「・・・・うん。そう、・・・ほんとに?!うん、うん!あははは!」



真夜中
ふいに目を覚ました僕が、眠い目を擦りながらリビングに行くと
テーブルに座ったが、マグルの電話で誰かと話をしていた。



「シリウス」
「・・・ハリー、起きたのか?」


取り合えず、の近くできちんと椅子に座っているシリウスの名を呼ぶと
げんなりとした顔だったシリウスが、困ったような笑顔になった。



「すまないな。こんな夜に煩くして・・・寝てていいんだぞ?」
「・・ううん。大丈夫だよ」
「そうか?・・・まあ、この声が響いてたらゆっくり眠れないか・・・・・」


はぁ・・っと溜息をはくシリウスを尻目に、は会話を続ける。

もしかして僕が起きてきたこと、気づいてないのかな?


僕はすぐには座らないで、キッチンに行き、僕用にが買ってくれたカップに
出しっぱなしだった牛乳を並々と注いで、シリウスの隣に座った。

そして2人が夜食に食べていたと思われるシーザーサラダの薄くスライスされた卵を
手づかみで一枚とって口に入れた。
舌に広がる濃厚な黄身の味と
軽くついていたフレンチドレッシングが、眠い頭を目覚めさす。

そして眠気にとどめを刺すため、白い液体が波紋をたててるカップにも口をつけた。


出しっぱなしだったわりには冷たいミルクは
ぼーっとしていた頭と意識を完全に覚醒させた。

その勢いで、中身を一気に全部飲み干し
ことんとカップを机の上に戻して、またブスッとしてるシリウスを見た。



「ねぇシリウス。は誰と電話してるの?」
「さあな。さっきからずっと俺を放ったらかしにして喋りっぱなしなんだ」
「さっき・・・って、どのくらい?」
「2時間」
「に、2時間も?!」
「ああ。それもずーっと同じ相手と、休みもせずにな」


そう言うと、シリウスは綺麗な眉間に思いっきりシワを寄せて
顎の辺りにもウメボシができるくらい、不機嫌さを顔に出した。

でも、僕が驚いたのはそこじゃないよ、シリウス。

女の人の電話が長いのなんて別に可笑しくもなんともない。
ペチュニア叔母さんなんか2時間どころか、5時間くらい話し続けてたことがあるからね。

その時は、僕はもちろん
ダドリーもバーノン叔父さんだって、1時間もしないうちに
呆れ顔で自分の部屋に戻ったよ。


それなのに、シリウスときたら
が電話を始めてから、ずっとこのリビングで話が終わるのを待っているときた。


シリウスにそれを言えば、絶対に
を放って先に寝るなんて、俺には出来ない!」
とでも叫ぶんだろうな・・・。

・・・前から思ってたけど
シリウスがに向けてる愛って、かなり変だと思う。



ちらっと時計を見てみると、
時間はもう夜中の2時に近い。

ここに来てからは、今までの夏休みと違って
ちゃんと昼間に宿題ができるおかげで日付が変わる前に寝ることができていたから
こんな時間に起きてることは、初めてだ。



今度はチーズでも摘もうと、またサラダに手を伸ばしたら、
同じくサラダをとろうとしたの手とぶつかった。

僕がの方を見ると、
同じく僕を見ようと振り向いたと目があった。



「うわ、ハリー?!起きてたの?」
「あ、うん」
「ごめん!あたし煩かったよね。ほんっとゴメン!」
「僕よりシリウスに謝った方がいいよ、
「え・・シリウス?あれ、まだ起きてたんだ」
「・・・・ああ。」
「なんで怒ってんのさ」


そりゃ怒るよ、
2時間も待ってたのにその扱いじゃ・・・・
確かにシリウスが勝手に待ってたんだろうけど、それでもちょっと可哀想だよ。



「それ、もういいのか?」
「へ?・・・・・あ、やばっ!」



問いかけられて、ふっと気づいた
放置していた受話口に耳を戻した。

それを見たシリウスは、また不機嫌になる。


だけど、露骨になったシリウスの不機嫌オーラが痛くなったのか
は相手と2、3言のやりとりをすると
それだけで、電話を切って受話器を手放した。



「・・・・・・・・・・・・・・・・・終わったな?」
「うん、終わったけど・・・」


静かに言うシリウスに気おされてるは、
ちょんちょんと僕の服を引っ張ってきて、そっと耳打ちをした。


「ねぇ、なんだってシリウスあんな怒ってんの?」
「多分・・・・・2時間も放っておかれたからじゃないかな・・」
「でもあたし『待ってろ』なんて一っ言も言ってないよ!」
「そうだろうけど・・・・・はそれでシリウスが大人しく寝ると思う?」
「そりゃ思わないけどっ・・・・・・

