに、黙ったまま見つめた。

さあーっと音を立てて時が巻き戻っていく気がした。誰よりも近くに心を寄り添わせたあの夏の日が甦る。

「御飯ですか。そうですね、考えてませんでした。―――でも、―――よかったら、まずあがりませんか?」
八戒の声が、変わった。互いの距離をはかる声色は消えて、声に思いつめたような響きが宿る。
「いいの?」
悟浄の声が低く掠れた。鈍く光った悟浄の瞳に、八戒は無言で頷いた。
「蚊が入りますから、玄関閉めて下さい。」
八戒の声が揺れた。いつか遠い日に聞いたことのある、その声の響きを噛み締めながら悟浄は後ろ手で扉を閉めた。
八戒の顔から目を逸らさないまま、悟浄は靴を脱いで上がった。
薄暗がりの中で、八戒の瞳だけが光を放つ。悟浄の口から熱い息が漏れた。動こうとしない八戒に焦れて、悟浄は腕を伸ばす。
八戒の腕を取ると、悟浄はそのまま細い躰を引き寄せた。
腕の中に抱きしめて、悟浄は八戒の背中をかき抱いた。
「上がれって、こーゆーこと言ってんだよな?」
悟浄は八戒の耳元で囁いた。そんなに背丈の変わらない八戒は、悟浄の肩口に顔を埋めた。
「―――逢いたかった。」
悟浄の熱い囁きに、八戒も悟浄の背中に手を廻す。遠慮がちに廻された手に、ぎゅ、と力が込められた。
誰もいない古い家に、二人の熱っぽい息遣いだけが響く。
悟浄は腕を伸ばして伏せられた八戒の顔をあげさせた。華奢な顎に指をかけ、近い距離で目を合わす。
八戒の瞳には強い光が浮かんでいた。揺らぐ気持ちを表す光ではなく、強い気持ちを表すその光に、悟浄の中で何かが弾けた。
ぐい、と八戒を上向かせて悟浄は力強く接吻けた。しっとりとした口唇を荒々しく食むと、八戒は目を瞑った。
抱き返してくる腕に力が増したのを感じて、悟浄は八戒の口を抉じ開ける。熱を持った舌を差し入れると、八戒のそれに触れた。その感触に八戒の躰が一瞬揺らぐ。
悟浄は腰に廻した手に力を入れて八戒の躰を支えた。貪るように八戒の舌を絡め取る。それに応えるかのように八戒も自ら口唇を悟浄に押し付けた。
昔交わした接吻けとはあまりに違う激しいキスに、二人の息が上がる。がくりと足を砕けさせた八戒を抱き寄せて、悟浄は接吻けを解くと耳元に囁いた。
「ずっと、待ってた。」
八戒の顔が泣き出しそうに歪んだ。背中に廻す指が、悟浄の背中にたてられる。崩れ落ちかけている八戒を半ば抱えあげるように、悟浄は家の奥へと進んだ。

