「セブルスにシリウスのことをバラすから」



がシリウスに向かって、そう言ったのは
夏休みが半分も過ぎた頃の朝食の最中だった。




ハリー少年 幸せが壊れる・・・かも




・・・・・今なんて?」
「だからセブルスに、シリウスがアニメーガスだって教えるの。
 こないだは隠したけど、よく考えりゃ隠すことなかったんだよね」


僕が聞き返すと、は卵のホットサンドをかじりながら、
まるで今日のおやつのメニューを伝えるように、そう言いのけた。

こないだっていうのが、いつのことだが僕は知らないけど
が言っていることは間違いなくとんでもないことだ。




セブルス・・・・・。

その名前を持つ人間は、僕が知る限り魔法界にもマグルの世界にも
たった一人しかいない。



だけどそいつはシリウスや父さんの天敵で、僕も大嫌いなやつ。
陰険スリザリンの鏡とも言えるセブルス・スネイプだけだ。





「・・・・・・・気は確かか?」



シリウスは冷静を装いつつ、顔についた黄色い液体をタオルで拭き取っている。

手元を見てみると、コーンポタージュの入っていたはずの器がほとんど空になっていて
代わりに器の周辺に、シリウスの顔についているのと同じ液体が飛び散っていた。

どうやら最初の時点で、スープが並々と注がれていたカップに
顔面を突っ込んだらしい。



「もちろん」
「・・・・・そうか」


びっと親指を立てて即答するに対して、怖いくらい静かに答えるシリウスの顔は
今まで見たことが無いくらい引き攣っている。

今のシリウスを見ればヴォルデモートだって裸足で逃げ出しそうだ。

そして、シリウスは言葉を続ける。



「つまりお前は、ジェームズと俺を憎んでてハリーを忌み嫌ってる、あのスネイプに俺の正体を明かすと?」
「うん。だからよろしくね」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いつだ?」




の「よろしく」という返事でシリウスは悟ったらしい。
既にスネイプが来る手筈をしてあるということを。

僕もずばりその通りだと確信している。
まだ1ヶ月も一緒に居ないけど、の性格は大体把握したつもりだ。

そのの性格からして、そう遠い日じゃないと思うけど・・・・・




「もうすぐ来るんじゃん?約束は今日の9時だし」
「「今日?!」」



僕とシリウスは同時に時計を振り返った。
針は短いほうが8と9の間だけど、ほとんど9に近い。
長いほうは、ちょうど今10になったところだ。

紅茶を啜って、『はぁ〜、やっぱリーマスが持ってくる葉は美味いね』なんて
暢気にしているとは正反対に、シリウスと僕は即座に椅子から立ち上がって・・・



「・・・・・・・・・・・・・・・・ハリー、リーマスのとこ行くぞ。今すぐに!!
「・・・・・・・・・・・・・・・うん。今すぐだね!!



脱走を決意した。


食事も途中にキッチンから出て行こうとする僕らをは止めなかった。
ちょっと不思議に思ったけど、そんなことを気にしてる余裕なんか無い。
僕は大急ぎで階段を駆け上がって、自分の部屋に入ってクローゼットに立て掛けてある箒と
ベッドに置きっぱなしにしていた杖だけを持って、シリウスの元に急いだ。



あのスネイプが来る・・・。

が何を考えてるのか分からないけど、もしそんなことになったら大変だ。

スネイプがシリウスの正体を知ったら、絶対に魔法省に知らせるに決まってる。
そしたらシリウスは犬の姿でも外に出られなくなってしまう。
最悪の場合はアズカバンに逆戻りだ。

