「「マジック様ーーーーッ!!」」



マジックの側近秘書であるティラミスとチョコレートロマンスは
いつになく大慌てで廊下を走っていた。

そして元総帥であるマジックの部屋にノックも無しに駆け込んできた。



「騒々しい、一体何事だ?」



やたら高そうなソファチェアにふんぞり返って、くるりと正面に向き直ったのは
何を隠すでもないが、ピンクスーツがトレードマークの元総帥マジック。

手にはお馴染みの息子の人形が抱かれている。



「た、大変です!」
「・・・帰って、きました・・・・ッ!」



いつもは冷静なティラミスと、自分に実害がない限り人事なチョコレートロマンス
その両者が、只ならぬ様子で誰かの帰還を知らせにきた。



・・・・・・・ということは




「ま・・・ま、まさかシンちゃんが・・・・?!」




コタローが目覚め、ここを逃げ出した。
そのコタローの捜索のため伊達衆を呼び出し、公平な人選により抜擢されたアラシヤマを例の島に行かせたが
消息、連絡共に途絶えてしまった。

そして数日前、残りのメンバーにも島へ出発してもらったのだが・・・・



連絡はなにもない。



今シンタローに帰ってこられては、誤魔化すことも何も出来やしない。




「い・・・・・・いえ、それが」
「帰ってきたのはシンタロー総帥ではなく・・・・・・」
「え?シンちゃんじゃないのかい?よかったぁ〜・・・で、誰なんだい?」



帰ってきたのが息子ではないことを知って、うきうき気分で
花を散らすマジックとは対照的に、秘書2人は未だ神妙な面持ちで、重々しく口を開いて
帰還した人物の名前を・・・・・・・・・・・述べた。










「「・・・・・・・・・・が卒業試験を終わらせました」」









ちーーーーーーん。









「ぬァアあああんだァってェぇぇえぇぇええッ!!??」




ここ数年出すことのなかった在り得ない大声がガンマ団中に響き渡る。
鼓膜を突き刺され、ぐわんぐわんと頭を掻き混ぜられたような衝撃に、最上階付近で
仕事をしていた団員は全滅だ。


だが、騒音の元凶であるマジックと、ティラミス、チョコレートロマンスの3人はそれどころじゃなく
神経が高ぶりすぎてて気絶なんてできないでいた。



ちゃんがぁッ、ちゃんが・・・・ああーーーー!!すっごく嬉しいけど嬉しくないーーー!!」
「落ち着いて下さいマジック様っ!」
「1年ぶりだよ!ちゃん!!会いたい、会いたいけど・・・どうしてよりによって今なんだい!!」
「ま、マジック様・・・」
ちゃんを止められそうなシンちゃんもキンちゃんも高松もサービスもジャンも居ない、盾に出来そうな伊達衆もいない!!」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
「あああああーーーッツ、どうしよう、どうしようッ!どーしたらいーんだぁ!!」



マジックは完全にぶち壊れ
秘書たちはそれを対処しきれず困り果てている。


そんな目も当てられない光景に終止符を打つべく部屋の自動ドアが開き
懐かしい人物が入ってきた。





「なーに騒いでんだよ、マジック」
「「「・・・・・・・・・・あ、」」」
「卒験終わったよ!ただいま!!」



眩しい笑顔を振りまく少女。
ガンマ団の紅一点、が帰ってきた・・・。



ちゃん!?ちゃんなんだね?!」
「あったりまえじゃん、どっからどー見てもあたしだろ?」
「顔は確かにちゃんだけど・・・・・だけど・・・・」



薄茶色長い髪に黄金の瞳、可愛らしく愛くるしい顔、小柄な身長に華奢な手足、
やんちゃで少年のような言葉遣い、それと同様の性格・・・・・
を構成する要素の大半はマジックの記憶の中のと変わりなかった。

唯一違ったところを一言で表すならば、それは・・・



ちゃん!パパの知らない所でどこの男と遊んだんだい?!」
「はぁ?!」
「だって、だってパパの知ってるちゃん、そんなにやらしい身体じゃなかったよ!!」
「ぬぁっ///!?」
「胸は手のひらサイズだったし腰は骨っぽかったし足だってもっと棒みたいだったもん!
パパ好みの身体になってて嬉しいけど・・・・・・・私の手で育てたかったのにィー!!」
「だぁぁ!泣きながら抱きつくなー!!」



