「おい、待てポッター」
誰もが惚れるその笑顔
食事が終わって、寮に戻ろうとするハリー一向を誰かが呼び止めた。
高圧的な腹立たしい物言いに心当たりのあったハリーらが、顔を苦くさせて振り向くと
そこにはやはり予想通りのそいつらがいた。
横にも縦にもでかい鈍間そうな二人従えた
銀のような金髪を撫で付けている、虚弱にすら見えるくらい細身な、顔色の良くない少年。
あどけなさは少々残るものの、まるで自分が王であるかのような威圧的な表情。
ただ、何故か今日の彼は異様なまでにホワイトソースの香りを撒き散らしている。
「マルフォイ・・・・・・きみ、なんか臭いよ」
「うるさい!!それもみんなお前の横にいるやつのせいだ!」
「え?横って・・・・・」
ハリーの横には二人の人物が居る。
左側は親友であるハーマイオニー。ハリーとぱたりと目が合った彼女は無言で首を横に振ってみせた。
どうやらハーマイオニーには何のことだか覚えがないらしい。
考えてみれば当たり前だ。
ハリーたちは今学期、今初めてドラコに遭遇したのだから。
それに、今回のドラコの文句は、ここ数年聞きなれたいつもの難癖や嫌味とは少し違うとハリーは気がついた。
確かに物言いこそは毎度の上から目線だが、内容は明らかにこちらの誰かに否があると言っている。
ただ、その誰か。
それが問題なのだ。
ハーマイオニーでないとすれば右側にいる人間が、その誰かになる。
現にドラコの白い指も、恨みがまし気な睨眼もハリーの右をキッと突き刺している。
気になったハリーはちらっとだけ、横目でその誰かを確認してみると、そこに立っているのは・・・
「え、なに。あたし?」
面識のない人間に指をさされ、きょろきょろと周囲の人間皆に確認をとる。
するとドラコが声を荒げての問いに答えた。
「そうだ!お前だ」
「あたしお前になんかした?あたしら初対面だと思うんだけど・・・・」
「ああそうさ。僕と君は確かに今が初対面だ」
「じゃあ言いがかりじゃないか、に難癖つけるなよ!」
「黙れウィーズリー。僕は君なんかと話してない。そこの馬鹿女と喋ってるんだから邪魔するな」
「ばうッ!!」
「うわっ!なんだこの犬、止めろ、どっか行け!!」
ドラコがを馬鹿女と罵ったことに腹を立てたシリウスが強く咆えながらドラコにとびかかると
柔そうな造りのドラコの身体は、巨大な黒犬の圧力にあっさり負け、痛そうな音をさせてその場に倒れてしまった。
しかもシリウスの牙を目の当たりにして、只でさえ薄血だった顔色は、更に血の気を失い蒼くまでなる。
これには流石に今まで木偶の棒のように突っ立っているだけだった彼の僕二人も焦って
慌ててシリウスに襲われている主人を助けようとドラコの身体を引っ張るが
シリウスの力の方が幾分強いらしく、シリウスごとずりずりとドラコを引っ張ってはみるものの
一向に助けられる気配はない。
ドラコはこの状況に命の危険でも感じたのか、ひぃっと女の子のように悲鳴をあげ、涙眼になりながら
夢中でシリウスの顎を手で突っぱねた。
が、シリウスはそれに動じることなく、ぐるぐる唸りながら更に牙を近づける。
すると、ますますドラコの顔は恐怖に歪み、今にも泣き出しそうな情けなさを露にさせた。
やりすぎだ。そう思ったがシリウスに声をかける。
「スナッフル。やめな」
「ぐるるるる・・・(嫌だね。こいつお前を馬鹿呼ばわりしやがった)」
「いいから、やめてやれって。あたしは気にしてないんだから」
「ぐる・・・・わぅん(わかったよ・・・・・・ちっ)」
舌打ちのように咽を鳴らしたシリウスは、早々にドラコの上から身を引いて
さっさとの横に戻ってしまった。
その後はもうドラコ自体に興味を失ったのか、彼のほうを見ようともしなかった。
「ごめんな。こいつあんま躾してないからさ」
そう言いながらドラコに手を差し伸べる。
けれどドラコはそれが逆に勘に触り、差し出された腕を力いっぱい払いのけた。
「いてっ」
「触るな、穢れた血」
ふんっと顔を背け、打ち付けた腰を庇いながら立ち上がり
侮蔑に満ちた冷たい瞳でを見る。
汚いものでも見るかのように。
「いいか、さっきお前はスリザリンのテーブルを走ったときに、僕にカルボナーラの皿をぶち当てたんだ。
それだけでも忌々しいのに、更にそんな馬鹿犬を僕にけしかけた!これはもう許されることじゃない!!」
