「ふぅ・・・・・もう満腹だ。料理上手くなったな」
「ありがと。でも10年以上一人暮らししてるんだから当たり前だけどね」
犬くつろぐ
締め出され、1時間ほどドア越しの会話をした後
ようやく家の中に戻れたシリウスは、念願のの手料理にありつくことができた。
テーブルに並んだ料理は、とても2人分とは思えないほどの量だったが
シリウスは喜んで出されたもの全てを口の中へと運んだ。
おかげで、優に4〜5人前はあったであろう朝食は、そのほとんどがシリウスの胃袋に収まった。
スープとパンくらいしか食べなかっただが
幸せいっぱいのシリウスの顔を見てしまっては、文句の一つも出てこなかった。
「悪いな、ほとんど俺一人で食べてしまった気がする」
「いいよ〜。あたし朝はそんなに食べないし、適当にお菓子でも食べるからさ」
「そうか?それなら・・・・」
「なに?」
「スープおかわりしてもイイか?」
ついさっき3度目のおかわりをよそったはずのスープ皿をに差出す。
これには流石のも呆れ顔になった。
「あんたねぇ・・・少しは遠慮しろ!ガバガバ馬鹿みたいに食いやがって!」
「なっ!遠慮するなって言ったのはお前じゃないか」
「だからってロクに味わいもせずに食うな!」
「味わってる!さっきから何度も美味いと言ってるだろう?」
「逆に言えば美味いしか言ってないだろが!!」
「んがッ!?」
手元にあった野菜スティックを数本まとめてシリウスの口に突っ込むが
何せただの野菜スティックだっただけに、それはがりっとイイ音立ててシリウスに噛み砕かれた。
が、その直後、シリウスの顔が歪んで蒼くなり、
口に含んだ野菜スティックを吐き出した。
「ぺっ!ぺっ!うげぇ・・・、不味・・・・・」
「ザマみろ、それあんたが大っ嫌いな生セロリだよ」
「こんなもの食事に出すなよ・・・」
「つーかネズミが食えて、何でセロリが食えないわけ?」
謎だ・・・・と呟きながらは食器を片付けだす。
「いつもの倍以上あるよコレ・・・。洗うの面倒だなぁ」
「魔法を使えばいいだろ?」
「あたしのライフスタイルがマグル式なのくらい知ってるでしょ?」
かちゃかちゃと皿を重ねながら答える。
シリウスは、そういえば・・・・と昔を思い出すように言った。
「お前の両親がマグルだからか?」
「うん。・・・・・・とは言っても父さんも母さんも、なから魔法使いに近い人たちだけどね」
「確か変わった”力”持ってるんだったな」
「そ。あたしは何も持ってない代わりに、魔女の才能があったってわけだ」
片した食器類を流しにおいて、水道を捻ると
ジャージャーと盛大に流れ出た水がの手を濡らす。
「本当に変な親だよ。まったく」
「昔何回か遊び行って世話になったが・・・・俺達から見ても変わった人たちだった」
「リリーが父さんにセクハラされた時は色々大変だったよね・・・」
「ああ、ジェームズがキれて、お前もキれて」
「あの時のジェームズときたら・・・もう口では言い表せらんないよ」
「でも一番すごかったのは、おばさんだったぞ」
この”おばさん”というのが、の母親だ。
おばさんとは言うが、シリウスらが学生時代に見たその容姿は、
とてもじゃないが中年と言うには若すぎる女性だった。
下手をすれば20代前半でも通じるほどに。
その上、小柄で可愛い感じなおかげでと瓜二つ。
並んだ姿は母子と言うより姉妹のようで、男達は皆ときめきを覚えたものだ。
だが性格は以上の男前。
腕っ節もそこらの男の比ではなく、試しに腕相撲をした時などは、リーマス、ピーターはもとより
シリウス、ジェームズも全くと言っていいほど歯が立たなかった。
この時からシリウスは、の外見と性格の大半は、
間違いなく母親から受け継がれたものだと確信していた。
