「皆、ちょっと良いかの」



新学期。

一年生らを加えたホグワーツの生徒たちは
新学年最初のご馳走を目の前にしたまま、いきなりお預けをくらった。


「すっかり忘れておったのじゃが、大事な知らせがあるんじゃ」


ざわつく大広間。
勿論グリフィンドール席に座っているハリーたちも例に漏れない。


「大事な知らせ・・・ってなんだろう?」
「僕が知るわけないだろ。ここはご優秀な魔女の彼女に聞いてみようか」
「私だって知らないわよ」


横一列並んで座っている三人は
他の皆と同じく、姿勢を正したまま小声で語り合う。

そしてその合い向かい側では
同じ顔をした赤毛の二人、フレッドとジョージが、ダンブルドアの話も適当に
早々と手元のチキングリルとソーセージに手をつけていた。


「知らせだってさジョージ。なんだと思う?」
「そうだな、ダンブルドアの髭が実はウィッグだったなんてどうだろう」
「そりゃ傑作だな兄弟。だったら、眼鏡のレンズを牛乳瓶の底に新調したなんてのは?」
「そりゃ一大事!確かに大事な知らせだな」


しかも三人とは違って声を潜めることなくリアクションまでとって堂々と。

その青年期独特の二つの同じ声は教授席まで聞こえたようで、
ダンブルドアは痒そうに髭を掻いたあと、テーブルのナフキンでいそいそと眼鏡を拭いた。


「ごほん。知らせというのはじゃな。・・・・新学期に伴い四年生に仲間が一人増えることになってのぉ」


ダンブルドアのその言葉に。
ぴくっと、眉をひそめる者がいた。

「「(この状況・・・・昔に似たようなことがあったような無かったような・・・・)」」


教授席のマクゴナガルとスネイプは額に手を当て考える。
そして、とてつもなく嫌な予感を確かに感じるも
それが何故なのか解らないまま、彼彼女らはこのあと眉間の皺を増やすのだった。


「ふーん。編入なんてしてくるからには、さぞ優秀な魔法使いなんだな」
「そうね。でもどんな人でも貴方には適わないわよ」
「そんなの当然さ」

スリザリン席では、すっかり王子気分のドラコが席の中央を陣取り
隣席にパンジーを侍らせ偉そうに踏ん反りかえっている。
災難が降りかかるとも知らずに・・・・。


困惑が広がるそんな中、一人この後の展開を知っているダンブルドアだけは
愉快に顔を緩ませながら立ち上がった。


「さあ、出てくるんじゃ」


ダンブルドアの真後ろにある絵画が重い音を立てながら開く。
この絵画が開くことを知っているのは僅かな者だけ。

それを知っていた人物・・・マクゴナガルとスネイプは
はっと、ほぼ同時に激しい音をたたせて席を立ち上がり絵画の奥を見た。
生徒たちも、つられて眼を見開き見た・・・・・が、



『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』


現れた通路には誰もいなかった。

呆然とする生徒一同。
しかし二人の教授の緊張の糸は未だ切れておらず
今度は鬼気迫る表情で上を・・・頭上を見た。

生徒らもやはりその視線を追ってみるが、
高い天井までの広々とした空間には、人はおろかゴーストらも何も浮かんではいなかった。


「・・・・・・・・・・・・・考えすぎだったか」

「・・・・そのようですね」


二人は顔を見合わせて、静かに椅子に座りなおす。
生徒らの疑惑の目線をひしひしと感じながら。


「どうやら紹介したい者は校内見学をしておるようじゃな。先に宴を開いてのんびり待つとしよう」

「校内を編入生一人で歩かせるのは危険です」

「心配無用じゃミネルバ。その者はホグワーツを知り尽くしておる。
 
 このわし並み・・・いや、わし以上かの。ほっほっほ」


パチンとダンブルドアが指をならすと
テーブルの所々に置かれていた蝋燭に一斉に火が灯り、
待ちかねていたゴーストたちが次々と飛び出してきた。

やっと新学期らしい宴の始まりだ。


「それにしても、編入生って何者なんだ?」
「チーズ垂れてるわよ」

ロンがチーズがとろけるピザを口に押し込みながら言うと
右にいたハーマイオニーがすかさずナフキンを押し付けた。

少々不機嫌になりながらもロンはそれを受け取り自分の手元におちたチーズを乱雑に拭く。


「ダンブルドアよりホグワーツを知ってる・・・・か」
「ハリー、貴方心当たりがあるの?」
「うん・・・だけど今回の編入生とは関係ないと思う」
「へえ。でもハリーの予想って結構当たるからな、もしかしたら大当たりだったりして」
「それはないよロン。だって僕の心当たりっていうのは・・・」