「カルボナーラ?」
「そういえば貴方が私たちの席にきたとき、スリザリンのテーブルがやけに騒がしかったけど・・・」
「、君ってば早速そんな面白いことやらかしたのかい?」
「やってくれるぜ、僕らの先生は!」
フレッドとジョージは両肩に其々手をおき、余った方の手でハイタッチした。
彼らはどうにものやることなすことが全てツボに入るらしい。
その顔はまるで自分達が悪戯に成功したときのように嬉しげだ。
「あ!もしかして火傷したせいでお前のデコそんなに広がっちゃったとか?」
「・・・・・・・・・・は?」
「ごめん!髪の毛抜けちゃうくらいの酷い火傷させちゃったんだ・・・・そりゃ怒るよな、マジごめん。後で薬もってく!」
両手を顔の前で合わせて、真剣に頭を下げるに、きょとんとしてしまうドラコ。
それではまるで彼のデコが・・・・・
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぶっ!!』
ハリーたちは、の勘違いに気づき・・・噴出した。
次の瞬間。
火がついたような笑いに包まれた。
感情豊かなウィーズリーの兄弟たちは勿論のこと。
ハリーとハーマイオニーも堪えることなく大笑い。
犬のシリウスまでもが、一目で笑ってるとわかるほどに鳴いている。
そしてドラコの後ろにいるクラッブとゴイルですらが、げひげひと品性の欠片もなく笑っている。
それだけではない。
騒ぎに気がついてやってきた数名の先生たちや、通りすがりの生徒たちも
口を押さえながら笑いを漏らしている。
笑ってないのはと
ネタにされたことに気づき、恥ずかしさと苛立ちで顔を赤くしたドラコの二人だけ。
「え?え?なんでみんな笑ってんの?」
「僕を馬鹿にしてるのか!!みんなの前で笑いものにするなんて・・・!
父上に言ってお前なんか魔法界から追放してやるからな!!」
「父上って・・・お前幾つだよ。ファザコン?」
「僕を侮辱するのは父上を侮辱するのと同じなんだからな!わかってるのか!?」
「いや、だってあたしお前の親父なんて知らないし・・・・そもそも、お前誰?」
「ーーーーーっ!!」
が一言二言言う度にドラコの顔が怒りで血の気を取り戻す。
そんなドラコとは対照的に、心の底からわからないと呑気に訴えるは、
周りから見たらさぞ面白いことだろう。
「。そのくらいにしておきなよ」
「あ、リーマス・・・・・先生」
「くす、に先生って呼ばれるの、擽ったいな。・・・君もそう思うだろ、セブルス?」
「ふん。我輩はそんなこと、どうでもいい」
優しい笑顔でそう言うリーマスと、いつもどおりの仏頂面で答えるセブルス。
だが、二人とも、眼に涙が溜まってる。
間違いなく笑っていた。
「それより。彼をよくみてごらん」
「彼ってあいつ?」
「そう。よく似た人を知っているから」
「よく・・・・似たやつ?」
言われるがままにドラコの顔をじっと見る。
それだけでは足りないと思ったのか、近くに行って、ますますよく見る。
それはもう、無礼なほどに間近で。
「は・・離れろ・・・!」
「んー・・・・確かに、そういえばどっかで見たような・・・・・・」
この性格の歪んでそうな眼つきとか、
嫌味くさそうな口元とか、
キレイな銀髪とか、
「特に・・・・このデコ」
「なっ、喧嘩を売ってるのか!?」
「昔よく見てたような・・・・」
少々赤らんでいるドラコの額にそっと触れる。
「このイイ的になりそうな狙いがいのあるデコは・・・・・・・」
ちらり、と
頭に一人の男が過ぎる。
・・・・・・・・・・あ。
と、小さく呟いた。
「あーーーー!!わかった!わかったわかったわかったぁーッ!!」
耳にきぃーんと響く高らかな声が、周囲に居る皆の頭を串刺した。
皆の受けた衝撃もさることながら一番の被害者は、真正面に、顔と顔が触れるほど間近にいたドラコで
くらった衝撃は想像を絶するものがあるだろう。
それと、犬になっているシリウスの衝撃も。
「あたし分かった!絶対そうだ、そうに決まってる!」
興奮気味にドラコの胸倉を両手で掴みながら
キラキラと輝いた瞳で言う。
「お前あれだろ!!絶対あいつの・・・ルシウスの息子だ!!」
「ち、父上を呼び捨てにするな!」
「文句はあと!とにかくそうなんだろ?」