「おばさん元気なのか?」
「元気元気、現役は引退したけど、今だに2人で世界中飛び回ってるよ」
年甲斐もなく元気すぎる母親の姿を思い出しつつ
は乾いた笑いで遠いほうを見た。
今頃あの母親は、何処で何を破壊してるんだろうか・・・・。
そんな思いを胸に秘めて。
「そういえば、おばさん何の仕事してるんだ?おじさんとは職場結婚なんだろ?」
「え゛!?」
「おばさんは兎も角、おじさんは相当いいガタイだったし・・・あ!スポーツインストラクターか?」
「いやぁ・・・・・違う・・けど・・・」
「じゃあ本物のプロとか?専門種目が同じで親密になってゴールイン・・・当たってるだろ?」
「うーん、惜しいようで惜しくないような・・・・えっとー」
はどうにか誤魔化そうと話題を探す。
・・・が、こういう時に限って何も出てこない。
已む無くのとった最終手段は・・・・
「秘密」
黙秘することだった。
しかしシリウスとて、簡単には引き下がらない。
謎を解くために食い下がる。
「いいだろ、親の仕事くらい」
「駄目」
「何でだ。人に言えない仕事やってるわけじゃないんだから言えるだろう?」
ピンポイント。
が言えないでいる理由はまさにそこなのだ。
ここでの心の声を一つ聞いてみよう。
「(いくら元とは言え、まさか殺し屋集団のエリートだなんて口が裂けても言えない・・・・)」
そう、の両親は
数十年ほど前まで元殺し屋集団として世界中に名を轟かせていた組織の精鋭部隊の一員なのだ。
とは言え、シリウス達が会ったことのあるのは2人のプライベートの姿。
父は、陽気で気のいい・・・ちょっとスケベな人。
母は、明るくて自然体の・・・ちょっと子供っぽい人。
2人とも美形美人で優しくて楽しくて自慢の両親。
出来ることなら、そこまでを知っていてほしい・・・。
そんなわけで、は両親の仕事については誰にも話そうと思わなかった。
両親の仕事を恥じたり軽蔑したりはしてないが、わざわざ怖がらせるようなことは誰だって言いたくない。
理由はそれだけだった。
「じゃあ・・・ヒント出すから、それで当ててみてよ」
「ああ、わかった。その代わり当たったのに誤魔化すっていうのは無しだぞ」
「するわけないじゃん、そんなことセコいこと」
「なら・・その冷や汗はなんだ・・・?」
「う・・・・・わ、わかったよ!」
的確に思考を言い当てられ焦ったは
口ごもりながらも観念して、ヒントを・・・・・・・言った。
「うちの親の上司は、金に汚くて趣味が競馬と部下いびりと給料査定で、底なしの酒飲みな金髪青眼のおっさんでした」
久しく会っていない獅子舞そっくりの、その姿が強制的に思考に現れた。
ああ・・・・懐かしき思い出。
いたいけな子供だったあたしで遊びやがって・・・・。
ある時は無理やり酒を飲まされたり
またある時は、わざとデパートで迷子にしたり
はたまたある時は、(善意ではあるが)手料理食わされたり・・・・
ああ、競馬するからってお年玉取られたこともあったっけ。
「そんなやつの下で働いてたのか・・・・お前の親」
「まぁね・・・。一応良識はあるんだけど・・・常識ってものを母親の腹の中に忘れてきたらしいんだよ、その人」
「だろーな・・・・・。なんか俺、あまり知りたくなくなった」
「そりゃよかった」
シリウスが聞く気をなくしたことに、一安心して洗い物の手を動かす。
数分もしたころだろうか。
ふいにの背後にシリウスが移動してきていた。
「手伝う」
「ありがと。でもいいよ、ホグワーツからの長旅で疲れてるでしょ?ベッド貸すから寝てきなよ」
「いや、確かに疲れてはいるが・・・俺だって突然来たのに何から何まで世話になるのは気が引けるんだ」
