リスクは百も承知していたつもりだった。
だが、
理屈じゃなかった。
失くしたのは
命よりも大切だったもの
「出血が酷い・・ガーゼ全然足りませんよ!補充急いで!」
「O型の輸血準備!足らないようなら、その辺の団員から抜いてでも掻き集めなさい!」
「く・・・っ、心肺停止しました!蘇生術施しますよ!ぐずぐずしないで下さい!」
「電力が弱い!!早く電圧上げて、もっとです!早く!!」
ドクター高松のらしくないほど焦った必死の声が、
間近なはずなのにイヤに遠く聞こえる。
現実である感のない、触れ慣れない緊迫した空気。
医療チームの強張った表情も、私には縁のなかったものだ。
ここは、私の居るべき場所などではない。
帰りたい・・・己の居るべき場所へ。
戦場へ。
ガタガタと震える手を握り締め、己の頬に思い切りぶつけた。
口端から伝う赤い雫。
馬鹿な戯言を考え出した自分への罰だ。
・・・目を逸らすな。
両眼で、現実を、己の失態を・・・・・認めろ。
「しっかりしなさい、!!」
今、私の目の前で行われているの緊急手術は
全て私のせいだ。
「おい、マーカー!は!?」
無菌室作りのために部屋から追い出された私を待っていたのは
今しがた駆けつけただろう同僚達。
うちの一人、ロッドが私の肩を粗雑に掴む。
その表情はいつもの下卑た笑いでも、嘲た微笑でもなく
動揺と驚愕を露骨に見せていた。
「今・・・・ドクターが緊急処置を施している」
自覚できるほど震えている声。
なんと情けないのだろう、私は・・・。
「・・・・何があった?」
低い・・・落ち着いたハーレム隊長の声が
私の中に、数十分前の光景をフラッシュバックさせる。
『マーカーッ!!』
今も焼きついている、私の名を叫ぶの声。
そしてその直後・・・敵兵の散弾銃が、
の腹を直撃した。
撒き散らされる艶やかな鮮血。
堅い地面に無残に叩きつけられた黒いレザーに包まれた身体。
華が咲くようにフワリと落ちた鳶色の美しい髪。
そして・・・・・開かれぬ金の双眸。
一瞬にして蘇った恐ろしい記憶が
私の感情をかき乱した。
「・・・私のッ・・・私のせいです・・・・・・・・・・。私のミスでは・・・・・ッ」
「落ち着けマーカー!・・・最初っから、出来るだけ詳しく話せ」
「っ・・・・・・・・・はい」
隊長に頭を強く持たれ、乱れる心に支配されていた己をどうにか取り戻す。
濁流のように止め処なく溢れそうになる記憶を無理矢理に押し殺すため、
私は可能な限り深く・・深く・・・息を吸い込んだ。
少し醒めた頭で、事の経緯を思い出す・・・。
「・・・・私とがE地区に着いた時・・・・そこは敵兵と現地のゲリラが暴れていました」
「人数は?」
「少なくとも200・・・いえ、300近くかと」
「・・そうか」
続けろ・・・。
隊長に言われるがままに、私は記憶を穿りながら
その情景を稚拙に説明する。
「戦況は悪くありませんでした・・・。
が銃撃戦の中に身を投じ、その後ろから私が炎で援護し・・・
凡そ30分ほどでゲリラを沈黙させることに成功しました」
「30分って・・・その人数相手にそれなら絶好調じゃねーかよ!なら何でっ・・」
「・・・それは・・・・っ私が・・!」
「ロッド!」
「・・・・・あ、・・・・・・・すんません」
吼えるロッドを、隊長が一言名を呼び叱咤する。
「マーカー・・・・・・落ち着け」
「G・・・・すまない、大丈夫だ」
そして震える私の肩をGが強く・・・宥めるように押さえた。
再び長く深呼吸をし、精神をギリギリの平常状態に戻す。
「・・・残るは、敵国に雇われた残党を片付けるだけ・・・でした」
片付けるのには、きっと1時間もかからない。
そう思っていた。
そして、それは多分正しい憶測であったと思う。
殺さない程度の炎で物陰や建物内に居た者達をいぶり出し
そこをが迎撃する。
簡素だが完璧な戦略だった。
私が・・・
戦いに興じるに、見惚れさえしなければ・・・・。
は勇ましかった。
時には素手で、
時には服の下に隠された凶器で、
己よりも遥かに逞しい男達を
その細い身体で次から次へと薙ぎ倒していく姿は
決して「美しい」と呼べるような、戦い方ではなかった。
だが、
「美しい」などという言葉では追いつかないほど、その猛々しさ惹きつけられた。
弱い相手に満足出来ない獣のようなギラついた黄金の瞳に
武器を巧みに操り、踊るように地を駆ける四肢に
咆哮にも似た空気を震わす高らかな声に
戦いの最中だというのに、夢中で見入ってしまっていた。
「マーカーッ、後ろォ!!」
戦火に撒かれた一帯に響くの叫び声。
振り向けば、私を狙い銃を構える輩が居て
問答無用で炎で包囲すると、そいつは無様に怯え、許しを請い
私が手を下すまでもなく勝手に気絶した。
私は呆れて視線をに戻した。
汚く醜いものを見てしまった己の眼を清めたいが一心で。
けれど、
私を待っていた光景は、私が望むものではなかった。
むしろ・・・・一番望んでいなかった現実・・。
その後は・・・よく覚えていない。
周囲一帯を焼け野原にし、を抱えてここまで来た・・・ということしか分からない。
手加減などしている暇も余裕もなかったから
もしかしたら死人を出したかもしれん。
「お、おい、マーカー!!」
ロッドがある意味さっき以上に動揺した声をあげる。
私がそちらを見れば、声はおろか、表情まで驚きでいっぱいにしていた。
「なら絶対死なねぇから、涙なんて似合わねーもん流すなよ…縁起悪ぃだろ」
涙・・・・・?