泣き叫ぶマジック元総帥。
行動は子供のようだが、言ってることはセクハラ通り越して強制猥褻罪だ。

はティラミスらにも手伝ってもらい、何とかマジックから離れて
ソファに腰を下ろし一息つく。



「それで、ちゃん。君を傷物にしたクズは誰なんだい?」
「なぁマジック・・・それ何の話してるの?」
「隠さないでいいんだよ。ちゃんの処女の仇は絶対私がとってみせるからッ」
「狽オょっ///!?」
「あ!気に病まないでもいいんだよ、私は別に処女に拘らないからねv ちゃんと生涯を共に出来ればそれで・・・・・」
「何の話をしてんだって言ってんだよ!!」



机に足をついて、背中に隠していた日本刀を抜き放ち
マジックの咽元にぴたりと当てる。



「言っとくけど、あたしは遊んでなんかない!この1年ずっと卒験に費やしてきたんだ」
「そ、それじゃあちゃん、その身体・・・・成長期で?」
「そーだよ!!そーに決まってるだろが!」



顔に思いっきり似合わない汚い言葉尻。

首を絞められながらも、ああちゃんだなぁ・・・なんて喜びに浸ってるマジックは
もう・・・・・かなり手遅れだろう。




「そうそうちゃん、卒業試験の成果を見せてもらっていいかな?」
「突然まともに話するなよ」
「まともじゃない方がいいのかい?」
「・・・・・・・・・・・まともでいーや」



はつい今さっきのマジックを思い出しつつ
げんなりしながら荷物の足元に置いておいた麻袋をマジックのデスクの上に乗せた。



ちゃんのことだ。中身はきちんと揃ってるんだろうけど・・・・一応確認させてもらうよv」
「どーぞ」



安物くさい麻袋の底を掴んで、そっとひっくり返すと
中からオレンジ色のガラス球がゴロゴロ転がり出てきた。

よくよく見るとその1球1球にガンマ団のマークが入っている。

玉の数は全部で7つ。
ガラス球に入ったマークの数も1から7まで。


・・・・・・・・・・・・完全にパクりじゃねーかよ。




「うん。間違いないね、ちゃん卒業試験合格〜♪」
「はぁ〜っ!疲れた!本当に世界中に散らばってんだもんなぁ」
「この試験のために団員50人使って世界に散りばめたんだよv」



人材の使い方絶対間違ってるぞ。





「それで、いつ入隊させてくれるの?」



どっきーん!

き、き、来たぁ・・・・・・ッ!!



「えっと・・・・な、何のことだい?」
「なにって、特戦に入隊することだってば」
「それはシンちゃんに言わないと・・・・・ほら!私は元総帥だしねv」



よし、我ながら素晴らしいくらいナイスな回避方法だ!

元総帥の私に決定権が無いのは本当のことだし
人事異動や入隊は総帥のシンちゃんやがいないと居ないとv




「あ、そうだ!」
「(びくっ)な、なんだい?」
「あのね、ここ来る前にシンタローのとこ寄ったんだけど・・・・」
「シンちゃんの所に??」
「はいこれ、渡してくれって頼まれた」



がマジックに手渡したのは、何の変哲も無い事務用封筒。

かと思いきや、かなり厳重に封してある。
用心深く「開封厳禁」と太字で大きく書かれていたりする。

好奇心旺盛なが中を見ないようにするためだろう。


封筒は少し不自然によれたりしている所を見ると、何度か破って中を見ようとしたらしいが
破いた形跡が無いので、どうにか思いとどまったようだ。



「シンちゃんからの手紙・・・?ラブレターかなv どれどれ・・・・・」



厳重すぎる封書をどうにか開封したが、中に入っていたのは3つ折になってる紙が一枚。
しかも便箋ですらなく、ただの業務用レポート用紙。

仕事の合間に秒単位で書いたこと丸分かりだ。

内容はと言えば・・・




親父へ

にはなーんも言ってねぇから、親父からハーレムのこと話してやってくれ。
頼りにしてるぜv





「シンちゃんのバカーーーーッ!!」


こういう時ばっかり甘えちゃって・・・もぉ、いつまで経っても我侭さんなんだから!
パパ困っちゃうよ。
でも俺様なシンちゃんも可愛いなぁvV

あー、会いたいよぉ・・・シンちゃーーーん!!



