俺の名はキンタロー。
とある男の中で24年間を過ごしていたので、俺個人としての年齢は5歳に満たない。


色々と話すと長くなってしまうだろうから、今の俺を取り巻く環境を出来るだけ簡潔に伝えよう。



まず俺の家でもあり、仕事場でもあるココは”ガンマ団”という組織だ。
以前は殺し屋集団だったが、世代交代をきっかけに数年前から正義のお仕置き集団となった。

俺の仕事内容だが、主に総帥の補佐をしている。
他にも開発課の精密検査官もやっていて、団内の管理システムも俺が受け持っている。


次に、俺の家族についてだが

これは実際に見てもらった方が早いだろう。






ンタロー青年の恋事情 
             
レッスン1 〜順序は守りましょう〜





「キンタロー、この書類目通しておいてくれ」
「ああ、わかった」



今、俺に指示をした赤服の男。
名前はシンタローと言い、書面上では俺の従兄弟にあたる。
冒頭の”とある男”というのがコイツのことだ。

正体は俺の体で24年間生きていた青の秘石の”影”で、俺の運命を変えた元凶だ。

体を取り返した直後は憎んでいたが、色々あって和解し、
今ではこうして生活の大部分を共にしている仕事仲間でもある。




「「シンちゃーん!!」」
「だぁぁ!お前ら何勝手に入ってきてんだよ!!アポ取れ、アポ!」
「えー、だってパパはシンちゃんのパパなんだよ」
「僕だってシンちゃんのお兄ちゃんだよぉ」
「俺は忙しいんだよ!!用無いなら出てけ!!」



同時に部屋の中に入ってきて、シンタローの怒声を浴びているのは
シンタローの父親マジックと、その長男グンマ。

マジックは殺し屋集団だった頃のガンマ団の頂点にいた男で、
今は”息子”のシンタローに総帥の座を渡し、静かではない隠居生活を送っている。

グンマの方は、シンタローと同じく俺の従兄弟にあたり、
赤ん坊の頃に俺と入れ替えられて、戦死したマジックの弟ルーザーの息子として24年間育っていた。
後で述べるがルーザーとは俺の・・・・いいか?俺の父の名だ。



「グンマ様、やはりココに居らしたんですねv」
「あ!高松も来たんだv」
「ええ、グンマ様の居るところなら私は何処へでも行きますよv」



新たに入ってきたのはドクター高松。
亡き俺の父ルーザーを尊敬していて、父が戦死した時、俺とグンマを入れ替えた張本人だ。
だが俺のために初めて涙を流してくれた男でもあり、そのせいもあってか俺は高松を恨んだことは1度も無い。

ついでに言っておくと開発課の最高責任者で、士官学校の教師でもあり
その上医療のスペシャリストで医療チームの核でもあるのだから、
下手をするとシンタローよりも多忙なのではないだろうか?

何にせよ、ガンマ団内で最も多くの肩書きを持つ男だ。

高松は血の繋がりこそ無いが、俺とグンマにとっては家族同様。
ある意味、それ以上の存在だ。




「だーーー!ったく!!キンタローこいつらどうにかしろよ!」
「無理だ、俺は今説明するのに忙しい」
「はぁ?!何を誰に説明してるんだよ!俺は早く仕事片付けてコタローのところ行きたいんだよ!!」



コタロー。
シンタローの口から出たこの人物はシンタローが溺愛している弟だ。
ここの最上階で数年もの間眠り続けていて目を覚まさない。

シンタローは総帥になってからもずっと仕事が終わるたびにコタローの眠る部屋に足を運んでいた。



「キンちゃん、この後一緒にお茶会しよぉよv」
「グッドアイディアですグンマ様vでは早速・・・・・」
「私とシンちゃんも参加して良いかな、グンちゃん?」
「勿論だよ、お父様v」
「人の居ないところで勝手に話を進めるなーーー!!」

「じゃあ、コタローちゃんの所で皆でお茶会しようvね、それならいーでしょ?」
「まあそれなら・・・・」
「決定だね、あとどのくらいで終わるんだい?」
「もうすぐ終わる」
「では、我々は先に行くとしましょうか」