それに、こんなことは無いとは思うけど、

もし万が一シリウスがスネイプに殺されてしまったら・・・・・


ありえない話じゃない。

シリウスがホグワーツから逃げた時のスネイプは、尋常じゃなかった。
出会い頭に呪いをかけてきても、不思議じゃないくらいの顔をしていた。




「シリウス!!早く行かなきゃ!」



開かれていたシリウスの部屋のドアを、完全に開け放って無遠慮に中に入ると、
杖を利き手に持ったシリウスが、部屋中を引っくり返していた。



「どうしたの?!」
「くそっ!箒がない!のやつ隠したな!」
「僕のに一緒に乗ればいい!だから早く!!」



僕は、感情的になってベッドを蹴るシリウスの手を強引に掴んで部屋の外に出て
また大急ぎで階段を駆け下りた。

リビングをちょっとだけ覗き込むと、が楽しそうにとティーセットを
ベランダから外に持って行こうとしていた。


は本当に何を考えてるんだろう・・・・

とてもじゃないけど正気の沙汰とは思えないよ。



「ハリー・・・・あいつは多分何も考えてない」
「そうなの?」



シリウスは僕の心を読んだように、僕が知りたかった答えをくれた。



「昔から誰でも・・・・・”友達”なら無条件で信じるやつだ。
 だからスネイプに俺の正体をバラしても平気だって信じてるんだろう・・・・・・無謀なことにな」



皮肉に笑いながら吐き捨てる。
言葉の裏には恐らく、『スネイプを信じるなんて無駄もいいところだ』
みたいな意味合いが含まれてるに違いない。




は人を信じすぎる」
「だけど・・・シリウスは、そういうところも好きなんでしょ?」
「・・・・・・・よく分かってるじゃないか」



シリウスに頭をぽんと一回叩かれて、背中を押され
僕は頷いて玄関に急ぐことにした。



「いいかハリー、ドアを開けたら直ぐに飛び立つんだ。出来るだけ高く」
「わかった。シリウスは落ちないようにしっかり僕に掴まってて」
「頼もしいな。流石は・・・・
「『ジェームズの息子』でしょ?」
「・・・いいや、その頼もしさは流石『リリーの息子』だな」



一刻を争う事態だというのに、会話を楽しむなんて不謹慎かもしれない。
だけど、こんなふうに父さんと息子とか母さんの息子って言ってもらえるのは嬉しくてたまらない。

僕は心の充電をいっぱいにして玄関に降りて箒に跨った。
シリウスもすぐに後ろに乗って、僕の脇から両手を通して僕が握っている柄の部分より
少し手前のところを握った。



「行くよシリウス!」
「OKだ!さあ開らけ!!」



意気込む掛け声に合わせて、僕は足に力をくわえて扉を開け放った。
あとは前に向かって床を蹴れば飛びたてるはずだったのに・・・・・・・・





「ポッター」



扉を開けた向こう側には




「何故貴様がここに居る・・・」





暫く見てなかった仏頂面の魔法薬学教授

セブルス・スネイプが立っていた・・・・・。














「質問に答えたまえポッター。・・・それにお前が箒の後ろに乗せているのは・・・・・・
「こ、この人は・・この人はシリウスじゃないんです!!この人は・・えっとッ・・・・」



僕は慌てて自分の体で後ろに居るシリウスを隠そうとしたけど
隠しきれないのは分かってる。

僕はまだ子供でシリウスは大人。しかも背が高い。
いくら僕が頑張って自分を大きく見せても、シリウスははみ出してしまうに決まってる。

だいたい、シリウスじゃないなんて言ったところで
スネイプが素直に信じるわけもない。しかも上手い嘘も思いつかない。
・・・絶体絶命だと、そう思った。



「ブラック?・・・確かに似てはいるが、それは犬だ。我輩がそんな事も判断できん愚か者に見えるか?」
「え・・・・・犬・・・・?」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・買bもしかして!

慌てて後ろを振りむくと、
そこに居るはずのハンサムな顔をしている男は影も形もなく
代わりに大きな黒犬が箒から落ちまいと懸命に奮闘していた。



「しり・・・スナッフル!良かった!!」



シリウスは多分、僕がドアを開ける一瞬前にスネイプの気配を感じ取ったんだろう。
それにしても、ものすごい勘と変身速度だ・・・。

こういう非常事時と、に愛を語ってる時のシリウスは
つくづく常人離れ・・・・・・・・・むしろ人間離れしていると思う。



「犬に話しかけるとは・・・・滑稽だな、ポッター」
「・・・・・・・・・・・・・・先生、何しに来たんですか?」
「我輩はに呼び出されたのだ。貴様こそ、何故ここに居るのかね?」



