ここは第2のパプワ島。

事件も無く平和だったこの島に、予想外を更に1枠も2枠も外れた来客・・・
現ガンマ団総帥の弟、コタローが来た。

そしてその日を境に、数々の人間が島に訪れた。

最初に来たのは、コタローを連れ戻すためガンマ団から送られてきた刺客、アラシヤマ。
続いて、コタローを攫いにきたが脱出不可能なのを知り、すっかり居ついてる特戦部隊。
それとほぼ同時に、(アラシヤマから連絡の途絶えたせいで)捜索隊として送り込まれた伊達衆3人。

最後に、つい先日・・・やはりコタロー狙いで、ガンマ団の商売敵である心戦組もやって来た。



そんなわけで、たった1週間ほどで、パプワ島の人口密度は飛躍的に増加の一歩を辿っていた。




数ヶ月前までは島で唯一の大人だった赤の番人リキッドは、
そんなハードな日々に少々お疲れ気味であったが、今日もちみっこ達のために家事に励んでいた。




「ふぃ〜、今日の分の洗濯おしまいっと!」



空のタライを物干し竿の根元に立て掛けて、
今度は昼食の準備をするためにパプワハウスの中に移動したリキッドを待っていたのは
ちみっこ2人と犬1匹。

真ん中にいるコタロー・・・・もといロタローの手には
いぞやのアルバムと色違いのファンシーヤンキーなアルバムが開かれた状態で握られていた。



「あ!お前ら、まーた勝手に人の物を・・・・」
「ねぇ家政夫ー。この写真に写ってるの、こないだ来たおじさん達でしょ?」
「見りゃ分かるだろ、あいつら若作りしてっから見た目変わってねーし」



この間のアルバムとは違い、こちらのアルバムはリキッドが特戦部隊に居た頃限定のようで
全ての写真に隊服やら私服やらの面々が写っている。


左上の写真に居るロッドは、お洒落ではあるが彼の趣味から考えればわりとマトモの格好で寝転がり
卑猥な雑誌を開きながらカメラに向かってウインクしている。

その下の写真はシャワー後のマーカーが、珍しく上半身を晒した姿でソファに座っている。

そしてマーカーの真隣・・・つまり横のページでは
酒瓶を片手にマイクを握り、上機嫌で歌うハーレムが居て
その上には、長机に布を広げ新しい服作りに勤しむGの姿が収められている写真があった。


どれもこれも楽しそう(?)で、写真からは彼らの日常が滲み出ている。



「もー、ちゃんと話聞いてよね!僕が言いたいのは
おじさん達と一緒に写ってる子が誰なのかってことだよ!そのくらい解れよ馬鹿!!」



どごんッ!!という激しい音と共に、手加減無用の鉄球がリキッドのドタマに命中。
回答者が止血中のため、そのままで暫しお待ちください。



「いてて・・・、この鬼っ子め・・・・・・」
「何か言った・・・?」
「・・・・・・・・・・・いえ、私は何も」



ぎらりと光るロタローの青眼に悪寒を覚えた瞬間、リキッドの防衛本能が脳の代わりに即答する。
流石は数年間、同じ眼を持つ男に甚振られていただけのことはある。



「はっはっは、早くもピラミッドの頂点に立ったな、ロタロー!」
「うんvこれでパプワくんとお揃いだよ」
「・・・・・・あれ、俺もしかして生産者の位置にいる?」



パプワ島板、食物連鎖ピラミッド図

        /\
      /__\  ←ちみっこ+チャッピー
     /____\  ←ナマモノ
   /______\ ←特戦部隊、心戦組
  /________\ ←せみの抜け殻
/__________\ ←リキッド


※木製フィギアは除外されてます。




「それで、この僕と同い年くらいのこの子・・・誰なの?」
「誰って・・・・・・・・・・・・・ああ、のことか」
?」



アルバムに貼られている沢山の写真に写っているのは、リキッドを含めた特戦部隊の屈強な男達。
だが、一人だけ・・・・大よそ10歳ほどの、小さく幼い子供がいる。
獅子舞ハウスに在住しておらず、最初のパプワ島にも来ていない。
知らない人間。


ロタローの指が指し示しているのは、その子供だ。



寝転がるロッドの背中に乗ってはしゃいでいたり
マーカーの膝の間に座って髪を拭かれていたり
饅頭を片手にハーレムと一緒にデュエットしていたり
Gが作業する向かい側で、メジャーを玩具にしていたり