3人の会話にシンタローが叫んで割って入ったが、巧いこと丸め込まれたらしく
どうやらこの後は皆で茶会をすることに決まったようだ。

マジック、グンマ、高松の3人は準備をして待っていると言い残して部屋を去った。



「さてと・・・・・さっさと片付けて俺らも行こうぜ」
「そうだな、でないとコタローの部屋が高松の鼻血でいっぱいになるかもしれないからな」
「速攻で終わらすぞ!!」



物凄いスピードで書類に視線を走らせ、神速で押印していく。
これは後で見直しておいたほうが良さそうだな。

そうして俺が最初に渡された書類1束を読み終える間に、シンタローは山のようにあった全ての書類を片付けた。



「おら!行くぞ、キンタロー!!」
「ああ。お前のこの残骸を片したら行くさ」
「じゃあ俺は先行ってるからな」



シンタローは俺の返事も待たずに、扉が壊れそうなほど強くドアを閉めて出て行った。
少し煽りすぎただろうか?

だが仕事が進んだので良しとしよう。






さて、俺の家族についての説明だったな。


シンタロー、グンマ、マジック、コタロー、高松の他にあと2人。
どちらも俺の叔父にあたり、どちらも今ここに居ない。


一人はハーレムと言い、特戦部隊の隊長をやっている荒っぽい男だ。
シンタローが総帥になってからと言うものの意見の衝突が激しく、戦い方も激しい。
数週間前から遠征に出ていて帰還するのは当分先の話だ。

もう一人はハーレムの双子の弟、サービス。
高松と仕官学校時代の同期らしいが、ガンマ団とは離れて生活している。
40を越えているとは思えない美しい顔と体をしていて、ハーレムとは目元以外何処も似ていない。
父の事をとても慕っていたらしい。



家族の事はこれで説明は終わりだ。
ガンマ団と家族の事以外では目ぼしい事はもう何も無い。

あとは俺の趣味や好き嫌いくらいか?








きぃ・・・・・


ドアが開いた。

だが、ここからでは積みあがった書類のせいで誰が入ってきたかは分からない。



「誰だ?ティラミスか?」


秘書の名を口にしたが、それに見合う返事は無かった。
だが、その代わりに机の脇から幼い少女が顔を出してきた。


「よーっす!キンタロー!」
・・・・・どうした?まだ授業中だろう?」
「うん、でも自習になったから抜け出してきた!」



説明しそびれていた。


この満面の笑顔をしている訪問者は
数年前ハーレムが戦場で拾ってきて、今は高松の看視下にいて士官学校で勉強している。
実力のほどは総帥直下の伊達衆に勝利し、シンタローと互角の腕前だそうだ。

卒業後は特戦部隊に戻る予定らしい。
俺は・・・・、俺は反対だが。



何故かだと?

そんなことは俺にも解らない。


だが、特戦部隊に戻れば今のようには会えなくなってしまう。
それが嫌だからだ。




「キンタロー何してんの?」
「見ての通りだ。シンタローの後片付けをしている」
「シンタローは?」
「コタローのところだ。マジックやグンマも一緒にな」
「ふーん」


机の開いてるスペースに座って椅子に足を乗せる
俺はその横で、シンタローの散らかした紙を束にしてまとめていく。


「キンタローは行かねぇの?」
「これが終わったら行くつもりだ」


万年筆のキャップを嵌めながら答える。
飛び散ったインクは雑巾では落ちなさそうだ。あとで秘書に洗剤を持ってこさせなければ。

はと言うと、俺がまとめて置いておいた書類の上に、自分が集めた紙を重ねた。

手伝ってくれていたらしい。


「そっかぁ、んじゃ上行っちゃうんだ・・・」
「お前も行くか?」


そうすれば手伝ってくれた礼が出来る。
と一言付け足す。

礼と言っていいか定かではないが、菓子好きののことだ。
グンマの用意した甘い大量の菓子には喜ぶだろう。



「ううん。行かない」
「何故だ?菓子は好きだろう?それにお前が行けばシンタロー達も喜ぶ」
「お菓子は好きなんだけど行かねー」
「何か用でもあるのか?」


が誘いを断るなんて珍しい。
となれば、先約でもあるのだろうか?

だとしたら、そっちには俺から一言言ってを連れて行くんだが・・・・・



「あたし今から訓練場行くの」
「訓練場だと?」
「うん。今の時間ならどこも授業に使ってないから貸切に出来るってウメダに教えてもらったんだ」


ウメダ・・・・・・・確かの友達で、士官学生のナンバー2だったな。

それにしても訓練場を貸切にしては何をするつもりだ?