の手からスポンジを奪い、まだ泡の付いていない食器を勝手に磨き始める。
「じゃあ、頼むね。あたし洗い終わったの拭いて棚に戻すからさ」
「ああ。任せろ」
なんだか妙に楽しそうに水仕事をするシリウス。
に会えた感動がぶり返しているのか、
それとも、新婚夫婦のようなやり取りができるのが嬉しいのか
それは定かではないが、今、シリウスの心が幸せで満ちているのは確かだ。
「これ終わったら庭の手入れ一緒にやろっか」
「庭?そういえばさっき見たら、向日葵が大量に咲いてたな。あれのか?」
「ううん。花とかは手入れいらないように改良してもらったから。ほら、あたしマメじゃないしさ」
「改良って・・・・誰にだ?」
「セブルス」
ぴたりと洗い物の手が止まる。
も失言したことに気づいたが、言ってしまったものは取り消しようがない。
「ほぉ〜、なるほどなぁ・・・・」
「し、シリウス・・・・・顔怖いよ・・・、眉間皺よってるよ・・口元引き攣ってるよ」
人相の悪い顔を思いっきり怪しく微笑ませてを見おろす。
「セブルスいいやつじゃん。2人とも何でそんなに嫌い合ってるわけ?」
「嫌いなもんは嫌いなんだよ、あんな陰険なやつと仲良くしたら根暗が移る!」
「そーいやセブルスも『ブラックのような阿呆と仲良くするほど暇ではない』とか言ってたな・・・」
けっこう似たもの同士じゃん。
と、心の中で思うも、口には出さず留めておく。
言ったらどうせ怒鳴られるだけだと分かっているから。
「あんなやつの話どうでもいい。もう止めだ止め!」
「はいはい、とにかくこの後は庭の手入れね」
「それは分かったが・・・結局なにをするんだ?」
「ああ、アレの手入れだよ」
は手を止め、皿を持っていない方の手で窓を指差す。
シリウスがその方向に見たものは・・・・1本の大きな木・・・・・。
位置的に、この家自体の影に隠れているので
来たときには気づかなかったが、けっこうな高さの巨木だ。
地に根を下ろして10年やそこらじゃないことくらい、植物に詳しくないシリウスにだって分かる。
「どうしたんだ、あの木」
「例の母さん達の上司が『自立祝いだぜー!』って言って飛空艦で持ってきた・・・」
「本当にどんなやつだよ・・・・・その上司ってのは・・・」
「まあ好意でやってくれてんだから嫌ではないけどね」
濃い緑色をした葉の茂った木を見つめ、嬉しそうに笑いながら言う。
その笑顔につられてシリウスも自然と表情を和ませる。
「なんて木なんだ?あれ」
「日本の”サクラ”だってさ。知ってるでしょ?」
「ああ、本では見たことあるな。・・・・・そうか、あれがサクラか」
しかし、サクラは気候の問題でイギリスでは上手く育たないって聞いてたが
それは間違いだったのだろうか?
「本当はこっちじゃキレイに咲かないんだけど、ちょっと怪しい科学者に頼んで咲くようにしたんだってさ」
「へ・・・へぇ、じゃあ今年も咲くんだな」
一部かなり気になる発言があったが、ここはあえて突っ込まず。
「残念ながら今年はもう咲いて散っちゃった」
「そうなのか・・・・残念だな。俺も見てみたかったんだが・・・」
「じゃあ来年見ればいーじゃん。リーマスも呼んでお花見しようv」
先の話を思い描いて笑う。
確かに、あのサクラの木の下で親友3人で酒でも交わしつつ語り合うのは
きっと・・・・・いや、絶対に楽しいことだろう。
それこそ学生時代に戻ったような時間を過ごせそうだ。
だが・・・・・・
「言っておくがスネイプは・・・・・」
「呼ぶなって言うんでしょ、どーせ」
「当たり前だ。あんなやつ呼んだら折角のサクラが台無しだ」
何か嫌なことでも思い出したのか
シリウスは形のいい眉を過剰に吊り上げて吐き捨てた。
「わっかりましたよー」