とにかく、何かしらのアクションをとっている。



「こいつはっていう俺の後輩だったやつ。こんなナリしてるけど女の子だぜ」
「へぇ〜、僕ほどじゃないけど可愛い子だね。紹介しろよ、家政夫!」
「紹介って・・・今時のちみっこは・・・・・・・ぶつぶつ」
「ねぇ家政夫ってば!紹介してよー!」
「つーか勘違いしてるみたいだから言っとくけど・・・これ5年くらい前の写真だからな」
「えっ!?」



リキッドは、ロタローが驚いた隙にその手からアルバムをひょいっと取り返し、パタンと閉じて
3人の手の届かない場所にさっさか避難させてしまった。

まさに早業だ。



「あー!何するんだよ!!家来のくせに」
「誰が家来だ、誰が。大体をガールフレンドにしようなんて10年早いっつの」
「むぅ、一生結婚出来ない男に言われたくないよ!」
「ロタローに失礼だぞリキッド。チャッピー!」
「わうッ!!」


がぶっ!!


「いっでーーーーーッ!!」



またも頭を負傷し、盛大な流血をするリキッド。
それを冷たい眼で見守るロタローは、心なし楽しそうだ。



「ふんっ、いー気味だよ。ありがとうパプワくんv ・・・・・・・・・パプワくん?」



可愛らしく腰を折ってパプワに話しかけるロタローだが、
肝心のパプワの眼は、リキッドを見ていた。

いつもより少し柔らかい表情で。
見方によっては笑っているようにも見える。



「パプワくん、何か楽しそうだね」
「うむ。のことはリキッドから聞いていたからな。写真で見たらもっと会ってみたくなったんだ」



両手の扇子を広げて、そう話すパプワは本当に楽しそうで
のことを知らないロタローも、に会ってみたいという気持ちが益々強くなった。



・・・さんってどんな人なの?」



年上だという事を一応意識しての名の後に敬称を添える。
ロタローの問いかけに、パプワは閉じた扇子でリキッドを指した。



「それはリキッドに聞いた方がいい!リキッド、の話だ」
「またかよ。しょーがねぇな」
「お前、顔笑ってるぞ」
「締まりのない顔だよ、これだから家政夫は」



はぁぁ、と本気で馬鹿にしたように肩をすかせながら溜息を吐く。

こんな扱いにも慣れたことは慣れたが、たまには・・・・・・と
ささやかな意地悪をしてみることにした。



「そーゆうこと言ってると話してやんねー」
「えー!やだやだ!聞きたいー!!」
「大人気ないやつだ!」
「わーう!」



3人して一斉に抗議する。
その子供らしい反応に、気を良くしたリキッドは微笑みながら、アルバムを再び手に取り
テーブルに置いて広げた。


今度出てきたページは、リキッドとがハーレムから逃げている写真の数々。
どれもこれも真剣な顔で逃げているリキッドだが、
の方は写真によって笑っていたり、逆に怒っていたり、リキッドと同じく恐怖に顔を歪めていたり・・・
実に多彩な表情だ。



「今日はどの話がいい?」
「まだ話したことがないのはないのか?」
「んー・・そーだなぁ・・・・・」



リキッドはページを捲りながら色々な写真に眼を通し、独り言のような微妙なことを口走りだす。



「”激戦区の巨大打ち上げ花火”は話したし・・・”恐怖の獅子舞火ダルマ”も話したよな?」
「”地上4000m風穴事件”も聞いたことあるぞ」
「マジ?じゃああとは〜・・・・そうだ!”消えた冷凍マグロの謎”は、まだ話してなかっただろ?」

「なに、そのネーミング・・・センスの欠片も感じないよ」



今までに語られた話がどんなものなのか、聞きたいようで聞きたくないような
複雑な心境のロタローだが、とりあえず面白そうなのでリキッドの言う”消えた冷凍マグロの謎”を
聞くことにした。



「ほら、聞いてやるから話せよ」
「坊ちゃん世界制覇でもしたかのよーな態度ですね・・・。話すのやめよっかなぁ」
「ロタロー、人に物を頼むときはちゃーんと頼む態度をしないと駄ー目」
「うん、パプワくんv・・・・家政夫、さんの話聞かせてください」
「よーし!じゃあ話すぞー。座った座った」



リキッドの言葉に従い、みな興味津々でテーブルの周りに集まる。



「事件の始まりはだなぁ、が入隊して2ヶ月くらい経った・・・・」
「あ!待って家政夫」
「なんだよ、人が折角いい気分で話そうとしてんのに・・・」
さんって今どこに居るの?」