「手紙なんだったんだよ?」
「えーっと・・・シンちゃんから私へのラブレターだったよv」
「ふーん、マジック宛ての請求書かなんか?」
「しくしく・・・ちゃんが冷たいよぉ・・・」




どこからともなく取り出したお手製の人形を抱きしめて泣きすがる。
人形は可愛らしく微笑んではいるが、本人はそうでもなかったり。




「んで、特戦v」



期待いっぱいで目をキラキラさせるにせがまれ
マジックは・・・・腹をくくった。

そして満面の期待を裏切ることになる事実を告げた。
出来る限りの怒りを買わないように、限りなく軽いノリで。



「特戦部隊はね・・・・・・・・・無いんだv」
「無い?・・・・・・・ああ!任務で居ないのか。じゃあ帰ってくるのいつ?」
「違うんだよちゃん!本当にもう無いんだよ、特戦部隊は」



遠まわしな言い方では通用しないことは分かってた。
頭はいいはずなんだけど、どうにも思考回路が単純な子だからね。

今度こそ覚悟を決めて、はっきりと伝えた。


特戦部隊の・・・・・・・・・・・・・・離脱を。



ちゃんが旅に出てから3ヶ月後くらいに・・・・・・・その、・・・離脱しちゃったんだよ」
「・・り・・・・だつ?」



は頭がいい。
最初は頭がちょっと足りていないと思われていたが、それは違っていた。
物事についての常識や一般的な単語自体を知らなかっただけで、頭が悪かったわけではなかった。

その証拠に士官学校での成績は筆記も実技並みにこなしていたし
何より元がスポンジのようだったので、知識が入ること、入ること。


したがって、今では離脱の言葉の意味だって分かっている。





「うん、前々から話は上がってたんだけど、ついにシンちゃんとハーレムが大喧嘩して・・・・・・・ってちゃん?!」



説明の途中で、目の前から只ならぬ・・・・・と言うか
キレた時のハーレムに、いやシンタローだろうか?だが、どことなくサービスにも似ているような・・・・
とにかく色んなやつが、ぷっつんした時とそっくりな気配が、轟々と漂ってきた。


ぶっちゃけ、ただ事じゃない。



「何だよそれ・・・・・あたしの卒験だけあんな無茶苦茶なのだったのも、それバラさないためかよ・・・・」
ちゃん・・・・泣いてるのかい?」



そんなに声をかけようと、その薄い肩を掴むが





「あっちちちちちちィッ!!」





の身体自体は発火物のように高温を発し
逆に足元からはドライアイスを水に入れたときのような白い冷気が立ち込めている。

まずい・・・・・本格的にまずい。




ちゃん能力を使うのだけは止めなさい!お願いだから!」



このままでは下手をしたら最上階が丸ごと溶けてなくなり
下の階にいる団員達が凍え死ぬかもしれない・・・。



「パパ達が悪かったから!勝手に特戦部隊離脱させたことは心の底から謝るよ!!だから能力使わないで!!」



まさに命がけの訴えかけだが、はそれに答えない。




ちゃん落ち着いて・・・!そうだ、美味しいケーキがあるんだよ!食べるだろう?」
「いらねーよ!」
「ひぃィっ!!」



五神○のを左手に握り、思いっきり力を込め、その球体を木っ端微塵に割った。
オレンジ色の硝子の欠片が細かい音をさせて床に散らばる。

今度は右手を残りの6玉にかざし、ほとんど跡形もなく溶かしてみせた。
僅かに残った液状のガラスは床に垂れた瞬間、逆つらら状態で凍ってしまった。

旅に出る前よりも確実にレベルアップしている・・・。



食べ物で釣れない以上、に暴力の振れないマジックに勝ち目はない。



マジックに残された手段は一つ。
もう何も言わずに、の神経を逆撫でしないようにするだけだ。

よって、部屋の隅っこで小さく縮こまっていることにした。


ちなみに残りの3隅のうち2隅は秘書2人が使用中だ。







「シンタロー、あたしの応援してたくせにッ!」


カキーン!!


「キンタローとグンマだって、訓練付き合ってくれてたじゃんか!!」


じゅおぉぉぉおッ


「高松なんか、いつもあたしに強くなれ!って言ってたのにッツ」


ずがーん!がらがらがら・・・・




マジックから共謀者を聞き出してからと言うもの
早20分ほど、ずっとこの調子だ。

部屋の室内の物体といえる物体全てを溶かしたり凍らせたり大破させたり・・・・
今溶かして蒸発させたソファが、この部屋にある最後の家具だった。



この場合、物体がなくなったら次に破壊しようとするものはなんだろうか?



