魚菜王国いわて

石油使用量から、石油火力発電と太陽光発電を考える

石油使用量比較
漁師のつぶやき」の「エネルギー産出比」(http://fish-archives.hp.infoseek.co.jp/tubuyaki-energy.html)の中で、「石油代替エネルギー供給技術の有効性の検討」の不備を指摘しています。
今回はそれを、石油エネルギー消費量の観点から考えてみます。

石油火力発電、太陽光発電とも、発電設備の原料資源は海外調達ですから、原料資源生産から海上輸送して国内に入るまでに要する石油消費量を一括して考え、それを L とし、石油火力発電の L を Ls、太陽光発電の L を Lt とします。

次に、国内での発電設備生産時と発電時の石油消費量を考えます。
石油火力発電のエネルギー産出比は、「石油代替エネルギー供給技術の有効性の検討」では、「火力発電単独のエネルギー産出比は0.35程度といわれている。」(§1.エネルギー産出比)としていますから、これを略して0.4とし、発電量をSとすれば、

  S/0.4 = 2.5S

の石油を消費したことになります。
しかし、火力発電の場合、発電するたびに、石油をタンカーを使って海外から輸送しますから、その度にタンカーの燃料も消費します。(石油採掘や精製の石油消費も考えなければなりませんが、面倒なので省略します。ここでの概略の理解が得られれば良いですから)。
ここでタンカー1隻で運ぶことのできる石油量をG、タンカー1隻の輸送石油消費量をLuとすれば、石油火力発電で発電量Sを発電するのに必要な石油量は、

  2.5S + (2.5S/G)×Lu = 2.5S(1+Lu/G)

となります。

一方、太陽光発電の場合、EPT=3年、耐用年数を10年とすれば、エネルギー産出比は3.3で、すなわち、原料資源が国内にある場合は再生産できます。
ということは、発電量Sがいくら大きくなろうとも、石油消費量は0です。

ここで、両発電の原料資源生産から発電時の石油消費量をそれぞれ合計すると、

石油火力    Ls + 2.5S(1+Lu/G)
太陽光発電  Lt

これらの式から何がわかるのでしょう。
Lu、Gは、タンカーの能力を表すものですから固定値です。
Ls、Ltは、発電設備の規模によって変化しますが、これも固定値です。
Sだけが変数で、石油火力発電の場合、発電量Sが大きくなればなるほど、石油をたくさん消費します。
ところが、太陽光発電の場合、発電量Sが大きくなっても、石油消費量は増えません。
これは、発電量が大きくなればなるほど、太陽光発電を利用するほうが石油節約になるということです。

これから考えると、太陽光発電のEPTがいかに重要であるがかわかってきます。
とにかく耐用年数内にEPTが収まれば(すなわち、エネルギー産出比>1)、それは石油消費の節約になるのですから。
ということは、石油を使って、太陽光発電の原料資源を国内にジャンジャン運べばいい。
そして、屋根などのニッチスペースを利用して、太陽光発電を行えばいい。
もしかして、国内の電気エネルギーを全部生産できるんじゃないか?
ところが、「石油代替エネルギー供給技術の有効性の検討」で「仮にこのエネルギーを全て太陽光発電で賄おうとすれば、日本の全ての平地(国土面積の20%程度か?)を全て太陽電池パネルで被い尽くすことが必要になるのである。」(§2.石油代替エネルギー供給システムの評価「2-3-2 太陽光発電」)とあり、スペースの問題上、国内で消費する電気エネルギーを“全部”賄うことはできません。
残念でした!(笑)

太陽電池パネルの設置架台などの生産エネルギーもかなり大きなものとされますが、これをアルミ素材とすればどうでしょう。
2003年度版の「地球白書」では、「アルミニウムは、ボーキサイトから生産するよりも、再生材を使ったほうが、95%もエネルギーを節約できる。」(p227)としています。
このことは、資源回収業者がアルミ缶を欲していることを私たちは身近に見ていますから、納得いくと思います。
しかも、今や、アルミ合金は腐食しにくいものとなっていて、回転するもののない(すなわち不要な電気を起こさない)太陽電池パネルならば、漏電さえなければ、ますます腐りにくいはず。
とにかく太陽光発電設備の耐用年数が、どんどん伸びれば伸びるほど、エネルギー産出比は大きくなり、その比が1以上となれば、石油節約的な意味は確かなものになります。

