「リぃいいキぃーーッドぉぉおおおーーーー!!」
この世のものとは思えない程の叫び声。
今日もまた、どうしようもないような一大事を抱えた少女がやってくるようだ・・・。
家の中でオヤツ作りに使った鍋やらを洗ってる真っ最中のリキッドは
その声の主を一瞬で思い浮かべ、今日の夕食のメニューを考えていた頭の中を
悲しみと喜びでびっしり隙間なく埋め尽くした。
「あの声は間違いなく・・・だよな」
「うん。さんだね」
「お客さんだぞー。お持て成しの準備だリキッド」
「おう。おやつの準備は万全だぜ」
「うむ。いい手回しだな、んばば」
「わぅん」
でも、この分だとまたドアぶっ壊して入ってくる・・・。
しかしながらに逢えるのは嬉しいから、まあ仕方ない。
メリットとデメリットは常に一心同体のもの。
ドアを壊される事は既に完全に諦めたリキッド。
大人しくスポンジで鍋をごしごししながら、痛快にが訪ねてくるのを待つことに決めた。
・・・・のは、いいのだが。
「・・・・・・・・・あれ?来ねーな」
「どうしたんだろうね」
いつもだったら声がしてから三秒とせずやってくるのに。
どうかしたんだろうか?
「家政夫、ドア開けてみてよ」
「なんで俺が・・・」
「まさか僕にやらせる気?さんが突っ込んでくるかもしれないのに」
「俺ならいいと?」
「当たり前だろ。馬鹿」
女王のようなロタローの態度にはもう腹も立たないリキッドは
手の泡をぴっぴっときってタオルで拭きながら
少々心配しながら恐る恐るドアを開いてみた。
「、いるのか・・・・・・・・って」
ぴきん。と、
自分からそんな音が聞こえた気がした。
ドアノブを握ったまま硬直したリキッドが
その視線の先で見たものは・・・
「にーたん、だぁれ?」
「ふぇ・・・こわかったよぉ」
「おい、ここはどこだ」
「・・・こんにちは」
見慣れぬ顔ぶれ。
いや、顔自体はかなり見慣れているはいるのだが・・・
嫌な予感が背中を闊歩した・・・なーんて
そんな謙虚なもんじゃない。
足の爪先から一番高く逆立ってる髪の毛までを四足歩行で全力疾走・・・って言う方が限りなく正しい。
そんな感じだ。
「リキッドぉー。頼む、助けてぇ」
両手両足に事件以外の何物でもないだろう重りを携えて
全速力で此処まで走ってきたと思われるの悲痛の訴え。
何だか詳細は一切分かりません。
・・・・が!!
「・・・・・・コレハ何事デスカ?」
一大事なのだけは確かです。
「さあ、説明してもらおうか。」
「いやぁ・・・・・そのぉ・・・・こんなワケです」
「そんな説明じゃ分かりません!!」
「リキッドもさんも半泣きで語り合うのやめなよ」
「いい大人が見苦しいぞ!なあチャッピー」
「わおーん」
「「んなコト言ったって泣きたくもなるだろ、この状況ッ!!」」
二人が口を揃えて絶叫するほどの状況・・・。
それはこの場のちみっこ人数に深く関係している。
まずは我等が無敵のお子様パプワくん。
それに記憶喪失中のロタロー。
本日はその二名に加えて
「リキッドにーたん!ケーキおかわりぃー!」
一目でヤンチャと分かる金髪青眼のちみっこ。
「あまくておいしいねぇーv」
ハニーブロンドに垂れ眼で愛嬌満点のちみっこ。
「牛乳なんていらない。引っ込めろ」
人形のような容姿に反して高慢キチなちみっこ。
「・・・・・・・・ごちそうさまでした」
大人しげで口数も少なめの良い子そうなちみっこ。
総勢六人のちみっこ。
ついでに永遠の20歳と、今が旬の17歳。
珍しく若々しい臭いに満ち溢れていて
加齢臭なんて欠片としない。
「「・・・・・・・・・・うううぅぅ」」
「はっはっは。今日のとリキッドは仲良しさんだな」
「もう!!二人して泣き出さないでよ!!」
「わふぅ」
何にしても年上二人が復活するまでは
まだ些か時間がいりそうなものだ。
数十分後。
「でまあ、泣いてても仕方ない!こーなっちゃったワケなんだけどさ・・・」
「お・・・・おう」
「リキッド。今はあたしの背後と膝を気にするな、気にしちゃ駄目だ!」
「でもよぉ・・・・・」
「気にするなったらするんじゃねぇ!!」
強く握った拳は力が有り余ってるせいかフルフル小刻みに震えている。
その鬼気迫るの様子にリキッドも右下の方向に視線を落として
