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   信頼が人を育てるのです
 かれこれ昔の話になりますが、前の職場では営業社員をしていました。前任者が突然退職したために入社したのですが、今まで経理事務の仕事をしてきた自分にとって営業職は初めての経験でした。転職組で贅沢を言える立場ではなかったので、とにかく毎日が苦労の連続でした。
 
 入社してからの苦悩は、前任者からの引継ぎ資料一切なしから始まりました。その上、セールス先へは社員の同行紹介もありませんでした。それでいて「営業に行かねばならない」でしたから、当然お客様には不信がられましたね。「お宅の担当者は良く代わるけど、僕の注文した物はいつ届くの?」と言われても返答の仕様がない訳です。なにせ受発注台帳なし。見積書控えなし。特定ユーザー向け価格表不明でしたから深刻な状況だったのです。そのせいで、その後受発注の確認作業に随分時間が掛かりました。後で分かったことですが、退職した方々は会社の仕打ちに仕返しをして辞めて行ったようです。休日にこっそりと出社して、「自分でまとめた資料を全部焼却炉で燃やしていたようだ」と先輩が言っていました。まったくひどい話です。通りで机の上も中もカラッポだった訳です。
 
 過去のしがらみがなくなり、お客様に信頼されるようになるのに一年程掛かりました。しかし残念ながら、私も訳あって四年後に退職しました。但し私の場合は、後任者に対して十分な引継ぎをして退職しました。勿論、自分がまとめた営業資料も全部残してきました。とても感謝されたということはいうまでもありません。また余談ですが、私が会社を辞めるのに際し、取引先担当者から「〇〇さんが会社を辞めるのなら、取引を止めようかなぁ...」と言っていただいたことが今でも忘れられません。とても嬉しかったです。この時ほど「信頼は財産」と感じたことはありませんね。
 
 長くなりましたが、「人生は信頼されることが一番」です。自分が苦労した分、「後任者にも同じ経験をさせてやれ」というような仕返し根性では何も生まれませんね。どこかで誰かが悪循環を断ち切らなければならないのです。それが信頼への第一歩なのですから。
更新日時:
2015/08/01

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