「訓練場で何をやる気だ?」
「特訓!」
「一人でか?」
「だってウメダは寝不足だからって相手してくんねーし、他のやつらはあたしの相手嫌がるんだもん」


それはそうだろう。
伊達衆や総帥とマトモも組み合える者が相手では、普通の生徒では話になるまい。


そのウメダというやつは、格上と解りきっているの相手をいつもしているのだから
相当の物好きなのだろうか?
俗に言う、痛くされて喜ぶといった人種なのかもしれないな。
マゾとかいう呼称のアレだろうか?



「だからシンタローが暇なら付き合ってもらおーかな、って思ってココ来たんだよ」
「そうだったのか」
「でもコタローのとこ行っちゃったんならいーや。一人で適当にやるし」


よっ、と掛け声をつけて机から跳び下りて濃紅の絨毯に着地し、その足でドアへ向かった。


「じゃーなキンタロー。また遊びくるね」
「待て」


ドアを出かけたの肩を引っ張る。
成長したとはいえ、まだまだ成長途中の細い体は、俺の腕に重さを感じさせること無く
部屋の中へ引き戻された。

その弾みでよろけたを後ろから支えるが、やはり重さはほとんど感じなかった。


「すまない、大丈夫か?」
「平気だけどさ、もっと違う止め方ねーの?あたし前にもコレやられて、すっ転んだ事あんだけど・・・」
「・・・・・・・善処しよう」


と初めて会った時、派手に転ばせた記憶が頭の中で蘇る。
その事を言っているのは明らかだ。



、訓練場に行くのはシンタローじゃないと駄目なのか?」


俺は引き止めた用件を簡潔に言った。
するとは首を縦ではなく、俺の希望通り横に振った。


「別に〜。強けりゃ誰でもいーよ」
「なら俺が・・・・・・・いいか?俺が行こう」
「キンタローって強いの?」
「ああ、恐らくシンタローの次・・・・・・・・いや、シンタローと俺は同等だ」


「シンタローの次・・・」まで言ったあたりでの表情が僅かに変わった。
そのため俺は一度言いかけた真実を引っ込め、やや偽りの混じった答えを出した。


実際にはシンタローの方が俺よりも強い。
それはあの島で決定付けられた。


だが、は強い男が(と言うより強い人間が)好きだ。


何もわざわざシンタローの株を上げてやる義理は無い。
上げるなら他人の株より自分の株だ。



「シンタローと同じ!?すっげー強ぇじゃんか」
「ああ」
「そんならあたしの特訓相手になってよ!な?お願い!」


顔の前で両手を合わせ俺に懇願する
俺が自分から行くと行ったのを聞いていたのに、何故だ?

ああ、そういえば前に高松が「は人の話を最後まで聞かない」とぼやいていたな。
そういうことか。



「あ!でもキンタローこの後コタローのとこ行くんだっけ・・・・・」
「いや、構わん。コタローのところには何時でも行ける」
「あたしとだって何時でも会えるじゃん」
「それもそうだが、お前と会うときは大抵他のやつも一緒だ」
「高松とかシンタローとか?」
「ああ」
「居ちゃ駄目なのか?」
「俺はお前と2人で話がしたいんだ」

「・・・なんで?」




なんで?


・・・・・・・・・・・・そういえば何故だ?




は俺が初めて見た光だった。

眼を容赦なく射す強すぎる輝き。
だが、その輝きは慣れれば慣れるほど心を豊かにさせる。

眼を瞑っていても消えない光だ。


俺がシンタローの中で、初めてを見たとき抱いた思いは悔しさだった。
外に出て初めてと出会ったとき、その思いは清々しい満足感に変わった。



その理由は判明している。


初めて会ったその時から、は俺に笑いかけた。
俺に友達になってくれと言った。

俺にはそれが、これ以上ないほどに・・・嬉しかったんだ。


それまで眼を逸らし続けていた強烈な輝きは、
勇気を出して直視してみたら、それほど痛くはなかった。

むしろ・・・もっとずっと見ていたくなるようなそんな気分になった。
俺はあの時からこの輝きの虜になってしまっている。



今ではは俺にとって、シンタローやグンマたちのような”家族”と同じくらい大切な存在だ。
どちらかを選べと言われたら俺はきっとどちらも選べないだろう。
”家族”とはそういうものだろう?

