「で、何のようだ。サービス」
「随分な挨拶だね。最愛の弟に対して」
「けっ・・・自分で言うんじゃねーよ」
日本支部を出たサービスが真っ先に向かった場所。
それは双兄が隊長を務める特戦部隊の飛空艦だった。
「あの・・・・・・隊長。一つ宜しいですか」
「んだよ」
「何で俺ら呼び出されてるんですかぁ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
この場に居るのはメンバー全員。
普段ならサービスやマジックが訪ねてきたら、メンバーは皆席を外す。
なのに今回は態々呼び出されたのだから誰もが不可解でならない。
「マーカー、ロッド、G」
サービスが順に名前を呼ぶと、社交辞令なのかどうかは知らないが
全員がその場で軽く姿勢を正す。
「1人足りないようだが・・・・」
「知ってんだろ、・・・リキッドは抜けた」
「そうだったね。彼はジャンの代わりにあの島の番人に・・・・・・」
「いいだろ、その話は。さっさと用件言えや」
若干寂しそうな表情を見せて、話を進ませようとする。
ここは触れるべき話じゃないと即座に察したサービスは、一呼吸置いて自分の話題に入った。
「夕べ、に会ったよ」
「・・・・・・・そーか。あいつ元気・・・・・・だよな。やっぱ今の聞かなかったことに・・・」
「しないよ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・おら、続き話せ」
先にリキッドの話になったせいで、少しナーバスな雰囲気を引きずってしまい
不覚にも心配するような台詞が出てしまったので取り消そうとしたが、言ってしまったらもう遅い。
気を利かせて忘れてくれるような弟じゃない事はハーレム自身がよく知っていた。
むしろ永遠と覚えている方だ。
サービスは話を続ける。
「噂に聞いたとおり可愛い子だったよ。日本支部にある私達の部屋に迷い込んできてね。
クッキーをあげたら美味しそうに食べて・・・・・」
「お前まさかそんな事言いに来たワケじゃねーよな?」
あくまでこれは確認程度。
この男がそれしきのことでココにくるはずない。
「ああ。違うね」
やはり小憎たらしいほど飄々と言う。
年甲斐の無い兄弟げんかを前にいつまでも突っ立ってるのが馬鹿らしくなってきた特戦部隊の面々。
ロッドなど欠伸を噛み殺しもしないので、マーカーによって肘鉄を入れられた。
その様子を見てくすくす笑うサービス。
「失礼しました、サービス様」
「いいよマーカー。それにしても特戦部隊は相変わらず面白いね。ハーレムの部隊だけある」
「どーゆー意味だそりゃ」
「そのままだよ」
この我侭末っ子は・・・・・・・・。
徐々にハーレムの額に血管が浮き出だす。
眼魔砲の発射までカウントダウンし始めた方が良さそうだ、
とマーカー達はいつでも部屋から出られるようそっと後ろ向きのままで移動する。
「なぁ、隊長がいつキレるか賭けねぇ?(小声」
「ふ・・・・・いいだろう。私はサービス様の3言めだ(小声」
「・・・・・・・・・・・・2(小声」
「お、Gもやる気満々かぁ?んじゃあ俺は〜次の一言でv(小声」
「正気かロッド?いくら隊長とはいえそれは早すぎるだろう(小声」
「いーの、いーの♪(小声」
3人が入り口の数歩手前で止まった所で、
ハーレムが冷静になろうと無駄な抵抗をしながら口を開く。
「サービス。もう一回言うぜ?用件は何だ?」
声はひどく落ち着いているが、顔はそうでもない。
顔面の筋肉が痙攣しかけてるほど見た目でもひくひく動いている。
そんなハーレムを全くといっていいほど気に留めず、今度はサービスが口を開いた。
「率直に言おう。・・・・・・を私の養女にしたいと思っている」
「「「「・・・・・・・・・・・・・は???」」」」
本当に率直に来た美貌の叔父様。
お顔がとてもお美しいです。
「・・・・・・・・・・・・・・何言ってんだ、お前」
頭平気か?