そうか、私は泣いているのか。
・・どうりで目頭が熱いわけだ。
「マーカー。お前はもう休んでろ」
「・・・いえ。お心遣いは感謝致しますが、私は大丈夫です」
「うるせーよ、黙れ。隊長命令だ」
再度、頭部を隊長の手によって掴まれる。
髪をぐしゃりと乱され、一度だけ手の甲で叩かれた。
「大丈夫なやつがしてる顔じゃねーんだよ、今のてめぇの面は・・・。G、つれてけ」
「・・・・・・・はい」
Gに促されるまま私は特戦部隊の飛空艦へ続く廊下を力なく歩む。
すれ違った緊急手術を示す赤いランプが、やたらと目について
・・・気分が、悪かった。
「見てらんねぇな」
「・・そーっすね」
痛々しい顔つきでマーカーとGを見送っていたハーレムが
扉の上の緊急ランプを見やり、ぽつりと呟く。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・平気ですよ、あいつなら」
その楽観思考は一体何所から出てくるのか。
場に合わず軽く笑っている部下をハーレムは眉を顰めて軽く睨んだ。
視線に気づいたロッドは、困ったように笑いながら・・・
「隊長までそんな顔してっと、に馬鹿にされちゃいますよ」
「・・・・・・こーゆう時、一人くらいお前みたいなのが居ると感傷に浸りきれねぇな」
「へへ。お褒め預かり光栄です」
ハーレムは、ぱちんとウインクなど送るロッドに対して、
怒りやら呆れの感情が素通りしてしまい、代わりに根拠のない安堵感で満たされた。
「・・・・・だな。通夜みてぇな雰囲気してたらアイツにどやされるぜ」
「そうそう。笑って待っててやりましょーよ。あいつが起きるのを、全員で」
「おう」
「・・・問題は、あの仏頂面2人が素直に笑うかどーか・・・・・・」
「ククッ、違ぇねえな」
屈強な二人の男が、そんな会話を口ずさんでいた頃、
生死の境を彷徨っていたは
深い闇に引っ張りこもうとする腕のような何かを振り払い、それを殴り倒していた・・・・・
か、どうかは分からないが
脈と呼吸が奇跡的に回復し、息を取り戻したところだった。
機械的な音をさせて、開かれた扉。
反射的に身体がそちらを向く。
「ふぅ・・・・取り合えず一命は取り留めましたよ。
相変わらず根性だけは一級品ですね。死神が連れて行くの諦めるほどの生命力ですよ」
マスクとキャップをとって、血に濡れた手術着を脱ぎながら
中から出てきた高松。
その後ろには、呼吸器を取り付けられた傷だらけのが移動ベッドで寝かされていた。
ハーレムとロッドはベッドに慌てて駆け寄る。
「!おい・・起きろよ、!!」
「あんまり騒ぐんじゃないですよ。麻酔が効いてるんですから起きるわけないでしょう」
「・・・・・・だとよ。焦んな」
「・・・はい」
大きく構えていたのに、重症のの姿を目の当たりにして取り乱してしまった恥態に
バツが悪そうにから離れるロッド。
「おや、マーカーはどうしました?」
「あいつなら先に戻らせた。何か用があんなら言っとくぜ?」
「いえ。ただ・・・・」
「何だよ?」
「下手をすると彼のほうがより重症かと思っただけです。・・・精神的な方が、ですけど」
を運んできたマーカーの様子は、誰の眼にも安定した状態には見えなかった。
容姿や態度、口調からして冷たい人間だと思われがちなマーカーだが、
実のところそうでもない。
他人にも自分にも厳しいだけで
一度己の領域に踏み入る事を許した人間に対しては、深く厚い情を持っている人間なのだ。
それほど付き合いがあるわけではないが
職業柄か、彼自身の性格からか、高松はマーカーのそんな本質を見抜いていた。
「あいつなら平気だ。んなタマじゃねぇよ」
「そうですか。あんたがそう言うなら構いませんけど・・・」
「ったりめーだ、俺の部下だぜ」
自信に満ちた表情で笑う。
そんなハーレムに笑い返して「そうでしたね」と、納得する高松の柔らかな表情を打ち砕いたのは・・・
「なぁドクター。ちゃん貰ってっていーだろ?」
点滴と人工呼吸機材を肩に抱えて