だがその一方で、その”家族”とすらを接触させたくないとも思っている。
最近は特に・・・だ。

同じくらい大切な存在なのに、にしか感じない感情がある。


自分以外の人間とが親しくしているのを見ると、無性に気に食わない。
相手が誰であってもそれは変わらないことだ。


具体的に説明しよう。
俺は、高松がグンマに対して鼻血を出そうが何とも思わん。
だが、に対して出していたら、1秒とかからずに眼魔砲を撃ってしまう。

マジックとシンタローについても同様だ。




この違いは何だ?




同じ”大切”にも数種類あるということだろうか?

家族に感じる”大切”と、に感じる”大切”


違いと言える違いは、

と居ると心拍数が上がったり

体温が上昇したり

時々目が合わせられなくなることくらいだが・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そういえば、

何かの書物で、今の俺と同じ症状が起こる病いについて読んだことがある。

病名は”恋”というもので
相手を愛したときに起こる特殊な病気だったはずだ。

治すには、確か・・・・・・・


・・・・・」
「なーに?」






「俺と結婚してくれ」






治療法は当たっていたらしく、咽奥で突っかかっていたものが取れてスッと楽になった気がした。

俺が一人爽快感に浸っていたが、の方は真っ赤になって俺を見ていた。
口をぽかーんと開けっぴろげにしている顔は間抜けだが何処か可愛らしい。




「えっと・・・・結婚って、あたしとキンタローが?」
「ああ、そうだ」
「でも・・・・・・結婚って愛し合ってるやつらがすることだよ?」
「そういえば言ってなかったな。俺はお前を愛している」


さらりと言った俺の言葉には更に過剰反応を起こす。
口元を右手で覆って半身になり、俺から離れるように少し後ろにたじろんだ。



「どうして離れる?」
「だ、だって・・・・・・」
は俺が嫌いなのか?」
「そーじゃないけどッ!だけど・・・・恥ずかしいんだもん」
「恥ずかしい?何故だ??」
「何故って言われても・・・・」



普段とは違う
俺が一歩近寄ろると、同じ幅だけ一歩後ろに逃げる。

そんなことを繰り返すうちに、俺はを壁際に追い詰めた。
観念したのか、は俯き気味に下に視線を泳がしている。


どうしたのだろうか?

俺が言った言葉はそれほどを辱める言葉だったのか?




・・・・・・」
「狽チ!?」


肩より下まで伸びた髪にそっと触れるとビクリと体を弾ませた。
俺はそんなを宥めるように、絡めた指で柔らかい髪をといた。

それでもまだは俺を見ない。


その小さな体をそっと抱き寄せてみると、抵抗することはなく
そのまま腕の中にすっぽり収まった。



「あ、あのさキンタロー」
「嫌か?」
「別に嫌じゃないけど・・・・」
「それならいいか?」
「な、なにが?」
「このまま抱き締めていても」
「・・・・・・・・・・・・・・」



表情は伺えない。
いくら出会ったころより背が伸びたとはいえ、
未だ成人女性の平均より全然低いでは俺と軽く40cm差はあるだろう。

そのせいでの頭部は俺の胸にやっと届く程度だ。



「こうしていると落ち着く・・・・お前は違うか?」
「恥ずかしくてそれどころじゃない・・・」
「それは俺も同じだ」



熱いくらいの温もりが心地いい。

これが人を愛するということなのか・・・。


シンタローの中に居たときに女を抱く様子を見ていたが、シンタローはこんな気持ちを感じていたようには見えなかった。
あれがただの性欲処理であって、恋とは別物だということくらいは解るが・・・
俺はと以外あんなことをしたいとは思えんな・・・。


ということは、必然的に俺はと行為に及びたいと考えてるということになるのか?




「・・・・・・・・・・・・・・・」
「キンタロー、ちょっと苦しいんだけど///」
「すまない。お前を抱くときのことを考えていたら力が入ってしまった」
「は?抱く??」
「知らないか?セックスのことだ」



俺は思っていることを素直に言っただけ

だったのだが・・・・・・




ガツゥぅぅううン!!!