昔、ここに通った記憶が甦る。廊下を曲がって左の障子を開けると、そこに二人であの夏を過ごした座敷があった。
雨戸を締め切られ熱と埃が澱んだ座敷の入り口に八戒をそっと降ろすと、悟浄は暗がりの中、窓に歩み寄る。手探りで錠を探し、悟浄は力を入れて引き戸を開けた。
その瞬間、眩しい夏の夕暮れの光と、涼やかな風が二人の目に飛び込んできた。
縁側は記憶にあるより古びてはいたが、腐り落ちてはいなかった。荒れ放題の庭にも、あちこち懐かしい面影が潜む。悟浄は大きく息を吸い込んで、網戸を閉めた。
「―――八戒。」
振り返って、悟浄は低く呼んだ。夕空を背景にした悟浄が、逆光の中に佇む。畳みに座り込んだままの八戒はその姿に魅入られたように真っ直ぐ見つめた。
ゆっくり近づいてきた悟浄が、八戒の足許に膝をついた。指を伸ばして八戒の頬にそっと触れる。
「悟浄……。」
「あのさ、おまえ最初ここに戻ってくるつもりなかっただろ?」
悟浄は静かに問うた。いきなり問いかけられた言葉に、八戒は一瞬息を呑む。
「―――知ってたんですか。」
「分かるよ、おまえの様子を見てりゃな。」
「―――ほんとは、そのつもりでした。」
低く掠れた声で答える八戒に、悟浄は熱を孕んで囁き返した。
「でも、戻ってくるって、お前自分で言ったよな。」
「ええ。―――僕、最後にあなたに約束しましたよね。戻ってくるって。約束なんてはかないもの、するつもりなかったのに。―――言わずには、いられなかった。」
「うん。おまえが何考えてたか分かってたけど、それでもそう言ってくれたのが、凄く嬉しかった。」
「悟浄……。」
「だから、ずっと待ってた。」
悟浄の顔が八戒に近づく。遠くで蝉の鳴く声が聞こえた。耳鳴りのようなその音に浚われないように、八戒は悟浄の服の裾を?む。
「待つことでしか、おまえの気持ちに応えられないと思ったから。いつ、お前が戻ってきてもいいように。―――たとえお前が戻ってこなくても、そうしなけりゃ俺の気がすまないから。」
「悟浄……。」
「で、決めたんだ。おまえが戻ってきたらその時は、もう二度と手を離さない、ってな。―――置き去りは、もうごめんなんだよ。」
八戒は真摯な言葉に打たれたように、悟浄を見上げた。
「おまえが戻ってきたら、その時はどんなことをしても、おまえを手に入れる。おまえが俺をただの昔馴染みだと思ってても、じゃあさよなら、なんてマネはしない。あのときみたいな子供じゃ、もうないんだから。」
八戒は搾り出すように悟浄の告白に応えた。
「―――あなたが本当に待っていてくれるなんて、思ってなかった。久しぶり、だけで終わるだけなら、来ない方がいいと思って……。」
「だから今まで来なかったのか。信じてなかったわけじゃないけど。―――忘れたんじゃ、なかったんだな。」
「―――忘れるわけ、ないでしょう……っ!」
八戒は悟浄を激しく睨みつけた。
「あなたが誰か別の人と生きていても、それでも傍にいようと思って戻ってきたんですよ!」
「マジで?」
「冗談でこんなこと言うと思いますか。」
頬に触れる悟浄の指に、八戒は自分の指を重ねた。悟浄の口唇が八戒に触れた。そのまま悟浄は八戒を畳の上に押し倒す。
衝撃に首を仰け反らせる八戒の上に、悟浄は覆い被さった。八戒の細い肩を両手で押し付けて、悟浄は白い首筋に顔を埋めた。
そろりと舌を這わすと、躰の下で八戒が息を呑むのが分かった。
「駄目だって言っても、もう聞かないからな。」
きちんと止められた八戒のシャツの釦を悟浄は見せ付けるようにゆっくりと外した。
アンダーを捲り上げるように胸に手を滑らせると、頬を上気させ目を閉じた八戒の白い肌が顕になる。
淡く色づく胸の尖りに悟浄は顔を近づけて、口に含んだ。
「あ……っ」
思わず声を上げた八戒の胸を悟浄は強く吸い上げる。硬く尖り始めたそれを味わうように何度も舌で転がした。
八戒の息が荒くなる。もう片方の胸の突起も指で弄ると、八戒の躰はびくんと跳ねた。
「気持ちいい?」
問う悟浄の声も熱に潤んでいる。いい、と答えられない八戒はぎゅ、と目を瞑って顔を背けた。目許が赤らむその顔は、見たことがないほど綺麗だった。
胸を摘んでいた指先がそろりと下肢へと伸ばされる。かちゃりと音を立ててベルトが外される音にさえ感じるように八戒は身を竦めた。悟浄の指が下着の中へと忍び込む。
「ああっ」
身を捩る八戒のものを悟浄はやんわりと握り締めた。既に勃ち上がっているそれは、ぬるりと悟浄の指を絡め取る。
「もう感じてるの、分かる?」
悟浄は八戒の耳許に熱く囁いた。首を横に振る八戒の腰を上げさせ、ものが顕になるように服を半分脱がした。
「見える?」
いやらしげに囁いた悟浄の息も荒い。ふるふると揺れて涙を零し始めた八戒自身に顔を近づけて、悟浄はそれにそっと接吻けた。
「やっ、悟浄……っ」
「だから嫌は駄目だって。―――あのさ、覚えてる?おまえ最後までやらせてくれなかっただろ?」
「最後までって……!無理矢理手でしたくせにっ」
「手ではね。でもそこまでじゃん。―――俺さ、すっげー後悔したわけよ、何で最後までやっとかなかったんだろうって。」
「そんな……っ」
「抱いときゃよかったって、おかしくなりそうだったよ。」
「―――最後までやってしまったら、離れられなくなってましたよ……っ」
「おまえはそれが怖かったの?」
八戒は目を閉じて再び顔を逸らした。悟浄は返ってこない返事を待とうともせず、今度は深く八戒のものを口に飲み込んだ。
びくりと八戒の躰が跳ねる。膝を立てさせられた八戒の足の間に悟浄は額づいた。
悟浄の口の中でそれが硬く育つ。ぬるりとした先走りの液と自分の唾液が混じりあって、夕闇に沈む部屋の中に水音が響いた。
舌を使って扱く悟浄が、指も絡めて八戒を翻弄してくる。
「ああっ、いやっ、悟浄……っ」
否と言いながらも八戒は無意識の内に腰を上げて悟浄を迎え入れる。しとどに濡れた八戒自身から蜜が蕾へと流れ落ちる。
ゆらゆらと揺れる八戒の腰に悟浄は手を伸ばし、濡れる蕾へと指を潜ませた。
「ああーっ」
ひとが触れるはずのない場所に、他者の躰を感じて八戒は身を竦ませた。一瞬腰を引きかけた八戒を更に深く咥えると、悟浄は八戒の中を感じるように指を突きたてた。
熱くて狭いそこを解すように悟浄は何度も八戒の内側を攻めた。ぐい、と悟浄が指を曲げた瞬間、八戒の口から我を忘れたような声が漏れた。
「ああーーっ!」
八戒は嬌声と共に悟浄の口の中に白いものを放った。びくり、びくりと口の中で何度か震えて八戒は果てた。八戒のものを、悟浄は音を立てて飲み込む。
「八戒、すごく綺麗。」
「―――馬鹿。」
息も絶え絶えに八戒は腕で顔を隠した。腕に絡まっているシャツが捲れて、白い肌が更に曝される。