「・・・、ハリー。いつまで話してる気だ?」

「「ご、ごめんなさい・・・・・」」


普段からは想像がつかないような地を這うような低い声に
僕とは口を揃えて、何故か敬語で謝罪した。



「シリウス・・・・あーっと」



が不機嫌極まりないシリウスに果敢にも声をかける。
流石はグリフィンドールだ。

いや、それは僕もなんだけど・・・・
でも、は何て言うか、グリフィンドールの申し子みたいな人だと思う。

色んな意味で。


「・・なんだ?」
「いや、今のシリウス・・・なんかリーマスみたいだなぁ・・なんて・・・・・」
「それだけか?」
「・・・・・それだけです」


縮こまって、どうしよう・・・・と訴えかけるように
僕に視線を送る

でもね。

にどうにもできないのに、僕にどうにかできるなんて思わないでほしいな。


と言うかシリウス怒りすぎ。
幾らなんでも。


そう思って今度は僕がの腕をちょいちょいっと突いた。


、シリウスなんであんなに怒ってるの?」
「いや、あたしにもさっぱり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ」
「なに?」
「そーいやシリウスって昔からあたしが電話使うの嫌がってた」
「どうして?」
「うーん・・・シリウスって生粋の魔法族だから、自分のよく知らない物で楽しそうにされんのが嫌なんじゃん?」
「それってつまり・・・・」



拗ねてるだけ?



も同じ結論に行き着いたらしく
目の下の筋肉をピクピクさせながら、シリウスを呪いめいた目で見てる。

一方シリウスは


「なんだよ、その目・・。ハリーまで・・・・」



唇を尖らせて、まるで玩具を買ってもらえない子供のような顔をしていた。

さっきまで纏ってたあの雰囲気は一体・・・・・。




「だー!もう馬鹿らしい!なんであたしがシリウスなんぞに気ィ遣わなきゃなんねーんだよ!!」
「狽ネっ!俺なんかってどういう意味だ!!」
「言ったままの意味だっつの!お前なんかそれで十分!!」
「また言ったな!いくらだからって言っていい事と悪い事が・・・」
「お前がガラにも無いオーラ出すからだぁ!!」
「ふぶッ?!」


勢い余ったが、サラダの入った皿を
一世代前の年末コントでやるパイ投げみたいにシリウスに投げた。

それを見事に顔でキャッチしたシリウスは、
綺麗な黒髪に赤いフレンチドレッシングがデコレーションされた上に
トマトのヘタが長い睫の上に乗ったり、生ハムが頬に張り付いたり

極めつけは卵の黄身が顔中に飛び散って、折角の美形が台無しになっていた。


そろそろかな。

大人気ない二人のやり取りに巻き込まれないため
僕は頭をクッションで防護しながら、テーブルの下に避難して
そっと顔だけ出してみると・・・・

シリウスがわなわな震えて袖で顔を拭いてるところだった。


ああ、もうすぐだ。



・・・・覚悟はいいか?」
「な、なんのだよ」
「俺の子供を孕む覚悟だ」
「ぎゃー!!襲い掛かるな馬鹿犬!ハリーが居るんだぞコラ」
「性教育になるから良し!」
「良いわけあるかぁ!!」