さっきからスネイプはやけに僕に突っかかってくる。
気のせいか、その声色もホグワーツに居るときよりも全然厳しい。

シリウスは横でぐるぐると唸ってくれてるけど、スネイプは気にも留めてない。

怒られているわけでもないのに、緊張で身体全体を強張ってきた。



「(落ち着け・・・・落ち着くんだ。ここはホグワーツじゃない。ここはの・・・・・・僕の家だ。
 何も悪いことなんかしてない。僕は自分の家に居るだけだ!!)」



「っ僕は・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



スネイプの視線が僕を刺す。



「僕は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



言葉が出ない。

何でこんなに苦しいんだろう、まるで呪いをかけられてる・・・・・呪い?!
まさかスネイプは僕に呪いをかけてるんじゃ・・・ッ


いや、そんなわけない。

幾ら僕が憎らしいからって理由がない。
もし僕に呪いをかける理由があるとすれば、僕がこの家に居るってことくらしか・・・・



・・・・・・・・・・・・・・あれ?


もしかしたら、それが理由??
だとしたらスネイプが気に入らないのは・・・僕がの家に居ること?




「・・・・・気に入らんな」
「やっぱり!!」



思わず叫んでしまった。
スネイプは不機嫌極まりなく眉の間にシワを作って、僕を見下す。



「・・・・あ、いえ何でもありません・・・。あの・・何が気に入らないんですか?」
「貴様が我輩の問いに答えず黙り込んでいることだ。他にあるかね?」
「・・・・・・・・・・・ありません」



ここでは従う必要はないのに、どうしても頭を低くしてしまう。
流石に3年も生徒をやってると教師に対する態度として染み付いてしまってるようだ。



どうしよう・・・。

よく考えてみたら、リーマスのところに行っても無意味だ。
がシリウスのことを話してしまえば、
スネイプは魔法省に知らせてリーマスの家も調べるだろうし。


こうなったら、忘却術でもかけてしまおうか・・。

呪文は知っている。
『オブリビエイト!忘れよ!』だ。

きちんと習っていない僕がかける程度の魔法なら
ロックハートみたいに重症にはならないだろう。


その後は、箒で何処か遠くに捨ててしまえばいい。


これならシリウスの正体はバレないし、僕も一安心だ。

正に一石二鳥。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん、そうしよう。





僕はスネイプに気づかれないようにローブのポケットにそーっと手を忍ばせ、
中で杖をぎゅっと握り締めた。




「もう一度聞く。何故お前がここに・・・・・

「あたしの家族だからだよ」



の声が外から・・・・
正しくは、スネイプの背後から聞こえた。



「いらっしゃいセブルス、外にお茶の用意できてるよ」
「・・・。今日はお招き感謝する。これは土産だ、受け取ってくれたまえ」



そう言って紙袋を手渡す。

ちらりと見たスネイプの顔は、さっきまでと打って変わって
気持ち悪いくらい優しい。

シリウスは如何にも『けっ』と唾でも吐きそうな表情だ。



「今日は何を持ってきてくれたの?またハニーデュークス?」
「いや、バタービールの元だ。お湯を注げば3秒でできる」
「なにそれ!?いつの間にそんなイイもん発売したの?!」
「市販ではない。我輩が作ったものだ」
「すっごーい!ありがとね、早速飲ませてもらうね」
「ああ。好きにしろ」


あのスネイプが、ダンブルドアに頼まれた以外で、人のために何かを作って、
あまつさえプレゼントするなんて・・・・・。



「おーい、ハリー。どうしたの?早くおいでよ」


僕がそんなことを考えている間に、はスネイプを
外に用意してあるティーコーナーに案内していて、声だけで僕を呼んだ。

シリウスに、どうしよう?という目線を送ったけど
シリウス自身もどうしようか悩んでいるようで、きゅうん・・・と切なく鳴くだけ。


打つ手が無くなった僕は、最終手段として
にシリウスの話をふらせない事にした。


そして2人が居るであろう庭に・・・・・覚悟を決めて向かったのだった。








「それで・・先程の話は本当なのか?」


白いガーデンチェアに座って紅茶を飲んでいたスネイプがに聞いた。

どうでもいいけど似合わないにも程がある。
世の中にこんなにミスマッチのものが存在するなんて・・・・。



「ハリーと一緒に住んでるってのなら本当の話だよ。もう半月くらい前からね」
「ダンブルドアに許可は取ったのだろうな?」
「ふっふっふーv あたしが取ったと思う?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・事後報告だけはしておけ」