ほんのちょっぴり恐怖に震えていたりいなかったり。
何故リキッドがやたらとの背後と膝を気にしてるかと言うと・・・
「ねーたん、遊ぼうよー。遊ぼう遊ぼう!!」
「おねぇちゃん、うさたんー。ぴょんぴょんしてぇ」
「座りごこちはまあまあだが、あまり動くな。ゆれる」
「・・・・・さん、寝てもいい・・ですか?」
向かって右は金髪青眼のちみっこにノースリーブの袖口を引っ張っられて
反対側では垂れ眼のちみっこに髪の毛を高く結い上げられられて
両膝には黒髪のちみっこ両名がちょこんと座りついていた。
最早おもちゃかソファと言っても間違いではない。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「リキッド。何だよ、その眼」
「いや、何つーか・・・・・ファイト」
「一言で終わらそうとするなぁ!」
「そう言ったって・・・・じゃあ、聞くけどよ・・・やっぱり、このちみっこたちって・・・・・」
一人一人を確認するようにじっくり見回す。
見れば見るほどよく似ている。
例えばあの特徴的でロタローのそれとよく似たその髪と眼。
例えば甘く人懐っこい笑顔を振り撒くその愛嬌のよさ。
例えば将来さぞ性格が悪くなりそうなその言動と態度と眼つき。
例えばの持ち物だった熊のぬいぐるみを抱くその満足加減。
似ているって言うよりも、そのまんま。
ああ。
信じたくない。違ってほしい。
ただのそっくりさんであってくれれば・・・・
それはそれで面倒だけど、どんなにマシなことか。
・・・・・・そうかッ、その手があったじゃないか!
「!!俺すっげーイイこと思いついたぜ!!」
「なに?!なになになにッ?!」
リキッドがまるで近所の奥様方と女だけの温泉旅行に行く主婦のように顔を輝かると
は大きな眼を更にカッと開いた必死の形相で話にかぶりつく。
藁にもすがる思いとは正にこんなことを言うのだろう。
「実はあいつら皆にすげぇそっくりご子族がいらっしゃって、そのご子族が揃ってパパに逢いに来たって展開はどうだ?!」
「いいね、それイイ!!そうだ、そうしよう。それがいい!」
「だよなぁ。まさかだって在りえないよな。うんそうだ。そういうことだ」
「うんうん。あいつらだっていい歳こいてるんだし、子供の一匹や二匹いたって可笑しくも何ともないよな!」
「おう!そうだ。そういうことだ」
「んじゃ一件落着ってことで、リキッドこいつらよろしく!!」
「待てぇ!!逃げるんじゃねぇーー!!」
眼にも止まらぬスピードで逃げ出そうとしたを
リキッドは普段なら絶対に出す事が叶わない音速域で動き
逃げる襟後ろをぐわしっと、持っている以上の力の限りで引っ掴んで何とか防いだ。
・・・二人ともめちゃくちゃ必死すぎて、いっそ哀れにすら思えてきた。
「だって息子ってことで話ついたじゃんか!あとはベビーシッターに任せるよぉ」
「だだっこ言うな!それに俺はベビーシッターじゃくて家政夫だ!!あ!違う、赤の番人だ!!」
「・・・はぁ〜あ、」
ぎゃーぎゃーと大人気なさ過ぎるほど騒ぐ二人を見かねて、
可愛らしい口から呆れの溜息を漏らすロタロー。
そして妙に大人ぶった生意気な眼つきで二人(特にリキッド)を見る。
その視線は見上げてきているにも関わらず、何処か見下すような・・・
「さんもリキッドもさー。いい加減認めなよね」
優雅にアフタヌーンティーを楽しみながら
「この子たちって、おじさんたちなんでしょ?」
二人が認めたくなかった核心をものの見事に突き刺した。
「・・・・・・・・・・・・・・・そうだよ。そいつら全部本物だよ」
長い沈黙を破って、は腹をくくったかのように潔く白状しすると
それをまだ認めたくないのか、リキッドの方は
未だに顔色が思わしくないながらも、深く息を吐き出した。
「やっぱり・・・・・・で、何がどうなってこんな事になっちまったんだ?」
問いかけに対して、一瞬。
ほんの一瞬肩を震わせた。どうやら心当たりはあるらしい。
「・・・いや、なんつーか・・・・実はさぁ・・・・・」
コトの始まりは、ほんの一時間前。
が森の奥にある果樹園で果物を心行くまで堪能していた時だった。
「きぃーキィー」
