キミとの出会い。


それは、僕らに一生涯の宝と

溢れんばかりの希望。


そして

恐怖を与えるきっかけとなる。




そう。

失うことが途轍もなく恐ろしい


とても、

とても、


とても大切すぎるヒトが出来るという恐怖。









「編入生を紹介する」



いつもと変わらない朝食の最中。

ダンブルドアが古びたベルを軽く鳴らし、食事中の生徒達の注目を集めてから
穏やかな口調でそう言った。

高い天井にまで生徒達のざわつく声が届く。

ある者は手を叩き、伝えられたニュースを素直に喜び
またある者は、訝しげに眉をめそめ
はたまたある者は、食事の手を止めず然したる興味もなく

それでも多くの生徒が好奇心と期待で胸を躍らせた。



そんな中、

黄色と赤のマフラーを巻いた生徒らが座っている席の
ちょうど真ん中あたりを陣取っている少年ら4人が、くすりと笑みを溢した。



「ほら、僕が昨日言ったとおりだろう?」


誇らしげに笑みを深める少年。
名をジェームズ・ポッターといい、類稀なき魔法の才と頭脳。
加えて抜群の運動神経に恵まれた世にも幸福な悪戯小僧である。


「自慢するのはいいけど、その寝癖頭じゃいまいち決まってないぜ」


艶やかな黒髪を、指でくるくると巻いてジェームズの癖毛を真似るのはシリウス・ブラック。
魔法界の名家、ブラック家の長男坊であり
十人並みから相当かけ離れた、端正で彫刻のような美貌の持ち主だ。


「シリウスこそ。口元にパン屑なんかつけてちゃファンの子がショック受けるよ?」


優しげな眼を細めながら、甘い匂いがたつティーカップを口に運んでいる
こちらの少年はリーマス・J・ルーピン。
その柔らかで大人しげな容貌からは、人狼という恐ろしい秘密を持っているとは信じられない。


「み、みんな。静かにしないと怒られるんじゃ・・・」


ビクビクとしきりに周りを気にしている
小柄で少々丸っこい小動物のような素振りをしているのはピーター・ペティグリュー。
他の3人のように目立つ要素はほとんどないが、素朴でどこか憎めない存在である。


彼らこそ。
ホグワーツ始まって以来のお騒がせ者4人組。

誰が呼んだか、自分達で言い出したかは知らないが、
人呼んで『悪戯仕掛け人』。
ホグワーツで彼らを知らない者は一人としていない。


昨日もリーダー格のジェームズが、その本領と好奇心を最大に発揮し
職員室に忍び込んで情報を先取りするという問題行動を成し遂げてきた。

ジェームズが逸早く手に入れた情報というのが
先ほどダンブルドアの言っていた編入生のこと。

ホグワーツに編入生が来たという前例はなく
今回が初めてのケース、とダンブルドアの横に座る歳を召した女性教諭。
ミネルバ・マクゴナガルが授業中と変わらぬいつもの口調でそう言っているのを
ジェームズ達は外見興味ありげに。
実のところ、大した興味もなく耳に素通りさせていた。