「「あの二人のことだろ?」」

突然会話に押し入ってくる双子に驚きながらも
ハリーはこくんと頷いた。
それを見た双子は「やっぱりな」と笑う。

最初は何のことだか分かってなかったロンとハーマイオニーだが、
すぐに『あの二人』が誰のことなのか思いついた。


「それってとシリ・・・・っとと、スナッフルのこと?」
「大正解さ、ロニー坊や」
「しかし気づくのが遅い。五点減点!・・・・なんてな」

「あの二人なら多分ダンブルドア以上にホグワーツを知ってる気がして・・・」
「そうね。でもハリー、その心当たりは当たるわけないわ。
 だってあの二人は貴方のご両親と同級生だったんだから」
「わかってるよ。だから関係ないって言ったんだ・・・・・だけど」


話せば話すほど、なんだか無性に・・・・


「「「・・・・・・なんか嫌な予感がする・・・」」」」


ハリー、ロン、ハーマイオニーの声が綺麗に重なった。
思わず互いの顔を覗きこむ。


「やっぱり・・・・二人も?」
「ええ。なんだか胸騒ぎがさっきからずっと・・・」
「僕も頭が痛くなる気がする」

「そうかい?僕はすごぶるイイ予感しかしないけど・・・」
「同感だ。なんだか面白いことが起こる気がしてならないね」


三人と二人の相反する意見。
これがどちらも正しい事が判明するまで、もうまもなく。

さあ耳を澄ませて。

広間のざわめきに乗じて徐々に大きくなる足音が


少しずつ近づく。

この大広間に。


獣の走る、あの軽快なステップの音が。



「・・・・・・来たようじゃな」

フォークを皿に置き、またも腰を椅子からあげるダンブルドア。

チリンとベルを鳴らせば
生徒らも波が引くように口を閉じる。

静かになれば誰の耳にも届く足音。


「皆、編入生を紹介する」


ダンブルドアがそう言って、多くのものが一息飲み瞬きをしたその時、



バターン!!



「こんにちはー!!多くの皆さん初めまして、一部のみんなお久しぶり。
 
 と、その飼い犬スナッフルです。餌にチキンをあげると喜びます!!」


大広間の正面扉から、巨大な黒犬に乗った少女が突っ込んできて
一同の前にその姿を見せた。

黒犬から飛び降りた少女は一昔前のタイプの制服とローブに身を包み、
既にグリフィンドールのマフラーを巻いている。
乱れた薄金の長い髪を手櫛で整える仕草は、どうにも少年的で
けれど小柄で華奢なシルエットは、愛らしい少女。

そして豪快な登場に負けないくらいに目立った明るい笑顔と、

その双眸に宿る、まるで太陽が埋め込んであるような黄金に輝く瞳。

更に、少女が自分から降りてしまったのを酷く残念そうにしながらも
必要以上に少女に寄り添って足蹴にされ、何故かそれはそれで嬉しそうな様子の可笑しな超大型犬。


彼女らの正体を知る者らからしたら、特に驚くこともない風景なのだが。


少女の姿には、只々、阿呆のように口を開き驚く他なかった。


よね・・・?」
「同姓同名の別人だよ。絶対に」

「けど見た目だってそっくりだぞ。僕らと同い年くらいだけど」
「ドッペルゲンガーだよ。多分」

「ハリー。信じたくない気持ちもわかるわ。でもあの黒犬はどうみても・・・」
「世の中探せば熊並に大きい犬の二匹や三匹いるよ。きっと」

「・・・・・キミの名前、呼んでるぞ。あの子」
「知り合いに僕と同じ名前の人がいるんじゃないかな。・・・うん」

『・・・認めたくないのか(のね)』


「ハリー!ハリー何処?!
 無駄に父親似すぎて寝ぼけたあたしにうっかりクソ爆弾投げられたハリーは?!ハリぃぃーー!!」


「・・・・・・・・・・・休み中にそんなことあったのかい?」
「・・・・・・・うん、時々ね」


遠い日を懐かしむように言うハリー。
どうやら認めたらしい。

あの恥ずかしい子が自分の保護者だと・・・。
ついでにあの黒犬が自分の名付け親だと・・・。


「ひゃっほい!予想がドンピシャじゃないかハリー!凄いぜ!」
ーー!僕らは此処だよ!!」


椅子の上に立って大手ぶるまいをしての視線を寄せようと叫ぶ双子。
二人の過度なまでのパフォーマンスのおかげで一人祭りのも、すぐにそれを発見し
目の前のテーブルに飛び乗った。