僕は2人の会話を、黙って聞いていた。
が注いでくれた紅茶も、出してくれたクッキーにも手をつけないで、ひたすら黙って聞いていた。

シリウスも同じで、がいつ自分の話題にふるのかと
ビクビクしながら僕の足元で丸まっている。




「ハリー、顔色悪いけど大丈夫?」
「・・・・・・・・うん」
「気分が悪いのなら無理に居ることはあるまい。さっさと中へ行ったらどうだ」



普通に聞けば、僕を気にかけたように聞こえるけど
直訳すれば『我輩の前から消えろ』とか、『との時間を邪魔するな』と言っているに決まってる。


少なくても僕はがシリウスの話題を出すことを止めなくちゃならない。
もう、それしか方法は無いんだ!!

だから絶対に、ここから離れるわけには・・・・・・・・




「2人とも幾らセブルスが嫌いだからって
 そんな露骨に元気なくさなくてもいーのに・・・・・シリウス、あんた聞いてんの?」




・・・・




・・・・・・・・・・・・






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





今、・・”シリウス”って・・・・・・・・・・・・・・・・・・






「・・・・・・・ブラックだと?」






言っちゃった。





僕はスネイプの反応を見ながらも、シリウスの顔をなんとか覗くと
・・・石化の呪文にかかったみたいになっていた。




「ブラックが何処かに居るのか?」
「うん。足元に居るじゃん」


スネイプはテーブルの下まで頭を屈めての足元を確認するが
まさかこの固まってる犬がシリウスだなんて発想は浮かんでこないらしく、
ただでさえ不機嫌そうな顔を、更に怪訝そうに歪める。



「・・・我輩の眼には犬しか見えんぞ」
「だから、この固まってる犬がシリウス」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・本当か?」
「試してみれば?」



にそう言われ、
スネイプは半信半疑ながらも杖を握って呪文を唱えた。



「正体を現せ!」



スネイプの声に呼応して杖から飛び出した光があっと言う間にシリウスを包み込んだ。
驚いて気を取り戻したシリウスは光の中で暴れ、魔法に抗うが
徐々に犬の姿から、元の・・・・背の高い黒髪の男性へと形を変えていった。