彼らの興味はつまらない説明などには突っかからず
編入生自体に一直線だ。



「諸君、説明なんてどうでもいいと思わないかい?」

「同感だ。早く編入生とやらを拝ませて欲しいぜ」


ジェームズとシリウスは早くも文句を言い出す。
しかし、それは彼らに限った事でもないらしく
各寮に何人かずつ、同じくソワソワしている者が見受けられる。

中には軽く席を立って教諭席の後ろに控えているであろう
『編入生』を我先に見てやろうとしている者さえいる。


生徒らの浮ついた行動に気づいたマクゴナガル教授は
ふぅ、と呆れか諦めか判断の難しい溜息を一つついて、ぐるりと生徒を見渡して


「では、編入生の紹介に移ります」


そう宣言された途端、五月の風に吹かれた木々といった程度のざわめきが
薪をくべられた炎のように一気に膨らんだ。


「ダンブルドア。お願いします」

「うむ」


白く長い髭をわしゃわしゃと撫でつけていた手を
白いテーブルクロスがひかれたテーブルにつき、のっそり腰をあげ立ち上がる。

そして、髭に埋もれた小さな口を丸く開き
咽を馴らす咳払いの後。


「みなの新しい仲間を紹介する」


年季の入った杖を外向きにソラで弾くと
教授席の少し後ろにあった一枚の扉がぎぎぎぃっと擦り音をさせながらこちら向きに開かれた。

いや、正確には
教授席の少し後ろにあった一枚の扉の絵画が

開かれた。


ただの絵だと思っていた生徒一同は驚き露わに眼を見張る。

その驚きがまだ生きたままの大広間に
その絵画の扉からなにかが飛び出してきた。

思わず誰もがその何かを視線で追い、首を真上へと捻った。


数百人の魔法使いの前に現れた
その何かとは・・・・



「へぇー!これが魔法かぁ。すっごーい!!」



ついさっきまでの生徒らよりも、もっと好奇心を剥き出しにして
箒に跨る一人の少女だった。



「ミス・!!」


マクゴナガル教授の悲鳴に似た怒声。
恐らく・・・いや、確実にさきほど教授が叫んだのが編入生の姓なのであろう。
それにしてもいつも冷静な教授からは考えられないような声に
大広間は一瞬、水を打ったかのように静かになった。

それに引き換え、編入生の方はと言えば
箒であっちへ行ったりこっちへ来たりと好きように大広間の天井を飛び交ったまま。



「なんですかー?えーっとマ、まぐごガ、がるな先生?」

「・・・マクゴナガルです。
 こほん・・・・それよりも。ローブはどうしました?それに箒は持ってこなくていいと言ったはずです」


ぴしゃっとそう言い切ってから、
机に置きっぱなしにしていた杖をとり、くいっと右から左に空をきると
少女の乗った箒が独りでに下へ下へと円を描くようにしながら
ゆっくりと、だが確実に下降していった。

そしてふわりと風を起こし、床まで数メートルほどになると
徐々に教員席の方へと移動を始めた。

何故だか物凄くゆっくりと。


見ているジェームズたちとしては
どうしてあんなにも遅く丁寧に箒を移動させるのか、
だいたい自分で床まで降りてこさせればいいのに・・・。
そう思わざるを得なかった。