「くぃーん・・くぃーん・・・・」
「ん?今の鳴き声って・・・」
南の方角から聞こえるナマモノの鳴き声。
この島で人とは違う言葉を使っているナマモノは数少ない。
声の居場所を探りながら南へ南へと移動すると、
「あ、やっぱりテヅカとタケウチだ」
発見したのは薬屋の二匹。
タケウチくんは木の上を見上げて、短い腕を伸ばして宙をかいていて
テヅカくんはタケウチくんの声援を一身に受け、必死で身の丈ほどの実を採ろうと頑張っていた。
だが、その実を吊り下げている茎はなかなかに太く、見た目にもしっかりしている。
そして採取しようとしているテヅカくんに、実を採るだけの力があるとも思えなく
要するに、の目には一向に採れそうもなく映った。
「くぃーん(さん)」
「きぃキぃー(手伝ってください)」
「あの実採りゃいいの?いいよ、任せとけ。危ねぇからテヅカは退いてろよー」
の言葉に従って、パタパタと小さな羽を前後させ、
タケウチくんの横に降り立つテヅカくん。
は服の下から一丁の使い込まれた慣れのある拳銃を取り出す。
手にした瞬間、目測だけ狙いを定めパンッと軽い音だけをさせた。
早撃ちにも関わらず、狙いは実の茎にビンゴ。重力に逆らうすべなくの手中へと一直線に落ちてきた。
「ほいよ。気をつけて持って帰れよ」
易々とキャッチした、そのごつごつした毒々しい色の実を
足元の二匹に手渡した。
二匹の小さなナマモノは、協力してそれを受け取り
代わりに違うものをに差し出した。
「きぃー(ありがとうございました)」
「くいーん(これはほんのお礼です)」
「え、いいの。ラッキー」
受け取ったのは白い布に包まれたなにか。
パッと見ではコンペイトウのように見えたが摘んでみると
いとも簡単に砕けてしまい、指にキラキラした粉を残しただけだった。
興味本位でくんくんと匂いをかいでみれば、ほんの少しだけ、幼児向けの薬と同じ香りがした。
「これ薬?」
「くぃーんくぃーん(はい。あ、さんは食べない方がいいです)」
「なに、ヤバいもんなの・・・?」
「きぃーキィー(いいえ。でも同居人の方々が食べれば面白い事が起きます)」
「ふーん。面白いことねぇ・・・まあいいや。もらっとく!じゃあな」
包みを潰さない程度に握り締めて家へと急ぐ。
面白い事というのが何なのかが知りたくて。
試してみたい衝動がの頭を支配する。
何が起こるかなんてリスクは全く考慮せず。
面白い事とはなにか。それだけ。
その後のことなんて、この単純思考で考えが及ぶわけがない。
「ただいまぁーッぶ!!」
「おっかえり、ちゃんv 俺さみしかったぁ〜」
「こんな暑苦しい出迎えいらねーよ!引っ付くなロッド!!」
ドアを開け中に入ったは待ち構えていたイタリア人の胸に突っ込んで
鼻を思い切りぶつけたようだ。
しかも抱きしめながら、腰やら尻を撫で繰り回しているから抜け目がない・・・。
「ん〜v たまんねぇよな、この感触。小尻もまた具合よさ気だぜぇ」
「ひぃぃぃ!擦るな、マジで止めろ!」
「でももーちょい肉ついてきたら最高なんだけどなー。ケツだけじゃなくて太股にもv」
「いちいち揉んでくるんじゃねーー!!」
「んごっ!?」
羽交い絞め状態だったために手足は出せなかったが生憎頭は出せたらしく、
痛烈なヘッドバッドがロッドの顎を砕いた。
その隙にひらりとロッドの傍を離れキッチンに向かうが・・・
「遅かったじゃねーかちゃんよぉ、愛しの隊長様への土産は?」
「あるか、んなもの」
「なに、ないの?んじゃお前でいいわ」
「は?ッぎゃあ?!」
ソファに寝そべっていたハーレムは素早くの足首を掴み上げるのと同時に
そのまま徐に立ち上がった。
故には逆さづり。
「くそっ!降ろせよ馬鹿隊長!!」
「お、ヘソチラ。ほーれほれ」
「う、ぎゃはは!ふぐぅ、・・くすぐったい!!ひははははは!」
「この調子で胸チラするまでやるかーv」
「調子こいてんじゃねーよ!!セクハラだ!!」
「どわっ!てめぇ麗しの隊長様に何しやがんだー!!」
「ハーレムの何処がどう麗しいんだっつの」
自分の足をしつこく掴んでいるハーレムの手を
逆の足で蹴り飛ばし強引に自由を手にし床に右掌をついて、まるで忍者のように着地したが・・・
ごつっ!!
