パプワ島に来て初めて迎える朝。
それは何だか無意味に煩かった。
「・・てめぇ俺に逆らうなんざイー度胸してんじゃねぇか、おぉ?」
「こ、こればっかは幾ら隊長でも絶対譲らないっす!!」
重たい瞼を薄ら開いてみると
珍しくリキッドがハーレムの言うことに逆らっているのが見えた。
「こちらとて意見を変える気は更々ない」
「やーだー!!駄目だよそんなの!家政夫もっと何か言ってやりなよぉ!!」
マーカーの台詞を聞いてるのか、いないのか
ロタローが、特戦部隊と正面きって言い争ってるリキッドの服を引っ張りながらぐずってる。
「は特戦部隊の隊員だ・・・・・・・・」
「そんなの関係ないもん!!」
可愛い声で今度はGに対して怒鳴り声をあげる。
「関係なら大いにあるぜぇ〜v
俺らの保護者みたいなモンだし、あいつが大人になるまで手元置いとかねーとなv」
「テメーは自分でに大人の階段駆け上がらせる気だろ!!それだけは絶対ぇさせないからなッ!!」
楽しそうに笑ってるロッドに、
ヤンキー特有のメンチの切り方でリキッドも怒鳴る。
「ちっ、どっちも聞き分けのねぇガキだな」
「これだからオヤジは嫌いだよぅ」
年季の入った金髪青眼VSピチピチ金髪青眼。
・・・皆して朝から何で喧嘩してんだろ?
「とにかく、は俺らと暮らすんだよ!!」
「何回も言わせないでよ!さんは僕らと住むんだってば!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・喧嘩の原因、あたし?
「おお、起きたか。おはよう、今日もいい天気だぞ」
「ふぁぁ〜・・・ん、起きた。おはようパプワ、チャッピーも」
「わうん!」
冬眠から覚めたクマのように、モソモソと起き上がると
すぐ横に立っていたパプワが爽やかな挨拶をかけてきたので
眠い声で朝の挨拶を返す。
近づいてきたチャッピーを膝に抱き上げ胡坐をかき
毛並みと抱き心地を味わった後、その場で大きく伸びをした。
「うくぅ〜、いてて」
凝りをとろうとしてやったことだが
腰とか肩があまりにもバキバキと鳴るもんだから
ちょっと自分の身体が心配になる。
皮服のまま寝たせいなのか、
はたまた夜中まで続いた宴会のせいなのか、身体が痛い・・・。
そんなことをしてたら、金髪の少年・・ロタローがこっちに気がついた。
ハーレムたちに向けていた鬼のような形相とは違い、満面の可愛らしい笑顔をに見せる。
「あ!さん、おはようv」
「うん、おはよ。皆もおはふァ〜ぁ・・・・おはよー」
他の者たちに向けた『おはよう』と言ってる最中に、
またもや欠伸が出て強制中断されたため、改めて言い直す。
「おう、よく寝れたみたいだな」
「リキッドは目の下クマできてるよ。顔色ちょっと蒼いし」
「ああ・・・お前が寝た後もこの親父共の酒盛りに付き合ってたから・・・・・へぶっ!?」
横に飛んでって、壁にべしゃっとぶち当たったリキッドの代わりに
目の前に来たハーレムが、手を掴みを立たせた。
「よぉ、随分と遅ぇお目覚めだったな」
「だって卒験終わってすぐココまで来たから、けっこー疲れてたんだもん」
ハーレムに掴まれてない方の手で、ごしごしと目を擦ってると
その手も誰かに掴まれた。
ハーレムとは違い、もっと細身でしなやかな腕に。
「擦るな。充血するぞ」
「平気だよ、マーカー過保護すぎ。高松みたい」
「一緒にするな馬鹿者、燃やすぞ」
思ったことを正直に言っただけなのに・・・。
「まあまあ、マーカーちゃん。朝から燃えてっと、夜が不完全燃焼になっちまうぜぇ」
ふいに頭を上に向かされて、他にはいない甘い金髪が頬を滑った。
「チャーオ。いい夢見れたか?」
「ろ、ロッド!顔近すぎ!!離れろよバカ!!」
鼻先がくっつくほどの至近距離に焦ったを見て
ロッドの垂れ目が怪しく歪んだ。
「へぇ・・・んじゃ、こーゆうのも照れちゃうわけ?」
「うぎゃあ!!抱きつくな変態ッ」
「おお、柔らけぇ〜♪マーカーも触ってみれば?」
「言われなくても触るに決まってるだろう」
「ま、マーカーまでっ?!」
ロッドの手が首の辺りを・・・マーカーの手が腰の辺りを妙な手つきでなぞる。
即座に出現する寒イボ。
「ひぃぃィい、気持ち悪っ!やめろォ!!」
「おいロッド、マーカー、テメェら何勝手なことしてやがんだ」
「そーだ、そーだ!・・・って、てめぇのが何勝手なことしてんだよ!!胸に置いてる手ぇ今すぐどけろ!!」
ハーレムの手は・・・部下二人よりも更に悪質なセクハラを堂々と行っていた。
「あ!ずっりー、隊長。俺もの胸揉むーv」
「揉まなくていい!!」
「では私は後ろを・・・・・」
「ぎゃあ!ケツ揉むな、つーか何所も触るなぁー!!」
男3人に囲まれてセクハラの嵐に合うを誰か救ってやれ。
「ちょっとおじさん達!!さんに何やってんのさ!