そして光が収まった頃には、屈辱感でいっぱいといった顔をしたシリウスが
首の後ろを掻きながら僕たちから目を逸らして立っていた・・・・・。





「くっくっく・・・・・・あの黒犬が本当に貴様だったとはな」



スネイプがスっと杖を指し向けると
シリウスも即座に杖をとる。



「会いたかったぞ、ブラック・・・・・・・」
「俺は会いたくなかったぜ、スニベルス」



2人はじりじりと間合いをつめる。

シリウスが1歩近づけばスネイプは半歩さがり・・・
スネイプが右に寄れば、シリウスは左に寄り・・・

お互いの動きに細心の注意と警戒は払いながら、少しずつ・・・少しずつ・・・近づく



「それは我輩に殺されるのが恐ろしくて・・・・・・・かね?」
「いや、俺は綺麗好きだから、お前のベタベタ髪で周囲を汚されたくなかったのさ」



会話でも決して退かない。

相手が自分に投げかけるよりも、ちょっとでも大きいダメージを与えようと
常に鋭い言葉を選んでいる。



「ほう・・・それではこの世の何処よりも綺麗な場所に送ってやろう。貴様の親友がいるところにな」
「生憎だがそこに行くのは俺じゃない、お前だ」



互いの杖が、相手の咽に当たった。
射程距離は0。

こんな状態で、しかもどちらも強力な魔法使いの
攻撃呪文が炸裂したらどうなるか・・・・

そんなの安易に想像がつく。



僕がごくりと唾を飲んだのと、ほとんど同時に
2人の目つきが変わった。




「ステューピファ・・・」 「サイレンシ・・・」
「タラントアレグラ 踊れ!」

「「「ッ!?」」」



シリウスが声消しの呪文を
スネイプが麻痺の呪文を


唱えきる前に、僕の横を黄色っぽい靄のような光がつき抜け2人に当たった。

その直後、2人は杖を放り投げ、何をしだすのかと思いきや
相手の手をとり合ってダンスを始めた。

しかも踊っているのは華麗なタンゴ・・・。

しかもしかも何故か背の高いシリウスが女役・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぷっ。




「ぎゃーはははは!だぁっはっはっは!!素敵よ、2人ともーv」



はよく通る声で、盛大に指をさして笑ってる。
僕も耐え切れなくて、今にも笑い声が漏れそうだ。



「ばっ!すぐに止めろ!!」
「あーらシリウス嬢、脚の上げが足りないんじゃなくて?」
!解除呪文を唱えたまえ!!」
「い・や・だ。すぐ喧嘩するんだもん、ちょっとは懲りなよ。ねぇ、ハリー?」



芝生に落ちているシリウスとスネイプの杖を拾った
それを僕に向かって投げた。

2本は低い弧を描いて、狙いバッチリに手元にきたけど
僕は反応しきれなくて取り落としてしまったので、慌てて拾い上げた。



「ハリー!お前が解除呪文を唱えるんだ!!」


シリウスが叫ぶけど、は首を横にふる。


「駄ー目。大人にだってお仕置きは必要なんだから」
「ハリー、頼む!!」
「駄目ったら駄目。反省しろバカ犬」
「ハリーぃぃぃいいいい!!」



名づけの親の悲痛の嘆きと、僕をダーズリー家から救ってくれて同居させてくれてる人の制止。
どちらを優先すればいいだろう・・・・。


悩んだ僕は、結局2人の杖を持ったまま、の横に移動した。



「ごめんね・・・シリウス」
「残念だったね、シリウス」
「ハリー・・・・・そんなぁ・・・・・・・」

「ふんっ、女に弱いところまで親譲りとはな、恐れ入る」



踊りながら(しかも女役のステップで)涙するシリウスの手をとりながら
深い角度で腰をびしっときめたスネイプが、うんざりとしたように言った。

そして、その場でくるっとターンしてシリウスの背を支え


「なんだと・・・・・?ジェームズとハリーに女好きのレッテルを貼る気か」


余った片手を大きく舞わせながら首を90度で止める。


「レッテルではなく真実だ。証拠は今貴様が身を持って体験したであろう」


そして流れるように間を開けて、優雅な離れ業をキメ


「それ以上、2人を愚弄することは俺が許さん!!」


シリウスが2回捻りのジャンプをして見事に着地、スネイプの肩に手を回し


「その軽い脳みそで愚弄などという高度な言葉を知っていたのか、見直したぞ」


お互いにぴとっと手を重ね、身体を向かい合わせで密着させ


「俺を侮辱するな!その口を閉じろ!!」


前に3歩、後ろへ5歩、そして前に6歩ステップを踏み


「閉じてほしくばポッターを従えてみたらどうかね」


2人同時にダイナミックに脚を払い上げた。


この息ピッタリのタンゴの前には、オリンピックのフィギアスケート優勝コンビも
土下座でメダルを譲ると思うほど素晴らしいタンゴだった。

これをホグワーツのクリスマスダンパでやれば絶対に注目の的だ(色んな意味で)



「お二人さーん、白熱してるとこ悪いんだけど・・・腰クッと捻ったり、脚ピシャっと揃えたりしながら
 マジ喧嘩されると、あたしとハリーが笑い死ぬんだけど・・・ぷぷっ、あはははは!」

「「誰のせいだっ!!」」



右手でお腹をかかえて左手を申し訳程度にあげながら
は2人を見て、また大声で笑った。




そしてそれからワルツやフォークダンスなど多種にわたるダンスを披露してくれたシリウスとスネイプだったが
15分も経つと流石に体力、精神の両方に限界がきたのか、死んだ魚のような目になっていた。