「本当に分かったんだろうな?あいつとは金輪際会うなよ?」
「それはやだよ。シリウスが嫌ってても、セブルスはあたしの友達だもん」
シリウス達が嫌い合っていようが、には全く関係ない。
にとってはシリウスもセブルスも大切な友人なのだから。
誰がどう聞いても、これは正論だろう。
だが、気に食わないものは気に食わない。
シリウスは今そんな感じだった。
「駄目だ、俺が許さん」
「許さんって・・・・お前はあたしの保護者か」
「違う、恋人だ!」
「それこそ違うわッ!」
ずびしっとミルク鍋でシリウスの頭を叩く。
が、シリウスは今度は神妙な面持ちでの肩を持ち・・・・
「それじゃまさか・・・・ッ、お前スネイプのやつに手篭めにされたんじゃ・・・」
「はぁ?何でそう話がいくんだよ・・・」
「否定しないってことはそうなのか?!おのれスネイプ!俺のに何てコトをッ」
「おーい、話聞いてるかい?シリウスくん」
癖である妄想が暴走しだした。
こうなってしまったら最後、並大抵のことでは元に戻せない。
学生であった頃は、こうなったシリウスを止めるのはリリーの仕事だった。
もできなくは無いのだが、は実害が出るまで止めなかったので
必然的にリリーのほうが先に突っ込みをいれてたのだ。
彼女の天才的なまでの神業突っ込みは、何度となくシリウスを瀕死にまで追い込み
そうなる度にマダム・ポンフリーのところに彼を担ぎこむのは日常的な一コマでもあった。
リリーの居ない今、彼を一発で止められる者はいない。
「きっと嫌がるを無理矢理部屋に連れ込んで怪しい薬かなんかで自由を奪って、それで・・・・・・・・・
ぐあーーー!!許すまじスネイプ!!」
「ぅおーい・・・・・シリウスー??」
「今すぐぶっ殺してやる!の自由は俺が取り戻す!!」
シリウスの脳内では、悪者スネイプがを卑劣な手で己の物にし
なおかつ監禁して玩具扱いしている・・・・・。
という結論に至ったらしい。
「ど、何処行くの?!シリウス!?」
「待ってろ、俺があいつを倒してお前を自由にしてやる!もうあんな奴の性奴隷になんてならなくていんだ!!」
「せ、セイっ///それ何の話だよ!?」
「忘れたいほどのコトをされたのか?ますます許せねぇ・・・・!あの陰気な面、面白おかしく改造してやるッ」
「そーゆうことやるから仲悪くなるんだってば!!」
憎き敵のところへ乗り込もうと出て行こうとするシリウスと
それを必死で止める。
2人は水も出しっぱなしで不毛とも言える言い合いを続ける。
そんな2人をサクラは木の葉を揺らしながら見守っていた。
いつまでも
いつまでも・・・・・
受け継がれた意思
止まらぬ時代の流れ
サクラ舞い散る吹雪の中で
醒めない思いが未来を語りだす
暗く辛い残酷な しかし幸せと希望と愛に満ちた
数奇な運命が 今 終わりを迎えた・・・
さあ 運命の石版にすら刻まれてない未来を
シルベ無き道を辿れ
裏話と書いてイイワケと読む・・・・A(他作品要素含が嫌いな方はご遠慮ください)
はいはいはい。
父親、母親、その上司。更にはその仕事。分かる人には分かりますね。
オンパレードですよ、パプワネタ。
父親は某イタリアン。セクハラ男って言ったらこいつしかいません。
母親はそのシリーズのヒロイン。当店きっての暴れ者ヒロインです。
上司は言わずともかな、獅子舞様。ハリポタヒロインはこの上司に昔からかまわれまくり。
お仕事の内容は、殺し屋さん。後に正義のお仕置き集団の弾かれもの。
サクラを持ってきたのは、ヒロインが今の家に一人暮らしを始めた初日。
日本かぶれしてますからね、あの一族は。
ちなみに怪しい科学者ってのはパプワ連載でお馴染みの鼻血の代名詞の方です。
詳しい内容はパプワ個人夢の「幸せ家族レポート」をどうぞ。