「でッ?!」
「帰ってくるなり喧しい」
「だからって殴ることねーじゃんか!しかも包丁の柄で!!」
エプロンをつけたマーカーの手の中にあるのは彼のマイ包丁。
しかも攻撃力の高い重めの中華包丁。
「なんだ?刃の方がよかったのか。それならそうと・・・」
「んなワケあるか!」
「案ずるな。私の手にかかれば痛みすら快感になるぞ」
「ぎゃーー!何考えてんだよッ、笑いながら包丁舐めるな、この流血マニア!」
「ほう。それは私のことか?」
「うわわわっ、待った!マーカーちょい待て!!怖ぇ顔して近づいて来るなー!!」
後ずさることに限界を感じたは
タイミングを計らって、本気で脱走モードに切り替えた。
素早く遠ざかった小さい背中を見てマーカーは不敵に笑う。
「クククッ・・・逃げる獲物を追う時ほど興奮することはないぞ」
「へぇー、楽しそうじゃん。俺も参加するーvV」
「よーし。んじゃ捕まえたやつが一日貸切な」
「なんか嫌なルール出来てるし!!G!見てねぇでこいつらどーにかしてくれよ!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・ん」
「お、Gも参加すんの?めっずらしぃ〜」
「・・・新作を、着せたいからな」
「そういうことか。だがこちらとて目的はあるからな」
「さぁーてv 捕まえて何してやるか」
「・・・あれ?もしかしなくてもあたし敵増やしただけ?くっそぉー!!」
決して広いとは言えない建物内での決死の逃走劇。
が逃げるだけでも狭いというのに、他に四人もの巨漢が走り回るにはスペースがなさすぎる。
その証拠に・・・
「あーー!!隊長それ!踏んづけてるソレ俺の勝負下着っすよ!!」
「G!躓いて鍋を引っくり返すとは何事だ!!私の料理が・・・!!」
「ロッド・・・家の中で風を起こすな・・・・・!」
「うおッ!!マーカーてめぇ余所見しながら青龍刀振り回すんじゃねー!!」
いつの間にか追いかけっこは同士討ちへと姿を変えていた・・・。
どさくさに紛れてはソファにあった造りかけの巨大テディベアの影に身を潜め、
騒ぎの真ん中から上手いこと脱出していた。
しかもちゃっかり出来上がっていた料理のつまみ食いをして。
「・・・・・あ、そーいえば」
つまみ食いの手を休めずに左手だけでポケットの中をごそごそと漁り
森の中で二匹に貰った布を取り出した。
「面白いこと起こるとか言ってたっけ。どーなるんだろ」
粒状のそれらをじーっと見つめ、
その目で未だ闘りあってる仲間を見つめ、
にまっと企むような笑顔が零れる。
そして布の裾を摘んで躊躇することなく、中身をつまみ食い中だったシチューに零した。
落ちたそれらは、とろみのある液体の中に溶けるように埋まっていく。
シチューはまだ温かみが十分にあり、薬の痕跡は全くなくなった。
しかし、念には念を。食べるのはやつらだ。
もしかしたら・・・特に作ったマーカーあたりは気づくかもしれないから。
浸かっていたお玉を掴んで急いで掻き混ぜる。
奥の方の具まですくいあげるように、しっかりと。
「よし!これで平気だよな!」
「なにがだ?」
背後にぴったりとくっついてくる声。
慌てて振り向くと、一戦終えた後のマーカーがこちらを見下ろしていた。
見れば、先ほどまで戦っていた他の三人も既に椅子に腰を落ち着け食事を待っている。
鍋を掻き混ぜるのに夢中で、終戦したのに気がつかなかった。
「・・・・み、見た?」
「ふっ、見ていなくてもお前がしていたことくらい検討はつく。大方・・・・」
薬でも盛っていたのだろう。
あの薄い唇から、そう紡がれるのではないかと思ったが
それは行き過ぎた心配であったらしく。
「大方つまみ食いでもしていたのだろう。全くいつになっても猿っぷりだけは変わらんな」
「・・・・へ」
「罰として今日は飯抜きだな。反省しろ」
の目の前からシチュー鍋を掻っ攫い、
スタスタとテーブルに持っていってしまった。
「え、あ・・・あ!おい、マーカー!飯抜きは酷ぇって。せめて米かパン食わせろー!!」
慌しく自分の席につき、一喝される前にパンに手を伸ばし
ぱくりと食いつく。
一個目を口に収めきると、休む間無く二個目に手をつける。
その様子に疑問を抱いたのは、拳大もある大振りな肉にありついていたハーレム。
「おい、。腹でも壊しやがったのか?」
「別に壊してねーけど」
「んじゃ何で今日は騒がねぇんだ。飯食わせろってよ」
ぴたっと、の手と口が止まる。
・・・どうしよう。