だが、身体の方は未だピカイチのキレでモダンダンスを踊っている。



・・・・そろそろ気が済んだだろ?いい加減勘弁してくれ・・・・」
「同感だ、もう声をあげる気にもなれん・・・」
「そーだね。そろそろ飽きたし・・・・じゃあ最後にアレいってみましょーか」


にやりと少し垂れた目じりを更に下げて笑う
嫌な予感を果てしなく感じたように、シリウスとスネイプはぴくりと同じ反応をした。

2人が何故そんな反応をしたのか分からない僕は
に直接何をするのか聞くことにした。


・・・”アレ”って何のこと?」
「え?決まってんじゃん。ラ・ン・バ・ダv」

「「「ら、ランバダぁぁぁーー!?」」」



ランバダと言えば、世界中のダンスで一番厭らしい・・・・・もとい
一番セクシーなダンスとして人気だ。

ただしそれは相手が好意を持ってる異性ならという
限定条件が常について回る。


ここまでは笑って見てたけど、それは幾らなんでも可哀想すぎる気がする・・・。

その証拠に、当人2人も生気が無いのを通り越して
本気の本気に涙目だ。


あ・・・・シリウスが何か口パクで言ってる。



「(そ・い・つ・を・止・め・て・く・れ・!)」



やっぱり相当嫌なんだね、シリウス。
ああ・・・・スネイプも首もげそうな勢いで頷いてる・・・。


わかったよ、2人共。



「ねぇ、それはちょっと・・・・・・・」
「ん、なんか言った?ハリー」



は目を輝かせてマグル品のMDコンポに入れるCDの準備をしている。
すごく活き活きしてて、僕まで楽しくなってくるような笑顔だ。


こんなを止めるなんて、

・・・・僕にはできないや。



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ううん。なんでもない」

「ハリーぃぃぃいいいい!!」「ポッタァァァああ!!」



2人の悲痛めいた叫び声が良心を刺激されるけど・・・

ごめんなさい。


僕はあえて無視することに決めました。




「そんじゃいってみよー!!」



が右手で杖を高らかと杖を掲げた。
CDデッキからは既にランバダ用の軽快で情熱的なBGMが流れ出している。

余りの恐怖と嫌悪感で
シリウスは今にも泣き出さんばかりに涙を目に溜め、スネイプは人生を諦めたかのような無表情になっていた。

それを見たは、にっこり微笑んで
杖を2人に向けて・・・

「           !!」

何かの呪文を唱えた。



すると踊り続けていた2人の足が止まり、手も自然に離れた。

数十分ぶりに手に入った自由に身を委ねたのか
シリウスとスネイプはその場に座り込んでしまった。


僕もシリウスもスネイプも、みんなして何が起こったのか理解できずにいると
が僕の手から2本の杖を抜き取り、身体を休めている其々の持ち主に返した。




「2人とも、ちょっとは喧嘩しないで話し合う気になった?」
・・・・もしかしてそのために?」



そう問いかけるとはまた柔らかい笑顔になって
僕の頭を撫でてくれた。

身長がそう変わらないせいもあって、
シリウスやリーマスにされた時とは違って妙に照れくさくなった。




「まだ話合う気にならないなら次は本当に踊ってもらうけど・・・」
「その必要は無い」
「話合いくらい安いもんだぜ。それこそ三日三晩でもやるさ」
「そお?なら良かった」



2人の答えに満足した
まだ座ったままの2人の手を掴んで引っ張り起こした。



「じゃ、改めてティータイムにしよっか」
「ああ、文句無いなスニ・・・・スネイプ?」
「貴様やポッターでなく、が淹れた茶に我輩が文句をつけると思うか?」
「いいや・・・。が淹れたモノなら実験の失敗作でも喜んで飲みそうだ」
「それは貴様だけだ」
「否定はしない。確かに俺はにお願いされれば何でも飲むからな」
「だろうな」



ついさっき殺し合いをしようとしていた2人の会話とは思えない。

何事もなかったように椅子に座って、
の紅茶を飲むこの2人って一体・・・。


僕はシリウスとスネイプの間の空席だった椅子に座って
盗み見るような視線で3人の様子を見た。



はティーポットにお湯を注し直してルンルン気分で蒸しているところ。

シリウスは上機嫌のを見て、ちょっとやましく笑ってる。

スネイプは・・・・・狽チ!?