を姫抱っこしているロッドだった。
「ッあんた何やってんですか?!まだ絶対安静なんですよ!!」
「へ?だってこの方が早く飛空艦まで運べるじゃん」
「これだから頭悪いやつは・・・ッ、ベッドに寝かせたまま運べばいいでしょう・・!」
「あ、な〜るほど。んじゃ隊長、先行ってますね〜v」
猛スピードでがらがらと移動ベッドを押し
廊下を駆けていくロッドを、呆れ果てながら見送った後
ハーレムは高松に一言礼を言って、走り去った部下を追って飛空艦に急いだのだった。
「おーい、マーカー!G!お姫様持って帰って来たぜぇ」
陽気なロッドの声が談話室に響いた。
ソファに座っていた2人は驚きと期待と不安が交じり合った思いで
ロッドが押す移動ベッドに近づいた。
そして見たのは、血色の悪くない顔で呼吸器に助けられながら
寝息をたてているの姿。
「ロッド・・・・・は・・・」
無事なのか?
聞こうにも、上手く続きが出てこない。
「安心しろよ。寝てるだけだ」
ロッドの後ろから、のそりと顔を出してハーレムが答える。
マーカーは湧き上がる安堵に負け、その場に膝をついた。
その様子を見て、少なからず安心したハーレムは、続けて言う。
「高松からの伝言は、が目ぇ覚ますまでは交代で寝ずに面倒みろ・・・っつーことだが
交代なんてセコい真似はなしだ。
・・・・・・・・おい、マーカー」
「はい」
「今回のはてめぇとの不始末だ。責任持ってお前はの面倒みろ」
「了解しました」
「んでもって、・・・・・・おい」
意識のないの耳元で強く囁く。
「お前はとっとと起きろ。・・・いいな?」
返答はない。
・・が、問いかけに対しての右手がぴくりと僅かだが動いた。
それに満足したハーレムは、マーカーに言い渡す。
「行っていいぜ」
「ありがとうございます、ハーレム隊長」
「おう。起きたら呼びに来いよ」
「勿論です。・・・では」
ハーレムに向けてしっかりとした会釈をした後、
ロッドと場所を交代し、マーカーはが身を任せているベッドを押した。
がらがらと鳴る足元。
マーカーは無言での私室に向かった。
そして、移動ベッドから備え付けのベッドに丁寧に寝かせなおた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
鉛のように重くなっていた口を開く。
「・・すまなかった。全て・・・私のせいだ・・・・・・」
再び震える声。
落ち着こうとしても、叶わない。
膠着していた感情が溶けて流れるように溢れ出す。
「・・・・・・、頼む・・・・・・起きてくれ」
早く。
早く起きて
早く起きていつものお前が見せてくれ。
マーカーの許しを請うような願いもむなしく、
はそれから3日間。
ただ、ただ、眠り続けていた。
同じくしてマーカーも・・3日3晩、眠ることも休むことも
食事さえもしないで、の傍にいた。
そして、が傷つき倒れてから今夜で
・・・・4度目の宵を迎えた。
マーカーは、の顔を濡らしたタオルで軽く拭いてやっていた。
丁寧に優しく・・・擦って赤くさせないように、綺麗に拭う。
軽く声をかけても、3日前まで当たり前だったあの声は返ってこない。
マーカーの精神はギリギリの淵まで来ていた。
「・・・お前は今どんな夢を見ている?」
これで答えの返って来ない問いかけは
いったい幾つめになるのか。
「夢など見てないで、さっさと戻って来い」
3日間取り付けられたままの点滴を
悲しく見つめながら、液体の入ったビニールパックを軽くへこます。
「こんなモノでは腹が膨れんだろ?私の料理が恋しくないか?」
ぬるま湯につけたタオルを絞り
そっと顔を拭いてやり、呼吸をしていることを何度となく確認する。
そして、その度に
弱々しい寝息に安堵する。
だが、それももう限界だ。
「・・・・・・・・・起きてくれ」
生きているだけということが・・・
こんなにも
こんなにも辛いなんて・・・。
知らなくて。
声が聞けない事が、くるくる変わる表情が見えない事が、
とびついてくる体温がなくて・・・・