「そ・・・そうだ。それより何故お前が父上を知ってるんだ?」
「そりゃ知ってるよ。だってルシウスはあたしの友だ・・・・・・・んぐっ」
友達。
そう言いかけたの口は、背後から伸びた誰かの手に塞がれた。
「そこまでよ」
「ぷはっ・・・・・・・・・・ごめん、ありがと。ハーマイオニー」
「全く。貴女ってば放って置いたら何でもかんでも言っちゃうんだから」
「へへ、ごめん」
がうっかり口に出してしまいそうになった迂闊な発言を制したのは
いつも聡明なハーマイオニー。
これでは全く、どちらが年上なのだか分かりはしない。
そう思ったのだろう教師の二人のうち黒髪の一人は呆れたように溜息をつき、
鳶色の髪の方は微笑ましそうに少女たちの頭を撫でた。
そのついでにドラコのローブを掴み上げているの両手も丁寧にほぐす。
「ごめんよ、はこういう子なんだ。悪気はないから許してやってくれないかな?」
「嫌だね。許すもんか、父上に言いつけて、すぐにこいつを追い出してやる!」
「やめたまえミスター・マルフォイ」
「で、でもスネイプ先生!こいつは僕を・・・!」
「やめろ、と言っているのが分からんのかね?それに例え君の父親に言ったところで、どうにもならん」
「・・・・・・っ」
珍しく自分の保護をしてくれないどころか
何故か怒られるようなことになってしまい、マルフォイは悔しさで唇の端を歪ませた。
どうして自分が・・・。
なんでこいつばっかり・・・。
そう思ってることが丸分かりだ。
普段スネイプが自分に対して行ってる贔屓というのは、こんなにも腹が立つものだったのかと
今更ながらに気づき堪らず舌打ちをしてしまう。
「(・・・・・・・・それにしても・・・)」
ドラコの頭に自然と湧き上がる疑問。
この女は一体何者なんだろうか?
「(さっきの口ぶりからするに、ルーピンともスネイプ先生とも知り合いのようだし
今つるんでるところからしてポッターの仲間には違いない。けど、だとしたらどうしてスネイプ先生はこいつを庇うんだ?
大体父上が手を出せないようなやつがマグル出身者に居るとは思えな・・・・・・・・・・・・ん、待てよ?)」
そういえば。
ドラコの脳裏に思い出された出来事。
普段あまり会話をしない夫婦である自分の両親が喧嘩をすることがあった。
それは喧嘩と言うよりも母が父を一方的に罵ってヒステリックを起こすというもの。
その時、父は言い訳はするものの否定らしき反論はしない。まるで母の言うことは全てそのとおりだと認めているように。
『貴方はいつまでたっても、・・・・のことばかりね』
『いや、それはだな。つまり・・・・がそれだけ可愛らしい女だということで』
『ええそうね。・・・・は愛らしい子だわ。
いつも笑顔で仔犬みたいに寄って来て、冷たい態度の私にも他と同じように接してくれたわ』
『そうだろう!では何故きみは私が・・・・のことを話すと怒るんだ?』
『悔しいからに決まってるでしょう!私はホグワーツを卒業してからロクに・・・・に会えないのに
貴方はあれやこれやと理由をつけては食事や音楽鑑賞に誘って、あろうことか家にまで!!』
『お前が怒ってるポイントはそこなのか?!私が・・・・と浮気しているのが気になるんじゃないのか?!』
『なにを言っているの?・・・・が貴方なんかに恋心を抱くはずがないでしょう、自惚れないでちょうだい!
あの子に相応しい男性は私が見つけてあげるのよ!いいえ、むしろ私があの子を幸せにするわ!』
『な、ナルシッサ?』
『そうだわ、それしかないのよ!貴方や、あのシリウスのように顔やら身体しかとり得のない男なんて、あの子には相応しくないもの。
さあ、そう決まったら早く荷物をまとめないと・・・・・』
この後は、父上が必死で母上を止めて
なんとかその場を収めたんだったな。
今もあの喧嘩が一体何のことだか分からなかったけど、あの時に二人の口から頻繁に出てきた
知らない女の名前。
あれは確か・・・・・・・
「・・・・?」
そうだ。
間違いない。という名前だった。
どういうことだ?
父上たちの知っているという人と、今目の前にいる・が全くの他人ってことはないだろう。
けど、親子だったら名前は違うに決まってるし、第一母上の発言からしてそっちのは結婚してなさそうだ。
それじゃあまさか、本人?