以上のことから、EPT(この真実の値が本当に大事)さえ満足であれば、「石油代替エネルギー供給技術の有効性の検討」で書かれているように、「全くの論外」ということではないと思います。

NEDOの報告書
Googleで「エネルギーペイバックタイム」検索し、私がメールで問い合わせたサイトを、以下に挙げておきます。

クボタの「エコロニー」のEPTは2.1年(http://ecolony.kubota.co.jp/index.htm)。
京セラの「ソーラーパワープラント V」のEPTも1.5年(http://www.kyocera.co.jp/prdct/solar/index.html)。
Kawasakiの「太陽光発電システム」のEPTは2.4年(http://www.khi.co.jp/pv/index.html)。

私がメールで問うた内容は、「EPTが、パワーコンディショナー、その他の付属機器、電線など、すべてを含めての数字なのかどうか」というものです。
結果、京セラさんからは、私の不在時に、回答の電話がありました(わざわざご苦労さまです)。
Kawasakiからは、メールで返信をいただき、さらに、NEDOの報告書まで紹介してもらいました。
非常に感謝しています。
どちらの回答も、発電システム全体のEPTを指しているとのこと。

NEDOとは、新エネルギー・産業技術総合開発機構のことで、字の通りのことをやっているところのようです。
NEDOの報告書は、「太陽光発電評価の調査研究」というもので、なかなか基本的なことも書いてあるので、勉強になります。
p14では、いろいろなタイプにわけて、EPTを記していますが、ここで気がついたのは、EPTの数字がいろいろなメーカーのサイトの数字と一致するということです。
つまり、このNEDOの報告書「太陽光発電評価の調査研究」のEPTの数字を、メーカー各社が使っているということではないでしょうか。

EPTの算出方法も書いてあり、これには現在、二通りの方法があります。
一つは、積み上げ法、すなわち、投入エネルギーの積み上げによって求める方法と、もう一つは、産業関連法を用いて算出する方法です。
これらは、P31からの「第2章 エネルギーペイバックタイム(EPT)の評価手法の研究」で説明されています。
また、「第5章 既存電力システムへの貢献度評価」では、ピーク電力対策として評価しています。
つまり、既存発電システムの補完的な役割とでもいうのでしょうか。
例えば、夏の炎天下では、クーラーや扇風機により、電力使用量はピークとなります。
炎天下ということは、太陽はSunSunと照っているわけで、それらの電力を太陽光発電で賄う、という考えです。
発電所は、ピーク電力の要求に応えて建設されるわけですから、そのピーク分を太陽光発電で賄えば、余分な原発は要らないのです。
なるほど。なるほど。

それにしても、この研究報告書は平成7年に書かれたものですから、EPTの数字は、何と10年も前のものです。
それならば、現在のEPTは、もっと短くなっているはず。
発電設備の耐用年数10年とし、仮にEPTを1.5年とすれば、エネルギー産出比は、10÷1.5≒6.6。
素晴らしい数字です。

ということで、この報告書を読む限り、EPTは信頼できる数字のようです。
それならば、太陽光発電は、「石油代替エネルギー供給技術の有効性の検討」で説いているような石油エネルギーの“無駄”ではなく、“節約”となります。

「使いすぎだよ!」警報装置
太陽光発電のバックアップ設備というものを考えるにあたって私は思うのですが、そもそも石油節約を考える場合、それはエネルギーをできるだけ使わないようにすればいいだけの話であって、それなら、「エネルギーの使いすぎ!」ということを警告する装置があっていいと思います。
例えば、太陽光発電を家庭に設置したなら、発電量以上の電気を使用しそうになった時、警報装置が働き、その家の人間に「使いすぎだ!」という警告を発するようなシステムを作れば、人間バカじゃないんだから電気使用を控えると思うんですよ。
同じように、全国の発電容量をオーバーしそうになった時、「日本全国のみなさん、使いすぎですよ!」というメッセージを防災無線か何かで警告するようなシステムを電力システムに組み込めば、ピーク電力を抑えることができると思います。
こんなソフト的なハードを構築してもいい感じがしますけど・・・・。
日常生活で「電気が足りなくなったら、電気を使わない」という基本的なことを、みんなが認識しさえすれば、バックアップ設備というものは、あまり重要でないと思ったりもします。
だから、家庭用電源としての太陽光発電は、私は有用だと考えます。

(2005年4月7日)

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