「何か言いたいことでもあるのかね、ポッター」
「・・・・・無いです」



偶然にも(不運にも)ばっちり目が合ってしまった。



「用が無いのなら人をジロジロ見るな。我輩の気分が損なる」
「ちょっとセブルス!あんたハリーに辛く当たりすぎ!!」
「そうだ!ハリーに文句があるなら、まず俺に言え!」
「・・・・・・・ふんっ、親バカ共め」



何だかシリウスの秘密がバレたのに、変に和やかな雰囲気だ。

最初は予想通りの展開だったのに・・・・・どこでこんな事になったんだっけ?
具体的にどこからかは分からないけど、多分確実にが絡んでからだ。




「ところでセブルス、今日呼んだ理由なんだけどさ〜」
「迫摎Rなんかあったのか?!」


驚きの声をあげるシリウス。
それに呆れる


「もしかして、あたしがお前の秘密バラすためだけに、セブルスのこと呼びだしたと思ってたわけ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・ちょっと」
「あとで1人で体育館裏来い、テメェ・・・・」



温和なの目つきが、シリウスに負けないくらい悪くなる。
どぽどぽ注ぐ紅茶も丁寧さは全く無い。



「まあとにかく、セブルス・・・よろしく頼むね」
「・・・・・何をだ」



注がれた紅茶に口をつけながらスネイプが聞くと
は歳不相応の幼い表情でこう言った。



「決まってるでしょ。ここの秘密の守人だよ。なってくれるでしょ?」
「「「ぶぅっ!!」」」



予想外の答えに僕達は口に含んでいた紅茶を一斉に吹き出した。


「ぎゃあ!汚ッ!!シリウスは兎も角ハリーとセブルスまで何やってんだよ、もうっ!」

「ご、ごめん!、大丈夫?」
「謝るなハリー。今のは突拍子も無い馬鹿なこと言ったこいつが悪い!!」
「我輩を秘密の守人に・・・・・・ついにそこまで頭が沸いたか」

「ちょっと待て、セブルス。それはあたしが元々けっこーイかれてたって言いたいのか?」


は不服を訴えるが、今回ばかりは僕もスネイプに賛成だ。
今度の今度こそは本当に気が触れてしまったのではないだろうか?



「皆して人を狂人扱いして・・・・しつれいだなぁ、もう」
「可愛く拗ねたって可愛くな・・くないが、可愛いからって誤魔化されないぞ!そんな話は初耳だ!!」


シリウス、意味が分からないよ。それ。



「まぁまぁ、何も今すぐじゃないって。
 いつかヴォルデモートの勢いがついて、あたし達3人の誰かしらが危なくなった時の話!」

「そうだとしても・・・ルーピンが居るだろう。お前達3人が全員信頼している、あの男が」



全員・・・・というところで僕とシリウスを見て、そうまとめた。
確かに僕とシリウスはスネイプなんかよりもリーマスを信頼してる。

はどうだか分からないけど・・・・。



「そう!だからこそセブルスなんだよ!!
 誰だってあたし達がリーマスを守人にすると思うでしょ?だからその裏をかいて・・・・・・」
「ちょっと待て」
「はい、シリウスくん。どーぞ」
「それ・・・・・・13年前に俺がやったのと全く同じ手段だ」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そーだっけ?」
「そうだ。お前には全部一から話しただろ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・あは、忘れてたv」



あっはっはっは!!と豪快に笑うだが僕達は笑えない。
特にシリウスは、好きな女の子にラブラブの彼氏がいることを知った男子中学生のように黄昏てる。
口ではボソボソと「にとって俺の話なんてそんなもんか・・・」なんて呟いてる。