ロタローはリキッドの文句を一切無視して問いかける。

リキッドの同僚だったのに今現在、獅子舞ハウスに居ないのだから
当然沸いてくる疑問ではあるが質問のタイミングが自己中心的すぎだ。

どうやら一族の血は、この少年の中に何処までも濃く受け継がれているらしい。



なら今はガンマ団に居るぜ」
「ふーん・・・そうなんだ」
「今頃元気でやってるかな・・・のやつ」











やってます。










「ぶっはぁーーー!!死ぬかと思ったァ!!」



リュックサックを引きずり、ザバザバと海から上がってくる。

大渦に生身で飲み込まれ、生臭い魚の大群を目の当たりにしたせいで
精神的にも肉体的にもかなりのダメージ・・・・



「うおっしゃーぁ!!首洗って待ってろよ!ブレイク獅子舞、クラッシュ特戦!入隊賭けていざ勝負!!」



・・・は、受けてないもよう。
それどころか、テンションは倍で、いつもの2乗ばかりスパークしている。



は水を吸って自分の体重よりも重くなっているリュックを易々と砂浜に放り投げ
海水から完全に身体を出した。



「ふ〜・・・さてと、行くか!!」



ざっ!との足は力強く砂浜を蹴る。
その強さは思いの大きさに比例しているのだろう。




強くなった。
5年前とは比べ物にならないほど凄まじく強くなった。

力だけではなく、学力もつけて
戦術も身につけて
多種多様な武器を使いこなし、戦場ではいくつかの異名も持つようになった。


誰もが認める強さ。
それを自分でも認められるようになった今こそ
大好きなやつらに見てほしい、認めてほしい。


その思いが、この5年間でをここまで育てた。



濡れた髪を雑に絞って、お馴染みの能力を駆使し全身を一瞬で乾かす。

白い砂浜を感触をブーツの裏に感じながら、
一歩、また一歩と海から離れたが、数mとしないうちに足を止めた。




「・・・・・・・・・・・あー・・・何か変だと思ったら腹減った」



ぐぅっと恥らい無く鳴る腹を押さえ、そのまま砂浜に仰向けに寝転がる。

視界が一面の青い空。



「そーいえば・・・」



最後のボールを見つけて一目散に本部に戻ったから3日間寝てねーや。

あれ見つけたの、アマゾン川のワニの集落だったからなぁ・・・・

噛まれたり噛み返したりして、すっげー疲れてたんだった。

くっそ〜、あのボスワニめ・・・・思いっきり水ん中沈めやがって!

しかもあいつ不味いんだよ!美味けりゃ尻尾だけじゃなくて全部食ってやったのにさ



あ〜・・・・・・駄目だ、腹減った。




そんなの目にとまったのは、空にもくもくと浮かぶ実に美味しそうな雲。
手を伸ばしたら掴めそうだ。



「うー・・・あぁ〜!やっぱ届かねーや・・・」



無謀にも手を伸ばしたが、届くわけもなく。
腹の虫を刺激するだけだった・・・。



「来る途中にいた魚・・・獲ってこよっかなぁ・・・・」



あの網タイツ穿いたやつら。
あんま美味そうじゃないけど、ワニよりはマシだろーし。


うん・・・食おう。




がばっと勢いをつけて起き上がり、上がってきたばかりの海を見渡す。
空と近い色の青い海はどこまでも穏やかで、あの魚群が居そうな波はたってない。




「くっそー!どこ行ったんだよ、あの魚達!」
「あら、貴方だぁれ?」
「見かけない子ねぇ」



浜辺で地団太を踏んでいると後ろから声がかけられた。
振り向いて声の主を見ると、それは、つまり、俗に言う・・・



「エスカルゴと鯛の活けづくり・・・」
「まあ失礼しちゃう!エスカルゴだなんて!」
「そうよ酷いわ!食べるならちゃんと火を通してちょうだい!」



ぽつりとが呟いたことに猛反論する2匹。
つーか食われることに対する反論はないのか、お前ら?



「うるせー!あたしは腹が減ってるんだよ!!今すぐあたしに食われろ!でも不味かったら捨てる!」
「いやー!わがままよ、この子!」
「可愛いのに言葉遣いも汚いわ!」



網タイツの魚とリボンを付けた蝸牛。
この2匹のナマモノも、今のにとってはご馳走らしい。

よだれを拭う手と、ぺろりと唇を舐める舌が妙に生々しい・・・。




「きゃー!!このままじゃ食べられちゃうわよ、イトウちゃん!」
「逃げましょうタンノちゃん!」
「逃がすか!!あたしは走るより3度の飯が好きなんだよ!!」



背中から長刀を繰り出す
無論、どこにも装備しているようには見えなかった。お得意の武器隠しだ。
逃げるナマモノを追いかける形相は悪鬼のごとし、戦場よりも真剣な眼差しである。