そんなわけ・・・・ない。
身体を若返らせる薬なんて即効性ですぐ効き目の切れる縮み薬くらいしかないだろうから
そんなもの使ってホグワーツに潜入しようなんて思うやつはいない。
改良して効果を伸ばすのは可能かもしれないけど、
まさかそんな高度なことが、この間抜け面・・・しかもグリフィンドールのやつなんかに出来るわけがないし
ということは、やっぱり他人なのか?
それはそれで納得できない。
「・・・・い、ドラコ!おいってば!」
名前を呼ばれてることに気づいたドラコが、はっと顔をあげると
間近にあったの額とかち合って小さく星を飛ばした。
「いってぇ・・・・もう、いきなり顔あげるなよな」
「くぅっ・・・!お前が近くにいすぎるのが悪いんだ!」
火傷をしていた場所をぶつけたせいで、余計にヒリヒリと痛む額。
考えがまとまらないこともあって何だか無性に疲れたドラコは、もう寮に戻ろうと思いくるっと背を向けた。
「あれ?何処行くんだよ」
「僕は寮に戻る。これ以上お前らに付き合っていられるほどヒマじゃないんだ」
すたすたと歩き去るドラコ。
それに慌ててついていくクラッブとゴイル。
三つの背中を憎らしげに睨みつけていたロンが不満たらたらの声で呟いた。
「マルフォイのやつ!自分からつっかかってきたくせに・・・」
「ああいうやつには後で吠え面かかせてやろうぜ」
「それがいい。新発売のクソ爆弾のターゲットはマルフォイで決まりだな」
ロンに賛同する双子も、やはりムカつきを抱いてるらしい。
ハーマイオニーとハリー、それにシリウスも同意権のようで何も言わず。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「わぅん?(どうかしたか?)」
「あたし、ちょっと行ってくるね」
黙ったまま突っ立っていたを気にしたシリウスが声をかけるように鳴いたとたん、
思いついたように走り出した。
ドラコたちが去っていった方向を一心に。
まばらな人並みをすり抜けるように走り、
あっと言う間に、ドラコたちの背を捕らえ、追いついた。
「ドラコ!」
フードを引っ掴むように呼び止めると、振りむいたドラコは
またお前か・・・・。とでも言いたそうに嫌な表情をしていた。
「あのさ、さっきお前あたしに何か言いたかったんじゃ・・・・・」
「ちょっと!貴女マルフォイから離れなさいよ!」
の言葉を無遠慮に遮った高い女の声。
横を見てみると、性格が些かきつそうな顔をした少女が睨むように見てきていた。
「お前は?」
「あたしはパンジー・パーキンソンよ。あら?貴女さっきの編入生ね」
「ああ、うん。よろしくな」
「よろしく?・・・あなたグリフィンドールのくせに私と仲良くなりたいなんて馬鹿じゃない?」
「なんで?寮なんか関係ないじゃん。友達多いのはいいことだよ」
「お生憎様。私たちはグリフィンドールみたいな野蛮な人たちと友達になんてなりたくないの。ねえドラコ?」
「ああ。勿論だ」
ほら、みなさい。
パンジーはそう言って得意げにを見下した。
しかし、はそんなこと気にもとめない。
そんな言葉。とっくの昔に聞き飽きていたから。
「もう一回言うよ。寮は関係ない。少なくてもあたしには」
その境界線を越えて、手に入れたものが沢山あるから。
手に入れたものに自信があるから。
すっと手を差し出す。
ドラコに向かって。
数秒待つが、ドラコが握手してくれる素振りはない。
けれど、はそれすら分かってたように笑って
ドラコの手を掴み取って、強く握った。
「今はいいよ、別に友達だと思ってくれなくて。
・・・でも、あたしはもう友達になった気でいるから、そこんとこ覚えとけよ」
満面の笑顔。
そこに媚びや色はない。
ただ純粋な、きれいな笑顔。
突然の事に理解を超えたドラコは拒否することも忘れ
大人しく手を握られたままでいたが、
それは耳元から聞こえたばきっという生々しい音によって砕かれた。
何事かと確認する前に、パンジーの耳を突く悲鳴が聞こえて
ついでに悶絶ものの痛みも襲ってきた。
右頬に発生した衝撃の正体は、の拳が僕にぶつかった時のもの。
要するに殴られたわけだ。
激しく痛む頬を押さえながらを見ると、拳を握ったままの彼女が僕に笑いかけていた。
「それ、さっき穢れた血とか言ってくれたお礼ね。次言ったらそんなもんじゃないから。
そこもきっちり覚えておいてよ。自分の身のためにも」
にっ、と口元を吊り上げて笑う。
ただの天真爛漫な能天気ではないようだ。
「ああ・・・・あと、一応言っておくけどさ。今回はあたしに言っただけだからそんなもんだけど、」
あたしの友達に言ったら、・・・・・その時は本気で、ぶん殴るからね」
なら、さっきのは本気ではなかったと?