緑と白のマフラーやらネクタイをした少年少女らが頭を連ねるそのテーブルの皿の間を縫うようにしながら、
しかし常人の全速力をはるかに凌ぐ速さで駆け抜ける。

途中、たったの一度だけ
彼女がグリフィンドール席に飛び移る際にローブが過剰にはためいたがため、
とあるプラチナブロンドの少年の前の皿が大きく円を描くように吹っ飛んで
綺麗に盛り付けてあったカルボナーラが、狙ったように少年の頭に降ってかかったりした。



「ハリー!!」

とびきりの笑顔をオプションにした
半ば飛びつくようにしてハリーに抱きつく。


。なんで此処に・・・それよりその姿・・・?」
「その辺はあとで聞き飽きるまで説明する。とにかく、今日からあたしも同級生だよ!」
「スナッフルまで連れて来て大丈夫なの?」
「うん。ちゃんとダンブルドアには許可とってあるし、一人で家に置いてけぼりにするわけにもいかないし」
「なんか、やけにハイテンションじゃないか?いつも以上に」
「いやぁ、身体若返ったら中身まで戻った気分でさ!これが学生時代の普通!」

やんややんやと盛り上がるグリフィンドール席。

そこに眉間の皺をいつもの倍以上に増やしてズカズカとやってきたのは・・・


!!その姿はまさか・・・!!」
「多分ご名答。流石は陰険魔法薬学教師!嫌味と陰湿さと魔法薬についてはピカイチ!」
「褒めるのか貶すのか一つに絞らんか!」
「うひゃあ、懐かしい〜。昔は毎日こんなふうに怒鳴られたっけなぁ」
「それは貴様が我輩の邪魔ばかりするからだろうが・・・!」
「まあまあ落ち着け、血圧上がるぞセブル・・・じゃなかった、スネイプ先生!」


にっこり笑ってスネイプにウインクする
途端にスネイプの血色悪い顔が赤い絵の具をぶちまけたみたいに真っ赤になった。
どうやらにつられて自分まで思春期に戻ったような気分になってしまったようだ。

そこに、やたらと眼つきを悪くしたスナッフルがやってきたかと思うと
の襟首をがっと咥えて、スネイプの傍からハリーたちの方へと、
ユーホーキャッチャーのように移動させた。

スネイプとスナッフル・・・もといシリウスの間で火花が散る。


だけなら未だしも。貴様まで来たのか、低脳色惚け犬めが」
「わんッ!ぐるるるる・・・・!!(うるせー!この青白スニベリー)」

「全く、何年経っても変わんないんだからなぁ、しょーがないやつら」


呆れた口調ながらもが甚くご機嫌なのは誰の眼にも明らか。
とて嬉しいのだ。
楽しい思い出ばかりの、この懐かしき学び舎に来れた事が。


「ミス・!!」

ピーンと張り詰めた声。
いい意味でも厳しさを強く含んだその呼び方をするのはホグワーツで一人。


「個人的な挨拶はそのくらいにしなさい。これは前にも言いましたよ!」
「うう、ごめんなさい。・・・またマクゴナガル先生に怒られた・・・・・」


二十年ほど前にも全く同じように怒られた記憶のある
そして学生時代の七年間、やっぱり怒られ続けてた。
そして若返った今も、やっぱりこうして怒られる。変わってないのはどっちだか。

グリフィンドール席で申し訳なさげに小さくなるを見かねたのか
マクゴナガルは小さく息を吐くと・・・


「ミス・。取り合えずこちらに来なさい。生徒達に紹介しなくては」
「へへ、はーい。ただいま行きます!」


名前を呼ばれると打って変わって嬉しそうに笑いながら
軽い足取りで教授席に早足。

マクゴナガルの隣まで行くと、くるっと生徒達の方を振り向いて。


「改めて・・・四年生に途中編入しましたです!
 趣味は悪戯と魔法陣の研究・開発。得意な事は走ることと魔法薬の失敗です!」
「ミス・は大変優秀な生徒です。まあ、多少素行に問題はありますが・・・皆さん、仲良くするように」