決まっている。
首謀者であるマジック自身だ。




ちゃん、こ!ココは話し合わないかい?ゆっくり話し合えば良い解決策がきっと・・・・」
「・・・・・・・・・・・らい」
「え?」



マジックの数歩手前で立ち止まり、小さな声で何かを言ったが
あまりに声が小さすぎて聞き取れなかった。




「すまない、よく聞こえなかったから、もう一回・・・・」
「シンタローもマジックも、みんなみんな大っ嫌いだっつったんだよ!!」
「え?ちょっ、ちゃん!?」




ぎらりと見開いた眼でマジックに精神的攻撃をくらわす。

まだ幼い少女がこんなに怒るほどのことをしてしまったんだと
マジックの中の良心が、これでもかというほどチクチク痛む。

ここで一発泣きでもしていれば、マジックの良心がえぐられていただろうが
部屋を出て行く最後の最後まで・・・・の金の瞳が涙で濡れることはなかった。



















「あーもおッ!マジに腹立つ!!」



怒りに震えるは自室に来るなり、クローゼットを勢いよく開け放ち
着ていた着衣を上から順に全て脱ぐ。


予備の強化ウェアを身につけると、奥の方にまとめて掛けてあるズボンを見つけた。

それは特戦部隊の隊服のズボンでサイズだけは豊富に揃っている。
その中で適当に取ったものを膝丈で破いてハーフパンツにして穿いてみた。

脚にぴったり張り付く皮の材質感が妙に懐かしい。
サイズはちょうどいいようだ。



「うん、やっぱ短いほうが動きやすいよな」



そして今度は、更に奥から上着を掴みだした。

隊服とは違うマジックがデザインしたものだ。
これも沢山のサイズを作ってもらっておいたので、今の自分に一番合いそうなものを見定め袋から出した。

ズボンより少しだけ固めのレザーに袖を通し、ジッパーを胸の下辺りまで閉める。


下の引き出し部分に入れていたブーツの中から、今履いてるものより1サイズ大きいものを取り出し
それに足を突っ込んだ。
少し大きいが、このくらいなら問題ない。

両足の紐とベルトをぎゅっと締めて、最後に髪を結っていたゴムを解いて手櫛でざっと整えて


あとは一張羅と、仕込みきれてない分の武器を詰めたリュックを持って終了。



「さぁてと、ちゃっちゃと仕返しに行こっかな」




不適に笑い、長い絹のような髪をなびかせ、私室を出る。
向かうはコンピュータ室。
そしてヘリポート。










その数分後ー

ガンマ団本部は謎のコンピュータウイルスが発生&無限増殖。
それは遠征中のシンタローとキンタローの居る軍用艦でも巻き起こっており、艦内は一時期凄まじい混乱になった。
ウイルスの正体が分かる頃には、本部のヘリポートで一台のヘリが飛び立っていた。
操縦してるのは勿論・・・・・



『親父ーー!!のやつ出せ!!』
「それが何処にも居ないんだよ!」
『こっちはあいつのウイルスのせいで一旦全面停止したんだぞ!!あの馬鹿ガキッ』



戦艦からの通信で、状況を熱烈に語るシンタロー。
どうやら大打撃を受けたようだ。



「マジック様!騒動の最中に無断でヘリを使用した者がいます!!恐らくかと・・・」
「よくやった!ティラミス、チョコロマ!!2人ともちゃんを連れ戻しに行くよッ」
「「はっ!!」」
『絶対逃がすなよーー!!』



名前も知らない団員の報告により、マジック直々にヘリポートに向かう。
とんでもない仕返しをかました悪戯娘を捕らえるために・・・。






















「いーやっほーい!!」



初めて操縦するヘリを思うままに操り快適な空の旅を体感している真っ最中。
だが、追いかけてきたマジックの乗るジェット機が、すぐ後ろにいたりする。



ちゃーん!!怒らないから帰っておいでぇー!!』



こっちが通信機を切っているからスピーカーを使ってこちらを諭そうとしているのだろうが
にその手のことは意味がない。

人から少しなにか言われるくらいで、はいそーですか。と聞くような典型的良い子ちゃんではない。
どちらかと言えば、その真逆に属している。
という人間は、自分のことは全て自分で決めなきゃ気がすまないタイプなのだ。




『戻ってきたら何でも好きなもの食べさせてあげるよーー!』

ちゃーん!!』

『返事しないと撃ち落しちゃうよーーーーぉ』




は一切合切を無視していると、背後のジェット機は、マジックの最後の交渉を実現させてきた。



バババババババババッツ!!




