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相続分の修正(特別受益者)

Q;特別受益の有無又は価額について共同相続人間の協議が調わない時は、相続人は、家庭裁判所に特別受益を定めるよう請求することができる。

A;×
寄与分を定める処分が独立の審判事項とされているのと異なり、特別受益は、その存在によって当然に相続分が修正されるから(民法903条1項)、家庭裁判所に特別受益を定めるよう請求することはできない(最判平7.3.7)。



1、相続分の修正

法定相続分又は指定相続分をそのまま適用すると、共同相続人間に不公平を生ずる場合があります。
このような不公平を是正するために、法定相続分に修正を加えるものとして定められたのが、特別受益者の相続分(民法903条、904上)と寄与分(民法904条の2)です。



特別受益者の相続分

第903条[特別受益者の相続分]
T 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻、養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を 受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたもの を相続財産とみなし、前3条の規定によって算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除し、その 残額を以ってその者の相続分とする。

条文メモ
903条より、「特別受益者の相続財産=(相続財産+特別受益分)×法定相続分−特別受益分)となります。

特別受益者とは、共同相続人の中で被相続人から遺贈を受け、または婚姻、養子縁組のためもしくは
生計の資本として贈与を受けた者をいいます。

特別受益者については、本来の相続分から受益分を控除して、他の共同相続人との調整が図られるます
(民法903条1項)。

特別受益者の相続分の算定方法

共同相続人中に特別受益者がいるときは、次の方法によって各相続人の相続分を算定します。

(T)算定の基礎となる相続財産の確定

特別受益に贈与が含まれているときは、被相続人が相続開始時に有した財産の価額に贈与の価額を加えた値を算出します。
これを、特別受益における「みなし相続財産」といいます。


なお、贈与がされた後、相続開始までの間に、受益者の行為によって、贈与の目的財産だ滅失し、
又はその価額の増減があったときでも、原状のままであるものとみなして計算します(民法904条)。

これに対して、特別受益が遺贈のみであるときは、みなし相続財産の算定は不要であり、通常通り、
被相続人が相続開始時に有した財産の価額を基礎とします。

(U)法定相続分または指定相続分による算定

上記の相続財産またはみなし相続財産の価額に各相続人の法定相続分または指定相続分の割合を
乗じた値を算出します。

(V)特別受益者に関する修正

特別受益者については、(U)の計算結果から特別受益である遺贈または贈与の価額を控除したものが
相続分となります。
このような処理を、特別受益の持戻しといいます。

特別受益の価額が、(U)の計算結果と等しいか、またはそれを超える場合には、特別受益者の相続分はゼロとなります(903条2項)。
超える場合であっても、特別受益者は超過額を返還することを要しません。

[特別受益による法定相続分の修正]

被相続人A、Aの配偶者B、ABの子がCDであるとき、
相続開始当時のAの財産の価額・・・・・・・・600万円
Bが受けた遺贈の価額・・・・・・・・・・・・・・・・300万円
Cが生計の資本として受けた贈与の価額・・200万円

計算式
Bの相続分;{(600万円+200万円)×2/4}-300万円=100万円(他に遺贈300万円)
Cの相続分;{(600万円+200万円)×1/4}-200万円=0 (生前贈与200万円のみ)
Dの相続分;(600万円+200万円)×1/4}=200万円

例題
Aは3,000万円の財産を残して死亡した。相続人は妻B、長男C,長女Dであるが、Bは400万円の遺贈を、
Cは独立する際に200万円の贈与をAから受けていた。BCDの具体的相続額は?

B;(3,000万円+200万円)×1/2-400万円=1,200万円(ほかに400万円の遺贈)
C;(3,000万円+200万円)×1/2×1/2-200万円=600万円(ほかに200万円の贈与)
D;(3,000万円+200万円)×1/2×1/2=800万円


特別受益の確定手続

持戻しを適正に行うためには、特別受益である贈与の有無や目的物の価額を確定する必要があります。
これは、原則として、共同相続人間の協議でなされます。
<では、協議が調わないときはどのような手続のよるべきであろうか>
民法は特別受益に関する紛争を処理するための特別な裁判制度を定めていないので、
遺産分割に関する家事審判事件や遺留分減殺請求に関する訴訟事件において、
その前提問題として、特別受益の問題を争うほかありません。

判例(最高裁判決平成7.3.7) 特別受益の確認を求める訴えの可否

「ある財産が特別受益財産にあたるかどうかは、遺産分割申立事件、遺留分減殺請求に関わる訴訟など具体的な相続分または遺留分の確定を必要と審判事件または訴訟事件における前提問題として審理判断されるのであり、それらの事件を離れて、特定の財産が特別受益財産であることの確認を求める訴えは、確認の利益を欠くものとして不適法である。」


持戻しの免除

被相続人が特別受益の持戻しに関する民法の規定と異なる意思表示(方式は問わない)をしていたときは、
遺留分に関する規定に反しない範囲内で、その意思表示に従う((民法903条3項)。
この意思表示によって、遺留分を侵害された相続人は、特別受益者に対して減殺請求権を行使することができます。

相続債務と特別受益の関係

<共同相続人間における相続債務の負担割合の算定についても903条を適用するかどうかについては争いがあります。>

相続債権者との関係では、各相続人が本来の相続分に応じて負担すべきであるという説が有力です。
この見解によれば、特別受益の持戻しによって具体的相続分がゼロとなる相続人であっても、相続債務を免れることはできません。


「特別受益と寄与分」

特別受益の持(903)戻し 寄与分(904の2)
趣旨 相続人中に被相続人から特別の財
産的利益を受けた者がある場合に、
相続人間の不公平を計算上生じさせ
ないようにする
相続人に被相続人の財産の形成・
維持につき特別の寄与をしたものが
ある場合に、相続人間の不公平を
計算上生じさせないようにする
対象 1、相続人の受けた遺贈
2、相続人が婚姻・養子縁組のため
もしくは生計の資本として受けた贈与
被相続人の事業に関する労務の提供
または財産上の給付、被相続人の療養
看護その他の方法による被相続人の
財産上の維持または増加についての
特別の寄与
評価方法 受贈者の行為によって、目的たる
財産の滅失・価額の増減があっても
「相続開始の当時なお原状のままで
在るものと」みなされる(904)
→相続開始時を基準として評価する
1、共同相続人間の協議
2、家庭裁判所の審判
→「寄与の時期、方法及び程度、
相続財産の額その他一切の事情を考慮」
する(904の2 2項)
効果 被相続人の相続開始時に有した財産
の価額に贈与の価額を加えたものを
相続財産とみなし、相続分の中から
遺贈・贈与の価額を控除する
(903 1項)
被相続人が相続開始時に有した財産の
価額からその者の寄与分を控除しものを
相続財産とみなし、相続分に寄与分を加え
た額をその者の相続分とする(904の2 1項)

「特別受益者の相続分(民法903条・904条)

要件 1、相続人 (注1)
2、被相続人から遺贈を受け、又は婚姻、養子縁組のためもしくは
生計の資本として贈与を受けた者(903条1項)
算定期間 原則 贈与の価額は、相続開始時を標準として評価する
例外 @目的財産が受贈者の行為によって滅失したした場合
A価額に増減があった場合
⇒贈与時(904)
計算方法 具体的相続分=
{相続開始時の財産の価額(注2)+相続人が受けた贈与の総額}×
相続分-その者が受けた贈与又は遺贈の価額(900〜903)


(注1)相続放棄をした者への贈与・遺贈は、計算に入れない
(注2)被相続人が債務を負担している場合、債務を控除しない


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*参考文献
東京リーガルマインドC BOOK民法X親族相続