食べ物の恨みは恐ろしいと言うが、食べ物への熱意も恐ろしいものであると
今ここにて判明された。


だが、地の利はタンノとイトウにある。
どんなに実戦慣れしてサバイバル慣れしていても、いつも島中を庭のように歩き回っている2匹に
はなかなか追いつけず、次第に距離を離されていった。



「ちくしょー・・・腹さえ減ってなけりゃ3秒で仕留められんのにィ・・・・」



霞んできた視界で2匹を追うことに限界を感じ、はついに森のど真ん中で足を止めた。

寝不足に空腹・・・ついでに疲労困憊。
今までは特戦部隊の皆に会うという目的で頭がいっぱいだったので気づかなかったが
状況は最低最悪もいいところ。

唯一の幸いは、この島のどこかに特戦部隊が
あいつらがいる・・・という事実だけ。


は既に朦朧としている頭の中で、無意識のうちに水のせせらぎを耳に察知し
ふらふらと移動を始めた。














「・・・・でよ、そのマグロはが溶かして独り占めしようとしてたんだよ」
「はっはっは!らしいな」
「うん!それでそれで?その後どーなったの?」
「この後は酷ぇもんだぜ。獅子舞がを餌にしてマグロの1本釣りしようとし・・・・・・・」
「「パプワくーーーん!!」」



ばたーん!



「聞いてちょうだい!」
「あたし達狙われてるの!匿ってちょーだい!」



から逃げ切ってきた2匹は助けを求めパプワハウスまで来ていた。

中では、美味しそうなお昼ご飯が並べられたテーブルを囲んで、
リキッドが楽しそうにロタロー達に話を聞かせているところだった。



「お前らを狙う・・・・?そんな変態この島にゃ居ねーだろ」
「まっ!失礼しちゃうわぁ!あの女の子といい、皆酷いわよ!!」
「そーよ!私達泣いちゃう!!」
「「「女の子??」」」「わう?」
「「そうよ、聞いてちょーだい」」



ハンカチを噛んで泣いていた(やめろ)2匹は
3人と1匹に向き直って、話し出す。



「眼がおっきくて、とっても可愛い子なの」
「可愛いとは言ってもロタローくんとは違って子供じゃないわよ?」
「でもリキッドさんより、もっと若かったわ」
「それと、言葉遣いが何だか男の人みたいだったわよねぇ」
「そうそう。長い刀持って凄い速さで追いかけてきたのよ、怖かったわぁ!!」



いちいち大きくリアクションをとりながら語る2匹。

嘘はついていなさそうだが・・・・・・・女の子?
リキッドはそこに引っかかっていた。



「なぁ・・・そいつ、どんなやつだったんだ?」
「どんなって・・・だから可愛い子だって言ってるじゃない」



私達の話聞いてないのねっ!とぷんぷん怒るタンノ。
だがリキッドはそんなこと露ほども気にせず、言葉を続ける。



「もしかして茶髪だったか?薄くて透けてる感じの・・・」
「え、ええ。そんな感じだったわよねタンノちゃん」
「そういえば眼は太陽みたいな金色だったわ。でも、それがどうか・・・」

「「「(さん)だッ!!」」」



3人の声がシンクロした。



「ホントにが来たぜ!こーしちゃいらんねぇや!飯の支度しねーと!」
「リキッド、僕らはを探しに行くからな」
「おう!頼んだぜ〜♪」



を迎えたら足らないであろう昼食の追加準備に取り掛かるリキッドと
チャッピーに乗ってロタローの手を握り、外へ出て行くパプワ。

なかなか手際がいい分担作業だ。



「どういうことなのかしら?」
「さぁ、あら美味しいv」



状況が上手く飲み込めず取り残されてしまったイトウとタンノは
テーブルの上に装ってあった昼食に手をつけながら和んでいた。けっこうタフだ。




それはそうと、の方はと言えば・・・・




「あたし・・・・・・何でこんなとこに居るんだろう?」



ふと意識を取り戻したは見晴らしのいい場所に居た。
そこからは島の半分が一見できて、視力のいいにとって人探しには持って来いかもしれない。


かもしれないが・・・


「鳥の巣だよな・・・ここ」



確かあたし、変な蝸牛と鯛追いかけてって
だけど途中で腹減りすぎちゃったせいで意識までぶっ飛んで・・・



「駄目だ、思い出せない・・・・川行ったとこまでは覚えてんだけどなぁ」



って、考えてても仕方ないか。
はさっさと思考を切り替え、自分の置かれた状況を確認しだす。

断崖絶壁に作られたこの巣から地上までは相当の距離があり
飛び降りられない事は無いが、降りたところで迷子になるだけ。

それならば、むしろ絶壁の上まで行って
ここからは見えない島の反対側までチェックしてから降りた方がいいだろう。



「よっしゃ!さくさく登るかな」



そうは言うものの、岩肌は少し強く手を引っ掛けただけで崩れてしまい、いくら軽量なでも登れそうにない。
見たところ上の方はしっかりしていそうなのだが、常識的に考えてそこまでジャンプするのは不可能。