至近距離の攻撃も紙一重でかわしきり、徐々に目的地に近づく。

コタロー、特戦部隊、伊達衆・・・・みんなが消えたのは
コンピュータ室で見た地図によれば、この辺りのはず・・・・。




自分の座っているメイン操縦席を下向きになるようにヘリを傾けながら大きく旋回して
静かな海の様子を見渡すと、東に波の乱れを発見した。

レーダーのスイッチを入れると、何やら大きな魚群の影もある。
空も曇ってきて何かがありそうな雰囲気はばっちり。

あとはどうやって下に行くかだけど・・・・



「っ!いーこと思いついた!!」



にまっと笑っては早速思いついた作戦を実行するため、操縦をオートに切り替え、作業に取り掛かった。



















「操縦をオートにしたようですね」
「どうしますか?撃ち落すなら今がチャンスですが・・・」
「うーん、撃ち落して万が一のことがあったら大変だからねぇ・・・・一先ず様子を見よう」



暫しマジック側のジェット機ものヘリを監視するため、上空待機に切り替えた。
数分間、何事もなく過ぎたが
不意にのヘリが急上昇しだした。



「追え!!」
「フィード数は目測により判断、上昇します!」



スピード、性能、飛行能力、技術、経験・・・・全てはこちらに分がある。
すぐにヘリの後方やや上につけて、様子を伺うとヘリの側面ドアが開いて海に向かってが飛んだ。



「下降だ!パラシュートを開いたらこの機体を真下につけろ!!」
「「はっ!」」



ティラミスとチョコレートロマンスは息のぴたりと合った連係プレイで
マジックの指示通り、が落ちてくる真下に機体を移動させた。

そしてマジックが天井を開き、両手を広げて花を飛ばしながらを迎え入れようと上を見上げると・・・・・・




「狽ネっ!?」
「どうなさったんですか、マジック様?」
「しまった!こっちはフェイクだ!!」



パラシュートをつけて落ちてきたのは、軍用ヘリに積んであるメンテナンス用具の箱と膨らませた黒いビニール。
確かにこれならと同じくらいの大きさと重さになり、上から遠目で見たのでは間違えるだろう。。


してやられた。




「それじゃあは一体何処へ・・・・・・・・・・」
「こっこだよー♪」




ティラミスの謎に答えたのは、紛れもなく本人の声。
その直後、とてつもない風が横から吹き込んできた。

3人がそちらの方に慌てて顔を向けると
驚くことに、が機体の扉を開け放ち、突っ立っていた。


チョコレートロマンスが「そんなバカな」と上空を確認するが
そこに先ほどまであったヘリはなく、その代わりに墜落する直前のヘリを遥か下で確認できた。



ちゃん!!どうやってそこに・・・」
「飛び移った」
「「(そんな無茶苦茶な・・・・・;)」」



秘書2人は力の限り心の中で突っ込むが、
それがに届くことはない。



「でも良かったよ。戻ってくる気になったんだねvV」
「戻らないよ」
「そうだよね、ちゃんはパパのこと大好きだから家出なんて馬鹿な真似・・・・・・・・さっき何て?」
「戻らない。あたしはガンマ団員にはならない」



依然、意志の強い瞳を輝かせながら、きっぱりと言い放つ。



「卒験も終わったし、もう士官学生でもない」
「わわわっ!そんなところに寄りかかったら危ない!!」



今の状態からほんの少し、身体を後ろに傾けるだけで
の体が宙を舞うだろう・・・。

パラシュートもつけずにそんな事したら、良くて全身骨折・・・悪けりゃ即死だ。



「あたしは特戦部隊のだ」




背中に背負っている太陽に負けないくらいの眩しい笑顔に
マジックは心臓のど真ん中を射抜かれ、数秒ほど見惚れてしまったが
どうにか正気を取り戻し、何かを企んでるであろうを止めようと必死になる。




ちゃん!待つんだ!!お願いだから待ちなさい!!」
「や・だ」
「やだ・・・ってちゃん、パパの言う事を・・・ッ!!」
「ばーいばーいッ!!」




嫌な予感が背筋を這いずり上がってきた。
マジックは中高年とは思えぬ機敏な動きで駆け寄ろうとしたが
僅かに届かない距離があるうちに、は・・・飛んだ。


伸ばされた手は、落ちていくその身体を引き寄せることはできず、むなしく空を薙いだだけ終わった。


それでも最後の最後に・・・・・・




ちゃーん!!貞操だけは守るんだよーーー!」
「あははは!はーい!!またなマジックーー!」



の身体はどんどん海面に近づき、数秒とせずに落下地点に水柱がたった。
胸の中で踊る想いと同じくらい高い水柱が。

色あせることの無い宣戦布告を実行するまで、あと数時間・・・。


















閉じ込めてた欲望は 海すら突き抜け君に向かって走り出す

逢いたくて 逢いたくて
君を求めて暴走してしまった この想い

もう君にしか受け止められない
その両手でしっかり抱きしめて あの頃と同じように・・・

大好きな君に早く逢いたい