訴えて勝つよ!そして高額慰謝料ふんだくるよ!!」
「ちっ、ここじゃお子様の目の毒になっちまうか・・・・仕方ねーな」
ハーレムがちらっと目だけで、胸をまさぐるロッドと尻を撫で回すマーカーに合図を送ると
2人はわりと素直にの身体を解放した。
「はぁ・・・・何でこんなメに・・・・・・・」
「おい、」
「んだよ、エロハゲ」
エロいナマハゲ・・・略してエロハゲ。
「てめぇ・・・・・家帰ったらたーっぷり続きやっから楽しみにしとけや」
秘石眼を輝かせ凄みをきかせ睨む・・・が、
その口元は厭らしく笑っている・・・・・。
何考えてるのかバレバレだぞ。
ところがは、そんなハーレムの思惑に気づかないどころか
全く見当ハズレなところで疑問を覚えていた。
「え?家帰るって・・・・みんなココに住んでるんじゃねーの?」
「違うよさん。ここはパプワくんとチャッピーと僕の家!ちなみに家政夫は居候だよv」
「居候なんだ、リキッド」
「違う!居候はロタローの方で、俺はッ・・・
「なんか言った?」
「何か御用がありましたらなんなりとどうぞ、お坊ちゃま」
腰低っ。
低すぎだろ、お前。
「あれ?そんじゃあ特戦のみんなって何所に住んでんだ?」
「森ん中に家作ってあるよんv」
「ジャングルで木を切り出して作った簡易建設だがな」
出てきた謎をロッドとマーカーが素早く解決させると
は何やら思い当たることがあったらしく、「あ!」と小さく声をあげた。
「それってピンクの悪趣味なやつだろ」
「悪趣味って酷ぇな。俺がペインティングしたんだぜぇ」
「よく分かったな、何時の間に見つけたんだ?」
「見つけたってーか、クボタの巣から見えた」
あの時に見えていたうちの一軒は、やはり特戦部隊の住宅だったらしい。
だとすれば、隣の掘建て小屋には一体誰が・・・・と、この疑問は置いておくとしよう。
今は湧き上がってきた大問題に集中しなくては。
そう、大問題。
だって、特戦部隊とパプワ達が別住まいってことは、あたしって・・・・・
「あたしって、ドッチに住めばいいんだろ?」
ぽつりと呟いたの言葉にぴくりと反応するその他大勢。
真っ先に動いたのは勿論
「そりゃ俺たちとに決まってんだろーが」
「なんでだよ」
「お前は誰の部下で何者だ?」
「ハーレムの部下で・・・・特戦部隊の!」
「上出来だ・・・。つーわけでコイツは貰ってくぜ坊主共」
「ちょっと待ったぁぁあああ!!」
の肩をハーレムが抱き寄せる直前に
遥か彼方から蘇ってきたリキッドが、2人の身体と身体の距離をこじ開けた。
元・部下の挙動に
あからさまに不機嫌になる獅子舞。
「あんだよ、リキッド。文句あんのかぁ?」
「ある!!アンタらのとこなんかにを行かせるなんて、飢えたシャチに新鮮なアザラシやるようなモンだ!!」
何だよ、その例え。
「失礼しちゃ〜う、リッちゃんてば俺らの何所見てるわけぇ?」
「全部見てるからこそ確信して言えるんだよ、その厭らしい手つきをやめろイタリア人」
「ふっ・・・坊やに言い返されるとは落ちたなロッド」
「マーカーもさり気なくの腰抱き寄せてんじゃねーよ」
面白いくらいズバッズバと決まるリキッドの突っ込み。
こんな強気なリキッドは
きっともう二度と見れないだろうと思う。
「家政夫の言うとーりだよ!さんは僕達と一緒に住むの!!」
リキッドに乗じてロタローも
いつもの3割増しで強気に出る。(とは言ってもロタローの場合はいつも強気だが)
「それに!さんは将来僕のお嫁さんになるんだからね!!」
「え?そーなの??」
「そうだよ!!僕がそう決めたんだもん。婚約破棄したら多額の慰謝料要求するからね」
「ええ?!あたし金なんかないよ?!」
「大丈夫だよ。婚約破棄さえしなければイイんだもんv」
「えっと・・・んじゃ了解」
「わーい、やったぁv これでさんは僕の婚約者だねvV」
の腕に自分の腕を絡めて擦り寄るロタローの頭を
取り合えず撫でてみる。
するとロタローは『えへへ・・v』と、
つい今しがた悪質詐欺行為をしていたとは思えないほど愛らしく微笑んだ。
しかし、その直後
天使の微笑を悪魔のような微笑に変化させた表情を、男たちに向け・・・
「・・・ってことだから、オヤジ共はさっさと帰れよ」
勝ち誇った顔でそう言った。
無論、それで『では、あとは若いお2人に任せて、私達はおいとましましょう』