だが、そんなことではの目的を阻むことは出来ない。



「ふっふふーん♪アレの出番か」



そんなことを呟きながらは上着の下から、フック付きのロープを取り出た。
それを西部劇のカウボーイのようにビュンビュンと唸らせて、絶壁のてっぺん付近に引っ掛け
ぐんぐんと腕の力だけでロープをよじ登っていく。

登りだして1分経つか経たないか・・・という頃には、は頂上の地を踏んでいた。



「うっわー!いい眺め!!」



いざ頂上で島をぐるりと見てみると、その素晴らしさに改めて気づいた。

青い空、白い雲、青い海、白い砂浜、緑の木々・・・。
卒業試験で世界中を旅したが、その何処よりもココは綺麗だ。


この島の何処かに、みんながいる。



「いくつか家みたいのが見えるけど・・・・どれだろ?」


3.0を越す視力で島全体をざっと見たところ、建造物は数件だけ。

海と山のちょうど真ん中にあるオレンジのドーム型の家。
ジャングルの開けた場所に2件並んで建ってるピンクの外壁の家と木造の家。
なんとなく黒っぽい感じの森の奥にも、奇妙な形の建物が見える。


今見えてる家の内、1件は特戦部隊が住んでいる家だろうが・・・・・残りは?
ああ、伊達衆か。


「ミヤギとトットリは一緒に住んでるだろーし、コージは・・・・一緒かな。
何にしてもアラシヤマがハブられてるのは確実だろーな」



でも、コタローはどうしてるんだ?
ハーレム達と同居してんのかなぁ・・・。


そーいや現地(島)民って居るのか?
居るとしたら、武器なんか持ち込んでるのバレたら怒られるかも・・・



「まっ、いっか。そん時はそん時・・・・・・・・・・・・・・ん?」



突然影ができて、に当たる日の光を遮る。
何かと思って空を見上げると・・・



「何だあれ?空飛ぶニワトリ??」



ニワトリって飛べたっけか?
つーか、あいつか。あたしをココまで運んできたのは。

・・・・・・・・・・・・取り合えず



「フライドチキン・・・・焼き鳥・・・・・・この際だから蒸すか?」



白飯つけて炊き込みご飯にするのもいいな。

何でもいーけど腹ごしらえはアイツで決まりだ。
そう思って右手をニワトリ目掛けてかざし、能力を発動させようとした時・・・



ひゅうぅぅぅーーーー・・・・・どすんッ!!



「迎えに来たぞ、!!」
「クボタくんの巣まで運ばれちゃってんじゃ見つからないはずだよ、もぉ」
「わーう!わう!」



腰みの一枚の小さな少年がニワトリから降ってきた。
その少年に担がれた茶色の犬と、金髪の美少年。

なんだ、このトリオ・・・。




「・・・・・・・・・お前ら誰?」
「僕はパプワだ!こっちはチャッピーで・・・」
「僕はロタローだよv」



ロタロー?
コタローじゃないのか?

金髪の美少年は、本部の最上階で眠り続けていたコタローにそっくりだ。



「ロタローって実名?」
「うん、そうだけど・・・?」


まあ、世の中にゃ似てる人が3人居るっていうし・・・・他人の空似ってやつか。
この子に津軽に・・・・もしかしてこの顔って、どっかで大量生産されてんのかな・・・・。



「・・・・・・・・・・はん、まさかね」
さん、僕の名前がどーかしたの?」
「や、何でもない。それより何であたしの名前知ってるんだよ」
「んばば!お前のことはリキッドからたーくさん聞いたぞ」



踊りながらパプワが答えると、は一時きょとんとし呆けたが
すぐに眼を輝かせてパプワに詰め寄る。



「リキッドってリキッド?!あいつもこの島にいるの??」
「居るよ。僕らの家政夫なんだv」
「マジ・・・・で・・・・?」



リキッドがいる。
4年前に特戦部隊を勝手に抜けやがったリキッドが・・・。

特戦部隊に戻ったあとで、意地でも探して逢いに行ってやると思ってたのに
これは思わぬ収穫だ。

もしかしてハーレムもリキッドに逢いに、この島来たのかな・・・・?



