今朝から皆の様子がおかしい。
バタンQ
たとえば獅子ま・・・・・ハーレム隊長。
「おい、マーカー」
「はい」
「今回の任務は相手部隊の牽制だからな。余計な真似すんなよ」
「・・・完全破壊はするな・・・ということですか?」
「そんなとこだ」
普段から意味不明な奇行の多い方だが、
この発言はいつもに増して意味がわからなかった。
たとえばG。
「・・・G、お前が食事当番なのにメニューが何故中華なんだ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・理由はない」
「そうか。別に私は構わんがな」
「・・・・・マーカー、お前はこれだ・・・」
「・・中華粥か。いまいち腑に落ちんが頂こう」
たとえばロッド。
「なぁマーカー、これやるよ」
「いらん」
「見もしねーで断るか普通・・・。いいからやるって、ほらよ」
「・・・・・・・オレンジ?」
「そ。お仕事の前に食っとけよ〜」
たとえばリキッド。
「リキッド、いつまでもダラけてるな」
「あ・・悪い」
「珍しく素直だな。ようやく反抗期が終えたのか?」
「狽チてめ・・・・・っとと」
「どうした、坊や」
「なんでもねぇよ。俺着陸の準備してくるな」
考えれば考えるほどおかしい。
あの隊長がマジック総帥から出された任務を細かく指示する事も。
あの祖国主義のGが朝食にわざわざ中華を作る事も。
あの軽薄イタリア人が特に絡まず、差し入れをするなんて事も。
あの沸点の低い坊やが沸いた怒りを自制する事も。
全て異常としか言いようがない。
私は戦場に降りてきた今もなお
不謹慎にもその事ばかりを気にしていた。
「マーカー?」
かけられた声にふと意識を取り戻す。
声の主と顔を合わすために私は足元・・・・とまでは言わないが、
己の腰元辺りを見下ろした。
無駄に近い距離でこちらを見上げているのは、今日のパートナーの。
さっきまで戦闘をこなしていたせいで、身体のあちこちにススをつけていて
鼻の頭まで黒くなっている。
こいつだけは、いつもと何ら変わりがない。
普段の通りの子猿っぷりだ。
「なんだ?」
「生きてる?」
仮にも任務中だと言うのに、何をふざけた事を言っているんだ。
この馬鹿者が・・・。
「死んでるように見えるか?」
「んー・・・・・・死にそうには見える」
なんだと?
「それはどういう・・・・・・・・っ・・・・!」
ぐらりと世界が揺れた。
「マーカーッ?!」
がくりと折れた膝が砂地につく。
脱力した上半身も、膝と運命を同じくする予定だったが
肩に当てられたの手によってそれは免れた。
「あっぶね!おいマーカー平気かよ!?」
予告なしに前髪を掻き分けられ
当てられた小さな手はヒンヤリと私の体温を侵食する。
「狽ーっ、すげー熱ィじゃん」
頭が・・・脳の芯が撃たれたように痛む。
身体の隋が己の炎のように熱く噴いている。
息を吸えば肺がそれを拒否しているようにすら感じる。
「もしかして・・・風邪ひいたとか?」
「・・・らしいな」
「らしい・・って自分のことだろ」
「ここ数年縁がなかったからな。・・・・気づかなかった」
目の前に霞がかかる。
足の力が抜けてしまったのか、己の意思に反して立ち上がる事が叶わない。
思いの他、重症のようだ。
そんなことを彷彿とする頭で考えていると
脇の下をの短い手が通った。
「・・・・何をする気だ?」
「決まってんだろ。飛行船まで運ぶ」
「いらん、先に帰っていろ。・・・・・一人で戻れる」
「うっせーやい」
が抱え込むようにして私の腕を持つと
それに伴って体が不安定な浮遊感に襲われる。
「ちゃんと運ぶから着くまでに死ぬなよ」
「死ぬか、馬鹿者」
「絶対だからな、死んだら殴って起こすぞ!」
そう言いながらは、自分の倍以上重い私を担いでいるというのに
特に辛い様子も見せず飛空艦へ向かって歩きだす。
足がひきづられているが、そればかりはどうにもならん事だ。
我慢してやろう。
不本意とはいえ世話になっていることだからな。
「・・・・・謝謝」
「謝・・・・・?なぁ、今なんて言ったんだ?」
この坊やには、歴史ある我が母国語は高等すぎたか・・・。
「・・・もっと丁寧に運べと言ったんだ」
「ちぇっ、病人のくせに注文多いんだよ」
の身体が適度に冷えだしてきた。
疼いていた熱が冷まされて心地がいい。
朦朧とする意識。
何に命じられることもなく、自然と瞼を閉ざした。
暗闇が視界を支配したが・・・不思議と明かりが見えている気がする。
いや、違う。
明かりではなく、光だ。
この小さな背自体が・・・・・暗闇に灯る光
輝き。
自分の異常を察知してくれる者達がいるのも悪くない・・・。
むしろ・・・・・
「・・・・・・嬉しいことだ・・な」
「マーカー?今なんか言った??・・・おーい」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「寝てるし・・・」
「〜!」
「そっちも終わったかぁ?」
「あ、ロッドとリキッドだ」
「あれま。マーカー昇天しちったの?」
「朝から調子悪そうだったもんな」
「リッちゃんも気づいてたんだ。まっ、あんだけ眉間に皺つくってりゃ誰だって気づくか」
「、マーカー担ぐの交代してやるよ。きついだろ?」
「ううん、へーき。オレが持ってく」
「んじゃ、さくさく飛空艦まで戻りますかね」
「「おうっ!」」
砂煙の舞う瓦礫。
一面の焼け野原。
死んでるのか生きてるのか分からない転がっている敵兵。
3人の和やかな会話が 乾いた空に消えていく。
少女に担がれている男の熱は、いつの間にか緩和されていて
その寝顔たるや安息そのものであった。
素直になんて言えない
だから感じ取って
僕の精一杯の愛情を 全身で
僕の命一杯の感謝を どうぞ受け取って
一人じゃないことが こんなにも嬉しいのは きっとキミが居るから