いつの間にか日はすっかり暮れ落ちて、辺りは宵闇に包まれていた。
東の空に低くかかる大きな月の光が差し込んで、白い障子に二人の影を落とす。
悟浄は自分も着ているものを脱ぎ捨てて、再び八戒に伸し掛かった。八戒の膝を割り悟浄は躰を進める。猛る自分のものを八戒に押し当てて、悟浄は再び八戒の口唇に接吻けた。
二人は強い光を瞳に浮かべて見つめあう。
「今度は帰らないんだよな?」
こくりと八戒は頷いた。

あの遠い夏に途切れた日々が、再び今、繋がっていく。

一人きりだった月日を飲み込んで、悟浄は八戒の躰に己を突き入れた。八戒が悟浄の背中にしがみつく。


夏の記憶の続きに、二人で過ごす日常がやってくる。










突発本のサイトUPでございます。

今回は史上初!水曜日に思い立って土曜に完成するという。
いつもたらたらしてて、こんな計画を考え付きもしない私がどうしたんだ、って感じです。
うはー、楽しいね!!
楽しいのは私ばかりですんません、内容ですけども(笑)。
ホモの中学教師とかわくわくしちゃう設定にしたのに何にもいかせれなかった・・・。
こんなとこでなんですが、八戒が戻ってきたのは彼を育ててくれた祖父が亡くなったからです。
いくつも会社をやっていた祖父の手伝いをしていた八戒は、当然のように会社を継ぐことを期待、というか命ぜられるわけです。
けれどそんな人生でいいのかな、自分が本当にしたいことは何かな、と考えて、すべてを捨てて悟浄の待つ田舎に帰ってくる決心をしたのですね。
例によって後ろ向きな八戒のことですから悟浄に嫁さんがいても仕方ないくらいに思ってます。
友達でもいいや、と思ってたのは実は八戒のほうです。
とはいえこんな執着の強い人が友達ですむわけないのですけどもね。実際誘ってるのは常に!八戒だし。
悟浄は今も自宅で暮らしています。ただ兄夫婦に子供が生まれてその子が来年小学校にあがるので、さすがに家が狭くなってきた、と考えているのですが、いかんせん田舎なので一人ものが暮らすアパートなんて全然ない!困ったなーと思ってる所に八戒が広い家を持て余してるわけです。で、二人で暮らし始めます。
ど田舎で男二人暮らすのはいかにもやばいですね!うほっ。ちなみに八戒は会社を全部処分してきたので無職なわけです。
田舎じゃ簡単に仕事も見つからないだろうし、と思った八戒は家でできる翻訳家を始めます。
最初は軌道にのらないのは重々承知ですが、元々処分した資産もあるし、しばらくは大丈夫だろうということで。ちなみに鳴沢の家は処分しなかった資産です。
ど田舎ですからね、二人で暮らしてるのも悟浄は生徒に知られちゃったりもします。
友達だと言ってはみても、どうも不自然!いいね!
たった10頁の話の裏話がこんなに長くていいのか!というかこれを全部書こうと思うと本編より長くなるのは確かなので諦めました。
というか二日で書くならこれは無理。まあ、この設定は本編と一緒に出来上がっていたのですけども。
冬に夏のお話の続きを書くのもなんですしね!
というか現代もののパラレルをまた別口でやりたいと思ってるので今回は裏話で済ませちゃいます。すみません〜。
あ〜楽しかった!