も見つけたことだし、早く帰って昼ゴハンだ!」
「昼飯?!あたしも食いたいッ!もう腹ペコで死にそうなんだよ・・・」
「じゃあクボタくん、最速で頼むぞ」



パプワが巨大鶏クボタくんに呼びかけると
クボタくんは急降下してきて、翼を横に大きく広げた。

と、チャッピーとロタローを担いだパプワが、タイミングよく翼に飛び乗ると
今度は急上昇して、さっき見えていたオレンジ色の家の方向に向かって羽ばたいた。



「このフライドチキンすっげー早いじゃん!すごいすごい!!」
「ふらっ・・・・この鳥はクボタくんだよ、さん」
「クボタ?ふーん、よろしくなクボタくん!さっき食おうとしてゴメン」
「はっはっは!は話しに聞いたとーりのやつだな」
「・・・・どんな話してんだよ、あいつめ」



特戦にいた1年間の中で覚えのあり過ぎる心当たりに思わず責任転嫁してしたが、
この場合、どう考えても悪いのは笑い話になるような行動ばかりしていたの方だ。

リキッドは悪くない・・・・・が、八つ当たりという名の制裁は受けるだろう。

哀れリキッド。



「それにしてもさんって本当に可愛いね」
「そーお?ロタローのが可愛いよ」
「えへへv さんに言われると照れちゃうなvV」
もロタローも可愛いぞ!なぁチャッピー」
「わう!!」
「「パプワ(くん)とチャッピーもな(ね)」」



なんだ、この誉め合いは。
誰か塩撒け、塩。

最も、そんなことした日にゃパプワとロタローから、きっついお仕置きが来るのだろうが。











そんなこんなでパプワハウス。



「「「ただいまー!!」」」
「おかえりー!居たかー??」



パプワ達が家に入ると、明るい声と笑顔のリキッドが
テーブルにいっぱいの豪華な料理を用意して待っていた。



「わーい、ご馳走ご馳走v」
「あれ、お前らだけかよ?は?」
さんならココに・・・・・・ってアレ?さーん?」



ロタローのすぐ後ろに、ついさっきまで居たはずのの姿が影も形もなくなっている。



「クボタくんから降りたときには居たのに・・・」
ならココだぞ」
「わぅ〜」
「「え?どこ・・・・・・・・狽ヤーーーッツ!!」」



既に食卓についたパプワは、家の隅を指して言った。
そこには、うつ伏せに倒れたに寄生しながら偉そうに煙草をふかしているキノコの姿。



「暇だから来てやったにゃ〜、飯くらい出せよ」
「今すぐ出て行けよ!この猛毒キノコ!!」
ー!!なんだな、その宿主!!
から離れやがれ、コモロくん!!じゃねーとプラズマ出すぞッ」



脅してるのに”くん”付けってカッコつかねー・・・。

と、いう突っ込みは放っておいて、本気のリキッドは拳の中で起こした電撃で
無理矢理からコモロを引き剥がした。

空腹不眠疲労に加えて、とどめの寄生により
ぐってりして動かないをリキッドはマッハで駆け寄り、うつ伏せの身体を抱き起こして腕の中で仰向けにした。



生きてるか・・・・・・・・
狽ヲッ!?
「なに固まってるのさ、家政夫」
「こ、こいつ・・・・・・本当に・・・なのか?」
「正真正銘本人だ」
「もしかして家政夫・・・・・・さんの顔忘れちゃってたわけ?」
「そーゆうわけじゃねーけど・・・・・・///」



顔を赤くしながらリキッドはもう1度腕の中の少女を見る。
少女は別れたときとは別人のように女らしく成長し、昔あった悪戯坊主の雰囲気は見当たらなかった。




「こいつが・・・・・・・・・・・・」



腕の中にすっぽり収まってしまうような小柄な体躯だが、スラリと伸びた身長。
腰まである柔らかい良質な絹のような手触りの髪。
服の上からでも分かるくらい豊かな胸と、それとは対照的に華奢で細い肩や腰、手足。
長くてボリュームのある睫毛と小さめの鼻と桜色の唇で構成された寝顔は、あどけなさを残すものの
正真正銘、どこから見ても女の子になっている。


想像以上の成長ぶりに、リキッドの心臓は最高潮まで盛り上がった。



「(うわー!うわー!!可愛すぎだろコレは///
もっとガキくさいと思ってたのに、まだ綺麗ってのとは違うけど・・・でも可愛い!!)」



が来る・・・・という自体は把握していたが、
成長したが来るという所まで深く考えていなかったリキッドは
気を失っているの顔をじっくり観察したり口元を押さえてニヤけるのを隠したりと
面白可笑しい百面相を繰り返す。