「でも、それじゃあスネイプ・・先生にシリウスの秘密を話したのって・・・」
「無駄だったみたいだね。まあ、こーゆう事もあるある!」
「・・・・・下らん」


スネイプは一言呟くと、机の上の杖をローブに戻してがたりと席を立った。


「え?セブルスもう帰っちゃうの??」
「用は済んだのであろう?ならば問題あるまい」
「いや、そーだけど・・・別にゆっくりしてけばいいのに・・・・」


自分で焼いたクッキーをかじりながら
が不満そうに見ると、スネイプは振り返って言った。



「また今度、時間がある時にゆっくりさせてもらおう」
「時間がある時って・・・・もしかして今日忙しいの?」
「・・・・・11時から、魔法省主催の学会に参加するよう言われていて
 その後はダンブルドアの元に行き所用をこなす予定だ」



の質問に、ほんの少しだけ渋って
今日の日程を話すスネイプ。

11時なんて言ったら、あと30分もない。


「そんな忙しいなら後でいいのに、手紙にそう書いたじゃん」
「我輩の予定は我輩が決める。お前は気にしなくていい」
「だけどっ・・・・」



興奮するを制すように名前を呼んだ。



「もっと他になにか・・・言いたい事があるのではないのかね?」



そう問われたは口を一度閉じて眼を逸らしたあと
スネイプを睨みつけるように見つめて、特徴的な鍵鼻にひとさし指を突きつけて・・・



「絶対無理しちゃ駄目だからね!!」


スネイプはそう言って子供のように唇を尖らせるの頭・・・・・というより髪を愛惜しそうに撫でて
白い小さな手をとって、その甲にキスをした。

スネイプでもあんなことするんだ・・・・。



「お前の頼みだ。心がける事にしよう」
「やめてよ恥ずかしいな///」



口付けられた手を逆の手で押さえながら
赤い顔でスネイプをジド目で睨みつける

今まで見てきたの中でも一番可愛らしい仕草だ。



「じゃあ頑張ってね。暇になったらいつでも来てよ」
「その時は極力ポッターとブラックは遠ざけてもらいたいものだな」


スネイプは最後に僕に見下し気味の視線を送って
出入り口の前で例の合言葉を言い、庭から出て行った。





「ふぅ・・・・・帰っちゃった」
は本当にスネイプと・・・・・・友達なんだね」
「うん、そーだよ」



迷うことなく答える。
こういう時のは気のせいじゃなく光っている。

きっとこの輝きがの最大にして最強の魅力なんだろう・・・。



「おらシリウス!いつまでぼーっとしてんだ!!」
「どはっ!?ん?スネイプのやつどこ行ったんだ・・・・?」
「セブルスなら帰ったよ」
「そうか!帰ったのか♪そりゃ良かった!!」



シリウスを椅子ごと蹴り倒して意識を取り戻させただが
引っ付いてくるシリウスにうんざりしてるようだ。



「・・・・・にしても、客が帰っちゃあ茶会も何も無いよね。・・・・クディッチでもやろっか」
「「やる!!」」


声が重なった。
シリウスを見ると、白い歯をぴかっとさせて爽やかに笑ったので
負けじと出来る限りの最高の笑顔を返した。

そんな僕とシリウスの肩にが腕を回して
更に提案をした。


「じゃあさ、リーマスも呼ばない?」
「今からか?」
「うん。呪文でね」
「「呪文?」」


人を呼ぶ呪文なんてあるのかな?


「じゃあ呼ぶよー。アクシオ!リーマスよ来ーーー・・・・・むぐっ!?」
「それは止めとけ」


間一髪、シリウスがの口を塞いだ。


「今のって物を呼ぶときの呪文じゃ・・・」
「ぷはっ!大丈夫、大丈夫!どーにかなるって!」
「「ならねぇ(ない)よ!!」」



そんなこんなで、結局3人でクディッチをすることになった。

今日はとてつもなく大変な事があった筈なのに、そんな事を感じないくらい
いつもの通り、楽しい1日になった。


がいれば、それだけで明日もまた楽しくなりそうな気がする。



今日はの新しい関係が見れた。

それと・・・・・・・・ちょっとだけ、
シリウスやスネイプが羨ましくなった。


僕もと同級生になりたかったな。












ちょっと楽しい事を思い浮かべるだけでいい
ちょっと嬉しい事を思い出すだけでいい

泣くより 怒るより 拗ねるより 
笑う事は ずっとずっと簡単だから

希望と絶望の手をとって 世界中に笑顔を振りまけ!