が生きていても、幸せを感じられない自分が殺してしまいたいくらい憎らしくて。
「私は・・・こうなることを恐れていた・・・・・・。随分昔から・・・・ずっと」
語りだすそれはまるで懺悔。
「大切な者を作れば、いつか失う苦しみがある・・・それを味わうのが嫌で避けていた」
紡ぐ言葉は祈りでなく願いでなく、
心に浮かぶ想いの丈。
「だが・・・・ココに・・特戦部隊に入り、慕うべき方に逢い、心を許せる者達が出来た」
滑り落ちていくような感覚。
「大切な者を作ることが愚かだと分かっていても・・・私は感情を消し去る術を知らん」
生まれて初めて身体の外に出す想いは
自由を得た子供のように無邪気に、無防備だ。
「ならば・・・・護ればいい。そう思っていた、そう決心していた」
伝えたいが言の葉は届くことがなく
「しかし、私はお前を護ることができなかった・・・・。それどころか、私のせいでお前を危険に晒した」
届かないからこそ、飾らず誤魔化せず言の葉にできる。
気持ちを乗せることができる。
「私に・・・・・大切な者を作る資格は無いのかもしれん」
護る力が無いのなら
「それでも・・・・・・私は・・・・・・・・」
語るべきじゃない。
言うべきじゃない。
「・・私は・・・・・・・・・・・・・・」
やめろ。
「・・・・・・・・・・・お前が・・・」
やめろ。
やめろ。
やめろ。
「・・・・・・・・・・・・・お前が愛しくて、・・愛しすぎて・・・・・」
一度ついた炎は、
容易くは消えない。
むしろ、下手に弄れば・・・・業火に変わる。
「狂おしいほど、愛している・・」
そう。
あの時、お前に見惚れた原因は
己の中に燃えていたお前への猛ける愛情。
失う事を恐れるのも 傷つけた事を悔いるのも
他の者に感じぬモノの正体。
お前が特戦を出た時。
離れている間に思い出した時。
あの島で再会を果たした時。
再び共に時間を過ごしている時。
また背を預け戦いに赴いた時。
何時からかは分からない。だが、今確かに「愛」という名の感情が
私の中に存在している。
「愛している・・・・・、お前を・・・。何よりも・・・・・・誰よりも・・」
ぽたり、ぽたり、と落ちる点滴。
無音に近い機械音を出す人工呼吸器。
そして・・・腹に負った傷跡。
私の責任だ。
「目覚めたら・・・・・・・・もう一度、あと一度だけでいい。・・・・・私に、」
私に・・・・
「背を・・預けてほしい・・・」
今度は必ず、護ってみせるから。
失したものは、己の命より大切にしていた孤独。
代わりに得たものは、己の命を懸けて護るべき愛しき人。
「戦わせてくれ・・・・お前の後ろで」
今 2つの心が目を覚ます。
「・・・じゃあ次の任務もハーレムに頼んで、マーカーと組ませてもらわなきゃな」
「・・・・・・・・・?」
「ん〜・・?なにマーカー」
いつの間にか、ぱっちり開かれていた金の瞳。
しっかりと合う視線。
「・・・マーカー?」
「・・っ?!お前・・いつから・・・・・・」
「反応遅っ!?」
ワンテンポ遅れて驚くマーカーに反射的に突っ込みを入れる。
死に損ないのくせに随分と元気だ。
「いつから、聞いていた・・・?」
「えっと・・・”私に背を預けて・・・・”とかってとこからだけど」
「・・・・・・・そうか」
一安心とばかりに浅く溜めた息を吐き出して、
そっとの額から脳天にかけてを撫でた。
「・・・痛むか?」
「うん。腹空きすぎて痛い」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・馬鹿者が」
らしすぎる返答に今度は呆れの溜息が条件反射で出た。
「マーカー、飯ぃ〜」
「言っておくが、お前は数日間は病人食だぞ」
「えー!!」
「文句を言う暇があったら自分の怪我の状態くら把握しておけ」
「把握・・・?そんな酷ぇの?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・げっ!」