なんて答えれば・・・・・・。
シチューだけ食べないのでは変すぎる。
そう思って、勢いで自分が言ってしまったとおり主食だったパンにのみ手をつけていたのだが・・・。
「あー、俺わかっちゃったv」
「マジで?!」
ロッドが大好物であるホワイトシチューをスプーンで美味しそうに啜りながら
をにやにやと見て言う。
それに焦るのは、当然ただ一人。
「お前森でまーた果物食いまくってきたんだろ。意地汚いやつ」
「あ、そう!そうなんだよ、だから腹いっぱいでさ」
「馬鹿が。私の料理を食えなくなるほど間食するなとあれほど・・・」
「あんま怒んなよ。こいつが食わなきゃそんだけ俺の食い分増えるだけじゃねーか」
ハーレムは肉にかぶりつきながら、納得したふうに言う。
ロッドの無意識のフォローのおかげで助かったと、は内心感謝しつつ
他の料理にも手をつけたい衝動を我慢して三個目のパンを誤魔化しで口にした。
「ふぃ〜。食った食った」
「やっぱマーカーちゃんの料理は美味いねぇ」
「褒めても食後の甜食くらいしか出さんぞ」
「甜食って確か〜・・・・何のことだっけ。忘れちった」
「・・・・・・デザートだ」
料理を褒められたことが素直に嬉しいマーカーは、いつもよりも少し穏やかな顔で
大皿の上に並べられた大量の桃マンを運んできた。
「うっひゃ〜。うっまそー!!」
「、お前は満腹なのだろう?」
「いいの!デザートは別腹!!」
「女の腹は器用に出来てるものだ」
「いっただきまーすv」
ぱくんと大口を開けてかじると、ふっくらとした厚皮が湯気をたてて中身を見せた。
桃の甘味だけで作られてるとわかる、砂糖のない甘さ。
いかにもマーカーが好みそうな出来だ。
「美味いか?」
「うん!」
「そうか。よかったな」
いつになく機嫌のいいマーカーがの頭を撫でる。
こういう時の彼になら素直に甘えてもいいが、こうじゃなくなった時のことを考えると
それを実行しようとは欠片と思えない。
他の二人も然り。・・・此処で言う二人は、無論ロッドとハーレムのこと。
「(・・・・・・・にしても)」
シチューを平らげた四人にこれといった変化は見られない。
失敗作だったのだろうか?
それともマーカーが珍しくマトモに優しいのが薬の効果だったりするのかもしれない。
だと、すれば他の者達も・・・?
密かな期待を抱き、右隣に居たロッドをじーっと見つめてみた。
彼はすぐに自分に注がれてる眼差しに気がつく。
「なになに?やっと俺の魅力に気づいた?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・違うか」
この返答。絡み付いてくる腕。
どっちをとってもいつものロッドだ。
マーカーが優しいのはただの気まぐれの偶然らしい。
「あたしトイレ行って来る」
ロッドの腕がの肩を完全に掴む前に、
さっさと席を離れ逃げた。
背中を向けた方からロッドのあからさまな舌打ちが聞こえたが
そんなものは軽く無視。
「結局なーんも起きなかったな」
トイレから出た後も、考えるのはそのことばかり。
綺麗に洗った手を備えられたタオルであっさりと拭き、リビングに向かって廊下を一進しながら
はぽつっと呟いた。
「やっぱ失敗作だったんだ。あの薬」
それを結論にした矢先だった。
リビングに繋がるドアを開けたは、
薬が決して失敗作などではなかったことを
その眼で、身で知った。
「あれ?みんな何処行ったんだ?」
トイレに行く前まで居たはずの四人の姿が消えていた。
テーブルに近づくと、その異常さが一目で分かる。
「なんで・・・・服が脱ぎ捨ててあるんだよ」
各席に残っているのは、中身の無くなった布たち。
つまり衣服。
ご丁寧に下着までもが放置されている・・・・。
「・・・みんなで温泉でも入り行ったのか??」
それにしたって何も家から素っ裸で行く事はないだろう。
いくらなんだって、それはない。
むしろあったらとてつもなく嫌だ。
中年の男四人が真っ裸で森を練り歩く姿なんて想像したくても出来ない。
まあ、約一名・・・いや、二名だろうか。
出来なくもないやつがいることは居るが
それはこの際考えないでおこう。
「・・・・あ、でも変だ」
残された衣服で気づいたこと。
それは・・・
「なんかちょっと少ない・・・・」
ハーレムの着ていたワイシャツ。
Gの革ジャン。
マーカーの上着。
ロッドの・・・・は全部あるけど。
ああ。
もう何がなんだか・・・・
くいっ
革パンが引っ張られる感覚。
なんだ?