シリウスの眼がぎらりと光った次の瞬間には
既にはしっかり抱きしめられていて、身動きがとれなくなっている。

・・・・けど


「こんの大馬鹿野郎ー!!」
「ぐはぁ!!」


隙間を縫ったようなアッパーカットがシリウスの顎に炸裂。

僕はついに声をかけた。


「今日もキレイに決まったね」
「ありがと。その褒め言葉、昔ジェームズにも言われたよ」
「父さんに?」
「うん。いっつもシリウス沈める度に褒められてたんだ」


やっぱりハリーはジェームズの子だね。

そう言って僕の頭を撫でるは、やっぱり大人の女の人だと思った。
若々しく見えるけど、僕の2倍以上を生きてきた大人なんだ・・・と。



「・・あ!そうだハリー、いい知らせがあるんだ」



大人っぽく微笑んでた顔が一転。
の顔が幼い笑顔になった。

そして更に表情は変化して
にぃっと歯を見せた、いかにも何か企んでますと言ってるような、そんな顔になった・・・。


「知らせって・・・どんな?」
「んっふっふーv なんだと思う?」


わからない。

のやることは、毎回毎回毎回毎回毎回・・・僕の予想を遥かに超えているから。
きっと今回もとんでもないことをやろうとしてるんだろうけど・・・・。

その内容までは予想がつかない。


「・・・・わからないよ。何なの?」
「じゃあヒントあげる。あたしが使ってたアレ」


指差したのは白いコードレスホン。


「電話が・・・ヒント?」
「そう。さあさあ考えて」


僕は頭を捻る。

電話がヒント・・・なんだろう?
あ!もしかして、さっき電話してた相手が関係あるのかな?

マグルの電話で連絡を取る相手か・・・。
家族かな?

でも、それが僕と何の関係があるんだろう。
僕を両親に紹介するとか・・・うん。きっとそうだ!
の両親に挨拶かぁ・・・・なんて言おう。

やっぱりココは正統に「お嬢さんを僕にください」かな。

いや、でも僕はまだ結婚できないから婚約になるから
「お嬢さんと婚約させてください」になるのかも・・。


どっちにしたらいいだろう・・・・。



「わかった?」
「ううん。まだ考えてる」
「そんな難しい?」
「うん。すごく難しい。悩むよ」
「どっちかってーと単純に考えた方がいいと思うけど・・・」
「駄目だよ!大切なことなんだから、ちゃんと考ないと!!」
「え・・あ、うん・・・?」


僕が大きな声で言うと、はちょっと驚いていた。

でも今はそんなこと気にしてる場合じゃない。

の両親に挨拶する言葉をしっかり考えないと。
男らしいところ見せるんだ!!


!僕今日はもう寝るよ」
「ええ!寝ちゃうの?!」
「うん!明日の朝までにはちゃんと考えておくから、おやすみ!」
「お、おやすみ」


ばたばたと走って部屋まで戻る。
頭の中は顔も知らないの両親を想像して、絶えずリハーサル中。

よーし、朝まで徹夜で考えるぞ!!









「ハリーってば・・・・何であんなに気合入れてんだろ?」

「多分勘違いしてるんだと思うぞ」

「勘違いって?」

「それは俺にも分からないが、絶対に間違いない」

「なんで断言できんの?」

「そっくりだからだ」

「は?誰に??」

「勘違いした時の・・ジェームズに」

「・・・・・・・・・・・・・ああ。そういや似てたわ、確かに」




「ところで、結局ハリーに何を知らせたかったんだ?」

「ん?ハーマイオニーとロンが来ること」

「・・・・・・・・・は?」

「さっき電話してた相手。あれハーマイオニーだよ」

「・・・・・・・・・・・・・どうやって調べたんだ。家の番号」

「秘密」

「・・・はぁ、それで。いつ来るんだ?」

「へへ、明日」

「あし・・・っ、そりゃまた随分急な話だな。・・・・いいのか?ハリーに知らせなくて」

「うん。よく考えたら言わないでビックリさせた方が面白そうだし」

「そーゆうやつだよ、お前は」





とシリウスがこんな会話をしてるなんて
露ほども知らない僕は、この夜一晩中机で羊皮紙に挨拶文を書き直し続けて
そのまま寝てしまい

翌朝、パジャマのまま可笑しな寝癖だらけの頭でリビングに行って
とシリウス。

それにが招いた僕の親友2人に大笑いされるはめになった・・・。



やっぱりは凄い人だ。

だって、こんなにも僕の事を幸せに出来るんだから。
















砂糖菓子より甘い愛情
冒険よりも心躍る毎日
大好きな人たちの笑い声

きっと人はこれを幸福と呼ぶ