そう聞き返したかったけど、返せなかった。
きっとその答えはイエスだから。
去り往くの振り向き様の笑顔がそう言っていた。
取り残されたドラコは、握られた手を、じっと見つめていた。
殴られなかった方の頬までをほんのり朱に染めながら。
「・・・・・か」
「ドラコ、なんかやけに顔色よくなってないか?」
「ああ。そんな気がする」
「ま、まさか・・・・・」
パンジーが不安そうにドラコの顔を覗きこむと、
嫌な予感があたったのか、そのまま真っ青になってしまった。
そんなパンジーを知ってか知らぬか、
ドラコは惚彿とした表情で、の去った方を見つめながら
「・・・・・・・・・・・・・・可愛いじゃないか。僕と友達になりたいなんて」
に握られた手を、愛しげに逆の手で撫でて
「照れ隠しで殴ってくるなんて・・・素直なんだか捻くれてるのか分からない所も・・・いい」
普段は暗がりがちな瞳が
きらりと、輝いた。
「・・・決めたぞ、を僕のものにする!!」
ひとめぼれとは少し違う。
初めて彼女を見たときに好きになったわけではないから。
可愛い顔をしているとは思うけど、
僕の好みは、母上のような美人で背の高い女だ。
性格だって好きじゃない。
大人しくて従順な女の方がずっと使いやすいし面倒にならないから
あんなふうに手を出してくるやつなんて真っ平ご免。
だけど、見た瞬間に欲しくなってしまった。
好きになったんだ。
あの満面の笑顔を。
好みじゃなくても。
使いづらくて面倒くさくても。
堪らなく、欲しいんだ。
あの子の笑顔が。
虜になった。
そうなのかもしれない。
とにかく何でもいいから、あの笑顔を自分にだけ向けたい。
「まずは・・・そうだな、明日の朝ふくろうで赤い薔薇の花束を贈ろう。
メッセージカードには何て書こうかな。
ああ、それと次の休みになったら婚約指輪も買いに行かないといけないし、父上と母上にも紹介もしないと!」
「こ、婚約指輪に・・・・・」
「両親に紹介?どっちも普通付き合ってからじゃ・・・?」
「まあいいんじゃないか。ドラコもほら、なんかすごく楽しそうだしさ」
「全然よくないわよ!ドラコったらどうしちゃったの、あんな子が欲しいなんて・・・・・!!」
「よーし、明日早速にプロポーズしよう!」
周りの声なんて何一つ聞こえないドラコは
今後のスケジュールを事細かに決めていく。
その顔は付き合いの長いクラッブとゴイルも見たことのないほどご機嫌で、
パンジーの嫉妬の炎を猛らせるには十分すぎて、
要するに、また一つホグワーツにて厄介な恋の花が咲いたのだった。
「へっくしょい!!」
「、風邪?」
「ううん、風邪じゃないと思う。・・・・誰かあたしの噂でもしてんのかな?」
「もしかしてマルフォイたちじゃないかしら。
きっと今頃談話室で貴女の悪口を言ってるのよ!全く嫌なやつだわ!」
「そうかなぁ。あいつそんなに嫌なやつじゃない気がするな・・・」
「「「「ええーーー!!」」」」
この後、は皆から考えを改めろだの
あいつは至上稀に見る嫌な奴だのと助言されるが
結局の勘が正しく、
この時ドラコは談話室での笑顔の魅力をスリザリンの皆に広め伝えていたりした。
まあしかしながら、
流石のも、明日お腹をすかせて朝食を食べに行った大広間にて
公衆の面前でド派手なプロポーズをされるなんて、夢にも思ってはいなかった・・・。
見えない糸が見えた気がした。
僕と君の間に
君が手に入るのなら
僕はそれが幻だって構わない
君のいない現よりも 君の居る夢がいい
あとがき。
ドラコ坊ちゃんのご登場。
前回ヒロインにカルボナーラぶち当てられた不幸な王子様ですが、あっさりヒロインに惚れ。
パンジーはずっとヒロインに敵意を抱き続けてくれるとありがたい。
たまにはそういう子がいてもいい気が・・・。
個人的に嫉妬深い女の子はけっこう好きです。度がすぎなければ。