多分きっと

社員の総数が3桁の大企業が、年末忘年会を派手にやった後の宴会場は


こんな感じなんだと思う・・・・・。




が終わって





「片付けて寝ろよ、オヤジ共・・・」



時刻はもう明け方に近く

起きている者はただ一人。


獅子舞ハウスで繰り広げられていた宴は事実上幕を下ろしていた。



「主役放って寝るなよなー」



とは言うものの、先日パプワハウスで行われた宴会でもオールで飲み続けていた4名である。

途中で寝落ちてしまったと違って、体力の限界が来たのであろう。

・・・・決して年齢のせいではない


・・・・・・・・・・・と、思う。



「はぁ〜あ、暇・・・・」


一人で時間を持て余すなら、いっそのこと一緒になって寝てしまいたいが

生憎たっぷり睡眠時間をとった後なので眠気はすっかり遠のいていて目は冴えている。


はふいに窓の外を見る。


見えるのはお隣さん。

もとい心戦組の駐屯所。

土方あたりが起きているのだろう。窓の隙間から煙草と思わしき白い煙が暗い空に伸びていた。





行こうかな・・・。


思うが早いか、行動が早いか

既に足はドアの方に向かっていた。


ソファに寝ているマーカーの横を通り

レザーパンツを半分擦り下げたロッドを跨ぎ

Gが縫っていた服を踏まないように避け



ドアノブを握る。

力を込めたとも言えない程度の動作でノブを捻ると

がちゃりと音が鳴った。





・・・・・・行くな」

「は?」



呼び止められたことが予想外すぎて

はきょとんとした顔で振り向いた。



「ハーレム?」



最初に自分が居た位置の最も近くに寝ている男の名を呼ぶ。

返事はない。

は来た道を戻って、元居た場所に立った。



「なぁ、起きてんの?」


さっきの声は確かにハーレムのものだった。

聞き間違うはずなどない。



だが、やはり返答はない。

深くではないようだが、100%眠っている。



「ハーレム」


それでも呼びかける。


「ハーレム、起きろよ」


目の前で眠っている男の名前を呼ぶ。

眠っているのは分かっているのに


「なぁってば・・・ハーレム」


それでも呼びかけた。


そしてがハーレムの名を呼んだ数が十を過ぎたころ、

寝転がっているこの大男に動きが見られた。



「買bうわ!」



中年にはあるまじき、逞しくがっしりとした腕を大きく振り

突っ立ってたを巻き込んで寝返りをうった。


当然、はどすっと音をたてて盛大にハーレムの横に倒れた。



「ったぁ・・・・・・もー!何すんだよ!」

「ぐがぁ〜・・・・がぁ〜・・・」

「・・・すげぇイビキ・・・・・・・・・・・・・・・・・ぷっ、なんか怪獣みてぇ」


面白半分に鼻を摘んでみる。

すると、さっきよりも苦しげなイビキに変わった。


ぱっと手を離す。

すると、それまで通り、気持ちの良さそうなイビキに戻った。



「ぷぷっ、おっもしれぇ〜」


今度は床に散っている鮮やかな濃い金髪に手を入れてみる。

自分のものとは違い、随分硬い感触。


「やっぱ昔より少なくなってるよなぁ・・・髪の毛」


わしゃわしゃと、普段自分がされているようにかき回すが

癖のあるようでない、真っ直ぐの髪は元の状態に自然と戻る。



次は顔でも弄ってやろうと手を伸ばすと

再び寝返りをうったハーレムの右半身がの身体の上に乗りあげた。


状況は一転して、巨体に押しつぶされてる体勢になった



「重てっ!ハーレム退けよ、酒くさい!!」

「ぐぅ〜、んがっ・・・・・・・・ぐぅぅ〜・・・・・・」

「あ、無呼吸症候群」



一瞬止まったハーレムのイビキを冷静に判断する。

ああ、やはり歳だな。


なんて思ったけど、口に出したら最後

ぱっちり目を覚まされそうだから言わない。




それはそうと取り合えず

このクソ重たい体を退かさねば。


そう思ってハーレムの後ろに手を回し、その背を叩いた。




「起きろよハーレム。ハーレム!」


次第に叩く力を強める。


「おい、起〜き〜ろ〜!」
「んがぁ〜・・・・・ぐぁ〜・・・・・・・・」



効果の程はあまりないようだ。

それどころか、ハーレムの腕は次第にの首に回され

いつしか抱きしめられるようになっていた。


は思わず、はふん・・・と小さく溜息を吐いた。




「あーもう・・・・起きなくたってイイから退けって。重いー」



抜け出そうとは思っていない口だけの抵抗。

体を仰向けにしたまま、手はしっかりハーレムの腕を掴んでる。


やっと逢えた大好きな人の重み。

心地よくないワケがない。





「・・・・・・・・・・・ー・・・・」



間近で呟かれた自分の名。



「なんだよ?起きてんなら早く退・・・・」

「も・・何所・・も行くん・・・・ねぇぞ。・・・おめーは・・・・俺の部下・・だから・・・な」

「・・・・・はー・・れむ?」



寝言・・だよな?

寝言に決まってる。寝ているんだから。


でも、そんな事はどうだっていい。


今・・・・・ハーレムは何て

なんて言った?



あたしの耳が正しいなら、絶対に



”もう何所にも行くんじゃねぇぞ”


”おめーは俺の部下なんだからな”



途切れ途切れだったけど、そう言った。










「・・・ったり前だろ」


そんなの当たり前だ。

当たり前すぎる。



「ココ以外に・・・行きたい場所なんかねーもん」



4年間。

ここに・・ハーレムの元に戻ることだけだった。

強くなって、自分の居場所に戻る事だけを望んでいた。




あたしにとって

ガンマ団は居心地のいい場所ではあったけど・・・



それでも・・・・





「あたしの場所はココしか、ハーレムの傍しかない」



生きることの楽しさを知った

世の中の広さと面白さも知った


だけど


戦場しか知らなかったあたしに、全てのきっかけをくれたお前の隣が

やっぱりあたしの場所なんだ。




「頼まれたって一生離れてやんねーよ」




硬い筋肉に覆われた鋼のような体に

まるで子犬のように擦り寄る。


両手でしっかりとハーレムのシャツを握り締めた。

懐かしい体温。煙草の匂い。


頭の中にふと蘇るのは、7年も前のあの日。






「オメーよ・・・俺と戦ってみねーか?」

「腹減ってるからやだ」

「そう言うなって、俺様は強ぇぜ。
 ・・・それにお前は・・・・・・・・」







「覚悟しとけよ、馬鹿隊長」


















世界最強の戦士の居場所は

昔も今もこれからも 金色の獅子の傍ら

”最強”の2文字は2人だけのもの・・・

2匹の獣は
互いの存在を求め合い 安らかな眠りにつく