などと素直に帰るやつは誰一人としていない。
男という生き物は、歳をくえばくう程しつこく、ねばっこく、性質が悪くなるものなのです。
「、再会の記念だ。帰ったら餃子でも中華まんでも好きなものを好きなだけ作ってやるぞ」
「マジで?!麻婆豆腐とか回鍋肉も作ってくれる?!」
「今日は特別に酢豚にパイナップルを入れてやってもいい」
「狽ヲっ?!邪道だって言って絶対ぇ入れてくんなかったのに?!」
「ドルチェは俺に任せな。とびっきりのジェラート作ってやっぜぇ〜♪」
「やったぁ!ロッドのジェラート大好きv」
「しかもお前のにはストロベリーソースもかけてやるよんv」
「うおわぁ〜!すっげー美味そう!食いたい食いたい!!」
「・・・・・・・・これを」
「あ!これ昔もらったのと同じ抱き枕じゃん、懐かし〜v」
「・・・・・・・・・・・・部屋には、お前と同じくらいの大きさのクマがある・・・・・」
「そんなでっかいクマいんの?!・・・見たいな。うん!見る、見に行く!!」
「おい、久々に俺と一戦やりたくねぇか?」
「狽チやりたい!!あたし強くなったんだから今度こそ勝ってやる!」
「ククっ、そーこねぇとな。いいぜ、相手になってやらぁ」
「うっしゃ!じゃあ早くやろーぜ!」
「「「「ただし・・・・・・・・・・」」」」
4人の口元が弧を描いた。
「「「「俺(私)達と一緒に住めばな」」」」
の答えはとっくの昔に決まってる。
「オッケー!住んだろーじゃん!!」
「えっ?!さん、あっち行っちゃうの?!やだやだやだー!!」
「はっはっは。見事な誘惑作戦だったな」
「わーふ」
「家政夫!ぼさっとしてるとオヤジ達にさん取られちゃうよぉ!!」
「って、言っても・・・・あれ、を釣る最強コンボだぜ」
お手上げとでも言うように両手を左右に開く。
確かに料理の腕に自信はあるが
それだけであの誘惑からを取り返せるとは思えない。
特に最後のは、かなり強力だ。
リキッドはぽふんと右手をロタローの頭に置いた。
「諦めろ、ロタロー。の事は隊長たちに任せようぜ」
「えー!!さんに親父臭が移っちゃったらどーするのさ!」
「それは・・・かなり嫌だけど」
「でしょ?!だからっ・・・・・・・・・・パプワくん?」
パプワは黙ってロタローの前に立つ。
そして、短く小さな手をスッとあげた。
指し示す先には、楽しそうに特戦部隊の中に溶け込むの姿。
誰の眼から見ても、幸せそうだ。
も・・・・・特戦部隊の4人も。
「が決めたんだ。僕らが我侭言ったら駄目だぞ」
「・・・・・そうだね。僕もパプワくん達と離れて暮らすのは嫌だもん」
大好きな人とは一緒にいたい。
そんなの当然だ。
その当たり前の事がは今まで出来なかった。
「さん!!」
強く呼ぶ声は我侭っ子の声じゃない。
振り向いたは、少しびっくりした顔をしてる。
「僕・・・ちゃんと我慢できるから、おじさん達のところ行っていいよv」
「サンキュー、ロタロー!」
「でも、僕達といっぱい遊んでくれなきゃ駄目だからね」
「わかってるって!いつでも誘い来てよ、待ってるからさ」
ぱちっとウインクして親指を立てる。
ロタローはのそんな姿に顔をまた綻ばせた。
「おーい!ー!!そろそろ帰っぞー!」
ドアを開け、半分外に出ている状態のハーレムがに声をかける。
他のメンバーは既に外にいるようで、ハーレムの身体の要所要所の隙間から
違う色の金髪や、緑の中華服、オレンジの熊の抱き枕が見え隠れしている。
「うん、今行くー!!それじゃ、また明日なっ」
「ばいばーい」
「くれぐれも隊長達に油断するなよ!」
最後にリキッドが忠告したが、それはほとんど聞いてないだろう。
無防備な笑顔を全開にしてハーレムの元に急ぐの長い髪を
パプワが掴んで引き止めた。
「パプワ?」
「、お前はもう僕らの友達だ!」
「友達・・・・・・うん!最初に会った時から友達だよな!」
「んばば!!そのとーり」
「わうん!!」
キラキラした笑顔を残して
少女は、自分の帰る場所に走っていった。
昨日と同じく・・・・真っ青に晴れ渡った空で待っている大好きな人たちの元に。
飛びつく背中があることが 繋げる手があることが
乗せてくれる肩があることが 競争してくれる足があることが
キミたちと一緒にいれることが
まるで触れる夢じゃないかって思ってしまうくらい嬉しいんだ
夢より夢のような夢現な現実を ずっとあたしにちょうだい?