そんな中、放っとかれてる2人と1匹は、ややご機嫌斜めになり出し・・・



「なにキョドってるんだよ」
「チャッピー、Go!」
「わう!!」


がぶりっv

怪しい家政夫に攻撃をしたが・・・



「・・・・・・・・・・・・・・・・・家政夫ってば、チャッピーに噛まれてるのに気づいてないや」
「チャッピー可哀想、よしよし」
「わ〜ぅ」



幸せ絶好調のリキッドには全く効いていなかった。

色んな意味で呆れたてたちみっこ達は、そんなリキッドを無視して
用意されているご馳走に早々と手をつけることにしたのだった。








「うぅ〜ん・・・・・・ぐるるっ、ぬぁ・・・・ごわっちゃぁォあ・・・・・」

「なかなか起きんな」
「もの凄く変な寝言言ってるよ・・・・唸ってるし」
の寝言はこんなもんだぜ。昔マーカーに気絶させられた時も、いつもこーだったしな」



一頻りとの再会を噛み締めたリキッドは、
取り合えず布団を敷いてを寝かせて1時間近く休ませているが
は寝言で苦しんだり唸るばかりで起きる気配は0。



「家政夫、さんを起こす手っ取り早い方法ってないの?」
「んー、いっつも自然に起きるの待ってたからなぁ・・・・・賭けしながら」
「うわっ・・・大人って汚いね。パプワくん」
「けしからんな!」
「わうわう!!」
「いや、やってたのは俺じゃなくて隊長達で・・・・・・そんな目で見ないで下さい;」



聞く耳持ってもらえぬ家政夫。

ちょっと可哀想かもしれない・・・。




「・・・・・・ん」




は真っ暗な意識の中、ふいに聞こえた”隊長”という単語に反応し、その瞳を開いた。

起きた眼に飛び込んできたのはオレンジ色の天井と、自分を取り囲むように座っている
パプワとチャッピーとロタロー、それに・・・・・・



「リキッドぉぉおおお!!本物だぁッ!!」
「うわっ、おい?!」



懐かしい顔をリキッドだと把握するのにかかったのは、1秒にも満たないほど短い一瞬だけ。
かけられていたタオルケットを退かしもせず、は突撃に近い勢いで抱きついた。

リキッドは首に回された手と、密着することなど気にもせず昔のように身体をくっつけられる事に
照れながらも、そっとの頭を撫でた。



「久しぶり、元気だったか?」
「元気元気!!リキッドあんま変わってねーな。すぐわかった」
「俺は番人になったから歳とらねーんだよv は・・・・・・・・その、でかくなったな///
狽ラっ別にやらしい意味じゃなくて、身長とか身体とかっ、
胸なんか柔らかくて気持ちいい・・・・・じゃなくてぇッ!えっとッ・・」



自分で何を言ってるのか把握しきれてないリキッドは
顔を真っ赤にして汗を噴出しながら、あたふたしている。

それをパプワ達は・・・・



「完全にパニックになってるな」
「自分のセクハラ発言に気づいてないね」



白い目で見守っていた。

そしてリキッドの暴走は続く・・・。



「すげーいい匂いがしてて、なんつーか、女っぽい・・・ぜ///・・・って俺なに言ってんだ!!
でもマジだからな!昔も可愛かったけど今はもっと可愛くなったと思うしッ
だから今度一緒にランド行こうぜ!(びしぃッ」



息継ぎもろくにしないで、一気にラストまで言い切った・・・・・が



「なにナンパしてるんだお前」    
ごん!
「強制猥褻罪で訴えて勝つよ、この貧乏人」  
どがッ
「わう!」                 
がぶっ!

「どはーーーーーーーッツ!!」



ランドのチケットを握り締め親指を立ててにさり気なくデートの申し込みをするリキッドに
ちみっこ達から容赦ない制裁がきまる。



「あははは!リキッド弱ぇ〜。つーかパプワ達強っ!」
「当たり前よぉ、パプワくんはこのパプワ島のチャンピオンだもの」
「そうよ〜。いっちばん強いんだから」
「おわッ、出たなエスカルゴと活けづくり!!食われる覚悟できてんだろーな!」



食卓で茶をすするイトウとタンノの存在に気づいた
反射的にファイティングポーズをとって身構える。

そんなの肩に手がおかれる。



、そんなもん食わなくたって、俺が作った飯があるぜ」
「え?!リキッドお前、料理出来たの?」
「まあな。お前のためにいっぱい作ったから好きなだけ食えよvV」
「わーい!!サンキュー!」
「狽ヤふっ!(可愛すぎて鼻血がッ、俺女の子に免疫無いからなぁ・・・)」