しかし、それは何もジェームズたちに限ったことではなく・・・・


「先生ー。あたし面倒なんで降りちゃっていいですか?」

「なにを馬鹿なことを・・・・ッ」


「ほいっと」


何を血迷ったのか。
少女は箒から、その身を宙に投げた。

床まではまだ3メートル以上はある。

生徒達の中には思わず顔を手で覆う者もおり
教員たちですら驚きで席を立ち、杖をかざし呪を唱えようとした・・


だが。


少女は軽やかに、足音と呼んでいいのか迷うほどの小さな音だけをたてて
グリフィンドールの生徒らが頭を連ねていたテーブルに
何事もなかったように着地してみせた。


位置はちょうど、合い向かいに座っていたジェームズとシリウスの間。
二人の互いの視線を、己の体で遮るようにしてその場に降り立ったのだ。


少女の顔がある方に居たのはシリウス。
そしてその隣にはピーター。
少女の背中と軽くはためくスカートが目の前にきたのはジェームズ。
そしてその隣にはリーマス。


偶然ではなく必然的に、少女とシリウスの視線がかち合った。



「お前、名前は?」

「え・・・・・あ、シリウスだ。シリウス・ブラック」

「そっか。あたしって言うんだ。よろしく!」

「お、おう」


にっこり満足げに笑う少女
その笑顔は年頃の女の子らしいような微笑みやはにかみではなくて
飾ることなく、どちらかと言わずとも限りなく快活な少年のような笑顔だ。

自分の周りを囲む少女らとは違う、その表情に
ガラにもなく戸惑ってしまったシリウスは、後から少しだけ「しまった」と苦く顔をしかめた。


「レディ、悪いけどこっちを見てくれないかい?」

「ん〜?」


くるり真逆を向いて、今度はシリウスに背を向けて
ジェームズに顔を見せる。

が初めて見た時のジェームズの顔ときたら
至極、至極、楽しそう。


「僕はジェームズ・ポッター。覚えていて損はさせないよ?」

「ジェームズね。おっけー、覚えとくよ。・・そっちは?」

「リーマス・J・ルーピン。よろしく」

「うん!よろしく。あ、あとシリウスの横のお前!名前は?」

「ぼ、僕?!」

「そう!お前」

「僕は・・・えっと、ピーター!ピーター・ペティグリュー」



悪戯仕掛人の面々と個人的な自己紹介を済ませたは、
4人の顔、それにジェームズの横にいるリリーをちらっと見て
ジェームズに勝るとも劣らぬ極上の笑い顔で、誰にとはっきりさせないように言った。


「お前らとは長い付き合いになる気がする!」


何の根拠もない言葉。

けれど、妙に信頼感が溢れていて
信じられるような気がした。



「ミス・!個人的なことは後にしなさい」
「はーい!ごめんなさいっ。・・・じゃ、またな!」


体重を感じさせない動きでテーブルから身を翻し床に足を着くと
甘い色合いの金髪を揺らし、大広間に居る人間全ての視線を浴びながら
教諭席まで駆けて行った。



「では、改めて紹介する。彼女は。マグルの出身じゃ。
 理由あって入学許可証が届かず、他の1年生諸君らと同じ時期に入学することが出来なかったのじゃが
 なんとか無事にこうしてホグワーツに通えることになったんじゃ。、みなに挨拶じゃ」

・・・・えっと、です!!
 ここに来てから絵は動くわ喋るわ、箒は飛ぶわ、帽子から剣は出てくるわでビックリしっぱなしです。
 妙なことしてたら笑うのは全然おっけーですが見捨てないでもらえると嬉しいです!」


どーぞ、よろしくお願いします!!
最後に一際大きな声でそう締めくくり、またあの笑顔を見せた。




「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ミス・

「は、はい。あれ?あたし何か不味いこと言いました?」

「・・・・・貴方、いつ組み分け帽子を触ったんです?」

「組み分け帽子って・・・・・あの椅子の上にある汚い帽子ですか?」

「ええ。そのとおりです」

「えっと昨日の夜、ちょっと校内の下見してた時に見つけて・・・不味かったですか?」

「それで?」

「え?」

「剣を・・・・・グリフィンドールの剣を出せたのですね?」

「それかどうか分かりませんけど、やたら金ぴかの高そうな剣なら出てきました。
 手ぇ突っ込んでみたらだら、こう・・・・にょきっと」



何度目になるのか、マクゴナガル教授は
また深い溜息をついた。

しかしながら横に座るダンブルドア校長は優しげな眼を細め
愉快そうにを見た。



「ふぉっふぉっふぉ。組み分けの儀式は必要ないようじゃな」

「そのようです」


額を押さえるマクゴナガル教授。

その表情から読み取れるのは、
また頭を悩ます問題児がグリフィンドールに。

ただでさえ悪戯仕掛人には手を焼いているというのに。

そんな密かな気苦労を知ってか知らずか
まあほぼ確実に知っているのだろうが
ダンブルドアは杖を振って、なにかの魔法をかけた。


とたんに大広間にはふくろうが飛びこんできて
イベントよりは質素に、けれど見た目のいい飾りつけを施し
落ち着きのある声を張って・・・・



はグリフィンドールじゃ!!」




次の瞬間。
ジェームズらを中心として

グリフィンドール全体が、新たな
なおかつ、学園生活を一層盛り上げ楽しませてくれそうな仲間の誕生を
大いに湧き上がり喜んだ。






出逢ったその瞬間から、僕らの中の誰もが



キミの中に

光とは違う”輝き”を感じていた。











出逢いは一瞬。
その一瞬は永遠。

これから歩く道は限りなく長いけれど

互いの道が交わったこの日を
僕らは決して忘れない。










*あとがき*

まだセブルスが出てこないーーー!!
次回こそ・・・次回こそは!!
てか、アーサーとモリーとルッシーも絶対出したい!!

朝凪の文章力が限りなく欠如してるため勘違いなさってる方もおられると思うので、補足。
まだこの時点では誰もヒロインに恋してません。多分。