「マクゴナガル先生、素行に問題ってどういう意味っすか?」
「そのままの意味です」
「そんなきっぱり言わなくても・・・先生ったら酷い」


はとぼとぼと意気消沈気味にグリフィンドールの席に戻ろうと教授席を横切ると
とあることに気がついた。


「・・・・あれ?」
「どうしました?ミス・
「この席、なんで空いてるんすか?」
「ああ、その席は・・・・」

「決まってないんじゃよ。今年の闇魔法の防衛術の教師がの」


本気で困ったふうに肩を落とすダンブルドア。


「え、リーマスの後任決まってないの?」
「そのとおりじゃよ。なかなかピンと来る面白い・・・・ごほん、優秀な魔法使いが見つからなくて困っておるんじゃ」
「(今面白いって言ったよな、この髭・・・)ふーん。ならさ、いいじゃん。アイツで」

『アイツ・・・??』

周囲が疑問を抱いてるのも気にせず
はローブの内ポケットから畳まれた羊皮紙をとりだした。
何重にか折られているそれを鼻歌交じりに広げていくと、
黒と赤のインクで描かれた見慣れぬ陣がその姿を見せた。

そしては杖を取り出し、宙で二度円を掻いたあと陣に向かって振り下ろした。


「忠実なる絵陣よ。汝が主の求む者を今此処に!」


の呼びかけに呼応して、
陣の周円が山並みに射す朝日のような紫がかった光を放ちだす。

円を一周すると光は次々と文字を生み出し青味を強め輝きを増した。

すると、陣の中に虚ろながら人物めいた影が現れ
それが徐々に具体的なシルエットを作る。

中背の痩せた影に、だんだんと色がつく。
鳶色が少し褪せた風味の髪。良いとは言えない顔色。
濃緑でボロボロのローブ。

グリフィンドール席にいる生徒らの顔に喜びが
広間全員の顔にも驚きが映りだす。


「あ、あれ?此処は・・・・ホグワーツ?」
「よっ、リーマス」
「・・・・・・・・君、もしかして?」
「おうよ!」
「・・・参ったな。また僕呼び寄せられたのかい?折角チョコケーキ作ってたのに・・・」
「そんなもん此処の厨房借りて作れ」


若返ったことに対する質問がない辺りが彼らしい。
が若返った理由なんて、聞かずともわかっているんだろう。


『ルーピン先生!!』

「やあ、みんな。久しぶり」


へらっと頼りない、けれど温かみと優しさが溢れた笑顔に生徒達が一斉に集まる。
去年毎日のように見たのに今年からは見れないはずだった笑顔のもとに。


「ダンブルドア校長。いないんだったらいいでしょ?リーマスがまた再就任で」

「そうじゃの。・・・異議のある者がいたら名乗り出てくれんか?」


手をあげる者はいない。
あのスネイプでさえ、不服そうではあるが、拒否はしなかった。

つまり・・・・・


『やったーーー!!』


彼の授業が好きだった生徒らからの大歓声。
それは決して少ないものではなく、過半数を超えていた。


!やっぱりキミは最高だよ!!」
「ああ。僕らの先生・・・いや、姫だ!!」
「おわぁっ、フレッド!ジョージ!お前らいきなりなに?!」

「「貴女様こそ我らが姫に相応しい!!」」


駆け寄ってきた双子に両サイドから突如抱き上げられ慌てるが
それにもすぐに便乗してフレッドとジョージの腕に担ぎ上げられたまま、高らかと杖を振りかざす。


「みんなー!今日から退屈できると思うなよーー!!」


らしい快活な声。
ダンブルドアたちは数十年前にもなる活気あるあの時代が戻ってきたようだと
嬉しそうに微笑を露にした。

そう、かつてジェームズ・ポッターら悪戯仕掛人を名乗る彼らが活躍した、あの輝かしい時代が。

時を超え、人を加え、戻ってきたようだ。


一人の、少女の手によって。




「また暫く楽しくなりそうじゃな。ほっほっほ」


笑う門には福。

昔読んだ日本の本に、そんな言葉があったことを思い出しながら

ダンブルドアはまた、笑った。


眩しすぎる一人の少女の笑顔につられて。








さあ 笑え 楽しめ 遊べ 
力の限り!生きてる限り!!

プライドとかコンプレックスとか 
自分を苦しめる鎖なんて捨てて 

恐がりさえしなければ もっと自由に飛べるから

自由じゃない人なんて本当は世界中何処にもいない




あとがき。
やっとこさオール世代逆ハーの幕開け!!
これからリドルやらヴォル様も登場予定なので適当にご期待・・・・をされても困ります!!(笑