大人しかったが突如、俺の顎にアッパーカットを決めた。

あまりに突然すぎたのと、の攻撃が俺の予想を遥かに上回る速さだったせいで
俺は避けるということすら思いつかず、遭えなくの拳をくらった。



「キンタローのアホ!!死ね馬鹿ッ!!」
「ま、待て・・・話はまだ・・・・」
「あたしは話したくない!」
「だがこの後、特訓するんじゃ・・・」
「もういい、手空いてるやつに頼むから!キンタローなんか大っ嫌いだ!バカヤロー!!」



が手加減抜きでドアを叩き閉めたせいで、ドアは見事に完全撃破された。
特戦部隊の名残か?


の攻撃で吹っ飛ばされた俺は、
机の角に頭をぶつけて流血してしまい追いかけようにもすぐには追いかけられないでいた。

理由は流血によって出来た血溜まり。


総帥補佐の俺ともあろう者が床を汚して清掃業の方々の仕事を増やしたままにするわけには行かない・・・・。

俺は仕方なく、シンタローの予備の総帥服で血溜まりを掃除してからを追うことにした。
同じ赤で目立たないから、大して問題はないだろう。











「なんでキンタローが来てるんだよ!」


俺はの最終目的地の訓練場へと足を運んでいた。
広いガンマ団内を闇雲に探し回るよりも、来ると解っている場所に来ていれば確実だと思ったからだ。

考えは的中し、は来た。

相手になってくれる奇特者はやはり居なかったらしく、一人で。


「お前と会うためだ」

「・・・帰る」
「特訓はいいのか?」
「・・・・・・・・・・よくない」


出て行こうとしたを引き止めることは成功した。
問題はこの後・・・。



「さっきはすまなかった。よく解らんがお前を怒らせてしまったことは謝罪する」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「だが、お前も俺に返事をしていないだろう?」
「返事って・・・・・・」
「俺と結婚してくれるのか、してくれないのか・・・・」



の顔がまた赤くなる。


「どっちだ?」
「あ、あたし解んない!」


それまで睨んでいたのに、視線を逸らして叫ぶ。
それに納得できない俺はに近づき、背後のドアを閉めてそれに片手をついた。
目前下にを捕らえて。


「何故だ?自分のことだろう?」
「・・・あっ、あたし・・・・・・・・」


怯えているのとは違うようだが、いつもより縮こまった様子で口ごもっているの顎を掴み
少しばかり無理矢理上を向かせた。

しっかと視線を交えていないと言葉に重みが感じられないからだ。

俺がじっと見ていると、ようやくもしっかり言葉と言える返事を返した。



「あたしまだ強くなることでいっぱいいっぱいだし、
 こ、恋とかそーゆうの・・・分かんねーもん」



それがの答えだった。
やっと出てきたの答えに対して、俺はすぐに疑問を連ねる。



「恋をしないと結婚は出来ないのか?」
「た・・多分・・・・」


俺の質問に、やや自信なさ気に答える。

まだまだ疑問は多いが、これ以上問い詰めるのはが可哀想だ。
このくらいにしておこう。


これだけでも十分分かったことはある。



「なるほど。・・・が俺に恋をすれば、俺たちは結婚出来るんだな?」
「なんか違うよーな気もするけど、そーゆうことだと思う・・・」
「・・・・わかった。じゃあ始めるとしよう」
「な、何を?!」
「特訓に決まっているだろ?しないのか?」
「する!するする!!」


打って変わって溌剌とした声。
思い立ったように走り出して舞台に飛び乗り俺を呼ぶ。
そんなに俺は・・・・



「キンタロー早く早く!!」
「・・・・・・・・・・・・
「なに?」
「俺を愛すことは出来なくても好くことは出来るか?」




今日最後の問いかけを送った。


の答えは・・・・





「何言ってんだよ?あたし元々キンタローのこと好きだよ、友達だもん」






これで俺の話は終わりだ。

全てではないが大体は分かっただろう?



帰るときは受付に寄ってお土産を持って帰ってくれ。
それと、もし何か落としたものや失くしたものがあれば、それも伝えるといい。
後日、自宅まで郵送しておこう。


では俺はこれで失礼する。

が、俺を待っているからな・・・。












キミのハートは硝子球
色とりどりの輝きが僕の目を侵す
僕の心を侵す

恋の色はきっと禁断の色
そして 僕とキミの色は きっと熟した果実の色