とでも言いそうな勢いで破顔している。
この時点でロッドはスカ済み。
「私は本気だよ、ハーレム」
「あいつは今士官学校入ってるだろーが!そんなん無理に・・・・」
まだキレてない。
よってGもスカ。
「勿論士官学校は卒業させるよ?もそれを望んでるようだし・・・・。
私の家に養女として迎えるのは、その後でも問題ない」
静かに言った。
はたしてマーカーの1人勝ちか?
それとも全員スカか?
「・・・・・・・・・・・・・・またかよ」
ハーレムの返事はそれだけだった。
どうやらマーカーも外れ。すなわち総負けのようだ。
「”また”じゃない。あの時は私は本気じゃなかった、ただお前の物が欲しかっただけで・・・・」
「昔っからそーだよな、お前ってやつはよ」
「否定はしないよ。だけど・・・・・今回は本気だ」
何だか憑き物が落ちたようなハーレムに
特戦部隊の面々が焦りだす。
このままあっさりの養女入りを許可してしまいそうな雰囲気だったから。
「ちょっ!待って下さいよ隊長」
「を・・・・・・・サービス様に渡す気ですか・・・・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
3人はドア付近からづかづかと足音ざばらにハーレムに詰め寄る。
あまりの迫力に思わずハーレムも驚いた。
「おい、お前ぇら何勝手に結論出してんだっつの!減給すんぞ!!」
その一言でピタリと動きを停止させる。
「俺があんなおもしれーもん、手放すわけねぇだろ」
「・・・・それは私に対しての宣戦布告、かな?」
「まあな。言っとくが昔みてーに譲ったりしねーぜ、あれは俺のもんだ」
すっぱり言い切った隊長に、やや不満な表情をする部下。
どうやら「俺のもん」と言うフレーズに異論があるらしい。
そして兄らしいその豪胆な態度に、弟は優雅かつ妖艶な微笑みで応えた。
「それじゃあ勝負だね、兄さん・・・・」
意志の無いぬいぐるみの時のようにはいかない。
今度はとびっきり意気がよくて強い意志を持った人間。
でも負ける気はない。
僕だってあの子が欲しいんだ。
「もう帰るのか?」
「用件は済んだからね」
ソファを立ったサービスを呼び止める。
その手には携帯が握られている。
「もう1台買うって言ってたじゃねーか。一応教えとけよ」
ああ、そう言えば前に会ったときにチラッと言ったっけ。
この兄は本当に変なところで、よく覚えている。
あれは日本支部に行くすぐ前に買ったから、
番号を知ってるのは私だけ。
そしてあの携帯にも、私が今使ってる番号とアドレスしか入れていない。
つまり私と、2人だけの連絡手段。
「・・・・・・・・・・まだ当分は前のままだよ」
「はぁ?買ったんだろ??」
眉をひそめて折角整っている顔を崩す。
こういう飾り気のないところも似ているかもしれない。
「そこまでお前に教える義理はない」
「あんだとォ?!」
盛大に隊長椅子から立ち上がりサービスに向けて右手をかざすが、
サービスの方は無抵抗・・・・・という以前に防御の体勢すらとらず
無防備に背中をハーレムに向けてドアに歩く。
ロッドとGの間を通り抜ける際
話しかけるのと独り言の間のような、実に中途半端な口調で
「ウサギは僕の物だ・・・・・・・ここには還さない」
と、だけ言い残して帰っていってしまった。
「あれって俺らも敵視されてるってこと?」
「だろうな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・ん」
「可愛くねーやつ」
けっ、と舌打ちをしながら携帯を隊服のポケットにしまい込んで、
代わりにタバコとライターと取り出した。
ハーレムは、アイツはあーゆうやつだよ・・・。
と、タバコの煙と一緒に吐き出して言った。
「そーいや隊長〜、サービス様が言ってた”ウサギ”って何の事っすか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・よし。ロッド減給・・・・!!」
「え!?そんなッツ」
「愚か者。まだ隊長の扱い方も解らんのか」
「なんかムカつくから、マーカーも減給な」
「っ?!」
「んでもって、ついでだからGも減給っつーことで」
「・・・・・・・・(ガーン)」