どぼどぼと流れる鼻血を止めるため、ティッシュを鼻に突っ込みながら
ぽわぽわ花を飛ばし、女の子と触れ合う喜びに打ちひしがれるリキッド。

情けないにも程度があるだろうに・・・・。


リキッドがコモロくんの胞子も無いのに夢見がちになっている間
は瞬としたスピードで山盛りだった料理を次々に平らげていき、
最終的には明らかに胃袋の要領を超える量だったにも関わらず、完食しきった。

それはもう気持ちの良いくらいに、きれいさっぱりと。



「あー!満腹♪美味かったぁv」
「ねぇさん、食べ終わったんだから家政夫なんか放っといて僕達と遊びに行こうよ」
「んばば!!」


ロタローたちが用意万端と言わんばかりに
に笑顔を振りまいてくる。

・・・が、



「ごめーん・・・腹いっぱいになったら眠くなっちゃった。1時間くらい寝かせてくんない?」
「えー!遊ぼうよぉ」
「ロタロー、わがまま言っちゃだーめ」
「むぅ・・・じゃあ1時間だけだからね!1時間したら起きて僕達と遊んでくれるでしょ?」
「りょーかい!んじゃあリキッド、膝借りるね」
「狽ヲえッ?!」




返事を待つことなく、はリキッドの膝に頭を転がし
おやすみ3秒で眠りについた。

膝に感じる温かい体温と、柔らかい感触に
リキッドの心臓はフル活動で爆発寸前。むしろ今にもオーバーヒートで止まりそうな勢いだ。

そして聞こえ出した、すぅ・・・すぅ・・・と耳にくすぐったい可愛らしい寝息が
更にリキッドの純情ハートに火をつける。



「(な、なんだ!このドッキリ☆ハプニング的な嬉しいイベントはぁぁぁああ!///)」



そんなリキッドの心中を知らないちみっこ達は、
寝入ったの顔を覗き込みながら、ほのかに談笑する。



「・・・・・さんって僕より子供みたいだね」
「わーい、お子様お子様ー」
「わうん」



そして一人しきりにわたわた慌てたリキッドも、次第に落ち着きを(どうにか)取り戻し
眠るに、また薄手のタオルケットをかける。

その際にあることに気づいた。



「・・・・・・・・・・・あ」



の手が・・・しっかりとリキッドの服を掴んでいる。



「(そういやって誰かの膝で寝るときは、いつもこーしてたっけ・・・)」



脳裏に思い浮かんだのは昔の少女の姿だったが
それは今、自分の膝で寝ている少女と見事に重なった。

リキッドはつりあがってしまう口元を隠しながら、嬉しそうに笑った。



「へへ・・・、変わってねーや、昔と全然」



あの頃のままだ。

でも違うことが一つ。
昔は感じなかった胸の中の激しい鼓動と動揺。

これは、多分きっと・・・・




「・・・・ヒトメボレってやつ・・・・かな///」
「え?家政夫、今何か言った?」
「いや!何でもねーよ!ほーら、ちみっこは遊び行ってきな」
「言われなくてもそーするよ。じゃあいってきまーす」
「はい、いってらっしゃーい」



ひらひら手を振りながら、2人と1匹が出て行くのを見送るリキッド。
気づけばナマモノたちも居なくなっていて、家には2人きり・・・・。


リキッドは、周りを何度もきょろきょろ見回して
誰も居ないことをしっかり確認すると、そっとの前髪をかきあげ
懐かしい少女の顔を見つめた。




「ちょっとくらい・・・・・・・・・・いいよな?///」



ドキドキと高鳴る心臓を無理矢理シカトして
ゆっくり顔を近づける。

途中で何度か躊躇もするが、それでも少しずつ距離を縮め・・・・




再会の喜びを音のない幼いキスに変えた。


















掴んだものは”今”でも”未来”でもない
置き去りにしたままの”過去”

この手が千切れてなくなってしまっても
もう絶対に放さない

握った拳の中で 求め続けたものが溢れてる

















後書。

リッちゃんが独りフライングしました。
まだ特戦出てないのに・・・・うわぁ、つーかどこにしたんだ!!
それは皆々様のご想像にお任せします・・・。

一応述べておきますが、うちのリキッドは純情ボーイです(断言)
ええ、それはもう、好きな女の子の手握るだけで心臓スパークするようなチェリーくんです!!

次回こそ特戦出します。
ええ、お約束しますとも!出なかったら切腹します!