と、思って何気なしに足元を見ると。
「ねーたん、だぁれ」
明らかにサイズの合わない服(一人は多分Gが使ってた布)に身を包んだ
四つのナマモノがいた。
ごめんなさい。
”面白い事”っていう魅力につられて、
あたし・・・・・とんでもないことしちゃったみたいです。
「おねぇちゃん泣いちゃったー?」
「いや。泣いてねーけど・・・ちょっと泣きそうかも」
一番小さい男の子・・・ロッドが
心配そうにを覗き込む。
「ここねーたんのお家?ボクのお家は?」
こっちはハーレム。
ねーたんにボクだってさ、小さいころは可愛かったんだなぁ。
「お前はダレだ?質問に答えろ、女」
うっわぁ・・・マーカーって昔っから性格わるっ!!
可愛いけど目つきも悪ぃぞ!
「・・・・・・・・・クマさん。もらっていいですか?」
子供のころから熊好きだったんだ。Gって。
てかこの状況で何で熊優先なんだよ。
「あっと・・・あたしはっての。お前らの・・・仲間なんだけ、ど・・・・」
分からないだろーなぁ。
「・・・ねーたん?」
「うん。よろしく・・・な。ハーレム」
「ちゃん?おねぇちゃん?」
「どっちでもいーよ。ロッド」
「ココは何処だ?」
「パプワ島。この家はあたしとお前らの家だよ、マーカー」
「・・・・・・・・クマ」
「それ作ってるのお前。だからGのクマ」
そしてとどめとも言い換えられる当然の質問。
「「「「ぼく(私は)なんでココにいる(の)?」」」」
ごめん。
あたしのせい。
とりあえずココは・・・・
むずっと一番目と二番目にサイズの大きいな黒髪二人を脇に抱えあげた。
「なにをする!離せ!」
「・・・・・・出かけるんですか?」
「おう!ほら、ハーレムとロッドはあたしの足にしがみつく!」
「「はぁーい」」
数十年後が嘘のように素直に可愛らしい返事で
言われたとおりの脚にコアラのようにしがみつく。
「うっしゃ。二人ともしっかり掴まってろよー」
「「うん」」
「Gとマーカーは大人しくしてろよ」
「・・・はい」
「ふんっ、」
Gに反して些かひねくれた返事のマーカーではあるが、
己の力量ではに適わないとわかっているのだろう。
態度は至って大人しい。
「さーてと、パプワハウスまで超特急だー!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・と、こんなワケ」
「あの二匹の仕業か・・・・・厄介そうだな」
「どうすりゃいいかな?」
「どうするってお前・・・・・どうするんだ?」
「いや、まあ・・・・・どうにかなるかなって思ってるんだけど」
「どーにもならないだろ・・・これ」
「やっぱし?」
リキッドとはそーっと一緒に背後を振り向いて、
途中からロタローたちにあやされて眠ってしまった四人と
四人をあやしながら一緒に寝てしまった二人と一匹の無邪気な寝顔を見て・・・・・
どーにもしない方が平和かもしれない
などと、物語にならないような事を考えているのであった・・・。
続く・・・予定。
大好きな君たちの悲しい顔を見たくないから
大切な君たちに恐いと感じてほしくないから
孤独からも不安からも
あたしが守ってあげられる
だから笑って 昔のあたしみたいに
あとがき
と、まあ・・・こんなかんじに始まっちゃった連載(予定)だったりします。
はたして、どうなる特戦部隊。
はたまた、どうする下っ端’s。
どうなるかこうなるかどうにもならんかは作者にも不明。