かけられていた薄手の布団をめくり寝巻きを少し肌蹴させて、己の腹部を見てみると
手術のリアルな痕がバッチリ見えた。
「・・・・・・・・・・・どうだ?」
「ん〜・・・まっ、そのうち治るっしょ」
ケラケラ無邪気に笑う。
「・・・・・・・・・何が良いんだ?」
「へ?」
「傷が塞がったら快気祝いに何でも作ってやる」
「やったぁ!じゃあねぇ・・・」
次々に食べ物の名を言っていく。
それを文句一つ言わずに聞くマーカー。
「・・・麻婆豆腐と炒飯だろ?でもって、あとは〜・・・・・」
「」
「ん、なんだよ?今更やっぱり駄目とか無しだからな?」
「・・・・・・・・・・笑え」
「・・・は?」
「笑ってくれ」
「こ、こんな感じ・・・?」
突然の頼みに戸惑いながら応じるの顔は
確かに笑っているが、いささか微妙な笑顔だ。
だが、マーカーにはそれで十分だったらしく・・・ふっと柔らかな笑みを口元と目元に浮かべた。
そしてドアに向かう。
「どっか行くの?」
「隊長達を呼んでくるだけだ。大人しく待っていろ」
「はーい」
がちゃりとドアが開く。
一歩外に出て締めようとしたが
少し迷った挙句、結局一度中に顔だけ入れて・・・
「すぐに戻る・・・・寝ずに待っていろ」
・・・そう言った。
言葉の裏側にある想いはただ一つ。
次に扉を開けたときに、また深い眠りにつかれていたら・・・
考えるだけで恐ろしい。
「・・・うん?わかった」
は不思議そうな顔をしつつも素直に頷く。
ああ、やはり私はお前が愛しくて堪らない。
改めて扉を閉めて、談話室に向かう。
気持ち足早に。
「ハーレム隊長、たった今が目覚め・・・ま・・・・・・」
談話室に踏み込むと大柄な男3人が机を囲って寝入っている。
どの顔にも目の下に濃いクマが出来ていて、顔色が悪い。
隊長に至っては相当酒の臭いもする・・・。
クマの濃さは、私とほとんど変わらない。
3日間、ほとんどの部屋に篭りっきりで気づかなかったが
恐らく3人とも、自室に戻らずココで過ごしていたのだろう。
まったく・・・
私を含め、ここは不器用な人間の溜まり場らしいな・・・・・。
どっと圧し掛かってくる疲労感と、
押し寄せてくる安堵感。
私は・・・・・そのまま、ソファのすぐ近くで崩れ落ちた・・・。
「・・・・・・いつまで経っても来ねーから何かと思えば・・・」
10分後、傷口が閉じきっていない腹部をシーツでぐるぐる巻きにして
マーカーらの様子を見に来たが見たものは
共に戦う仲間である4人が各々熟睡を貪っている光景だった。
「ハーレムとロッドは兎も角・・・マーカーとGまで」
自由があまり利かない身体を意地と根性で動かし、
どうにかソファに座った。
足元にはマーカーが倒れており、右にはロッドが寝崩れていて
左にはGが机に伏せて眠っている。
そして正面には隊長であるハーレムが飲みかけの酒瓶を倒して寝落ちている。
「はぁ・・・・いーや、あたしも寝よ・・・・・・・・」
ごろんと寝転がる。
トロンとまどろむ思考と視界。
つきっぱなしの電気が目に染みたけど、閉じてしまえば問題ない。
「みんな・・・おやすみぃ・・」
はふんと小さく欠伸を一度して、そのまま睡眠欲に従う。
傷はそれほど痛くない。
それはきっと、ここがとても温かくて、安心できるから・・・・。
大好きな人達と一緒に居られるだけで、心は強くなれる。
強い心は痛みになんか負けやしない。
怖くなんてなかった。
どんな真っ暗な中でも 帰る場所が見えてたから
聞こえたよ 何もない暗闇の中で
優しくて大好きな人の声が
とてもよく はっきりと
愛してるって言ってくれてるのが・・・ちゃんと届いたよ
だからあたしは 迷わず帰って来れたんだ
ちょっと時間はかかったけど
うん 迷わなかった。
だって あの声があたしの道しるべになってくれたから
あたしに語りかける大好きな人の声が 帰り道を教えてくれた
*あとがき*
真面目なマーカー夢でした。
師匠の涙が妄想したいがためだけに書いた作品なので、いろいろ滅茶苦茶です。
真面目夢は難しい・・・。